黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
205話 師匠からの頼み
「おい、クソババア! 俺様が来てやったぞ!」
「うるさいね! 聞こえているよ!」
人が落ち着いてお茶を飲んでいると言うのに、一体誰だい!? 苛立ちながらも扉を開けるとそこには前の方から金髪が薄くなっていっているジジイが立っていた。
「珍しいじゃないか、私の家に来るなんて……グレイド」
「……おめえは本当に昔から変わらねえな。本当に人間か、ミストレア?」
私の顔を見るなりそんな事を言ってくる男。グレイド・ヘスラー。昔の私の仲間で、今はメルトファリア王国にいるはずだが……
「メルトファリアにいたはずのあんたがなんかようかい?」
「ああ、ちっと、頼みたい事があってよ。おい、フェラス、挨拶しろ!」
グレイドが後ろに向かって怒鳴ると、グレイドの背後から髪を一括りにした少年が現れた。ただ、普通の少年ではない。私も60年近く生きて来たけど、初めて見たねぇ……白銀の髪を持つ者を。
「初めまして。私の名前はフェラストラ・メルトファリア。メルトファリア王国の第4王子だ」
「へぇ、私はミストレア・ラグネス。そこのジジイと同じチームを組んでいたババアさ。まあ、中に入るといい。茶ぐらいは出してやるさ」
私は2人を中へと案内して、茶を出して話を聞く。簡単な話が、メルトファリア王にこの白銀の髪を持つ第4王子の訓練を任されたらしいのだけど、元々が天才肌で、同年代でも負け知らず。
年上とやらせて見た事もあるようだけど、実践にまたま出た事がないようで、負けたとしても、負けても仕方がないと思っているようで意味がない。
このままでは、負けを知らないまま戦場に出て、取り返しのつかない事をしでかすとグレイドは考えたようだ。
そこで、私を思い出したらしい。正確に言えば私の孫をだけど。
「同年代くらいメルトファリア王国にいそうだけどねぇ」
「馬鹿野郎、白銀の髪を持つ王子ってのは国中に知られてんだよ。未来では英雄になり得る王子が負けたなんて話が王国中に広まってみろ。面倒な事になる」
「それで私のところに来たのは……」
「ああ、レアの孫がこいつと同年代だったのを思い出してな。こいつの伸び切った鼻をへし折って欲しいんだよ」
「師匠、私の鼻は伸び切ってはいない! これが私の実力です!」
「おう、それが上の奴に負けても認められる精神を身につけられた上で言ってんのなら認めてやるよ。お前の孫だから剣を教えてるんだろ? こいつと戦わしてやってくれないか?」
そう言いフェラストラと呼ばれた王子の背中をバシバシと叩くグレイド。グレイドの言いたい事はわかったが
「残念だけど、孫は今はいなくてね。まあ、いたとしても今は無理だ」
「どうしてだ? もしかして剣を教えてないとかか?」
「違う。今は結婚して妊娠中なんだ。戦えるような体じゃない」
「おおっ、それはめでてえな! だけど、そうか。仕方ないが諦めるしかねえのか」
腕を組んで唸るグレイド。まだ、話は終わってないと言うのにせっかちな男だねぇ。
「だけど、当てならあるよ」
「当て?」
「ああ、私の弟子さ。年齢はヘレネーより2つ下だけど、中々なもんさ。その弟子ならグレイドの要望通りになるだろう」
「本当か!? それなら直ぐに合わせてくれ!」
「わかったからその暑苦しい顔を寄せるな! ったく。会わせるのはいいけど、1つ覚悟しておくんだね」
「覚悟?」
「負けたらその王子、立ち直れないかもしれないよ?」
◇◇◇
「クシュンッ!」
「ひゃっ! ……レディウス様、大丈夫ですか?」
「ああ、急に鼻がムズムズしてな。風邪か?」
「気を付けろよ、レディウス。この時期の妊婦や生まれたばかりの子供は病気になりやすいと言うから、お前、近づけさせてもらえなくなるぜ」
むっ、それは困るな。もうすぐで子供も生まれるというのに、近づけないのは地獄でしかない。
ヘレネーやヴィクトリアの出産予定日ももう1ヶ月を切ったところだ。ここで俺が風邪になるとかは洒落にならないな。気を付けないと。
「おーい、レディウスいるかぁ〜?」
少し体の心配をしながら領主としての仕事を行なっていると、俺を呼ぶ声が聞こえて来た。みんな聞こえたので一様に顔を見合わせる。時刻は夕方に差し迫る頃だから来客は無いはずだが。だけど今の声は……
聞き覚えのある声に俺とロナは部屋から出て行き、後ろにガウェインが訳もわからずに付いてくる。そして屋敷を出ると、そこには師匠が立っていた。
「師匠、お久しぶりです!」
「ああ、久し振りねぇ。レディウスが戦争から帰って来て以来だから2ヶ月とちょっとか。突然来て悪かったね」
「いえ、師匠なら大歓迎ですよ。それで今日はヘレネーに会いに来たのですか?」
「ん、それもあるが、レディウスにお願いしたい事があってねぇ」
「俺にお願いしたい事ですか?」
「ああ、グレイド。この子が私の弟子だ」
そう言い、師匠が転移の魔法で連れて来たのは、60代ぐらいの金髪の男性だった。この人……師匠並みの覇気を感じる。思わず剣を握ろうとしてしまったけど、何とか抑える。その姿を見て男の人はニヤニヤ笑みを浮かべるが。
「へぇ、おもしれえ奴だな。なるほど、レアが褒めるのもわかる。それに黒髪か。確かにこいつに負けたら立ち直れないかもな。おい、フェラス!」
そして男の人は何かを納得すると、後ろにいた人を呼んだ。後ろにいた人はローブをかぶっているため表情は見えないが、多分男だろう。そして
