世界に復讐を誓った少年
74.帝都で
「……すみません、隊長。私のせいで」
「もう、それは言わないって約束でしょ。それに大将も殺されて、あの人も負けたのに、あれ以上戦っていても遅かれ早かれ負けていたわ。そうなるくらいなら、まだ軍として形がある内に引く事が出来て良かったわ。あのままだと、全員が死霊にされていたわ」
「あのスザク様でも勝てなかったですものね。私も遠目で見ておりましたが、あの少年だけでなく、ほかの者たちもかなりの強さを持っておりました」
「ええ。1人1人がスザク様に匹敵するほどだったわ。そんな相手に私たちだけで相手なんて出来ないわ。だから、セルが気にする事は無いわ」
私は自分のせいだと責めるセルを慰める。しかし、セルは私の首元を見て辛そうな表情を浮かべる。不謹慎だけど、この首の痣のおかげでセルに心配してもらえるなんてね。皮肉なものね。
亜人国との戦いから1週間が経った。あの後、敵国に現れたアンノウン、ハルトと契約を交わした私は、セルの呪いを解いてもらった。
青黒く腫れ上がっていた呪いを受けた部分は、ハルトが呪いを解呪すると直ぐに治り、セルも呪いを受ける前まで回復してくれた。
その代償として私はハルトに隷属の痣を首に入れられたけど。ハルトが言うには逆らわない限り縛られる事は無いらしいけど、あんな奴信用出来ないから用心しないと。
「それでこれからどうするのですか? はっきりに言いますが、私は隊長……いや、セシラを助けられるのなら、私はその男の言う通りに動く」
……やめてよ。まだ部屋にも戻ってないのに! そんな事言われたらこの場で襲いたくなるじゃ無いの! しかもそんな真剣な眼差し……うぅっ、外なのが憎い!
「……ありがとね、セル。取り敢えずはこのまま帝都に戻りましょう。大将が居なくなって、他の隊長たちも死んで、生きているのは私と怪我をした者だけ。兵士たちも半数近くまで減ってしまったのに、残っていても仕方ないわ。私たちだけなら罰せられたかもしれないけど、スザク様も敗退している。強くは言われないでしょう」
私の言葉に納得してくれるセル。取り敢えずはあの方の元へと戻りましょう。私たちをここまで登り詰めさせてくれた、皇女様の元へ。
◇◇◇
「……ここにも埋めて、っと」
僕は手元にある黒い石、ボスが自身の魔力で作った魔結晶を地面に埋めていく。ここは、グレンベルク帝国の帝都で、ボスの命令で僕は来ていた。
僕が今やっているのは、この広い帝都の中に転移の魔結晶をばら撒く事。それがボスから与えられた命令だった。
結構蒔いた気がするけど、帝都はだだっ広い。まだ、半分も終わっていなかった。ただ蒔くだけならその辺に放っておけばいいのだけど、転移させても無駄なところだと意味が無いので、少し考えなくてはいけない。
それに、処分されてはこの苦労も台無しだし。はぁ、面倒だなぁ。目立たないからって任せるのは酷いと思う。確かにレイスである僕は壁なんかすり抜ける事が出来るけど、それでも人使いは荒いと思う。
こんな広い帝都を1人で回らないといけないのだから。普通に入れないところも入れるけどさぁ。はぁ。
しばらく蒔くところを探しながら歩いていると、怒鳴り声が聞こえてくる。そして、前の曲がり角からマントを被った人間が走って来て、更に後ろからは怒鳴り声を散らしながら大人の男が曲がって来た。
男は唾を撒き散らし、血走った目でこちらへと向かってくる。マントの子はそれから必死に逃げていて、前にいる僕に気が付かずに
「痛!」
ぶつかって来た。今は実体化してたため、ぶつかってしまった。ぶつかった反動で尻餅をつくマントの子、その時にマントがはらりと投げてしまい、隠れていた顔が見える。
マントの中から現れた姿は女の子だった。銀色の髪は汚れで黒く霞んでいて男みたいに短い髪をしており、顔はやつれているけど、女の子だ。
「ちっ、クソガキが。手こずらせやがって!」
「くっ、こ、これはお母様の形見だ! お前たちのような者たちが持っていていいものじゃない!」
「母さん? ……ああ、あの女の娘か。くくっ、色々と楽しませてもらったぜ。お前の父親の前で女を犯して、喚く男を見ながら酒を飲むのは格別だったぜ」
……なんか、面倒なところに出くわしてしまった。男と女の子が話している間に、男の仲間と思われる奴らが僕らを囲む。完璧巻き込まれてしまった。どうしようか逡巡していると
「あん? 誰だてめえ?」
今頃気づいた僕を睨んでくる。女の子は申し訳なさそうに僕をチラッと見るけど、それどころではなさそうだ。
……このまま関係無いから何処かへ行っても良いのだけど、僕の顔を見られたのは面倒だなぁ。多分大丈夫だけど、後に響いても困るし、それに自分より年の下の女の子をこのまま放っておくのも。
別に少女趣味ってわけじゃ無いけど、どうしても年下の女の子を見ると、守れなかった妹を思い出してしまう。全く似ていないのに。
……仕方ないけど、穏便に殺そうかな。
