悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
4.書庫へ
朝食を食べ終えた俺は、この世界、国の事を知るためにメルティアに勉強を教えてくれる先生を呼んで来てもらうように頼み、部屋で待っていたのだが
「……申し訳ございません、ジーク様。どの方も忙しいなどの理由で断られてしまって」
と、戻ってきたメルティアに言われたのだ。まあ、仕方ない事なのかもしれない。今まで教えてくれようとしてきてくれた人たちに対して、俺はサボったりイタズラしたりと色々な事をしてきた。そんな奴を教えたいという変わり者の先生はいないだろう。
けれど、いきなり躓いてしまうとは。どうしようかと考えていると、目の前で頭を下げてくるメルティア。
「申し訳ございません。私の力不足で……」
「メルティアのせいじゃないよ。これは俺が招いた結果だよ。今まで色々な事をしてきた返しが今来ているだけ。みんなも今更信用出来ないんだよ。本当にちゃんとするのか、ってね。でも、どうしようか。そんな変わった事じゃないから書庫にでも行けば調べられるだろうか?」
うーん、と1人で唸っていると、メルティアがそれなら、と声を上げる。閉じていた目を開けてメルティアを見ると
「基本的な事で宜しければ不肖ながら私がお教え出来ると思います」
と、言ってきた。なるほど。確かに基本的な事なら彼女から学ぶ事が出来る。彼女も国が管理する学園でゲームの1章の舞台にもなる『アルフォール学園』を卒業している。俺が知りたい事は全部知っているだろう。
「それなら、メルティアに教えてもらおうかな。ただ、教材が無いから書庫に向かおうよ」
「わかりました。向かいましょう」
向かおうと言ったものの、前世の記憶が戻る前の俺は本なんか全く興味が無かったため、書庫の場所なんか知らない。それどころか、メルティアに連れて行ってもらわないと、王宮の中すら迷ってしまう。
本当に情けのない話だけど、メルティアの後ろを付いていかないと道がわからない。早い所覚えないと。
しばらく王宮の中を歩いていると、目的の書庫へとたどり着いた。書庫の中へと入ると、中には書棚にぎっしりと仕舞われた本が沢山並んでいた。これは凄い。あまりの本の数と大きさに圧倒されていると
「おやぁ? これは珍しいお客様だねぇ。こことは無縁だと思っていたジーク様がいらっしゃるとは」
と、声が聞こえて来た。声の方を見るとそこには杖をついた老婆がニコニコと笑みを浮かべて立っていた。俺はその老婆が誰かわからずにどう答えようか迷っていると、メルティアが一歩出て頭を下げる。
「お久しぶりです、ンディバ様。本日、ジーク様が勉強をなさりたいとの事で、教材になりそうな本を借りに来ました。
ジーク様、この方は、この書庫の管理を陛下よりお任せされております、ンディバ様です。この書庫にあるもので知らない本は無いと言われている程この書庫の事を熟知されている方になります」
「はっは、初めまして、ジーク様。私の名前はンディバと申します。このような埃っぽい場所へようこそ」
「初めまして、ンディバさん。今日はいくつかの本を借りていこうと思う。申し訳ないが場所を教えてほしい」
前世の記憶なら本来目上の人に対しては敬語を使うべきなのだが、王族として生まれた以上、あまり謙ってはいけないとも習っている。記憶が戻る前の俺は何故かこれはしっかりと覚えて実践までしていたため、体に染み付いてしまっている。
まあ、これが当たり前だと思っているンディバさんやメルティアは、変な事言ってこないが。
「それで、本は何をお探しですかな?」
「そうだなぁ。この国の事と周辺諸国、魔法の事に……ああっ、貴族名鑑とかある?」
俺が今必要だと思う本を尋ねると、ンディバさんもメルティアも固まってしまった。一体どうしたのだろうか? 首を傾げていると
「ジーク様、言いづらいのですが、まずは簡単な本から始められた方が良いと思うのです。その、文字を覚えなければいけませんし」
「そうですなぁ。神童と呼ばれたグルディス様も未だに文字には苦労されております。この婆も簡単なものをオススメいたします」
ンディバさんはそう言って近くの本棚から薄い本を取り出して、俺に渡して来た。その本を見ていると何だか違和感を感じてしまった。見たことあるような内容な文字が書かれているからだ。ただ、その違和感も少し眺めているとわかった。
本の題名は『もじをおぼえよう』と書かれていた。それも平仮名で。ただ、普通の平仮名と違うのは、全て反対に書かれていたからだ。『うよえぼおをじも』と書かれているだけでなく、一文字一文字鏡に映したように反対に。
どうして平仮名? と、思ってしまったが、よくよく考えればここは日本のメーカーが作った乙女ゲームの世界。そう考えたら平仮名を弄った文字が出て来ても不思議に思わない。
これは運が良い。これのおかげで普通の本も読む事が出来るだろう。ただ、読むにしても少し考えなければいけないから少し時間がかかるかもしれないけど。
「ンディバさん、これくらいなら読めるから大丈夫だ」
「ほお、ならばこの本の題名はどうですな?」
試すように次に渡されたのは簡単な伝記のようなものだった。これも、同じように書かれていたためパラパラとめくって見て中身を見たけど読めた。うん、これも大丈夫だ。
「これも大丈夫」
「ふむ。ジーク様は噂と違って中々の教養をお持ちのようですね。それなら、お渡ししても大丈夫でしょう」
ンディバさんはそう言って別の書棚の方へと向かってしまった。今回は中々運が良かった。使われている文字が平仮名じゃなかったら一から文字を勉強しないといけないところだった。
「……前までは全く読めなかったのに」
ただ、記憶が戻る前の俺の事を知っているメルティアは不思議でしょうがなさそうだ。だけど、前世の記憶を持っているなんて言えるわけがないから黙っておくしか無い。何とか誤魔化すしかないな。
