悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
10.想い人との出会い
……見間違えるはずもなかった。たった2日間だけだがやりこんだゲーム。その中で俺が唯一見たいと思った彼女なのだから。
銀髪の髪はゲームの中より短く肩ぐらいまでの長さで、鋭く冷たく見えた青色の瞳は、毛繕いをするバールに興味津々だった。
瞳の色に合わせるかのように淡い水色のドレスを着た少女は将来の綺麗さはない代わりに、可憐さが際立っていた。
乙女ゲーム『マジカルサーガ』でヒロインのライバル役として登場する悪役令嬢、セシリア・バレンタインだ。まさか、こんな早くに会う事が出来るとは思ってもみなかったよ。
俺が彼女を見て固まっている間に、彼女はじーっと自分を見てくるバールに興味津々だ。怖くないのか、興味の方が勝っているのかはわからないが、臆する事なくバールへと近づいていく。
「ねえ、お姉さん。この猫さんさわってもいいの?」
「ん? ああ、構わないよ。ただ、ヒゲを触られるのは好きじゃないから触らないように」
レイチェルさんの言葉を聞いて、バールの名前を呼びながら近づくセシリア。セシリアがバールの喉元を優しく撫でると、バールは気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
セシリアもバールの柔らかい毛並みにモッフモフと楽しそうだ。天使だ。天使がいる。今すぐにこの光景を写真に残したいけど、残念な事にそういうのを見た事がない。本当に残念だ。
しばらくバールを撫で回しているセシリア。その様子を眺めるという至福の時を堪能していると
「こんなところで何をしている」
と、訓練をし終えたのか木剣を右手に持った兄上がやって来た。その隣には同じく木剣を持った赤髪の少年、先日出会ったこの国の将軍、アーグス・バルトロメオの息子でアウレス・バルトロメオ。兄上と同じく、攻略対象の1人だ。後ろには兵士を引き連れていた。
2人はゴロゴロと喉を鳴らすバールにギョッとして手に持っている木剣に力が入る。後ろにいた兵士たちもバールに警戒していつでも剣を抜けるようにしていた。
「これは、兄上。訓練お疲れ様です」
「……この魔物はなんだ? 王宮にこのような危険な生き物を連れ込んでお前は馬鹿なのか!」
俺が兄上に挨拶をした瞬間、キレた兄上に突き飛ばされてしまった。俺は思いっきり尻餅をつく。痛てて。別に突き飛ばす必要はないだろう。
「……グルディス殿下。この魔物、バールは私の従魔として登録されています。そして、王宮に連れてくる事も陛下の許可を得ています」
「それでも、普通は王宮の中までは連れて来ないだろう。ここには対応出来る兵士ばかりではない。貴族や侍女たちと出入りする。その者たちに何か起きたらどうするつもりだ」
レイチェルさんがちゃんと説明しても、兄上がそう返してくる。確かに兄上の言う事はわかるけど、父上が許可出して、バールをしっかりと管理出来るレイチェルさんがいるのだから、別に構わないと思うのだけど。そう考えていると
「ふふっ、グルディス殿下は怖がりなのですね」
と、優雅に口元を隠しながらクスクスと笑うセシリアが目に入った。そのセシリアの言葉に兄上が「何だと?」と、言い睨みつける。それでも涼しげな表情を浮かべながらバールに抱き着くセシリア。
既に2人の間で軽く亀裂が入っているように見るのは俺だけだろうか。兄上がセシリアに何か言おうとした瞬間、王宮から侍女が1人走って来た。
兄上と俺を交互に見て驚いた侍女は、兄上に用件を言いながらも、おれをチラチラと見ていた。俺と兄上が一緒にいるのがおかしく見えるのだろう。
侍女が去った後、兄上は軽くセシリアを睨みつけて王宮へと向かってしまった。ただ、兄上たちと入れ替わるようにセシリアを兵士が呼びにくる。
兵士と話をしたセシリアは最後にとバールを目一杯撫で回す。そして、俺やレイチェルさんを見て頭を下げてきた。どうやら俺の事も知っているらしい。
天使ような笑みを浮かべて、王宮の中へと消えて行くセシリアを眺めていると、どうして彼女が王宮へとやって来たのか思い出した。……今日が中だけだが兄上とセシリアの婚約が決まる日だったのか。
乙女ゲームの方は日付なんか書かれずに簡単な歴史書に書いてあっただけだから全く気にして無かった。
「師匠、もう一回走ります」
「ん? ああ、わかったよ」
だけど、彼女が実際にいるとわかったの大きかった。それに、画面越しで見るより実物の方がいい百万倍可憐だった。俺はそんな彼女を死のルートから必ず変えると気持ちを新たに決意したのだった。
そのためにももっと強くならないと! まずは体力づくり。彼女のためなら何本だって走ってやる。来いや、バール……少しは手加減してね?
