世界に復讐を誓った少年
35.怒られる
「……話には聞いていたけど、これはとんでも無いな」
「……普段は余程手を抜いていたのでしょうね」
僕とミレーヌの視線の先にある斬撃の後。炎姫と恐れられた第1王女をものともせず切り裂いてしまい、その余波だけで王城の壁を瓦礫へと化してしまった。
その延長上にいた兵士たちも全員細切れに。炎姫だけはまだ見た目がわかるが、それでも手は切られ、腰から下は切り落とされていた。
そして意気揚々と僕たちの元へと戻って来るリーシャ。兜を脱いだその顔は何処か自慢げで少しイラっとする。
「どうだった、マスター! 私も中々のものだろう!」
「聖騎士の要素が全く無かったけどな」
「……うっ、それを言わないでほしいぞ。私だって、何度聖騎士の職技が使いたいと思ったか。この七剣を手に入れるまでは、全くだったからな」
なぜか使えないのだよ〜と、少し悲しそうな表情で、それを懐かしむように空を見上げるリーシャ……そんな儚げな表情出来たんだな。思わずドキッとしてしまったぞ。
「創造主ヨ、ココノ兵士ハ終ワッタゾ」
そんなリーシャを見ていると、ネロが話しかけてくる。ネロの言葉で周りを見ると、確かに集まった兵士は全て倒したようだ。潰れた死体と細切れの死体が多いのは仕方がないか。オプスキラーの材料にできるだろう。
「それで、彼女はどうします、ハルト様?」
ミレーヌの言葉で顔を向けるのは、炎姫の方……へぇ。
「彼女、まだ生きているね?」
それでも、このまま放っておけばすぐに死ぬほどの差でしか無いが。それでも、生きているのなら治し方が変わってくる。
「ミレーヌ、治せる?」
「はいっ! ここ最近は死霊たちで練習していましたから大丈夫です!」
そう言って駆け出すミレーヌ。嬉々として切り落とされた炎姫の体の一部を手に持ち、体に引っ付けて魔法を発動する。彼女は僕の為! って、色々と頑張ってくれるからな。今度何かしてあげよう。
ミレーヌが治している間は、オプスキラーたちに他の死体を集めさせて、ネロやリーシャは散発だが攻めてくる兵士の相手をしている。
「よし! ハルト様、治りました!」
僕もネロたちを手伝おうかなと思い始めた頃、元気なミレーヌの声が聞こえる。声の方を見ると、嬉しそうに駆け寄ってくるミレーヌの姿が。先程までいた場所には、まだ目を覚ましてはいないが、傷が全て治った炎姫の姿もあった。
「おっ、良くやったな、ミレーヌ」
僕がミレーヌの頭を撫でてあげると、ミレーヌは嬉しそうに微笑みながら更に手のひらに押し付けてくる。可愛いなぁ、もう!
「創造主ヨ、ソロソロ中ヘ向カオウ。奴ラノ相手ヲスルノモ面倒ニナッテキタ」
愛しのミレーヌを愛でていたら、ネロが割り込んできた。こいつ、わざとだな。しかし、ネロの言う事も正しい。というか、少し気を抜きすぎたな。何があるかわからないから気を引き締めないと。
炎姫はリーシャに担がせて、僕たちはリーシャが切り刻んだ壁から王城へと入る。中は横に10人ほど並んでも余裕があるほどの広さの通路が続いている。それに、グネグネと曲がったりしているのが多い。なんだか迷いそうだな。それに
「誘い込まれているな」
リーシャは僕と同じ考えに至ったようだ。城に入ってから兵士を見かけなくなった。多分だけど僕たちを誘っているのだろう。
「ドウスル、創造主?」
「当然真正面からだ。僕たちがコソコソとする理由が無い。それにリーシャたちなら、罠だとしてもその力でねじ伏せる事が出来るだろ?」
「ふふっ、当然だマスター!」
「私も頑張ってハルト様を守ります!」
「ククッ、当然ダ」
僕の言葉にリーシャは先頭を進み、ミレーヌは僕の側であたりを警戒して、ネロはオプスキラーたちへと指示を出す。僕はそんな配下たちと共に先へと進む。
それからは時折魔法の罠が発動するだけで、本当に兵士は出てこなくなった。その罠もオプスキラーを盾にしているから被害はほとんど無いし。
そして辿り着いたのは、一際大きな扉。扉の中からはかなりの人数の気配がする。僕は躊躇いなく扉に手をかける。リーシャたちの制止の声が聞こえるけど、そのまま扉を開く。そして扉を開けた先には
「放てぇ!!」
誰かの号令で視界一面魔法に埋められた。だけど、これだけ気配を感じれば罠があるくらい誰でもわかる。当然僕も準備している。
「侵食ノ太陽」
