黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
247話 トルネス王都での再会
「……全く、馬鹿息子が。王都も戦場になるかもしれんからと、同盟国のアルバスト王国へと避難させたというのに帰って来よって」
「申し訳ございません、父上。しかし、大切な国が、民たちが傷付けられるのを安全なところから1人見ている事は出来ませんでした」
「……わかっておる……折角の祝いの場でこれ以上言うのは無粋か。レグナント、お前の行動は半分は王族として民を思う気持ちは褒められるが、もう半分は王族としていざという時は血を残さなければならない事を覚えておくのだ」
「はっ、肝に命じます」
トルネス陛下の言葉を聞いてレグナント殿下が頭を下げる。その様子を見ている周りの重臣たちがホッとしたのがわかる。そして、トルネス陛下の視線が俺たちへと向けられた。
俺と同じようにこの場に来ているロナは、初めてのせいかかなり緊張している。そんな緊張しなくても、って言っても緊張してしまうのだろうけど。
……いや、よく見たら二日酔いで疲れているだけだった。緊張もあるのだろうけど、それに合わせて二日酔いのせいで気分が少し悪そうだ。まあ、周りからは、俺が初めに思った通り緊張していると見えるが。
ロナが酔い潰れて、姉上から重要なお願いをされた翌日、俺たちは、レグナント殿下たちと共にトルネス王都へと予定通り帰ってくる事が出来た。
出迎えはトルネス王国の宰相と兵士たちによって行われた。住民はもしかしたら王都が戦場になるかもしれないと、北の領地へと避難させられているため、少ない人数しかいない。そのため、少し閑散としている王都に俺たちは入った。
そして、そのまま玉座の間まで案内されて今に至る。俺たちはレグナント殿下とフローゼ様の後ろで立っている。
「そなたは、見覚えがある。4年程前の親善戦でアルバスト王国からの出場者として出た者だな? その髪色に左目の傷、覚えておるぞ」
「はっ、光栄でございます、トルネス陛下」
「父上、ご報告にあったかと思いますが、此度の死竜討伐は我が国の兵士たちと協力してくれたアルノード伯爵以下アルバスト兵の皆の協力があったから、王都に辿り着く前に討伐する事が出来ました」
「うむ、レグナントらや、他の者の報告からもそのようにあった。この度は援軍を感謝する。そなたらのおかげで我が国は想定以上に被害を抑える事が出来た。最悪はこの王都を戦場にしようと考えていたからな」
王都には王族が保管している魔道具などがあるらしく、それを使う予定だったのだとか。それから、前の戦争の時のようなパトリシアがやった魔法陣なども。
それを使えば死竜は倒せただろうが、被害が大きく、下手すれば王都を変えなければいけなくなっていたと、以前レグナント殿下が話してくれたのを思い出した。
アルバスト王国にも似たような物があるらしい。そう考えたら、王都に住むのが少し怖くなるな。まあ、今いるトルネスの王都も同じだから、考えても仕方ないのかもしれないが。
それからトルネス陛下から様々な感謝の言葉と、褒賞を貰う事になり、俺たちは玉座の間から退室した。褒賞は一旦国に持ち帰ってからどうなるか決まる事だろう。
「うぅっ、頭痛いのに緊張したせいで気持ち悪い……」
「調子に乗って飲むからだよ。これからは気を付けろよ?」
「あい……」
玉座の間を退室した後で、我慢していたロナが弱音を吐く。これほど辛い思いをすれば、無理して酒を飲もうとはしなくなるだろう。そんなロナを見て苦笑いを浮かべていると
「久し振りだな」
と、俺に声をかけてくる人物。声のした方へと顔を向けるとそこには笑みを浮かべる筋肉が立っていた。4年前の俺が参加した親善戦でトルネス王国代表として参加した男、ロンドル・ガッチャマンが。
久し振りに出会った知り合いに、俺も笑みを浮かべながら手を差し出す。それを見たロンドルも同じように笑みを浮かべて握手してくれる。
「おおっ! 久し振りじゃないか、ロンドル! どうしてここに!?」