「……申し訳ございません、ジーク様。どの方も忙しいなどの理由で断られてしまって」
と、戻ってきたメルティアに言われたのだ。まあ、仕方ない事なのかもしれない。今まで教えてくれようとしてきてくれた人たちに対して、俺はサボったりイタズラしたりと色々な事をしてきた。そんな奴を教えたいという変わり者の先生はいないだろう。
けれど、いきなり躓いてしまうとは。どうしようかと考えていると、目の前で頭を下げてくるメルティア。
「申し訳ございません。私の力不足で……」
「メルティアのせいじゃないよ。これは俺が招いた結果だよ。今まで色々な事をしてきた返しが今来ているだけ。みんなも今更信用出来ないんだよ。本当にちゃんとするのか、ってね。でも、どうしようか。そんな変わった事じゃないから書庫にでも行けば調べられるだろうか?」
うーん、と1人で唸っていると、メルティアがそれなら、と声を上げる。閉じていた目を開けてメルティアを見ると
「基本的な事で宜しければ不肖ながら私がお教え出来ると思います」
と、言ってきた。なるほど。確かに基本的な事なら彼女から学ぶ事が出来る。彼女も国が管理する学園でゲームの1章の舞台にもなる『アルフォール学園』を卒業している。俺が知りたい事は全部知っているだろう。
「それなら、メルティアに教えてもらおうかな。ただ、教材が無いから書庫に向かおうよ」
「わかりました。向かいましょう」
向かおうと言ったものの、前世の記憶が戻る前の俺は本なんか全く興味が無かったため、書庫の場所なんか知らない。それどころか、メルティアに連れて行ってもらわないと、王宮の中すら迷ってしまう。
本当に情けのない話だけど、メルティアの後ろを付いていかないと道がわからない。早い所覚えないと。
しばらく王宮の中を歩いていると、目的の書庫へとたどり着いた。書庫の中へと入ると、中には書棚にぎっしりと仕舞われた本が沢山並んでいた。これは凄い。あまりの本の数と大きさに圧倒されていると
「おやぁ? これは珍しいお客様だねぇ。こことは無縁だと思っていたジーク様がいらっしゃるとは」
と、声が聞こえて来た。声の方を見るとそこには杖をついた老婆がニコニコと笑みを浮かべて立っていた。俺はその老婆が誰かわからずにどう答えようか迷っていると、メルティアが一歩出て頭を下げる。
「お久しぶりです、ンディバ様。本日、ジーク様が勉強をなさりたいとの事で、教材になりそうな本を借りに来ました。
ジーク様、この方は、この書庫の管理を陛下よりお任せされております、ンディバ様です。この書庫にあるもので知らない本は無いと言われている程この書庫の事を熟知されている方になります」
「はっは、初めまして、ジーク様。私の名前はンディバと申します。このような埃っぽい場所へようこそ」
「初めまして、ンディバさん。今日はいくつかの本を借りていこうと思う。申し訳ないが場所を教えてほしい」
前世の記憶なら本来目上の人に対しては敬語を使うべきなのだが、王族として生まれた以上、あまり謙ってはいけないとも習っている。記憶が戻る前の俺は何故かこれはしっかりと覚えて実践までしていたため、体に染み付いてしまっている。
まあ、これが当たり前だと思っているンディバさんやメルティアは、変な事言ってこないが。
「それで、本は何をお探しですかな?」
「そうだなぁ。この国の事と周辺諸国、魔法の事に……ああっ、貴族名鑑とかある?」
俺が今必要だと思う本を尋ねると、ンディバさんもメルティアも固まってしまった。一体どうしたのだろうか? 首を傾げていると
「ジーク様、言いづらいのですが、まずは簡単な本から始められた方が良いと思うのです。その、文字を覚えなければいけませんし」
「そうですなぁ。神童と呼ばれたグルディス様も未だに文字には苦労されております。この婆も簡単なものをオススメいたします」
ンディバさんはそう言って近くの本棚から薄い本を取り出して、俺に渡して来た。その本を見ていると何だか違和感を感じてしまった。見たことあるような内容な文字が書かれているからだ。ただ、その違和感も少し眺めているとわかった。
本の題名は『もじをおぼえよう』と書かれていた。それも平仮名で。ただ、普通の平仮名と違うのは、全て反対に書かれていたからだ。『うよえぼおをじも』と書かれているだけでなく、一文字一文字鏡に映したように反対に。
どうして平仮名? と、思ってしまったが、よくよく考えればここは日本のメーカーが作った乙女ゲームの世界。そう考えたら平仮名を弄った文字が出て来ても不思議に思わない。
これは運が良い。これのおかげで普通の本も読む事が出来るだろう。ただ、読むにしても少し考えなければいけないから少し時間がかかるかもしれないけど。
「ンディバさん、これくらいなら読めるから大丈夫だ」
「ほお、ならばこの本の題名はどうですな?」
試すように次に渡されたのは簡単な伝記のようなものだった。これも、同じように書かれていたためパラパラとめくって見て中身を見たけど読めた。うん、これも大丈夫だ。
「これも大丈夫」
「ふむ。ジーク様は噂と違って中々の教養をお持ちのようですね。それなら、お渡ししても大丈夫でしょう」
ンディバさんはそう言って別の書棚の方へと向かってしまった。今回は中々運が良かった。使われている文字が平仮名じゃなかったら一から文字を勉強しないといけないところだった。
「……前までは全く読めなかったのに」
ただ、記憶が戻る前の俺の事を知っているメルティアは不思議でしょうがなさそうだ。だけど、前世の記憶を持っているなんて言えるわけがないから黙っておくしか無い。何とか誤魔化すしかないな。
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