僕の目の前に現れる全てを吸い込むかのように漆黒の球体。直径10センチにも満たない球体は、迫る魔法に反応して動き始める。
目にも留まらぬ速さで僕の前を飛び回り、迫る魔法を次々と吸収して消し去っていく。数百ほどだろうか、それほどの数の魔法を全て吸収した球体は、初めは10センチほどしか無かったのに、今では直径2メートルはあるだろう。
球体の向こうから見える光景は、唖然としたまま立ち尽くす兵士たち。それも当然か。この球体より僕たちの方は全く傷付いていないのだから。
「それじゃあ返すよ。弾けろ」
僕が指をパチンと鳴らすと、大きくなった球体が弾ける。それぞれが鋭い槍のように尖り、先程まで魔法を放ってきた兵士たちへと飛んで行く。兵士たちは誰1人として避ける事が出来ず、全ての兵士に突き刺さった。瞬く間に血の海へと変わった部屋の奥で、呆然と僕たちを見る人たち。
煌びやかな服を着た人たちだ。あれが国王と大臣たちか。僕はそのまま意気揚々と歩き始め……ようとしたところで、後ろから頭をガシッと掴まれた。えっ、痛い。
そして無理矢理向かされる頭。か、首捻切れるって!? そして無理矢理向いた方を見ると、物凄い笑顔のリーシャに、涙目のミレーヌ、怒っている……様に見えるネロの姿があった。
「……マスター、少しお話ししようか。ネロは向こうの奴らを頼む」
「了解シタ。今回ハ創造主ガ悪イ」
「そうですよ! 私心臓が飛び出すかと思ったのですから!!」
リーシャの馬鹿力で頭を握られた僕は、足が地面につかないほどの高さまで持ち上げられ、ぶらんぶらんとしている。く、首が痛い。
そしてそのままリーシャに引きづられるように連れて行かれる僕。その後を付いて来るミレーヌ。僕たちと入れ替わるように部屋へと入って来るオプスキラーたちは、ネロの指示で国王たちを囲んで行く。話しするから殺さないでね。
「覚悟するのだ、マスターよ。少しお説教だ」
……それよりも、僕の命の方が危ないかも。
「……普段は余程手を抜いていたのでしょうね」
僕とミレーヌの視線の先にある斬撃の後。炎姫と恐れられた第1王女をものともせず切り裂いてしまい、その余波だけで王城の壁を瓦礫へと化してしまった。
その延長上にいた兵士たちも全員細切れに。炎姫だけはまだ見た目がわかるが、それでも手は切られ、腰から下は切り落とされていた。
そして意気揚々と僕たちの元へと戻って来るリーシャ。兜を脱いだその顔は何処か自慢げで少しイラっとする。
「どうだった、マスター! 私も中々のものだろう!」
「聖騎士の要素が全く無かったけどな」
「……うっ、それを言わないでほしいぞ。私だって、何度聖騎士の職技が使いたいと思ったか。この七剣を手に入れるまでは、全くだったからな」
なぜか使えないのだよ〜と、少し悲しそうな表情で、それを懐かしむように空を見上げるリーシャ……そんな儚げな表情出来たんだな。思わずドキッとしてしまったぞ。
「創造主ヨ、ココノ兵士ハ終ワッタゾ」
そんなリーシャを見ていると、ネロが話しかけてくる。ネロの言葉で周りを見ると、確かに集まった兵士は全て倒したようだ。潰れた死体と細切れの死体が多いのは仕方がないか。オプスキラーの材料にできるだろう。
「それで、彼女はどうします、ハルト様?」
ミレーヌの言葉で顔を向けるのは、炎姫の方……へぇ。
「彼女、まだ生きているね?」
それでも、このまま放っておけばすぐに死ぬほどの差でしか無いが。それでも、生きているのなら治し方が変わってくる。
「ミレーヌ、治せる?」
「はいっ! ここ最近は死霊たちで練習していましたから大丈夫です!」
そう言って駆け出すミレーヌ。嬉々として切り落とされた炎姫の体の一部を手に持ち、体に引っ付けて魔法を発動する。彼女は僕の為! って、色々と頑張ってくれるからな。今度何かしてあげよう。
ミレーヌが治している間は、オプスキラーたちに他の死体を集めさせて、ネロやリーシャは散発だが攻めてくる兵士の相手をしている。
「よし! ハルト様、治りました!」
僕もネロたちを手伝おうかなと思い始めた頃、元気なミレーヌの声が聞こえる。声の方を見ると、嬉しそうに駆け寄ってくるミレーヌの姿が。先程までいた場所には、まだ目を覚ましてはいないが、傷が全て治った炎姫の姿もあった。
「おっ、良くやったな、ミレーヌ」
僕がミレーヌの頭を撫でてあげると、ミレーヌは嬉しそうに微笑みながら更に手のひらに押し付けてくる。可愛いなぁ、もう!
