世界に復讐を誓った少年

やま

12.呪われた道具

「うおおおっっ!!」


「「「「カタカタカタカタ!」」」」


「ほらっ! マスター、もっと速度を上げろ! そんなスピードだと、スケルトンたちに踏まれるぞ!」


 くそっ、リーシャの奴! 自分はスケルトンホースに悠々と乗りやがって! お前も一緒に走れっていうんだ!


「おー、ボス頑張ってるねー」


 クロノに至ってはダルクスと一緒にお茶なんかしやがって! って、痛え! クロノたちの方を見ていると、突然頭に衝撃が走る。少し後ろを見ると、何かを投げた様に腕を振り抜いている格好をしているリーシャの姿があった。


 ……あいつ、何か投げやがったな。その衝撃でバランスを崩して地面に倒れた僕に迫るスケルトンども。あっ


「「「「カタカタカタカタ!」」」」


「あっ、マスター……」


「あらら、踏まれちゃった」


 ……リーシャの奴、絶対に許さねえ。


 ◇◇◇


「いやー、すまなかったマスター。つい熱が入ってしまって」


 あははー、と笑うリーシャ。僕はにこやかなままリーシャに近付き、体からリーシャの頭を引っこ抜く。そして、そのまま思いっきりぶん投げる!


 放物線を描きながら飛んでいくリーシャの頭。少しずつか細くなるリーシャの叫び声が聞こえてくる。そして、その頭を追って走る首無しの胴体。しかも何気に速い。地面スレスレで滑り込んで取ったぞ。


「どうぞ、飲み物です」


 そんなリーシャを見ていると、横からスッと現れるナタリア。そして手渡されるコップ。この空間にこんな上等な物どこにあったのだろうか。しかも、ナタリアが作る物は全て美味しい。


「……」


「……」


 なんだか、物凄くじーっと見て来るんだけど。何だ? 気にせず飲もうとしても、ずっと見て来る。気にするなという方が無理だ。


「……何でそんな見て来るんだよ?」


「いえ、特に理由はありません」


「……」


「……」


 何なんだよ!? 無言のまま動かなくなったナタリア。もうよくわからん。何とか気にしないようにしながらナタリアからもらったお茶を飲んでいたら


「マスター! 人の頭を投げるなんて酷いじゃないか! 危うく地面に落ちて割れるところだったぞ!」


 と、怒りながらのっしのっしとリーシャが歩いて来た。まるでボールを脇の間に挟んで持つように自分の頭を持ちながら、僕に向かって指をさして来る。


「初めに投げて来たのはお前だろ? 投げ返して何が悪い」


「投げる物が違うだろ! 私が投げたのは骨だ! それに、私の綺麗な顔に傷が付いたらどうするんだ!」


「自分で綺麗って言うなよ。それから、胴体から頭が取れる奴は綺麗じゃない」


「何っ!? それじゃあ、マスターは普通の人間の方が良いのか!?」


 ……何でそんな話になるんだよ。しかし、普通の人間か。こうなる前はステラの事が好きだった。それ以外にも綺麗な女性や可愛い女の子を見ると興奮もした。


 でも、今は? と言われると……無理だな。もう憎悪の対象でしかない。あいつらとは関係無いとしても、無理だ。せめて隷属契約をしてないと。まず信用が出来ない。


 それと比べたら、リーシャは……首を取れるのを我慢すればかなり綺麗だ。胸も大きくてスタイルもいい。ただ、腹筋が割れているのがマイナスだが。前に素っ裸の首無しの胴体が立っていた時は流石にびっくりしたからな。


 それに、こいつは僕の配下だ。僕には逆らえないし、僕を裏切る事はない。僕が死ねばこいつも消えてしまうからね。そう考えたら、僕は奴隷か配下しか愛せないのかもしれない。こういうところも狂ってしまったのか。


「マ、マスター? 急に難しい顔をしてどうしたのだ? お腹でも痛いのか?」


「……食べ過ぎて腹を壊すお前と一緒にするな。なんでデュラハンが腹壊すんだよ」


「し、仕方ないではないか! ナタリアの料理が美味いのが悪いのだ!」


 恥ずかしい事を指摘されて逆ギレするリーシャ。しかし、こんなアホな奴でも頭は良いし、色々と知っている。クロノやダルクスが色々と知っているせいで目立たないが。


「出来たよ、ボス」


 怒るリーシャを宥めていると、クロノがやって来た。後ろにはダルクスもいる。そして、クロノから手渡されたのは黒い腕輪とネックレスだった。


「おっ、これがダルクスが話してたやつか?」


「そう、1つが剛力の呪輪。普通の数十倍の筋力を得る事が出来る。その代わり、付けている腕に常に激痛が走るようになる。もう1つが吸魂のネックレス。殺した相手の魂を吸収する事で保有魔力量を増やす事が出来る。その代わり、吸収した魂の叫び声が聞こえてくるらしい」


 なるほど。それなりの効果を得る代わりに、どちらも呪われている。僕は迷い無くどちらも付ける。腕輪は左腕に。


 すると、左腕に尖ったものが突き刺さる感覚が走る。それも、腕全体に。かなり痛いけど、ナイフを全身に刺された時に比べたらマシだ。普通の人間だと痛みで死ぬかもしれないけど。


 それからネックレスを付けると……何も聞こえてこない。僕がクロノを見ると


「当たり前だよ。まだ、1つも吸収されていないんだから」


 ……それもそうだ。無いのに叫び声が聞こえてくるわけがないか。この空間にいる魂を吸収しても良いけど、まずは腕輪の性能を確かめたいな。


「クロノ。僕が住んでいた村がある国から離れたところで、どこか良いところは無いか?」


「それなら、最南端の国は良いんじゃない? 人口50万ほどの小さな国『メストア王国』。そこなら、ボスがいた国『アンデルス王国』から結構離れているよ」


 よし、それならそこにしよう。この2つの道具の性能を確かめさせて貰う。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品