悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!

やま

43.セシリアの理由

「このような汚いところにジーク様をお招きするのは心痛いのですが……」


「そんな事ないさ。それよりも突然来て申し訳ない。エレネの話を聞いて来てしまった」


「いえいえ、私としても娘に会えるのは嬉しいですから」


 そう言い微笑むシスター。チラッとエレネを見ると、少し照れていた。教会の中に案内された俺たちは、子供たちが食事する食堂へと連れられた。この人数が一斉に座って話が出来るのはここしかないらしいからな。


 子供たちはエレネの側で話をする者と、セシリアの周りにいる者たち、そして……


「あら、私をじっと見てどうしたのよ? ふふっ、そんな胸ばっかり見て、お姉さん恥ずかしいわ」


 と、軽く男の子たちの前で前屈みをするユーリエ。ユーリエは学園の制服をエロく改造しているため、普通にしていても胸元が見える。それが前屈みをすればどうなるか……男なら視線が外せない谷の間が目の前に現れる。


 そんな刺激的なものを、性知識に乏しい男の子が見ればどうなるか。男の子たちは訳もわからずに前屈みなっていた。どうしてそうなるかわからないようだ。


「……あー、ユーリエ。子供たちをあまりからかうなよ。みんな動けなくなってしまってるじゃないか」


「ふふっ、ごめんなさいね。みんな反応がウブすぎて悪ふざけが過ぎちゃったわ。軽く手解きしてあげたいけど、私、娼婦の頂点を目指すから安売りはしていないの。ごめんなさいね」


 ……それはそれで子供たちに残酷過ぎるぞ、お前。はっきり言って鬼だな、鬼。男の子たちはこれから悶々とした日々を過ごさなければならなくなった。これからの人生に影響が無ければ……無理だろうなぁ。


 これから苦労するであろう男の子たちを見ながら食堂に入った俺たちはそれぞれ席に座る。エンフィは子供たちを見てくれると言って別の部屋へと向かった。セシリアに懐いていた狐の獣人の女の子もだ。


「大したものではありませんが」


 そう言ってシスターはわざわざ飲み物を入れてくれた。そこにクロエが俺たちが持って来たお菓子を並べていく。


「ありがとな、クロエ。それで、セシリアはどうしてここにいるんだ?」


「えっ? あ、はい、私がここにいるのはミーコ、先程私のところへと走って来た狐の獣人の女の子がここの出身だからです」


 クロエが出してくれたお菓子を頬張りながらセシリアを見る。お菓子もゲームのせいか普通に前世で売っているようなクッキーなどが小袋に分けて入れられていたりするものを持って来た。


 そのお菓子を取ろうとしたところに俺が声をかけたため少し慌てるセシリア。もう王宮の中だとあまり見られなくなった光景がこんなところで見れてしまったため、思わず笑みを浮かべてしまった。


 すると、突然右側の脇腹に痛みが走る。痛みのする方を見ると、クロエがにっこりと笑いながら俺の脇腹をつねっていた。ただ、目が笑っていない。


「旦那様? 相手はお義兄様の婚約者様ですよ? わかっておりますか?」


「わ、わかっているよ。だからそんなつねるな。痛いだろ!」


 2人で少し言い合っていると、目の前からくすくすと笑う声が聞こえて来た。2人で前を見ると、口に手を当てて笑っているセシリアの姿があった。


 俺たちが見ているを気が付いたのか、照れて顔を俯かせるセシリア。


「も、申し訳ございません。お2人が余りにも仲が宜しかったもので」


 セシリアはそう言いながら羨ましそうに俺とクロエを見ていた。クロエはさっきまで怒っていた態度が嘘のように喜びでクネクネとしている。ちょろいな。


 しかし、久し振りに笑みも見せてくれた。王宮や学園の中では本当に見られなくなったからなぁ。今はもういつもの表情に戻ってしまっているが、久し振りに見れて良かった。


「それじゃあ、エレネはミーコちゃん? だっけ? 知っているのか?」


「もちろんよ。ミーコはこの教会で唯一の獣人の女の子で、いつももふもふさせてもらっていたんだから。でも、まさかミーコが働きに出てたなんて知らなかったわ」


「ふふっ、それはね、セシリア様がミーコの事を気に入って下さったのよ。町で私のお手伝いをしてくれるミーコを見て、側に置きたいとおっしゃってくれたの」


 へ〜、セシリアがそんな事を。でも、普通侯爵家の令嬢なんだから、寄子の家からお付きの人を付けるはずなんだが。俺で言うエンフィみたいなものか? それか


「ケモミミ好きとか?」


 俺がボソッと呟くと、びくっとするセシリア。俺の声が聞こえたようだ。へぇー、そうなんだ。前世のゲームなんかでもそんな設定とか書かれていなかったからなんだか不思議だな。もう少しそう言うイベント、セシリア側にもあっても良かったと思うだよな。


 狐耳のミーコをモフるセシリアか。うん、アリだな。そして、俺の思っている事を感じ取ったのか、クロエよ。つねるのはやめてくれ……やめてください。痛いです。


 それから、少しシスターやセシリアと話して俺たちはお暇させてもらった。明日も授業だし、俺たちがいると、子供たちも安心していられないだろう。


 ……俺やセシリアの訪問が元に問題が起こるなんて、この時は思っていなかった。

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