黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
178話 アルバスト防衛戦(7)
ニヤニヤと笑みを浮かべながら砦を見渡すアタランタ将軍。アタランタ将軍が指をパチンと鳴らすと、空に映っていたパトリシア姫の映像が消える。くそっ、あれじゃあパトリシア姫の安否も詳しい事がわからない。
「さあ、残りの3日、存分と悩んで下さい。当然その間も我々は攻撃を止める事はありませんがね。ゼファー将軍」
「ああ。全軍、攻撃開始!」
「ちっ! 魔法障壁発動! 弓隊は魔法師を優先して放て!」
ゼファー将軍の号令により待機していた連合軍から魔法の雨が降らされる。こちらの防御としては砦に元々備え付けられている対魔法障壁を発動。
どの国もある程度は持っているもので、名前の通り魔法に対する防御壁になる。注がれた魔力の量によって強度が決まっており、この砦は何年も毎日少しずつ溜めていたため、そこそこの強度を誇る。
ただ、いくつか欠点があり、魔力が無くなれば当然障壁は破壊されるし、次に使えるようになるまで、一定量の魔力が溜まらないと発動出来ないのだ。
人数に換算すると、1万程度。しかも、人1人が1日で使ったら倒れる量になる。現在の兵士の数は1万5千ほどなので、1万人も減ったら幾ら魔法障壁が発動したとしても、砦を守れる人間がいなくなるので、そうならないように長い時間かけて溜めるのだ。
それから、これが1番問題なのだが、この対魔法障壁は、名前の通り魔法にしか効果がない。物理攻撃、矢や投石などには意味をなさないのだ。その物理攻撃が魔力を帯びていたらまた違うのだが。
砦に向かって降り注ぐ魔法は、全てこの対魔法障壁へとぶつかり消えていく。しかし、相手の人数が多いからか次から次へと魔法が放たれていく。こちらも魔法や矢で応戦するが、相手の魔法とぶつかり消されていく。
その間に連合軍は兵士をいくつかに分けて砦へと向かってくる。門を壊すか砦を乗り越えようとするために。砦の高さは10メートルほど。砦を乗り越えるために攻める軍は基本梯子を用意している。
連合軍もそれは同じだ。2つに畳まれた梯子を数人がかりで持ってくる。半分で3メートルほど。伸ばせば6メートルほどになる。しかも、こういう梯子を作るには、トレントという木の魔獣の素材が使われる事が多い。
トレントの木の素材は魔力を注げば注ぐほど強度が増していき、しなやかになるのが特徴でよく使われている事が多い。
その梯子をもった隊が何十とある。近づかせないようにこちらも応戦。こちらの今の攻撃手段は魔法か矢になる。ただ、俺は魔法は黒髪のため放てないし、矢の心得も無い。だけど
「旋風流、風切!」
俺にはこれがある。右手に愛剣のレイディアントとシュバルツを持ち、纏に魔闘装を発動。レイディアントは白く、シュバルツは黒く輝く。
連合軍は砦に近づくために攻め続け、俺たちは連合軍を近づけさせないために、同じように攻め続ける。
ただ、まだ1日目という事もあり、連合軍は思ったよりも早く引いていく。オスティーン男爵も、明日からが本格的な戦いになるだろうと。
そして、俺たちは休む事なく砦の中にある会議室に集まる。集まる理由は当然1つだけ。会議室にはそれぞれの隊長や副隊長が集まっている。
俺は副将であるため、オスティーン男爵の隣で、俺の隊からは代表としてリカルドとグレイブが出席している。
「皆、今日はご苦労だった。ただ、明日からはより激しくなる。明日からもよろしく頼むぞ。それから、ここに集まってもらった理由は、言わなくてもわかると思うが、パトリシア姫の事だ」
全員がオスティーン男爵の方を見るが、皆、一様に顔が暗い。まあ、あんな映像を見せられたら当然か。
「やはり、援軍が来るまで待つべきでは? 奴らがあのような事を言っていましたが、確証があるわけではありません」
「獣人の事を嘘だと言うのか?」
「いえ、ただ、そんな1日2日でなれるものかと思いまして。今獣人部隊となっているのは、ゲルテリウス軍の兵士と聞きます。長い時間かけて作り上げたのでは無いですかな?」
確かにそう考えられる事も出来るだろう。だけど、それは余りにも楽観的過ぎる。確かに獣人になる確証は無いか、ならないとも限らない。それに、実際に目の前で獣人になる姿を見ている俺としては、9割9分なると確信している。
「それはあり得ないな。実際に親しかったものが目の前で変わっている姿を目撃しているものもいる。奴らはあの魔石と魔法陣さえあれば出来るのだろう」
オスティーン男爵も同じ考えに至ったようだ。それに今の話って絶対に俺の話だ。獣人部隊の話を聞いた時にオスティーン男爵にも話しておいたからな。
「しかし、あの軍を抜けるような事は出来るのですか? ただでさえ数で劣っているところを、更に減らすなど……」
そこから討論が始まるがずっと平行線。何も決まらないまま、会議は終わってしまった。どうしたものか……。
◇◇◇
「しっかし、アタランタ将軍も性格悪いよな。3日間あると言ってそちらに目を向けさせておいて、戦いが始まったその日に俺たちを侵入させるんだからよ。絶対油断してるぜ、奴ら?」
「それを考えての作戦だ。それよりもペラペラと喋るな。お前の悪い癖だぞ」
「へいへい、わかってるって、隊長殿。それでやり方は?」