「学園を卒業した後は、軍に入ってな。今は、王都警備隊にいるんだよ。おっと、そういえば、伯爵になられたのでしたね、アルノード卿」
「やめろよ、気持ち悪い。さっきみたいでいいよ」
俺がそう言うと、ロンドルはニカっと笑って俺の背を叩いてくる。地味に痛いぞ。
「ははっ、悪いな。しかし、タイミングが良かったぜ。他の奴らはそれぞれの事で王都にはいないからな」
「みんな、今はどこにいるんだ?」
「シャルンは自分の領地で、メイクリーンはちょっと北に行っている。あの2人は卒業後直ぐにアルバスト王国へ行きたがっていたんだが、シャルンは家の事情で、メイクリーンは別に興味が惹かれるものがあったな。それが終わってから行くつもりらしい。ビリーンズは魔法師団に入って別の領地にいて、アルフレッドは死竜との戦いで……」
「……っ! そうだったのか」
目を伏せて悲しみに堪えるロンドルを見て、俺もロナも察してしまいつい暗い雰囲気になってしまう。しかし
「嘘をつくな、ロンドル! その感じだと俺が死んだみたいになっているじゃないか!」
と、ロンドルの後ろから怒鳴る声が聞こえて来た。みんなが声の方を見ると、少し包帯を巻いているアルフレッドが歩いて来た。
「嘘は言ってないぜ? 死竜との戦いで……怪我しちまったって言おうとしただけだぜ?」
……なんだ、俺たちの早とちりか。俺もロナもロンドルに嵌められたな。
「ったく。久し振りだな、アルフレッド」
「ああ、久し振りだ。ただ、君の活躍はここに届くほどだからそこまで久し振りには感じないよ」
そう言いながら笑うアルフレッド。そこまで俺の話が来ているのか。やはり、戦争で大将を倒したのが大きいか。
「まあ、色々と積もる話があるとは思うが、今日の夜には簡単ながら祝勝会が行われる。それまで、色々とアルノード卿もやる事があるだろうから、ここはお別れと行こうぜ」
ロンドルの言葉に頷く俺たちは、それぞれ言葉を交わして歩き始める。俺たちは何日かは滞在するからな。いくらでも話す機会はあるだろう。
「行こうか、ロナ」
「……はい」
ロナも限界っぽいし、アルバスト軍に与えられた宿屋に向かうとするか。
「申し訳ございません、父上。しかし、大切な国が、民たちが傷付けられるのを安全なところから1人見ている事は出来ませんでした」
「……わかっておる……折角の祝いの場でこれ以上言うのは無粋か。レグナント、お前の行動は半分は王族として民を思う気持ちは褒められるが、もう半分は王族としていざという時は血を残さなければならない事を覚えておくのだ」
「はっ、肝に命じます」
トルネス陛下の言葉を聞いてレグナント殿下が頭を下げる。その様子を見ている周りの重臣たちがホッとしたのがわかる。そして、トルネス陛下の視線が俺たちへと向けられた。
俺と同じようにこの場に来ているロナは、初めてのせいかかなり緊張している。そんな緊張しなくても、って言っても緊張してしまうのだろうけど。
……いや、よく見たら二日酔いで疲れているだけだった。緊張もあるのだろうけど、それに合わせて二日酔いのせいで気分が少し悪そうだ。まあ、周りからは、俺が初めに思った通り緊張していると見えるが。
ロナが酔い潰れて、姉上から重要なお願いをされた翌日、俺たちは、レグナント殿下たちと共にトルネス王都へと予定通り帰ってくる事が出来た。
出迎えはトルネス王国の宰相と兵士たちによって行われた。住民はもしかしたら王都が戦場になるかもしれないと、北の領地へと避難させられているため、少ない人数しかいない。そのため、少し閑散としている王都に俺たちは入った。
そして、そのまま玉座の間まで案内されて今に至る。俺たちはレグナント殿下とフローゼ様の後ろで立っている。
「そなたは、見覚えがある。4年程前の親善戦でアルバスト王国からの出場者として出た者だな? その髪色に左目の傷、覚えておるぞ」
「はっ、光栄でございます、トルネス陛下」
「父上、ご報告にあったかと思いますが、此度の死竜討伐は我が国の兵士たちと協力してくれたアルノード伯爵以下アルバスト兵の皆の協力があったから、王都に辿り着く前に討伐する事が出来ました」