「もう、それは言わないって約束でしょ。それに大将も殺されて、あの人も負けたのに、あれ以上戦っていても遅かれ早かれ負けていたわ。そうなるくらいなら、まだ軍として形がある内に引く事が出来て良かったわ。あのままだと、全員が死霊にされていたわ」
「あのスザク様でも勝てなかったですものね。私も遠目で見ておりましたが、あの少年だけでなく、ほかの者たちもかなりの強さを持っておりました」
「ええ。1人1人がスザク様に匹敵するほどだったわ。そんな相手に私たちだけで相手なんて出来ないわ。だから、セルが気にする事は無いわ」
私は自分のせいだと責めるセルを慰める。しかし、セルは私の首元を見て辛そうな表情を浮かべる。不謹慎だけど、この首の痣のおかげでセルに心配してもらえるなんてね。皮肉なものね。
亜人国との戦いから1週間が経った。あの後、敵国に現れたアンノウン、ハルトと契約を交わした私は、セルの呪いを解いてもらった。
青黒く腫れ上がっていた呪いを受けた部分は、ハルトが呪いを解呪すると直ぐに治り、セルも呪いを受ける前まで回復してくれた。
その代償として私はハルトに隷属の痣を首に入れられたけど。ハルトが言うには逆らわない限り縛られる事は無いらしいけど、あんな奴信用出来ないから用心しないと。
「それでこれからどうするのですか? はっきりに言いますが、私は隊長……いや、セシラを助けられるのなら、私はその男の言う通りに動く」
……やめてよ。まだ部屋にも戻ってないのに! そんな事言われたらこの場で襲いたくなるじゃ無いの! しかもそんな真剣な眼差し……うぅっ、外なのが憎い!
「……ありがとね、セル。取り敢えずはこのまま帝都に戻りましょう。大将が居なくなって、他の隊長たちも死んで、生きているのは私と怪我をした者だけ。兵士たちも半数近くまで減ってしまったのに、残っていても仕方ないわ。私たちだけなら罰せられたかもしれないけど、スザク様も敗退している。強くは言われないでしょう」
私の言葉に納得してくれるセル。取り敢えずはあの方の元へと戻りましょう。私たちをここまで登り詰めさせてくれた、皇女様の元へ。
◇◇◇
「……ここにも埋めて、っと」
僕は手元にある黒い石、ボスが自身の魔力で作った魔結晶を地面に埋めていく。ここは、グレンベルク帝国の帝都で、ボスの命令で僕は来ていた。
僕が今やっているのは、この広い帝都の中に転移の魔結晶をばら撒く事。それがボスから与えられた命令だった。
結構蒔いた気がするけど、帝都はだだっ広い。まだ、半分も終わっていなかった。ただ蒔くだけならその辺に放っておけばいいのだけど、転移させても無駄なところだと意味が無いので、少し考えなくてはいけない。
それに、処分されてはこの苦労も台無しだし。はぁ、面倒だなぁ。目立たないからって任せるのは酷いと思う。確かにレイスである僕は壁なんかすり抜ける事が出来るけど、それでも人使いは荒いと思う。
こんな広い帝都を1人で回らないといけないのだから。普通に入れないところも入れるけどさぁ。はぁ。
しばらく蒔くところを探しながら歩いていると、怒鳴り声が聞こえてくる。そして、前の曲がり角からマントを被った人間が走って来て、更に後ろからは怒鳴り声を散らしながら大人の男が曲がって来た。
男は唾を撒き散らし、血走った目でこちらへと向かってくる。マントの子はそれから必死に逃げていて、前にいる僕に気が付かずに
「痛!」
ぶつかって来た。今は実体化してたため、ぶつかってしまった。ぶつかった反動で尻餅をつくマントの子、その時にマントがはらりと投げてしまい、隠れていた顔が見える。
マントの中から現れた姿は女の子だった。銀色の髪は汚れで黒く霞んでいて男みたいに短い髪をしており、顔はやつれているけど、女の子だ。
「ちっ、クソガキが。手こずらせやがって!」
「くっ、こ、これはお母様の形見だ! お前たちのような者たちが持っていていいものじゃない!」
「母さん? ……ああ、あの女の娘か。くくっ、色々と楽しませてもらったぜ。お前の父親の前で女を犯して、喚く男を見ながら酒を飲むのは格別だったぜ」
……なんか、面倒なところに出くわしてしまった。男と女の子が話している間に、男の仲間と思われる奴らが僕らを囲む。完璧巻き込まれてしまった。どうしようか逡巡していると
「あん? 誰だてめえ?」
今頃気づいた僕を睨んでくる。女の子は申し訳なさそうに僕をチラッと見るけど、それどころではなさそうだ。
……このまま関係無いから何処かへ行っても良いのだけど、僕の顔を見られたのは面倒だなぁ。多分大丈夫だけど、後に響いても困るし、それに自分より年の下の女の子をこのまま放っておくのも。
別に少女趣味ってわけじゃ無いけど、どうしても年下の女の子を見ると、守れなかった妹を思い出してしまう。全く似ていないのに。
……仕方ないけど、穏便に殺そうかな。
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