悪役令嬢を助けるために俺は乙女ゲームの世界を生き抜く!
3.予定
「……ようやくこの顔にも慣れて来たな」
俺は姿見に映る少しぽっちゃりとした金髪の少年の姿を見て、1人で呟く。やっぱり8年しか経っていないこの顔よりも、30近くまで見ていた前の顔の方が記憶に残っているため、今の顔がどうしても違和感があったのだ。
姿見に映る自分の姿を眺め、ぷにぷにに肥えた自分のお腹を触りながら、今日までの事を思い出す。俺が前世でやらされていた乙女ゲーム『マジカルサーガ』の世界に転生した事に気が付いたあの日から、今日で3日が経った。
初めは前世の記憶が残っているせいか、父上や母上たちに接する際にぎこちなかったが、少しずつ慣れていったため、今では普通に接する事が出来る。兄上とは殆ど会話がないが。
兄上の顰めっ面を思い出しながら、しばらく鏡を眺めていると、扉を叩く音が聞こえてくる。そして扉を開けて入って来たのは、水色髪をボブカットにしている侍女、メルティアだ。
伯爵家の三女で王宮の侍女として働いており、俺の専属の侍女となっている。俺が目を覚ました時に、1番初めに入って来て目が合ったのも彼女だ。
彼女は俺の姿を見るなり驚いたように目を見開き、そして、少ししてから思い出したように1人で頷く。何故彼女がそんな反応をするか。それは、俺が朝から自分で起きて既に服を着替えているからだ。
どうしてこんな事で彼女は一瞬驚いた顔をしたのか。それは、俺がわがままで全ての事を彼女にやらせていたからだ。
それはもう多岐に及ぶ。朝起こすのは当たり前で、服も1人では着替えられなかったため、全て着替えさせてもらい、挙句には歯も彼女に洗わせたりしていたのだ。
朝起こしたりするのはまだわかるし、服も王族だから百歩譲って着替えさせてもらうのはわかるのだが、歯磨きぐらいは既に自分で出来ないといけない年齢だ。前世だと小学1年生ぐらいの年齢だからな。
母上にも王族だからと甘えてはいけません、と何度も言われた記憶がある。そのような事を全て突然自分でやり始めたため、彼女は驚いたのだ。
「おはよう、メルティア」
「……おはようございます、ジーク様。今日は自分で起きる事が出来たのですね」
「うん、いつもメルティアに起こしてもらうばかりじゃだめだからね」
俺がニコニコしながらいうと、無表情に近い表情をしているメルティアを少し笑みを見せてくれる。侍女の中で俺の専属は彼女だけだ。理由は言わなくてもわかるかもしれないが、記憶が戻るまでの俺があまりにも我儘過ぎたからだ。
勉強は嫌い、運動も嫌い、野菜なんて食べたくない、甘いものを食べていたい、気に入らなければ癇癪を起こして、腹が立てば物を投げて当たる。俺が王子じゃなかったら直ぐに殴られてもおかしくないレベルで酷かった。
そのため、侍女たちは俺に近寄ろうとしない。近寄って癇癪でも起こされたら何があるかわからないからだ。中には俺が物を投げたせいで顔に傷が残った侍女もいたぐらいだ。その時は母上に物凄く怒られたのを覚えている。それでも、変わらないのだから、誰も近づきたくないだろう。
そんな中、彼女だけがどんな事をあろうと俺の侍女をしてくれている。どんな理由で彼女が俺の侍女をしてくれているのかはわからないけど、家族以外からは避けられている自分には有り難い存在である。
そんなメルティアは、ワゴンに乗せた朝食を机の上に並べていく。俺はメルティアが朝食を並べてくれる机へと向かう。
食事はいつも部屋で1人で食べている。理由は父上も母上も忙しいからだ。
国王である父上は突発的な事案や、書類仕事など様々な事をしないといけないため、皆で食事を取る時間を取れずに、母上も父上の手伝いをした後は、様々な貴族の夫人たちとお茶会などを行わないといけないため、家族みんなで食べる事は滅多に無い。
なら、兄上と食べたら良いのでは? となるが、俺と兄上は仲が悪い。理由は記憶が戻る前の俺が兄上の才能の差に妬んだからだ。
