悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!

やま

46.夜への準備

「ジーク様!」


「旦那様!」


 俺が求めていた魔導書をマーケッティー書店で購入してから、放課後の時間までは魔導書を読んでみながら今日の事についてレイチェルさんやシェイラさんと話し合って、放課後の時間が来たため学園へ戻ると、門の前でセシリアとミーコにエレネ、クロエとエンフィが待っていた。


「すまない、遅くなってしまった」


「いえ、こちらこそ本当に……」


「それ以上は言うなよ。俺が自分で決めた事だ。それに、教会の子たちもセシリア、君のせいじゃ無い。気にするなとは言えないが、1人で抱え込むなよ」


「……はい」


 俺とセシリアが話し合う姿をじっと見てくる4つの瞳。誰かと言うと、軽く殺気を放っているクロエと苦笑いしているエンフィだ。別に2人を忘れていたわけじゃ無いから。だから、そんな睨まないでくれ。


「クロエとエンフィは知っているのか?」


「はい、おおよその話は聞きました」


「それじゃあ……」


「勿論行きますわ! 旦那様だけ危険なところへと行かせるわけにはいきませんから!」


「勿論私も行きます、ジーク様。私も微力ながらお手伝い出来ると思います」


「当然私もよ。私の家が危ない目に遭ってあるのに見過ごせないわ」


 …….だよなぁ。残るように言う前に言われてしまった。出来れば危険だから来てもらいたくは無いのだが……後ろに立つレイチェルさんを見ると、レイチェルさんは首を横に振っていた。その隣にはつまらなそうに欠伸をするパールが。こいつ。


「……わかった。一緒に行こう。でも、俺や後ろの2人の指示には従って貰うからな?」


 俺の言葉に3人は頷く。まあ、俺よりも3人の指示を聞いてくれるのなら少しは安心だ。それから、学園で部屋を一室借りて、そこでどうするか話し合う。


 場所は王都の外にある森とわかっているため、シェイラさんがどこからともなく出して広げてくれた地図を見て確認する。


 地図からしてこの森はそこまで大きく無い。直系で2キロ程だろう。ただ、四方どこからでも森の外に出られるため逃げるのは容易いだろう、囲まれない限りは。


 今回は兵士には伝えるな、伝えると人質は殺すと書いてあったから、兵士は来ないと考えているのだろう。万が一来たとしても、人質を殺して逃げれば良いと考えているのか。


「それで、どうするつもりだい? いくら私とシェイラがいるからと言っても、この森全てを警戒する事は出来ないよ?」


 俺はレイチェルさんの言葉に頷く。レイチェルさんはシェイラさんの実力を知っているようだが、それでもこの森全てを警戒するのは難しいだろう。そこで出てくるのが俺が買った魔導書だ。それをみんなの前に出す。


「魔導書……そうか、ジークがこれを読むのか」


「ああ、俺が買ったのは『テレパシー』と『サーチアイ』だ。テレパシーは俺の言葉が声に出さなくても伝えられる。クロエ、俺の手を握ってくれ」


「わかりましたわ」


 クロエが俺に言われたまま手を握ったので、魔法を発動する。まだ、全部読みきっていないので簡単な言葉しか伝えられないが『好き』と伝えると、クロエがビクッと震えて俺をマジマジと見てくる。どうやら届いたようだ。


 他のみんなにもそれぞれ握ってやるって見ると、同じようにビクッと震える。普通はこんな事はないからな。慣れないのだろう。


「まだ読み切っていないから単語でしか伝えられないが、夜までにはあるある程度読み終えるよ。それから、サーチアイは魔力を探す事が出来る。これは朝夜関係なく。これと俺が元々持っている魔法『シャドウクリエイト』を使って、森の中を索敵する」


 本当は後気配を消す魔法を手に入れたかったが、夜までそんなに時間は無い。この2冊ですらギリギリなのだから。それも完璧ではなく。


「なるほどね。シャドウクリエイトは確かジークと視覚や聴覚なども共有するんだったね。ジークが作った影にサーチアイを使って敵が逃げて来ないか警戒させて、その情報をテレパシーで私たちに送るって事かい」


「ああ、周囲から少しずつ範囲を狭めていけば、敵の拠点や人数も把握出来るだろうし、何かあれば魔力が繋がっている限り伝える事が出来る。あ、魔力はさっきの握手で繋げさせてもらったから」


 俺の言葉に頷くみんな。それから、どうするかの話し合いが始まる。セシリアには悪いが囮役になって貰わなければならない。危険がないようにシャドウクリエイトをバレないように側に付けておくが。


 話し合いが終われば、今から時間まで俺は魔導書を読み続ける。ここからどこまで読めるかが鍵となる。本当はこんなギリギリな事をしたくは無いが、仕方ない。俺が読み切れば良いだけだ。

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