黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
225話 大事に思ってくれる家族
「……うぐっ……ご、ごめんなさい。私が……私がいたせいでレディウスが……」
「……もう泣くなよ、パトリシア。誰もお前が悪いなんて思わないよ。俺だってパトリシアが悪いなんて思っていない。悪いのは獣人を嫌ったギルドの奴らだよ。こんな可愛い獣耳や尻尾を汚らわしいなんて言う馬鹿な奴らだよ」
俺は泣き止まないパトリシアを、椅子に座っている俺の膝の上に座らせて、抱きしめて頭に生えている耳と腰から生えている尻尾にわさわさと触れる。
うん、手入れが行き届いているのか、もふもふふわふわととても肌触りが良い。少し見た目が違うだけ、たったそれだけで過剰に反応し過ぎなんだよな。
アールヴ族の話だってそうだ。ほんの少し見た目が違うだけで敵と見なす考え。どうにか出来ないものだろうか。いくら見た目が変わろうとも同じ人間なのだから。
「……とにかく、泣くなよパトリシア。綺麗な王女様の顔が台無しだぞ? ほら、やっとの思いで帰って来たんだ、笑顔で迎えてくれよ?」
「……もう、元、王女ですよ。でも、そうですね、旦那様が元気な姿で帰って来たのです。笑顔で出迎えなければですね」
俺の言葉にようやく笑顔を見せてくれるパトリシア。そんな顔を見せられたら余計にわしゃわしゃしたくなるじゃないか。
「レディウスの言う通りよ。あんな馬鹿な奴らの言葉なんて聞かなくて良いのよ。あまりに酷いようなら、私が切り刻んでやるわ」
「ふふ、手を出すのはあまり良くありませんよ、ヘレネー。でも、伯爵家として力を見せておくのは良いかもしれませんね。ある程度なら陛下も許して下さるでしょう」
おいおい、2人で何怖い話しているんだよ。その光景に俺もパトリシアも苦笑いしていると、居心地悪そうにしているアレスがおずおずと話し始める。
「で、では私は帰りますね。レディウス……様の無事も確認出来ましたし」
そう言って立ち上がるアレス。少し寂しそうな表情をするが、笑顔で塗りつぶした。何か言わなきゃ、そう思ったが、俺が言う前に
「あら、あなたを帰らせると思う?」
と、ヘレネーが素早く動いてアレスを捕まえた。アレスは驚いて離れようとするが、地の力で敵わないアレスは、ヘレネーを振りほどけない。
「アレス……だったかしら。そう焦って帰らなくてもいいじゃない。私たちともお話ししましょうよ。子供たちにも会わせてあげるわ」
「そうですね。色々と話をしましょうね」
それに合わせるようにヴィクトリアがアレスの左腕を捕まえて、ヘレネーが右腕を捕まえる。2人とも悪い笑みを浮かべていた。アレスは俺に助けを求めるように視線を向けてくるが、俺は苦笑いしかできず、あっという間にアレスは連れていかれてしまった。
俺はその後ろ姿を見送りながらも、パトリシアの獣耳と尻尾をもふもふふわふわしていると、胸元から寝息が聞こえて来た。
下を見れば、いつの間にか泣き止んでいたパトリシアが眠っていたのだ。まあ、それも仕方がないか。話を聞いた限りだと、俺の事を心配して眠る時間も少なかったと聞いたし、それに泣き疲れてしまったんだろう。
そんなに思わなくていいのに、と思う反面、それだけ俺の事を心配してくれてありがとう、と言う気持ちで、眠るパトリシアを愛しく思ってしまう。
みんな俺の事を大切に思ってくれる。ただ、それだけで俺は幸せだ。
ゆったりとしながらパトリシアの頭を撫でていると、部屋の外が騒がしい。何だろうかと思って待っていると
「レディウス様!」
と、ロナとグリムドが同時に部屋に入って来た。そういえば、俺を探しに外に出てくれていたんだよな。
「良かったです! 良かったです!!」
ロナは感極まって勢い良く抱き付こうとしたけど、パトリシアが眠っているのを見て途中で止まる。俺はパトリシアの抱き方を変えて、空いた左腕をロナに向けて広げる。ロナは申し訳なさそうにしながらも抱きついてきた。よしよし。
「ごめんな、ロナ。心配かけて」
「いいのです。私はレディウス様が無事に戻って来てくれただけで!」
頭を胸元にぐりぐりと押し付けてくるロナ。俺がゆったりと頭を撫でていると、羨ましそうに……は見ていないが、穏やかな表情で見てくるグリムド。そんなグリムドに向けて冗談で手を広げてみると……物凄く嫌そうな顔をされた。こんにゃろう。
「……グリムドにも心配かけたな」
「いえ、私は帰ってくるのを信じておりましたので、それまでのつなぎをしたまでです」
「そうかい。領地のことについてはみんなが揃ってから聞くよ。今日は休んでくれ」
「その前に1つよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、なんかあったか?」
「ええ。この領地の周りの貴族の事で……」
……帰って来て早々面倒そうな話になりそうだな。
◇◇◇
「ふぅ、やっと着いたな。確かあの野郎は行方不明になったんだよな。どっかで死んでんじゃねえのか?」
「ぷっ、そ、そんな事言いながらも心配してたくせにぃ〜」
「ふふっ、そういうところ好きですよ、レイグ様」