銀髪の髪はゲームの中より短く肩ぐらいまでの長さで、鋭く冷たく見えた青色の瞳は、毛繕いをするバールに興味津々だった。
瞳の色に合わせるかのように淡い水色のドレスを着た少女は将来の綺麗さはない代わりに、可憐さが際立っていた。
乙女ゲーム『マジカルサーガ』でヒロインのライバル役として登場する悪役令嬢、セシリア・バレンタインだ。まさか、こんな早くに会う事が出来るとは思ってもみなかったよ。
俺が彼女を見て固まっている間に、彼女はじーっと自分を見てくるバールに興味津々だ。怖くないのか、興味の方が勝っているのかはわからないが、臆する事なくバールへと近づいていく。
「ねえ、お姉さん。この猫さんさわってもいいの?」
「ん? ああ、構わないよ。ただ、ヒゲを触られるのは好きじゃないから触らないように」
レイチェルさんの言葉を聞いて、バールの名前を呼びながら近づくセシリア。セシリアがバールの喉元を優しく撫でると、バールは気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
セシリアもバールの柔らかい毛並みにモッフモフと楽しそうだ。天使だ。天使がいる。今すぐにこの光景を写真に残したいけど、残念な事にそういうのを見た事がない。本当に残念だ。
しばらくバールを撫で回しているセシリア。その様子を眺めるという至福の時を堪能していると
「こんなところで何をしている」
と、訓練をし終えたのか木剣を右手に持った兄上がやって来た。その隣には同じく木剣を持った赤髪の少年、先日出会ったこの国の将軍、アーグス・バルトロメオの息子でアウレス・バルトロメオ。兄上と同じく、攻略対象の1人だ。後ろには兵士を引き連れていた。
2人はゴロゴロと喉を鳴らすバールにギョッとして手に持っている木剣に力が入る。後ろにいた兵士たちもバールに警戒していつでも剣を抜けるようにしていた。
「これは、兄上。訓練お疲れ様です」
「……この魔物はなんだ? 王宮にこのような危険な生き物を連れ込んでお前は馬鹿なのか!」
俺が兄上に挨拶をした瞬間、キレた兄上に突き飛ばされてしまった。俺は思いっきり尻餅をつく。痛てて。別に突き飛ばす必要はないだろう。
「……グルディス殿下。この魔物、バールは私の従魔として登録されています。そして、王宮に連れてくる事も陛下の許可を得ています」
「それでも、普通は王宮の中までは連れて来ないだろう。ここには対応出来る兵士ばかりではない。貴族や侍女たちと出入りする。その者たちに何か起きたらどうするつもりだ」
レイチェルさんがちゃんと説明しても、兄上がそう返してくる。確かに兄上の言う事はわかるけど、父上が許可出して、バールをしっかりと管理出来るレイチェルさんがいるのだから、別に構わないと思うのだけど。そう考えていると
「ふふっ、グルディス殿下は怖がりなのですね」
と、優雅に口元を隠しながらクスクスと笑うセシリアが目に入った。そのセシリアの言葉に兄上が「何だと?」と、言い睨みつける。それでも涼しげな表情を浮かべながらバールに抱き着くセシリア。
既に2人の間で軽く亀裂が入っているように見るのは俺だけだろうか。兄上がセシリアに何か言おうとした瞬間、王宮から侍女が1人走って来た。
兄上と俺を交互に見て驚いた侍女は、兄上に用件を言いながらも、おれをチラチラと見ていた。俺と兄上が一緒にいるのがおかしく見えるのだろう。
侍女が去った後、兄上は軽くセシリアを睨みつけて王宮へと向かってしまった。ただ、兄上たちと入れ替わるようにセシリアを兵士が呼びにくる。
兵士と話をしたセシリアは最後にとバールを目一杯撫で回す。そして、俺やレイチェルさんを見て頭を下げてきた。どうやら俺の事も知っているらしい。
天使ような笑みを浮かべて、王宮の中へと消えて行くセシリアを眺めていると、どうして彼女が王宮へとやって来たのか思い出した。……今日が中だけだが兄上とセシリアの婚約が決まる日だったのか。
乙女ゲームの方は日付なんか書かれずに簡単な歴史書に書いてあっただけだから全く気にして無かった。
「師匠、もう一回走ります」
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だけど、彼女が実際にいるとわかったの大きかった。それに、画面越しで見るより実物の方がいい百万倍可憐だった。俺はそんな彼女を死のルートから必ず変えると気持ちを新たに決意したのだった。
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