世界に復讐を誓った少年
40.帰宅して待っていたのは……
「それで父上、このままどうするつもりですか?」
私は目の前に座る男性、メストア国王である父上へと尋ねる。この事を考えなければ、この国の存在が危うくなる。まさか、このような事になっていたとは。
問題の内容は私が反乱軍の討伐に行っている間に起こっていた。1ヶ月前、呆気なく内乱を起こした反乱軍を抑えた私たちだったが、その後に現れた死霊の軍団のせいで、かなりの被害を受けてしまった。
被害を出しながらも何とか死霊たちを倒し切った私たちは、急いで王都に戻って来たのだ。
だが、そんな私たちを待っていたのは、ボロボロになった王城だった。門は壊れて、綺麗だった庭も戦闘の後で無残にもボロボロとなっていた。伝統ある王城の壁が崩れて、辺りには血の跡が残っていたのだ。
私と将軍は急いで城の中を走っていったのだが、城の中はまだマシな方だった。あまり荒れた様子もなく、壊れていたところも既に直されていたからだ。
ただ、人の数がかなり減っている。城が直接襲われたのもあるのだろうが、それでも文官たちや兵士たち侍女たちと、見かける人数が少ない。
父上たちが無事なのか不安になりながらも、私と将軍は残っていた数少ない兵士に城の中を案内された。案内された場所は会議室で、中から話し合う声が聞こえる。
私は兵士に案内されるがまま部屋に入ると、中には父上と大臣たちが座っていた。ただ、全員が全員浮かない顔をしている。
「父上、私ヘンリル・メストア、戻りました」
「ヘンリルか。よくぞ無事に戻って来た」
私が出兵した時に比べて物凄くやつれてしまった父上。一体この城で何があったのだ? それに
「……大臣の人数が足りないようですが。それから姉上はどちらに? 会議には毎回参加していたはずですが」
周りを見渡すと大臣の人数が減っていた。それに真面目な姉上は、会議を欠席する事なく必ず参加していたのだが……
「……その事も含めて話す事がある。まずは座るといい。将軍も」
「わかりました」
「はっ」
私と将軍は父上の指示に従い席に着き、私たちが反乱軍、死霊たちと戦っている間に何があったのかを教えてもらった。
その内容は驚く事ばかりで、まさか、あの反乱自体が囮だったとは。それにまさか姉上が負けるとは。この国の中では上位、私など足下にも及ばず、将軍ですらギリギリだというのに。
それに、姉上を隷属させるなど。人数の減った大臣もこの城に侵入して来た者に殺されたらしい。更には、その侵入者たちは我が物顔でこの城の地下に部屋を作り住んでいるらしい。
どうにかしたいところだが、姉上を倒すほどの実力者たちで、姉上と国民を人質に取っている。人数はほんの数人なのだが、侵入者たちの中には死霊を操る者がいるらしく、数は当てにならないと言う。反乱軍を抑えた後に現れた死霊たちも、その侵入者が準備したものだと言う。
それからこの事をどうするかと言う話し合いになり始めに戻る。当然、父上だけでは決められないのはわかっている。国民の命がかかっているから。それでも、決断をしてもらわなければならない。王として。
ただ、何があろうとも父上だけには背負わせない、王太子である私の役目であり、息子である私の役目でもあるのだから。
「……わかっている。少し考えさせてくれ」
父上はそれだけ言うと部屋から出ていってしまった。大臣たちはまたか、と言いながら後に続くように部屋を出て行く。このような話し合いがずっと続いて来たのだろう。
私も部屋から出ると、外で先に戻っていたユネスが立っていた。ユネスから話を聞くと、城で働いていた次女の殆どは既に辞めており、文官は我先にと逃げ出し、兵士は国の為に命を懸けてくれたそうだ。
この1ヶ月、そのせいでやはり街の治安も悪くなっているらしい。兵士の数が少ないせいで街の中では時折泥棒や喧嘩が絶えないと言う。どうにかしないと。
