黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
201話 罰
「アルノード伯爵。あなたに面会です」
そう言われて連れて来られたのは、狭い部屋だった。俺がウィリアムの元へと行き、レイブン将軍たちに抑えられたから1日が経った。
ウィリアムを怒りのまま殴り、レイブン将軍たちに取り押さえられてから1日が経った。まだ、ウィリアムに対する怒りは収まらないが、それ以上に早く帰りたいという気持ちが膨れ上がって来た。
早くヴィクトリアに会いたい。ヴィクトリアの側にいたい。その気持ちがぐるぐるぐるぐると頭の中を回る。
そんな事を考えていたら、この部屋へと近づく気配がある。兵士が言っていた俺への面会者か。しばらく待っていると、兵士が扉を開ける。そして入って来たのは……どうしてここにいるんだよ。
「……全く。今回の事は問題だぞ、アルノード伯爵」
部屋へと入って来たのは、何故かこの王都にいたセプテンバーム公爵だった。
「……どうして王都に?」
「新たな領地の事で色々と話し合う事があるのだ。それでこれは一体どういう事だ? パトリシア王女を迎えに来たと思えば、今度はウィリアム王子を殴るとは」
困惑とした表情で俺の前に座るセプテンバーム公爵。時間的にはまだヴィクトリアの事は知らないはずだ。隠しておいても仕方がない。どうせ知られる事だ。でも、話すのが辛い。
気がつけば血が滲みそうなほど両手を握り、歯を食いしばっていた。そのまま
「……すみませんでした」
「……一体何がだ?」
「……ヴィクトリアを……守る事が出来ませんでした」
ヴィクトリアの身に起きた事を話していった。俺なんかより当然ヴィクトリアが、その父親であるセプテンバーム公爵の方が辛いに決まっている。
なのに、セプテンバーム公爵は黙って俺の話を聞いてくれた。気がつけば俺の声は叫びとなり、涙を流していた。
俺なんかよりセプテンバーム公爵の方が泣きたいはずなのに。俺なんかより……。
「すみ……ま……せん……でした。俺が守ると誓ったのに……俺が……」
「……もうよい」
「俺が幸せにすると誓ったのに! 彼女をこれ以上辛い思いさせないと誓ったのに! ……俺のせいです。やっぱり俺は呪われているんです! 黒髪の俺が近づかなければヴィクトリアはこんな目には合わなかった! 俺がいなければ!」
「レディウス!!」
俺の叫びを遮るようにセプテンバーム公爵は大きな声で俺の名前を叫び、そして、気がつくと俺は抱き締められていた。
「それは違う。お前のせいではない。お前がいなければ、ヴィクトリアは落ち込んだままだった。お前のおかげでヴィクトリアは笑顔を見せるようになったのだ。私たちはお前に感謝しているのだぞ。大切な娘を救ってくれたお前を」
「セプテンバーム……公爵」
「だから、お前は二度とそんな事を言うな。私の義息子なら堂々としろ、レディウス」
そして先ほど以上に強く抱き締めてくれるセプテンバーム公爵。我慢していたものが一気に溢れて、俺の目から涙が止まらなかっな。
ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
「セプテンバーム公爵よ。捕らえていたアルノード伯爵を連れてここにやって来た理由を教えて貰いたい」
気がつけば玉座の間に連れて来られた俺。王宮内で暴れた俺がいるため、玉座の間は武装した兵士で固められている。レイブン将軍やブルックズ騎士団長、ミストリーネ騎士団長も陛下の周りを固めている。
そして、セプテンバーム公爵が呼んだのか、ウィリアムも玉座の間にいた。王宮にあるポーションを使ったのか、傷は治っているようだ。しかし、俺と目が合うと体を震わせる。体は治っても、心は傷を負ったままのようだ。
「陛下は今回の事を王子からどのように?」
「突然アルノード伯爵が現れて襲われたと聞いてあるが?」
「なるほど。それでウィリアム王子には何も無いのですね。しかし、それは陛下の怠慢ではありませんか?」
「……突然何を言いだすのだ?」
流石にその言葉は我慢出来なかったのだろう、陛下の眉間に深くシワがよる。周りの貴族たちもざわめいている。
しかし、セプテンバーム公爵はそんな声は意に介さずにそのまま続ける。
「今までこの国のために働いて来たアルノード伯爵が理由もなく王子を殴ると思いですか?」
「むっ、それは……」