「事前に決めた通りだ。お前たちは下から、俺たちは壁を登る」
「りょーかい! カッカッカ、獣人の恐さ、教えてやるぜ、アルバストの兵士ども!」
「さあ、残りの3日、存分と悩んで下さい。当然その間も我々は攻撃を止める事はありませんがね。ゼファー将軍」
「ああ。全軍、攻撃開始!」
「ちっ! 魔法障壁発動! 弓隊は魔法師を優先して放て!」
ゼファー将軍の号令により待機していた連合軍から魔法の雨が降らされる。こちらの防御としては砦に元々備え付けられている対魔法障壁を発動。
どの国もある程度は持っているもので、名前の通り魔法に対する防御壁になる。注がれた魔力の量によって強度が決まっており、この砦は何年も毎日少しずつ溜めていたため、そこそこの強度を誇る。
ただ、いくつか欠点があり、魔力が無くなれば当然障壁は破壊されるし、次に使えるようになるまで、一定量の魔力が溜まらないと発動出来ないのだ。
人数に換算すると、1万程度。しかも、人1人が1日で使ったら倒れる量になる。現在の兵士の数は1万5千ほどなので、1万人も減ったら幾ら魔法障壁が発動したとしても、砦を守れる人間がいなくなるので、そうならないように長い時間かけて溜めるのだ。
それから、これが1番問題なのだが、この対魔法障壁は、名前の通り魔法にしか効果がない。物理攻撃、矢や投石などには意味をなさないのだ。その物理攻撃が魔力を帯びていたらまた違うのだが。
砦に向かって降り注ぐ魔法は、全てこの対魔法障壁へとぶつかり消えていく。しかし、相手の人数が多いからか次から次へと魔法が放たれていく。こちらも魔法や矢で応戦するが、相手の魔法とぶつかり消されていく。
その間に連合軍は兵士をいくつかに分けて砦へと向かってくる。門を壊すか砦を乗り越えようとするために。砦の高さは10メートルほど。砦を乗り越えるために攻める軍は基本梯子を用意している。
連合軍もそれは同じだ。2つに畳まれた梯子を数人がかりで持ってくる。半分で3メートルほど。伸ばせば6メートルほどになる。しかも、こういう梯子を作るには、トレントという木の魔獣の素材が使われる事が多い。
トレントの木の素材は魔力を注げば注ぐほど強度が増していき、しなやかになるのが特徴でよく使われている事が多い。
その梯子をもった隊が何十とある。近づかせないようにこちらも応戦。こちらの今の攻撃手段は魔法か矢になる。ただ、俺は魔法は黒髪のため放てないし、矢の心得も無い。だけど
「旋風流、風切!」
俺にはこれがある。右手に愛剣のレイディアントとシュバルツを持ち、纏に魔闘装を発動。レイディアントは白く、シュバルツは黒く輝く。
連合軍は砦に近づくために攻め続け、俺たちは連合軍を近づけさせないために、同じように攻め続ける。
ただ、まだ1日目という事もあり、連合軍は思ったよりも早く引いていく。オスティーン男爵も、明日からが本格的な戦いになるだろうと。
そして、俺たちは休む事なく砦の中にある会議室に集まる。集まる理由は当然1つだけ。会議室にはそれぞれの隊長や副隊長が集まっている。
俺は副将であるため、オスティーン男爵の隣で、俺の隊からは代表としてリカルドとグレイブが出席している。
「皆、今日はご苦労だった。ただ、明日からはより激しくなる。明日からもよろしく頼むぞ。それから、ここに集まってもらった理由は、言わなくてもわかると思うが、パトリシア姫の事だ」
全員がオスティーン男爵の方を見るが、皆、一様に顔が暗い。まあ、あんな映像を見せられたら当然か。
「やはり、援軍が来るまで待つべきでは? 奴らがあのような事を言っていましたが、確証があるわけではありません」
「獣人の事を嘘だと言うのか?」
「いえ、ただ、そんな1日2日でなれるものかと思いまして。今獣人部隊となっているのは、ゲルテリウス軍の兵士と聞きます。長い時間かけて作り上げたのでは無いですかな?」
確かにそう考えられる事も出来るだろう。だけど、それは余りにも楽観的過ぎる。確かに獣人になる確証は無いか、ならないとも限らない。それに、実際に目の前で獣人になる姿を見ている俺としては、9割9分なると確信している。
「それはあり得ないな。実際に親しかったものが目の前で変わっている姿を目撃しているものもいる。奴らはあの魔石と魔法陣さえあれば出来るのだろう」
オスティーン男爵も同じ考えに至ったようだ。それに今の話って絶対に俺の話だ。獣人部隊の話を聞いた時にオスティーン男爵にも話しておいたからな。
「しかし、あの軍を抜けるような事は出来るのですか? ただでさえ数で劣っているところを、更に減らすなど……」
そこから討論が始まるがずっと平行線。何も決まらないまま、会議は終わってしまった。どうしたものか……。
◇◇◇
「しっかし、アタランタ将軍も性格悪いよな。3日間あると言ってそちらに目を向けさせておいて、戦いが始まったその日に俺たちを侵入させるんだからよ。絶対油断してるぜ、奴ら?」
「それを考えての作戦だ。それよりもペラペラと喋るな。お前の悪い癖だぞ」
「へいへい、わかってるって、隊長殿。それでやり方は?」
「事前に決めた通りだ。お前たちは下から、俺たちは壁を登る」
「りょーかい! カッカッカ、獣人の恐さ、教えてやるぜ、アルバストの兵士ども!」
コメント