私がいなかった時の事をユネスから聞いていると、前から歩いてくる影。当然見た事のあるその人影に私は走り寄って行く。
「姉上!」
「っ! ヘンリルか、良かった。無事帰って来たのだな」
私の大切な家族である姉上も、父上と似たようにどこか疲れた表情を浮かべる。傷とかは無さそうだが、精神的に疲れているのだろう。何より目に入ったのが
「姉上、その首の紋様は何ですか?」
1ヶ月前に城を出る時は無かった紋様が、姉上の首に浮かび上がっていたのだ。姉上は私の問いにビクッと体を震わせて、左手だ首元を隠す。
「……別に何でもない」
そして、目を逸らし誤魔化す姉上。私は姉上が辛い目に遭っている時に何も出来なかった悔しさと怒りに我を忘れそうになるが、何度か深呼吸をして落ち着かせる。
落ち着いた私は姉上の手を取り歩き出す。この隷属を解除しないと。確か王都に魔法を解除出来る魔法を持つ者がいたはずだ。その者に頼めば……
「な、何をするヘンリル!? 手を離すのだ!」
「離しません。はやく連れて行かねば!」
「殿下、落ち着いて下さい。今無理に連れ出そうとすれば……」
「なら、この状態を黙って見ていろと言うのか!?」
私はユネスの言葉に思わず怒鳴り声を上げてしまった……やってしまった。ユネスだって姉上とは長い付き合いだ。当然この隷属の事も心配なはずだ。それにユネスは姉上が……
私のせいで沈黙が漂っていると
「僕の所有物に何をしている」
と、若い男の声が聞こえて来た。その声に姉上はビクッと肩を揺らして振り向き、ユネスは男の声がした方を見る。私もその方を見ると、声のした方からは黒いローブを来た男と、珍しい修道服を着た金髪の女性が歩いて来た。
その禍々しい雰囲気に私は驚いたが、それ以上に驚いたのが彼の雰囲気が、反乱軍を指揮していた兵士に乗り移った者と似ていた事だ。
……彼が貴族を操って反乱を起こさせた首謀者か。
私は目の前に座る男性、メストア国王である父上へと尋ねる。この事を考えなければ、この国の存在が危うくなる。まさか、このような事になっていたとは。
問題の内容は私が反乱軍の討伐に行っている間に起こっていた。1ヶ月前、呆気なく内乱を起こした反乱軍を抑えた私たちだったが、その後に現れた死霊の軍団のせいで、かなりの被害を受けてしまった。
被害を出しながらも何とか死霊たちを倒し切った私たちは、急いで王都に戻って来たのだ。
だが、そんな私たちを待っていたのは、ボロボロになった王城だった。門は壊れて、綺麗だった庭も戦闘の後で無残にもボロボロとなっていた。伝統ある王城の壁が崩れて、辺りには血の跡が残っていたのだ。
私と将軍は急いで城の中を走っていったのだが、城の中はまだマシな方だった。あまり荒れた様子もなく、壊れていたところも既に直されていたからだ。
ただ、人の数がかなり減っている。城が直接襲われたのもあるのだろうが、それでも文官たちや兵士たち侍女たちと、見かける人数が少ない。
父上たちが無事なのか不安になりながらも、私と将軍は残っていた数少ない兵士に城の中を案内された。案内された場所は会議室で、中から話し合う声が聞こえる。
私は兵士に案内されるがまま部屋に入ると、中には父上と大臣たちが座っていた。ただ、全員が全員浮かない顔をしている。
「父上、私ヘンリル・メストア、戻りました」
「ヘンリルか。よくぞ無事に戻って来た」
私が出兵した時に比べて物凄くやつれてしまった父上。一体この城で何があったのだ? それに
「……大臣の人数が足りないようですが。それから姉上はどちらに? 会議には毎回参加していたはずですが」
周りを見渡すと大臣の人数が減っていた。それに真面目な姉上は、会議を欠席する事なく必ず参加していたのだが……
「……その事も含めて話す事がある。まずは座るといい。将軍も」
「わかりました」
「はっ」
