黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
閑話 ヴィクトリアとヘレネーとデート
「レディウス、デートに行きましょう!」
「デート?」
「はい!」
ヴィクトリアとヘレネーとの結婚式が終わって1月ぐらいが経ったところ。毎日は終わりなき書類仕事に追われて、半分死んでいる様な状態な俺に、キラキラと眩しい笑顔を向けてくるヴィクトリア。
その後ろには呆れた様な、でも、ワクワクとしているヘレネーの姿もあった。
「どうしたんだ、ヴィクトリア。いつもはまだ書類仕事が終わっていません! と怒るのに」
「そ、それはその〜、あのですね、ええっと……」
俺が尋ねると、何故かしどろもどろになるヴィクトリア。いつもの堂々とした雰囲気は無く、あせあせとあっちこっちを忙しく見ている。
「……まったく。最近働きづめのレディウスを見て、どうしましょうってヴィクトリアが相談して来たのよ。自分で言った手前、休んでとも言えずにあわあわとしていたから、デートにでも誘いなさいってね」
慌てるヴィクトリアを見て、仕方ないと言った風にヘレネーがそんな事を言ってくる。俺の補佐をしてくれているロナと2人についているヘレナにマリーも苦笑いをしていた。
「も、もうっ、そ、それは言わないで下さいと言ったはずです!」
「おどおどといつまで経っても言わないからよ。クリスチャン、少しぐらいなら構わないよね?」
「そうですね。今日、明日ぐらいあけても差し支えはないでしょう」
珍しい。クリスチャンがそんな事を言うなんて。ヴィクトリア・クリスチャンコンビは仕事には物凄く厳しいのに。そんなに疲れた顔してたかな、俺?
でもまあ、許可が貰えたし。俺は立ち上がり顔を真っ赤にして手で隠すヴィクトリアの側に寄る。顔を覆う手を掴んでヴィクトリアを見る。
「……レディウス?」
 「さあ、行こうぜ。デートに!」
俺はヴィクトリアとヘレネーの手を掴んで部屋を出る。2人はきゃっ! と、驚いた声を出すがそのまま引っ張って行く。
周りの侍女や兵士達には温かい目で見られながら俺たちは屋敷を出て行く。馬車は要らないな。歩いて回ろう。さて、久し振りのデートだ。楽しみますかな!
◇◇◇
「……ど、どうするんですか、ヘレネー! わ、私1人で連れて行く筈が」
「し、仕方ないでしょう。私もレディウスにあんな力強く引っ張られたら、ドキッとしちゃったんだから……」
「で、でも、どちらかが残って指示を出さないと……」
「何を話してるんだよ、2人とも?」
私とヘレネーが内緒で話をしていると、少し先を歩いていたレディウスが振り返って尋ねてくる。だ、ダメです、レディウスにバレるわけには!
「な、なんでもないですよ、レディウス! さ、さぁ、行きましょう!」
話を誤魔化すために今度は私がレディウスの手を引きます。レディウスを挟む様に反対側でヘレネーがはぁ〜と溜息を吐いているのは少しイラっとしますが、今は放っておきます。
それに屋敷にいる皆様には既に話していますから私たちがいなくとも大丈夫でしょう。
それから私とヘレネーがレディウスを引っ張り街の中を見回ります。レディウスや私たちがこの街に来てもうすぐ2年になりますが、あの頃に比べて色々と店も増えました。
この辺り一帯はレディウスが軍を率いて盗賊や魔獣の討伐を行なっているので、他の領地に比べて治安が良いからか、商人の人たちも良く街に来るようになったのが理由ですね。
あっ、あれは王都でも人気があったクレープというやつですね。まさかこの街でも店を出していたなんて。私はレディウスの手を引っ張ってクレープのお店に行きます。
クレープのお店で3人分、それぞれ味の違うクレープを買いました。まずは自分のをパクッと。う〜ん! 甘いです! お肉大好きなヘレネーも流石に甘い物には勝てなかったのでしょう。頰が緩んでいます。
「おっ、上手いなこれ。こんな店出来てたんだなぁ〜」
「そうですね。私も知りませんでした。でも、このお店って王都の令嬢たちの間でも人気の店なんですよ。まさか、この街に店が出来るとは思っていませんでした!」
「はは、嬉しそうだなヴィクトリアは。あっ、ヴィクトリアの一口くれよ」
私が店の事を話していると、レディウスは私の手を掴んで、私が選んだクレープをパクッと。そして、今度は自分のクレープを私の前に。
「ほら、俺のも食べてみろよ」
……こここ、これは! 伝説のか、間接キスというやつでは! 既にそれ以上の事はしてはいますが、そ、それでも、女性の憧れの1つです! 私は喉を鳴らしてドキドキしながら、レディウスの食べたクレープへと顔を近づけます。はしたなく見えないようにゆっくりと口を開けて……
「いっただき〜」
パクッと目の前でヘレネーが齧ってしまいました。それもレディウスが食べていた部分を。私はゆっくりとヘレネーを見ると、ヘレネーは勝ち誇ったように私を見ていました……か、確信犯ですね! むっかー!!