「う、うるせえよ! 俺はただあの野郎の葬式に来ただけだ。ほら、笑ってないで行くぞ!」
「……もう泣くなよ、パトリシア。誰もお前が悪いなんて思わないよ。俺だってパトリシアが悪いなんて思っていない。悪いのは獣人を嫌ったギルドの奴らだよ。こんな可愛い獣耳や尻尾を汚らわしいなんて言う馬鹿な奴らだよ」
俺は泣き止まないパトリシアを、椅子に座っている俺の膝の上に座らせて、抱きしめて頭に生えている耳と腰から生えている尻尾にわさわさと触れる。
うん、手入れが行き届いているのか、もふもふふわふわととても肌触りが良い。少し見た目が違うだけ、たったそれだけで過剰に反応し過ぎなんだよな。
アールヴ族の話だってそうだ。ほんの少し見た目が違うだけで敵と見なす考え。どうにか出来ないものだろうか。いくら見た目が変わろうとも同じ人間なのだから。
「……とにかく、泣くなよパトリシア。綺麗な王女様の顔が台無しだぞ? ほら、やっとの思いで帰って来たんだ、笑顔で迎えてくれよ?」
「……もう、元、王女ですよ。でも、そうですね、旦那様が元気な姿で帰って来たのです。笑顔で出迎えなければですね」
俺の言葉にようやく笑顔を見せてくれるパトリシア。そんな顔を見せられたら余計にわしゃわしゃしたくなるじゃないか。
「レディウスの言う通りよ。あんな馬鹿な奴らの言葉なんて聞かなくて良いのよ。あまりに酷いようなら、私が切り刻んでやるわ」
「ふふ、手を出すのはあまり良くありませんよ、ヘレネー。でも、伯爵家として力を見せておくのは良いかもしれませんね。ある程度なら陛下も許して下さるでしょう」
おいおい、2人で何怖い話しているんだよ。その光景に俺もパトリシアも苦笑いしていると、居心地悪そうにしているアレスがおずおずと話し始める。
「で、では私は帰りますね。レディウス……様の無事も確認出来ましたし」
そう言って立ち上がるアレス。少し寂しそうな表情をするが、笑顔で塗りつぶした。何か言わなきゃ、そう思ったが、俺が言う前に
「あら、あなたを帰らせると思う?」
と、ヘレネーが素早く動いてアレスを捕まえた。アレスは驚いて離れようとするが、地の力で敵わないアレスは、ヘレネーを振りほどけない。
「アレス……だったかしら。そう焦って帰らなくてもいいじゃない。私たちともお話ししましょうよ。子供たちにも会わせてあげるわ」
「そうですね。色々と話をしましょうね」
それに合わせるようにヴィクトリアがアレスの左腕を捕まえて、ヘレネーが右腕を捕まえる。2人とも悪い笑みを浮かべていた。アレスは俺に助けを求めるように視線を向けてくるが、俺は苦笑いしかできず、あっという間にアレスは連れていかれてしまった。
俺はその後ろ姿を見送りながらも、パトリシアの獣耳と尻尾をもふもふふわふわしていると、胸元から寝息が聞こえて来た。
下を見れば、いつの間にか泣き止んでいたパトリシアが眠っていたのだ。まあ、それも仕方がないか。話を聞いた限りだと、俺の事を心配して眠る時間も少なかったと聞いたし、それに泣き疲れてしまったんだろう。
そんなに思わなくていいのに、と思う反面、それだけ俺の事を心配してくれてありがとう、と言う気持ちで、眠るパトリシアを愛しく思ってしまう。
みんな俺の事を大切に思ってくれる。ただ、それだけで俺は幸せだ。
ゆったりとしながらパトリシアの頭を撫でていると、部屋の外が騒がしい。何だろうかと思って待っていると
「レディウス様!」
と、ロナとグリムドが同時に部屋に入って来た。そういえば、俺を探しに外に出てくれていたんだよな。
「良かったです! 良かったです!!」
ロナは感極まって勢い良く抱き付こうとしたけど、パトリシアが眠っているのを見て途中で止まる。俺はパトリシアの抱き方を変えて、空いた左腕をロナに向けて広げる。ロナは申し訳なさそうにしながらも抱きついてきた。よしよし。
「ごめんな、ロナ。心配かけて」
「いいのです。私はレディウス様が無事に戻って来てくれただけで!」
頭を胸元にぐりぐりと押し付けてくるロナ。俺がゆったりと頭を撫でていると、羨ましそうに……は見ていないが、穏やかな表情で見てくるグリムド。そんなグリムドに向けて冗談で手を広げてみると……物凄く嫌そうな顔をされた。こんにゃろう。
「……グリムドにも心配かけたな」
「いえ、私は帰ってくるのを信じておりましたので、それまでのつなぎをしたまでです」
「そうかい。領地のことについてはみんなが揃ってから聞くよ。今日は休んでくれ」
「その前に1つよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、なんかあったか?」
「ええ。この領地の周りの貴族の事で……」
……帰って来て早々面倒そうな話になりそうだな。
◇◇◇
「ふぅ、やっと着いたな。確かあの野郎は行方不明になったんだよな。どっかで死んでんじゃねえのか?」
「ぷっ、そ、そんな事言いながらも心配してたくせにぃ〜」
「ふふっ、そういうところ好きですよ、レイグ様」
「う、うるせえよ! 俺はただあの野郎の葬式に来ただけだ。ほら、笑ってないで行くぞ!」
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