それから、俺が話した話をセプテンバーム公爵は玉座の間にいる皆に話していく。初めは俺が悪いと思っていた貴族たちもセプテンバーム公爵の話を聞き皆がウィリアムを見ていく。
「これを聞いても全てアルノード伯爵が悪いというのであれば、私は国と割れる覚悟で陛下を説得させてもらいます!」
「……いや、そこまで話を聞けば何故アルノード伯爵が王宮に戻って来たのかがわかる。ウィリアム!」
「は、はい!」
「アルノード伯爵領へと行ったのは本当か?」
「そ、それは」
「本当かと聞いておるのだ!」
陛下の覇気に頷くウィリアム。それ以上言葉を発さないウィリアムを見て、陛下は手で目を覆いながら天を仰ぐ。
「前々から、お前の行動には問題視される点がいくつもあった。それが今まで許されて来たのは、お前がこの国唯一の王子だったからだ。しかし、これ以上は見過ごせん。この国の王として、1人の親としてケジメをつける」
「ち、父上……な、何を?」
「もう、お前はわしの子では無い。ウィリアム。お前を王子の座を剥奪する! これからお前はただの平民だ。宰相よ。貴族たちに通達を。ウィリアムはただの平民。特別視するようなら処罰すると」
「ち、父上! お、お待ちください! 私は」
「黙れ! お前のとった行動によって、下手をすればこの国が割れるところだったのだぞ! ただでさえ、セプテンバーム公爵は我々のせいで我慢しているというのに。この国を思って我慢をしてくれていたセプテンバーム公爵に申し訳がたたぬわ! レイブン! 直ちにこの者を追い出せ!」
「……はっ」
「お、お待ち下さい! どうかお許しを! 父上! 父上ぇぇぇ!」
そのまま兵士に掴まれて部屋から出て行くウィリアム。急展開に俺は何も言えずに固まっていると
「アルノード伯爵。セプテンバーム公爵よ。此度の事は誠に済まなかった。そなたたちの大切な娘を傷付けてしまって……だが、アルノード伯爵には王族を殴った罰を受けてもらわなければならない」
「はい。承知の上です」
「うむ。そなたの罰は、戦争の褒賞として渡す予定だった報奨金の没収だ。そのお金でそなたが壊した王宮の中を修理する。しかし、私の元息子が傷付けたのも事実。治療費やその他必要な物はこちらが揃える。こんな事しか出来なくてすまない」
実質俺には罰が無いような判断だな。俺は、黙ってそれを受け入れたのだった。
そう言われて連れて来られたのは、狭い部屋だった。俺がウィリアムの元へと行き、レイブン将軍たちに抑えられたから1日が経った。
ウィリアムを怒りのまま殴り、レイブン将軍たちに取り押さえられてから1日が経った。まだ、ウィリアムに対する怒りは収まらないが、それ以上に早く帰りたいという気持ちが膨れ上がって来た。
早くヴィクトリアに会いたい。ヴィクトリアの側にいたい。その気持ちがぐるぐるぐるぐると頭の中を回る。
そんな事を考えていたら、この部屋へと近づく気配がある。兵士が言っていた俺への面会者か。しばらく待っていると、兵士が扉を開ける。そして入って来たのは……どうしてここにいるんだよ。
「……全く。今回の事は問題だぞ、アルノード伯爵」
部屋へと入って来たのは、何故かこの王都にいたセプテンバーム公爵だった。
「……どうして王都に?」
「新たな領地の事で色々と話し合う事があるのだ。それでこれは一体どういう事だ? パトリシア王女を迎えに来たと思えば、今度はウィリアム王子を殴るとは」
困惑とした表情で俺の前に座るセプテンバーム公爵。時間的にはまだヴィクトリアの事は知らないはずだ。隠しておいても仕方がない。どうせ知られる事だ。でも、話すのが辛い。
気がつけば血が滲みそうなほど両手を握り、歯を食いしばっていた。そのまま
「……すみませんでした」
「……一体何がだ?」
「……ヴィクトリアを……守る事が出来ませんでした」
ヴィクトリアの身に起きた事を話していった。俺なんかより当然ヴィクトリアが、その父親であるセプテンバーム公爵の方が辛いに決まっている。
なのに、セプテンバーム公爵は黙って俺の話を聞いてくれた。気がつけば俺の声は叫びとなり、涙を流していた。
俺なんかよりセプテンバーム公爵の方が泣きたいはずなのに。俺なんかより……。
「すみ……ま……せん……でした。俺が守ると誓ったのに……俺が……」
「……もうよい」
「俺が幸せにすると誓ったのに! 彼女をこれ以上辛い思いさせないと誓ったのに! ……俺のせいです。やっぱり俺は呪われているんです! 黒髪の俺が近づかなければヴィクトリアはこんな目には合わなかった! 俺がいなければ!」