私はぐぬぬと唸って、ヘレネーは勝ち誇った顔をして、そんな私たちを首を傾げて自分のクレープを食べるレディウス……あっ、レディウスの口元にクリームが……良し!
「も、もう、レディウスったら。口元にクリームが付いてますよ」
私は勇気を振り絞って、クリームが付いているレディウスの口元に顔を寄せてチュッと軽くキスをします。その時にクリームを一緒に舐めます。顔が熱くなるのがわかります。
こ、こんな街中でチュウをするのは物凄く……とんでもなく恥ずかしいですけど、ヘレネーには負けたいられません! 今度は私がドヤ顔でヘレネーを見ると、ヘレネーは少し引いた顔をしていました。
「や、やるわね、ヴィクトリア。流石の私もそこまでは無理だわ」
……周りを見ると、物凄く暖かい目で住民の皆さん。私は涙目でレディウスを見ると
「はは、ヴィクトリア、嬉しいのだけど街中ではちょっと恥ずかしいかな?」
と、頰を掻きながら言ってきます。私は真っ赤にした顔を手で隠す事しか出来ませんでした。数分前の私を怒りたい!
「デート?」
「はい!」
ヴィクトリアとヘレネーとの結婚式が終わって1月ぐらいが経ったところ。毎日は終わりなき書類仕事に追われて、半分死んでいる様な状態な俺に、キラキラと眩しい笑顔を向けてくるヴィクトリア。
その後ろには呆れた様な、でも、ワクワクとしているヘレネーの姿もあった。
「どうしたんだ、ヴィクトリア。いつもはまだ書類仕事が終わっていません! と怒るのに」
「そ、それはその〜、あのですね、ええっと……」
俺が尋ねると、何故かしどろもどろになるヴィクトリア。いつもの堂々とした雰囲気は無く、あせあせとあっちこっちを忙しく見ている。
「……まったく。最近働きづめのレディウスを見て、どうしましょうってヴィクトリアが相談して来たのよ。自分で言った手前、休んでとも言えずにあわあわとしていたから、デートにでも誘いなさいってね」
慌てるヴィクトリアを見て、仕方ないと言った風にヘレネーがそんな事を言ってくる。俺の補佐をしてくれているロナと2人についているヘレナにマリーも苦笑いをしていた。
「も、もうっ、そ、それは言わないで下さいと言ったはずです!」
「おどおどといつまで経っても言わないからよ。クリスチャン、少しぐらいなら構わないよね?」
「そうですね。今日、明日ぐらいあけても差し支えはないでしょう」
珍しい。クリスチャンがそんな事を言うなんて。ヴィクトリア・クリスチャンコンビは仕事には物凄く厳しいのに。そんなに疲れた顔してたかな、俺?
でもまあ、許可が貰えたし。俺は立ち上がり顔を真っ赤にして手で隠すヴィクトリアの側に寄る。顔を覆う手を掴んでヴィクトリアを見る。
「……レディウス?」
 「さあ、行こうぜ。デートに!」
俺はヴィクトリアとヘレネーの手を掴んで部屋を出る。2人はきゃっ! と、驚いた声を出すがそのまま引っ張って行く。
周りの侍女や兵士達には温かい目で見られながら俺たちは屋敷を出て行く。馬車は要らないな。歩いて回ろう。さて、久し振りのデートだ。楽しみますかな!