兄上と俺は双子の兄弟で周りから良く比べられてきた。勉強に運動、ファンタジー世界特有の武術に魔法。それから王族としての礼儀作法に。
そのどれもが俺と兄上では差が出来てしまい、8歳ながらも兄には勝てないと感じた俺は、努力する事を一度やめてしまったのだ。
それに対して、兄は俺の事を情けない奴と蔑んでいるのもあり、俺と兄上は仲が悪い。
そんな事もあり、俺はいつもこの部屋で1人で食事を取っているのだ。まあ、いつもメルティアが側で立って見ているのだけど。
記憶が戻る前は寂しさからメルティアに当たる事をあったけど、精神年齢がおっさんぐらいになった今は、仕方ない事だと割り切る事が出来ている。
メルティアが運んでくれた朝食を食べていると、メルティアが今日の父上たちの予定を話してくれる。父上は書類整理をしてから謁見や視察があり、母上も父上の手伝いをしてからお茶会。兄上は午前は座学を行なってから、午後運動らしい。
そして、この後いつもメルティアに今日はどうされますか? と、聞かれるのが日課となっている。
「以上が陛下たちの予定ですが、ジーク様はどうされますか?」
予想通りの言葉が来て、俺はどうしようか考える。いつもなら、このまま二度寝や散歩など、あまり大した事はしていないけど、このままだと駄目なのは目に見えている。
それにこの3日間は、頭痛のせいで熱が出て少し寝込んでしまっていたので、まだ、この世界について何も調べられていない。
記憶を遡っても、真面目に勉強しなかったツケであまり世界の事を知らないし。まずはこの世界の事を知らないといけないと思った俺は
「俺も兄上と同じように午前勉強するよ」
と、答える。その言葉に先ほどのように驚きで目を見開いたメルティアは、少ししてから「畏まりました」と、答えて側に立つ。
まずはこの世界について色々と知らないと。ゲームで知った内容と変わらないのか、それとも、変わるのか。
ヒロインたちや他の攻略対象たちの事を、そして何より、死ぬ未来が決まってしまっている悪役令嬢の事も。しっかりと学ばないとな。
俺は姿見に映る少しぽっちゃりとした金髪の少年の姿を見て、1人で呟く。やっぱり8年しか経っていないこの顔よりも、30近くまで見ていた前の顔の方が記憶に残っているため、今の顔がどうしても違和感があったのだ。
姿見に映る自分の姿を眺め、ぷにぷにに肥えた自分のお腹を触りながら、今日までの事を思い出す。俺が前世でやらされていた乙女ゲーム『マジカルサーガ』の世界に転生した事に気が付いたあの日から、今日で3日が経った。
初めは前世の記憶が残っているせいか、父上や母上たちに接する際にぎこちなかったが、少しずつ慣れていったため、今では普通に接する事が出来る。兄上とは殆ど会話がないが。
兄上の顰めっ面を思い出しながら、しばらく鏡を眺めていると、扉を叩く音が聞こえてくる。そして扉を開けて入って来たのは、水色髪をボブカットにしている侍女、メルティアだ。
伯爵家の三女で王宮の侍女として働いており、俺の専属の侍女となっている。俺が目を覚ました時に、1番初めに入って来て目が合ったのも彼女だ。
彼女は俺の姿を見るなり驚いたように目を見開き、そして、少ししてから思い出したように1人で頷く。何故彼女がそんな反応をするか。それは、俺が朝から自分で起きて既に服を着替えているからだ。
どうしてこんな事で彼女は一瞬驚いた顔をしたのか。それは、俺がわがままで全ての事を彼女にやらせていたからだ。
それはもう多岐に及ぶ。朝起こすのは当たり前で、服も1人では着替えられなかったため、全て着替えさせてもらい、挙句には歯も彼女に洗わせたりしていたのだ。
朝起こしたりするのはまだわかるし、服も王族だから百歩譲って着替えさせてもらうのはわかるのだが、歯磨きぐらいは既に自分で出来ないといけない年齢だ。前世だと小学1年生ぐらいの年齢だからな。
母上にも王族だからと甘えてはいけません、と何度も言われた記憶がある。そのような事を全て突然自分でやり始めたため、彼女は驚いたのだ。
「おはよう、メルティア」
