黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
248話 緊張の1日の始まり
「レディウス様〜、エリシア様がお見えですよ〜」
トルネス王国の王都へ戦勝報告にやって来て2日後の昼前、トルネス国王より賜った王都の屋敷で、帰ってから陛下に見せる報告書などを作成していると、ロナが部屋へと入って来た。そして、ロナの言葉についに来たか、と思ってしまった。
それと同時に思い出されるのは、王都に帰って来る前に泊まった宿での、姉上と話した時の事だ。
◇◇◇
「俺に会って欲しい人……ですか?」
真剣な眼差しでそう伝えて来た姉上。俺に会って欲しい人か。別に姉上の頼みなら会うぐらいなら構わないのだが、もしかして……
「あっ、勿論お父様やお母様じゃないわよ。出来れば会って欲しいとは思うけど、お父様たちもレディウスも会いづらいだろうし」
「なら、誰なんです?」
俺の言葉に再び逡巡した姉上だが、深呼吸して俺を見る。そして
「レディウス、あなたに会って欲しいのは……私の娘よ」
と、言った。その言葉が一瞬どういう事なのかわからなかったが、次第に何を言われたのかわかった俺は驚きを隠せなかった。
「……そうか、姉上、結婚していたのか」
しかし、その驚きは次に頭に降って来た衝撃でかき消されてしまった。頭の衝撃は姉上が作った火球だった。熱をかなり抑えて何も燃やせない程の弱い火球だったが、衝撃だけはあった。
その衝撃に驚きながらも姉上を見ると、目の前には怒る姉上の姿があった。
「バカレディウス。あなたと別れてから誰とも付き合ったりしていないわよ!」
そして、怒りのまま叫ばれてようやく俺は気が付いた。姉上がどうして怒っているのか。
「……もしかして、俺の子供ですか? あのお別れの時の……」
俺が尋ねると頷く姉上。まさか姉上に子供が出来ていたとは。それを聞いた瞬間、嬉しい気持ちと同時に申し訳ない気持ちで一杯だった。そして、気がつけば頭を下げていた。
「申し訳ございません、姉上。知らなかったとはいえ失礼な事を……それに、姉上1人に無理をさせて」
「ううん。私が手紙に書かずに隠していたもの。レディウスが勘違いしても仕方ないわ。私の方こそごめんなさい。ちょっとカッとなっちゃって」
2人で謝りあっていると、どちらともなく苦笑いだが笑みを浮かべる俺たち。それから、姉上の娘……俺の娘について話を聞いていく。
今年4歳になる俺たちの娘はエミリー。姉上と同じ赤髪で、とてもヤンチャらしい。最近はクルトの戦うところを見て簡単なものだが剣も習っているらしい。
「……クルトめ」
その話を聞いた俺は、クルトに嫉妬をしていた。それを見た姉上は申し訳そうにしていたので、直ぐに収まったが。もしかしたら……というのを確認しなかった俺も悪いか。
「それで……会ってくれる?」
エミリーについて一段落してから再度尋ねてくる姉上。俺は姉上の問いに頷く。俺の娘であるエミリーに会いに行くなんて当たり前だよ。
「それじゃあ、また連絡するわ」
「ええ、待っていますよ」
◇◇◇
今日はそのために来てくれたのだろう。この屋敷の事は姉上に伝えているしな。
「それじゃあ、ロナ、行ってくるよ。留守番頼むな」
「えっ!? 私も行きますよ!?」
俺がロナに留守番を頼むと、ロナは慌ててついて来ようと準備をする。
「悪いな、ロナ。今日は姉上とちょっと込み入った用があるんだよ。申し訳ないが今日は留守番して欲しい」
しかし、今日はどうしても俺1人で行きたかった。俺でも何年も合わなかった娘に会いに行くのにかなり緊張しているのだ。ロナを気にしている余裕が無い。
「むぅ〜〜〜」
「ごめんな、ロナ。許してくれ」
謝りながらロナの頭を撫でると、ようやくロナは許してくれた。それから、ロナに姉上の場所へと案内される。姉上は客間に案内されており、1人で紅茶を飲んでいた。
「お待たせしました、姉上」
「あっ、おはようレディ……おはようございます、アルノード伯爵」
「ああっ、や、やめて下さい、姉上。ここは身内しかいないのです。そんな他人行儀な」
「ふふっ、ごめんなさいね。……でも、改めてこう見ると、本当に成長したわね。それが嬉しくてつい」
ったく。姉上は昔からいたずらをするのが好きだったよな。昔は俺もよくやられたな。
「まあ、そこまで気にし無いで下さい。この屋敷の中は身内の者しかいませんし、外では俺が貴族なんてわかりませんからね」
「もう、そんなこと言って。でも、レディウスの言葉に甘えさせていただくわ。それじゃあ行きましょう」
「ええ。それじゃあ、ロナ。頼んだよ」
「はいっ! お任せください!」
俺は屋敷の事をロナに任せて屋敷を出る。少し用事があって歩いていく事は姉上に伝えているため、馬車は用意していない。はぁ、トルネス国王に会った時より緊張してくるな。気持ち悪くなって来た……。