「創造主ヨ、ソロソロ中ヘ向カオウ。奴ラノ相手ヲスルノモ面倒ニナッテキタ」
愛しのミレーヌを愛でていたら、ネロが割り込んできた。こいつ、わざとだな。しかし、ネロの言う事も正しい。というか、少し気を抜きすぎたな。何があるかわからないから気を引き締めないと。
炎姫はリーシャに担がせて、僕たちはリーシャが切り刻んだ壁から王城へと入る。中は横に10人ほど並んでも余裕があるほどの広さの通路が続いている。それに、グネグネと曲がったりしているのが多い。なんだか迷いそうだな。それに
「誘い込まれているな」
リーシャは僕と同じ考えに至ったようだ。城に入ってから兵士を見かけなくなった。多分だけど僕たちを誘っているのだろう。
「ドウスル、創造主?」
「当然真正面からだ。僕たちがコソコソとする理由が無い。それにリーシャたちなら、罠だとしてもその力でねじ伏せる事が出来るだろ?」
「ふふっ、当然だマスター!」
「私も頑張ってハルト様を守ります!」
「ククッ、当然ダ」
僕の言葉にリーシャは先頭を進み、ミレーヌは僕の側であたりを警戒して、ネロはオプスキラーたちへと指示を出す。僕はそんな配下たちと共に先へと進む。
それからは時折魔法の罠が発動するだけで、本当に兵士は出てこなくなった。その罠もオプスキラーを盾にしているから被害はほとんど無いし。
そして辿り着いたのは、一際大きな扉。扉の中からはかなりの人数の気配がする。僕は躊躇いなく扉に手をかける。リーシャたちの制止の声が聞こえるけど、そのまま扉を開く。そして扉を開けた先には
「放てぇ!!」
誰かの号令で視界一面魔法に埋められた。だけど、これだけ気配を感じれば罠があるくらい誰でもわかる。当然僕も準備している。
「侵食ノ太陽」
僕の目の前に現れる全てを吸い込むかのように漆黒の球体。直径10センチにも満たない球体は、迫る魔法に反応して動き始める。
目にも留まらぬ速さで僕の前を飛び回り、迫る魔法を次々と吸収して消し去っていく。数百ほどだろうか、それほどの数の魔法を全て吸収した球体は、初めは10センチほどしか無かったのに、今では直径2メートルはあるだろう。
球体の向こうから見える光景は、唖然としたまま立ち尽くす兵士たち。それも当然か。この球体より僕たちの方は全く傷付いていないのだから。
「それじゃあ返すよ。弾けろ」
僕が指をパチンと鳴らすと、大きくなった球体が弾ける。それぞれが鋭い槍のように尖り、先程まで魔法を放ってきた兵士たちへと飛んで行く。兵士たちは誰1人として避ける事が出来ず、全ての兵士に突き刺さった。瞬く間に血の海へと変わった部屋の奥で、呆然と僕たちを見る人たち。
煌びやかな服を着た人たちだ。あれが国王と大臣たちか。僕はそのまま意気揚々と歩き始め……ようとしたところで、後ろから頭をガシッと掴まれた。えっ、痛い。
そして無理矢理向かされる頭。か、首捻切れるって!? そして無理矢理向いた方を見ると、物凄い笑顔のリーシャに、涙目のミレーヌ、怒っている……様に見えるネロの姿があった。
「……マスター、少しお話ししようか。ネロは向こうの奴らを頼む」
「了解シタ。今回ハ創造主ガ悪イ」
「そうですよ! 私心臓が飛び出すかと思ったのですから!!」
リーシャの馬鹿力で頭を握られた僕は、足が地面につかないほどの高さまで持ち上げられ、ぶらんぶらんとしている。く、首が痛い。
そしてそのままリーシャに引きづられるように連れて行かれる僕。その後を付いて来るミレーヌ。僕たちと入れ替わるように部屋へと入って来るオプスキラーたちは、ネロの指示で国王たちを囲んで行く。話しするから殺さないでね。
「覚悟するのだ、マスターよ。少しお説教だ」
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