◇◇◇
「……ど、どうするんですか、ヘレネー! わ、私1人で連れて行く筈が」
「し、仕方ないでしょう。私もレディウスにあんな力強く引っ張られたら、ドキッとしちゃったんだから……」
「で、でも、どちらかが残って指示を出さないと……」
「何を話してるんだよ、2人とも?」
私とヘレネーが内緒で話をしていると、少し先を歩いていたレディウスが振り返って尋ねてくる。だ、ダメです、レディウスにバレるわけには!
「な、なんでもないですよ、レディウス! さ、さぁ、行きましょう!」
話を誤魔化すために今度は私がレディウスの手を引きます。レディウスを挟む様に反対側でヘレネーがはぁ〜と溜息を吐いているのは少しイラっとしますが、今は放っておきます。
それに屋敷にいる皆様には既に話していますから私たちがいなくとも大丈夫でしょう。
それから私とヘレネーがレディウスを引っ張り街の中を見回ります。レディウスや私たちがこの街に来てもうすぐ2年になりますが、あの頃に比べて色々と店も増えました。
この辺り一帯はレディウスが軍を率いて盗賊や魔獣の討伐を行なっているので、他の領地に比べて治安が良いからか、商人の人たちも良く街に来るようになったのが理由ですね。
あっ、あれは王都でも人気があったクレープというやつですね。まさかこの街でも店を出していたなんて。私はレディウスの手を引っ張ってクレープのお店に行きます。
クレープのお店で3人分、それぞれ味の違うクレープを買いました。まずは自分のをパクッと。う〜ん! 甘いです! お肉大好きなヘレネーも流石に甘い物には勝てなかったのでしょう。頰が緩んでいます。
「おっ、上手いなこれ。こんな店出来てたんだなぁ〜」
「そうですね。私も知りませんでした。でも、このお店って王都の令嬢たちの間でも人気の店なんですよ。まさか、この街に店が出来るとは思っていませんでした!」
「はは、嬉しそうだなヴィクトリアは。あっ、ヴィクトリアの一口くれよ」
私が店の事を話していると、レディウスは私の手を掴んで、私が選んだクレープをパクッと。そして、今度は自分のクレープを私の前に。
「ほら、俺のも食べてみろよ」
……こここ、これは! 伝説のか、間接キスというやつでは! 既にそれ以上の事はしてはいますが、そ、それでも、女性の憧れの1つです! 私は喉を鳴らしてドキドキしながら、レディウスの食べたクレープへと顔を近づけます。はしたなく見えないようにゆっくりと口を開けて……
「いっただき〜」
パクッと目の前でヘレネーが齧ってしまいました。それもレディウスが食べていた部分を。私はゆっくりとヘレネーを見ると、ヘレネーは勝ち誇ったように私を見ていました……か、確信犯ですね! むっかー!!
私はぐぬぬと唸って、ヘレネーは勝ち誇った顔をして、そんな私たちを首を傾げて自分のクレープを食べるレディウス……あっ、レディウスの口元にクリームが……良し!
「も、もう、レディウスったら。口元にクリームが付いてますよ」
私は勇気を振り絞って、クリームが付いているレディウスの口元に顔を寄せてチュッと軽くキスをします。その時にクリームを一緒に舐めます。顔が熱くなるのがわかります。
こ、こんな街中でチュウをするのは物凄く……とんでもなく恥ずかしいですけど、ヘレネーには負けたいられません! 今度は私がドヤ顔でヘレネーを見ると、ヘレネーは少し引いた顔をしていました。
「や、やるわね、ヴィクトリア。流石の私もそこまでは無理だわ」
……周りを見ると、物凄く暖かい目で住民の皆さん。私は涙目でレディウスを見ると
「はは、ヴィクトリア、嬉しいのだけど街中ではちょっと恥ずかしいかな?」
と、頰を掻きながら言ってきます。私は真っ赤にした顔を手で隠す事しか出来ませんでした。数分前の私を怒りたい!
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