「うむ、レグナントらや、他の者の報告からもそのようにあった。この度は援軍を感謝する。そなたらのおかげで我が国は想定以上に被害を抑える事が出来た。最悪はこの王都を戦場にしようと考えていたからな」
王都には王族が保管している魔道具などがあるらしく、それを使う予定だったのだとか。それから、前の戦争の時のようなパトリシアがやった魔法陣なども。
それを使えば死竜は倒せただろうが、被害が大きく、下手すれば王都を変えなければいけなくなっていたと、以前レグナント殿下が話してくれたのを思い出した。
アルバスト王国にも似たような物があるらしい。そう考えたら、王都に住むのが少し怖くなるな。まあ、今いるトルネスの王都も同じだから、考えても仕方ないのかもしれないが。
それからトルネス陛下から様々な感謝の言葉と、褒賞を貰う事になり、俺たちは玉座の間から退室した。褒賞は一旦国に持ち帰ってからどうなるか決まる事だろう。
「うぅっ、頭痛いのに緊張したせいで気持ち悪い……」
「調子に乗って飲むからだよ。これからは気を付けろよ?」
「あい……」
玉座の間を退室した後で、我慢していたロナが弱音を吐く。これほど辛い思いをすれば、無理して酒を飲もうとはしなくなるだろう。そんなロナを見て苦笑いを浮かべていると
「久し振りだな」
と、俺に声をかけてくる人物。声のした方へと顔を向けるとそこには笑みを浮かべる筋肉が立っていた。4年前の俺が参加した親善戦でトルネス王国代表として参加した男、ロンドル・ガッチャマンが。
久し振りに出会った知り合いに、俺も笑みを浮かべながら手を差し出す。それを見たロンドルも同じように笑みを浮かべて握手してくれる。
「おおっ! 久し振りじゃないか、ロンドル! どうしてここに!?」
「学園を卒業した後は、軍に入ってな。今は、王都警備隊にいるんだよ。おっと、そういえば、伯爵になられたのでしたね、アルノード卿」
「やめろよ、気持ち悪い。さっきみたいでいいよ」
俺がそう言うと、ロンドルはニカっと笑って俺の背を叩いてくる。地味に痛いぞ。
「ははっ、悪いな。しかし、タイミングが良かったぜ。他の奴らはそれぞれの事で王都にはいないからな」
「みんな、今はどこにいるんだ?」
「シャルンは自分の領地で、メイクリーンはちょっと北に行っている。あの2人は卒業後直ぐにアルバスト王国へ行きたがっていたんだが、シャルンは家の事情で、メイクリーンは別に興味が惹かれるものがあったな。それが終わってから行くつもりらしい。ビリーンズは魔法師団に入って別の領地にいて、アルフレッドは死竜との戦いで……」
「……っ! そうだったのか」
目を伏せて悲しみに堪えるロンドルを見て、俺もロナも察してしまいつい暗い雰囲気になってしまう。しかし
「嘘をつくな、ロンドル! その感じだと俺が死んだみたいになっているじゃないか!」
と、ロンドルの後ろから怒鳴る声が聞こえて来た。みんなが声の方を見ると、少し包帯を巻いているアルフレッドが歩いて来た。
「嘘は言ってないぜ? 死竜との戦いで……怪我しちまったって言おうとしただけだぜ?」
……なんだ、俺たちの早とちりか。俺もロナもロンドルに嵌められたな。
「ったく。久し振りだな、アルフレッド」
「ああ、久し振りだ。ただ、君の活躍はここに届くほどだからそこまで久し振りには感じないよ」
そう言いながら笑うアルフレッド。そこまで俺の話が来ているのか。やはり、戦争で大将を倒したのが大きいか。
「まあ、色々と積もる話があるとは思うが、今日の夜には簡単ながら祝勝会が行われる。それまで、色々とアルノード卿もやる事があるだろうから、ここはお別れと行こうぜ」
ロンドルの言葉に頷く俺たちは、それぞれ言葉を交わして歩き始める。俺たちは何日かは滞在するからな。いくらでも話す機会はあるだろう。
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コメント
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
ヘレスティア大丈夫かな
優しい心
めっちゃ面白いです!これからも頑張ってください!