私と将軍は父上の指示に従い席に着き、私たちが反乱軍、死霊たちと戦っている間に何があったのかを教えてもらった。
その内容は驚く事ばかりで、まさか、あの反乱自体が囮だったとは。それにまさか姉上が負けるとは。この国の中では上位、私など足下にも及ばず、将軍ですらギリギリだというのに。
それに、姉上を隷属させるなど。人数の減った大臣もこの城に侵入して来た者に殺されたらしい。更には、その侵入者たちは我が物顔でこの城の地下に部屋を作り住んでいるらしい。
どうにかしたいところだが、姉上を倒すほどの実力者たちで、姉上と国民を人質に取っている。人数はほんの数人なのだが、侵入者たちの中には死霊を操る者がいるらしく、数は当てにならないと言う。反乱軍を抑えた後に現れた死霊たちも、その侵入者が準備したものだと言う。
それからこの事をどうするかと言う話し合いになり始めに戻る。当然、父上だけでは決められないのはわかっている。国民の命がかかっているから。それでも、決断をしてもらわなければならない。王として。
ただ、何があろうとも父上だけには背負わせない、王太子である私の役目であり、息子である私の役目でもあるのだから。
「……わかっている。少し考えさせてくれ」
父上はそれだけ言うと部屋から出ていってしまった。大臣たちはまたか、と言いながら後に続くように部屋を出て行く。このような話し合いがずっと続いて来たのだろう。
私も部屋から出ると、外で先に戻っていたユネスが立っていた。ユネスから話を聞くと、城で働いていた次女の殆どは既に辞めており、文官は我先にと逃げ出し、兵士は国の為に命を懸けてくれたそうだ。
この1ヶ月、そのせいでやはり街の治安も悪くなっているらしい。兵士の数が少ないせいで街の中では時折泥棒や喧嘩が絶えないと言う。どうにかしないと。
私がいなかった時の事をユネスから聞いていると、前から歩いてくる影。当然見た事のあるその人影に私は走り寄って行く。
「姉上!」
「っ! ヘンリルか、良かった。無事帰って来たのだな」
私の大切な家族である姉上も、父上と似たようにどこか疲れた表情を浮かべる。傷とかは無さそうだが、精神的に疲れているのだろう。何より目に入ったのが
「姉上、その首の紋様は何ですか?」
1ヶ月前に城を出る時は無かった紋様が、姉上の首に浮かび上がっていたのだ。姉上は私の問いにビクッと体を震わせて、左手だ首元を隠す。
「……別に何でもない」
そして、目を逸らし誤魔化す姉上。私は姉上が辛い目に遭っている時に何も出来なかった悔しさと怒りに我を忘れそうになるが、何度か深呼吸をして落ち着かせる。
落ち着いた私は姉上の手を取り歩き出す。この隷属を解除しないと。確か王都に魔法を解除出来る魔法を持つ者がいたはずだ。その者に頼めば……
「な、何をするヘンリル!? 手を離すのだ!」
「離しません。はやく連れて行かねば!」
「殿下、落ち着いて下さい。今無理に連れ出そうとすれば……」
「なら、この状態を黙って見ていろと言うのか!?」
私はユネスの言葉に思わず怒鳴り声を上げてしまった……やってしまった。ユネスだって姉上とは長い付き合いだ。当然この隷属の事も心配なはずだ。それにユネスは姉上が……
私のせいで沈黙が漂っていると
「僕の所有物に何をしている」
と、若い男の声が聞こえて来た。その声に姉上はビクッと肩を揺らして振り向き、ユネスは男の声がした方を見る。私もその方を見ると、声のした方からは黒いローブを来た男と、珍しい修道服を着た金髪の女性が歩いて来た。
その禍々しい雰囲気に私は驚いたが、それ以上に驚いたのが彼の雰囲気が、反乱軍を指揮していた兵士に乗り移った者と似ていた事だ。
……彼が貴族を操って反乱を起こさせた首謀者か。
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