「レディウス!!」
俺の叫びを遮るようにセプテンバーム公爵は大きな声で俺の名前を叫び、そして、気がつくと俺は抱き締められていた。
「それは違う。お前のせいではない。お前がいなければ、ヴィクトリアは落ち込んだままだった。お前のおかげでヴィクトリアは笑顔を見せるようになったのだ。私たちはお前に感謝しているのだぞ。大切な娘を救ってくれたお前を」
「セプテンバーム……公爵」
「だから、お前は二度とそんな事を言うな。私の義息子なら堂々としろ、レディウス」
そして先ほど以上に強く抱き締めてくれるセプテンバーム公爵。我慢していたものが一気に溢れて、俺の目から涙が止まらなかっな。
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「セプテンバーム公爵よ。捕らえていたアルノード伯爵を連れてここにやって来た理由を教えて貰いたい」
気がつけば玉座の間に連れて来られた俺。王宮内で暴れた俺がいるため、玉座の間は武装した兵士で固められている。レイブン将軍やブルックズ騎士団長、ミストリーネ騎士団長も陛下の周りを固めている。
そして、セプテンバーム公爵が呼んだのか、ウィリアムも玉座の間にいた。王宮にあるポーションを使ったのか、傷は治っているようだ。しかし、俺と目が合うと体を震わせる。体は治っても、心は傷を負ったままのようだ。
「陛下は今回の事を王子からどのように?」
「突然アルノード伯爵が現れて襲われたと聞いてあるが?」
「なるほど。それでウィリアム王子には何も無いのですね。しかし、それは陛下の怠慢ではありませんか?」
「……突然何を言いだすのだ?」
流石にその言葉は我慢出来なかったのだろう、陛下の眉間に深くシワがよる。周りの貴族たちもざわめいている。
しかし、セプテンバーム公爵はそんな声は意に介さずにそのまま続ける。
「今までこの国のために働いて来たアルノード伯爵が理由もなく王子を殴ると思いですか?」
「むっ、それは……」
それから、俺が話した話をセプテンバーム公爵は玉座の間にいる皆に話していく。初めは俺が悪いと思っていた貴族たちもセプテンバーム公爵の話を聞き皆がウィリアムを見ていく。
「これを聞いても全てアルノード伯爵が悪いというのであれば、私は国と割れる覚悟で陛下を説得させてもらいます!」
「……いや、そこまで話を聞けば何故アルノード伯爵が王宮に戻って来たのかがわかる。ウィリアム!」
「は、はい!」
「アルノード伯爵領へと行ったのは本当か?」
「そ、それは」
「本当かと聞いておるのだ!」
陛下の覇気に頷くウィリアム。それ以上言葉を発さないウィリアムを見て、陛下は手で目を覆いながら天を仰ぐ。
「前々から、お前の行動には問題視される点がいくつもあった。それが今まで許されて来たのは、お前がこの国唯一の王子だったからだ。しかし、これ以上は見過ごせん。この国の王として、1人の親としてケジメをつける」
「ち、父上……な、何を?」
「もう、お前はわしの子では無い。ウィリアム。お前を王子の座を剥奪する! これからお前はただの平民だ。宰相よ。貴族たちに通達を。ウィリアムはただの平民。特別視するようなら処罰すると」
「ち、父上! お、お待ちください! 私は」
「黙れ! お前のとった行動によって、下手をすればこの国が割れるところだったのだぞ! ただでさえ、セプテンバーム公爵は我々のせいで我慢しているというのに。この国を思って我慢をしてくれていたセプテンバーム公爵に申し訳がたたぬわ! レイブン! 直ちにこの者を追い出せ!」
「……はっ」
「お、お待ち下さい! どうかお許しを! 父上! 父上ぇぇぇ!」
そのまま兵士に掴まれて部屋から出て行くウィリアム。急展開に俺は何も言えずに固まっていると
「アルノード伯爵。セプテンバーム公爵よ。此度の事は誠に済まなかった。そなたたちの大切な娘を傷付けてしまって……だが、アルノード伯爵には王族を殴った罰を受けてもらわなければならない」
「はい。承知の上です」
「うむ。そなたの罰は、戦争の褒賞として渡す予定だった報奨金の没収だ。そのお金でそなたが壊した王宮の中を修理する。しかし、私の元息子が傷付けたのも事実。治療費やその他必要な物はこちらが揃える。こんな事しか出来なくてすまない」
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