「……おはようございます、ジーク様。今日は自分で起きる事が出来たのですね」
「うん、いつもメルティアに起こしてもらうばかりじゃだめだからね」
俺がニコニコしながらいうと、無表情に近い表情をしているメルティアを少し笑みを見せてくれる。侍女の中で俺の専属は彼女だけだ。理由は言わなくてもわかるかもしれないが、記憶が戻るまでの俺があまりにも我儘過ぎたからだ。
勉強は嫌い、運動も嫌い、野菜なんて食べたくない、甘いものを食べていたい、気に入らなければ癇癪を起こして、腹が立てば物を投げて当たる。俺が王子じゃなかったら直ぐに殴られてもおかしくないレベルで酷かった。
そのため、侍女たちは俺に近寄ろうとしない。近寄って癇癪でも起こされたら何があるかわからないからだ。中には俺が物を投げたせいで顔に傷が残った侍女もいたぐらいだ。その時は母上に物凄く怒られたのを覚えている。それでも、変わらないのだから、誰も近づきたくないだろう。
そんな中、彼女だけがどんな事をあろうと俺の侍女をしてくれている。どんな理由で彼女が俺の侍女をしてくれているのかはわからないけど、家族以外からは避けられている自分には有り難い存在である。
そんなメルティアは、ワゴンに乗せた朝食を机の上に並べていく。俺はメルティアが朝食を並べてくれる机へと向かう。
食事はいつも部屋で1人で食べている。理由は父上も母上も忙しいからだ。
国王である父上は突発的な事案や、書類仕事など様々な事をしないといけないため、皆で食事を取る時間を取れずに、母上も父上の手伝いをした後は、様々な貴族の夫人たちとお茶会などを行わないといけないため、家族みんなで食べる事は滅多に無い。
なら、兄上と食べたら良いのでは? となるが、俺と兄上は仲が悪い。理由は記憶が戻る前の俺が兄上の才能の差に妬んだからだ。
兄上と俺は双子の兄弟で周りから良く比べられてきた。勉強に運動、ファンタジー世界特有の武術に魔法。それから王族としての礼儀作法に。
そのどれもが俺と兄上では差が出来てしまい、8歳ながらも兄には勝てないと感じた俺は、努力する事を一度やめてしまったのだ。
それに対して、兄は俺の事を情けない奴と蔑んでいるのもあり、俺と兄上は仲が悪い。
そんな事もあり、俺はいつもこの部屋で1人で食事を取っているのだ。まあ、いつもメルティアが側で立って見ているのだけど。
記憶が戻る前は寂しさからメルティアに当たる事をあったけど、精神年齢がおっさんぐらいになった今は、仕方ない事だと割り切る事が出来ている。
メルティアが運んでくれた朝食を食べていると、メルティアが今日の父上たちの予定を話してくれる。父上は書類整理をしてから謁見や視察があり、母上も父上の手伝いをしてからお茶会。兄上は午前は座学を行なってから、午後運動らしい。
そして、この後いつもメルティアに今日はどうされますか? と、聞かれるのが日課となっている。
「以上が陛下たちの予定ですが、ジーク様はどうされますか?」
予想通りの言葉が来て、俺はどうしようか考える。いつもなら、このまま二度寝や散歩など、あまり大した事はしていないけど、このままだと駄目なのは目に見えている。
それにこの3日間は、頭痛のせいで熱が出て少し寝込んでしまっていたので、まだ、この世界について何も調べられていない。
記憶を遡っても、真面目に勉強しなかったツケであまり世界の事を知らないし。まずはこの世界の事を知らないといけないと思った俺は
「俺も兄上と同じように午前勉強するよ」
と、答える。その言葉に先ほどのように驚きで目を見開いたメルティアは、少ししてから「畏まりました」と、答えて側に立つ。
まずはこの世界について色々と知らないと。ゲームで知った内容と変わらないのか、それとも、変わるのか。
ヒロインたちや他の攻略対象たちの事を、そして何より、死ぬ未来が決まってしまっている悪役令嬢の事も。しっかりと学ばないとな。
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