「悪いが、こいつと戦ってくれねえか?」
と、頼まれてしまったのだった。
「うるさいね! 聞こえているよ!」
人が落ち着いてお茶を飲んでいると言うのに、一体誰だい!? 苛立ちながらも扉を開けるとそこには前の方から金髪が薄くなっていっているジジイが立っていた。
「珍しいじゃないか、私の家に来るなんて……グレイド」
「……おめえは本当に昔から変わらねえな。本当に人間か、ミストレア?」
私の顔を見るなりそんな事を言ってくる男。グレイド・ヘスラー。昔の私の仲間で、今はメルトファリア王国にいるはずだが……
「メルトファリアにいたはずのあんたがなんかようかい?」
「ああ、ちっと、頼みたい事があってよ。おい、フェラス、挨拶しろ!」
グレイドが後ろに向かって怒鳴ると、グレイドの背後から髪を一括りにした少年が現れた。ただ、普通の少年ではない。私も60年近く生きて来たけど、初めて見たねぇ……白銀の髪を持つ者を。
「初めまして。私の名前はフェラストラ・メルトファリア。メルトファリア王国の第4王子だ」
「へぇ、私はミストレア・ラグネス。そこのジジイと同じチームを組んでいたババアさ。まあ、中に入るといい。茶ぐらいは出してやるさ」
私は2人を中へと案内して、茶を出して話を聞く。簡単な話が、メルトファリア王にこの白銀の髪を持つ第4王子の訓練を任されたらしいのだけど、元々が天才肌で、同年代でも負け知らず。
年上とやらせて見た事もあるようだけど、実践にまたま出た事がないようで、負けたとしても、負けても仕方がないと思っているようで意味がない。
このままでは、負けを知らないまま戦場に出て、取り返しのつかない事をしでかすとグレイドは考えたようだ。
そこで、私を思い出したらしい。正確に言えば私の孫をだけど。
「同年代くらいメルトファリア王国にいそうだけどねぇ」
「馬鹿野郎、白銀の髪を持つ王子ってのは国中に知られてんだよ。未来では英雄になり得る王子が負けたなんて話が王国中に広まってみろ。面倒な事になる」
「それで私のところに来たのは……」
「ああ、レアの孫がこいつと同年代だったのを思い出してな。こいつの伸び切った鼻をへし折って欲しいんだよ」
「師匠、私の鼻は伸び切ってはいない! これが私の実力です!」
「おう、それが上の奴に負けても認められる精神を身につけられた上で言ってんのなら認めてやるよ。お前の孫だから剣を教えてるんだろ? こいつと戦わしてやってくれないか?」
そう言いフェラストラと呼ばれた王子の背中をバシバシと叩くグレイド。グレイドの言いたい事はわかったが
「残念だけど、孫は今はいなくてね。まあ、いたとしても今は無理だ」
「どうしてだ? もしかして剣を教えてないとかか?」
「違う。今は結婚して妊娠中なんだ。戦えるような体じゃない」
「おおっ、それはめでてえな! だけど、そうか。仕方ないが諦めるしかねえのか」
腕を組んで唸るグレイド。まだ、話は終わってないと言うのにせっかちな男だねぇ。
「だけど、当てならあるよ」
「当て?」
「ああ、私の弟子さ。年齢はヘレネーより2つ下だけど、中々なもんさ。その弟子ならグレイドの要望通りになるだろう」
「本当か!? それなら直ぐに合わせてくれ!」
「わかったからその暑苦しい顔を寄せるな! ったく。会わせるのはいいけど、1つ覚悟しておくんだね」
「覚悟?」
「負けたらその王子、立ち直れないかもしれないよ?」
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「クシュンッ!」
「ひゃっ! ……レディウス様、大丈夫ですか?」
「ああ、急に鼻がムズムズしてな。風邪か?」
「気を付けろよ、レディウス。この時期の妊婦や生まれたばかりの子供は病気になりやすいと言うから、お前、近づけさせてもらえなくなるぜ」
むっ、それは困るな。もうすぐで子供も生まれるというのに、近づけないのは地獄でしかない。
ヘレネーやヴィクトリアの出産予定日ももう1ヶ月を切ったところだ。ここで俺が風邪になるとかは洒落にならないな。気を付けないと。
「おーい、レディウスいるかぁ〜?」
少し体の心配をしながら領主としての仕事を行なっていると、俺を呼ぶ声が聞こえて来た。みんな聞こえたので一様に顔を見合わせる。時刻は夕方に差し迫る頃だから来客は無いはずだが。だけど今の声は……
聞き覚えのある声に俺とロナは部屋から出て行き、後ろにガウェインが訳もわからずに付いてくる。そして屋敷を出ると、そこには師匠が立っていた。
「師匠、お久しぶりです!」
「ああ、久し振りねぇ。レディウスが戦争から帰って来て以来だから2ヶ月とちょっとか。突然来て悪かったね」
「いえ、師匠なら大歓迎ですよ。それで今日はヘレネーに会いに来たのですか?」
「ん、それもあるが、レディウスにお願いしたい事があってねぇ」
「俺にお願いしたい事ですか?」
「ああ、グレイド。この子が私の弟子だ」
そう言い、師匠が転移の魔法で連れて来たのは、60代ぐらいの金髪の男性だった。この人……師匠並みの覇気を感じる。思わず剣を握ろうとしてしまったけど、何とか抑える。その姿を見て男の人はニヤニヤ笑みを浮かべるが。
「へぇ、おもしれえ奴だな。なるほど、レアが褒めるのもわかる。それに黒髪か。確かにこいつに負けたら立ち直れないかもな。おい、フェラス!」
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