トルネス王国の王都へ戦勝報告にやって来て2日後の昼前、トルネス国王より賜った王都の屋敷で、帰ってから陛下に見せる報告書などを作成していると、ロナが部屋へと入って来た。そして、ロナの言葉についに来たか、と思ってしまった。
それと同時に思い出されるのは、王都に帰って来る前に泊まった宿での、姉上と話した時の事だ。
◇◇◇
「俺に会って欲しい人……ですか?」
真剣な眼差しでそう伝えて来た姉上。俺に会って欲しい人か。別に姉上の頼みなら会うぐらいなら構わないのだが、もしかして……
「あっ、勿論お父様やお母様じゃないわよ。出来れば会って欲しいとは思うけど、お父様たちもレディウスも会いづらいだろうし」
「なら、誰なんです?」
俺の言葉に再び逡巡した姉上だが、深呼吸して俺を見る。そして
「レディウス、あなたに会って欲しいのは……私の娘よ」
と、言った。その言葉が一瞬どういう事なのかわからなかったが、次第に何を言われたのかわかった俺は驚きを隠せなかった。
「……そうか、姉上、結婚していたのか」
しかし、その驚きは次に頭に降って来た衝撃でかき消されてしまった。頭の衝撃は姉上が作った火球だった。熱をかなり抑えて何も燃やせない程の弱い火球だったが、衝撃だけはあった。
その衝撃に驚きながらも姉上を見ると、目の前には怒る姉上の姿があった。
「バカレディウス。あなたと別れてから誰とも付き合ったりしていないわよ!」
そして、怒りのまま叫ばれてようやく俺は気が付いた。姉上がどうして怒っているのか。
「……もしかして、俺の子供ですか? あのお別れの時の……」
俺が尋ねると頷く姉上。まさか姉上に子供が出来ていたとは。それを聞いた瞬間、嬉しい気持ちと同時に申し訳ない気持ちで一杯だった。そして、気がつけば頭を下げていた。
「申し訳ございません、姉上。知らなかったとはいえ失礼な事を……それに、姉上1人に無理をさせて」
「ううん。私が手紙に書かずに隠していたもの。レディウスが勘違いしても仕方ないわ。私の方こそごめんなさい。ちょっとカッとなっちゃって」
2人で謝りあっていると、どちらともなく苦笑いだが笑みを浮かべる俺たち。それから、姉上の娘……俺の娘について話を聞いていく。
今年4歳になる俺たちの娘はエミリー。姉上と同じ赤髪で、とてもヤンチャらしい。最近はクルトの戦うところを見て簡単なものだが剣も習っているらしい。
「……クルトめ」
その話を聞いた俺は、クルトに嫉妬をしていた。それを見た姉上は申し訳そうにしていたので、直ぐに収まったが。もしかしたら……というのを確認しなかった俺も悪いか。
「それで……会ってくれる?」
エミリーについて一段落してから再度尋ねてくる姉上。俺は姉上の問いに頷く。俺の娘であるエミリーに会いに行くなんて当たり前だよ。
「それじゃあ、また連絡するわ」
「ええ、待っていますよ」
◇◇◇
今日はそのために来てくれたのだろう。この屋敷の事は姉上に伝えているしな。
「それじゃあ、ロナ、行ってくるよ。留守番頼むな」
「えっ!? 私も行きますよ!?」
俺がロナに留守番を頼むと、ロナは慌ててついて来ようと準備をする。
「悪いな、ロナ。今日は姉上とちょっと込み入った用があるんだよ。申し訳ないが今日は留守番して欲しい」
しかし、今日はどうしても俺1人で行きたかった。俺でも何年も合わなかった娘に会いに行くのにかなり緊張しているのだ。ロナを気にしている余裕が無い。
「むぅ〜〜〜」
「ごめんな、ロナ。許してくれ」
謝りながらロナの頭を撫でると、ようやくロナは許してくれた。それから、ロナに姉上の場所へと案内される。姉上は客間に案内されており、1人で紅茶を飲んでいた。
「お待たせしました、姉上」
「あっ、おはようレディ……おはようございます、アルノード伯爵」
「ああっ、や、やめて下さい、姉上。ここは身内しかいないのです。そんな他人行儀な」
「ふふっ、ごめんなさいね。……でも、改めてこう見ると、本当に成長したわね。それが嬉しくてつい」
ったく。姉上は昔からいたずらをするのが好きだったよな。昔は俺もよくやられたな。
「まあ、そこまで気にし無いで下さい。この屋敷の中は身内の者しかいませんし、外では俺が貴族なんてわかりませんからね」
「もう、そんなこと言って。でも、レディウスの言葉に甘えさせていただくわ。それじゃあ行きましょう」
「ええ。それじゃあ、ロナ。頼んだよ」
「はいっ! お任せください!」
俺は屋敷の事をロナに任せて屋敷を出る。少し用事があって歩いていく事は姉上に伝えているため、馬車は用意していない。はぁ、トルネス国王に会った時より緊張してくるな。気持ち悪くなって来た……。
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コメント
RAI
面白かったです
次の話楽しみです
ノベルバユーザー275542
面白かったです
更新頑張って
ノベルバユーザー287437
177話が無いです