黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
176話 アルバスト防衛戦(6)
砦に帰って来た3日後
「これは中々の数だな」
砦の上からの景色に俺は声を上げる。一糸乱れずに行進をする軍隊。見渡す限り並べられた兵士たちは、全員が砦を睨んでいた。そしてその先頭には
「あの2人が今回の将軍だな。巨大な老将がブリタリス王国の将軍でゼファー将軍、もう1人がゲルテリウス王国の将軍でアタランタ将軍だ。どちらも猛将で、ゼファー将軍は前の戦争に参加しておれば、戦争は確実に膠着状態、いや、下手すれば負けていたと言われるほどだ」
そんな凄い人がいるのか。その将軍たちが他の兵たちの前に出て来る。なんつーでかい武器だよあれ。俺の身長ぐらいある武器をゼファー将軍とやらが持っている。
「我が名はゼファー。ブリタリス王国軍のこの度の大将を任されておる。この砦を守る将は誰だ!?」
砦の上にいる俺たちの耳にはっきりと聞こえる声で叫ぶゼファー将軍。とんでも無い大声だな。砦がビリビリと震えるほどだ。その声に兵士たちも萎縮してしまったが、そこに
「我がこの砦を任されたフレデリック・オスティーンだ! ブリタリス・ゲルテリウスの将よ! 負けて無駄に兵を散らす前にここから立ち去れ!」
と、ゼファー将軍に負けないほどの大きな声で言い返した。その言葉に合わせて兵士たちも雄叫びを上げる。
うん、とても良い士気だ。増援が来るまで時間がかかるだろうが、この人数差でも耐えられるだろう。
「ふむ。やはりそう言うか。儂も同じ立場なら同じ事を言うだろう。しかし、これを見ても同じ事が言えるか? アタランタ将軍」
「ええ。ご覧下さい」
ゼファー将軍の言葉に隣に馬を並べるアタランタ将軍がパチンと指を鳴らす。すると、突然空中に何かが映り出した。どういう原理で空に映し出されたのかわからないが、そんな事より別の事に俺たちは注目してしまった。それは
「貴様らぁ!!! パトリシア姫に何をしたぁ!!!」
パトリシア姫が映し出されていたからだ。十字架の様な物に磔にされ手足を縛られて眠らされていた。その光景を見たオスティーン男爵は将軍たちへと怒鳴り声を上げる。当然俺も怒りで暴れそうだ。
「儂もこの様な手を使いたくは無かったがな。我が国が勝つための手段だ。悪く思わないで欲しい。彼女は見ての通り我々が確保している。本来なら捕虜を利用して話し合いなどをするのだが」
「我々はパトリシア姫を返すつもりはありません。彼女の下を見て下さい」
そう言われパトリシア姫が磔にされている場所を見ると、そこには赤く輝く魔石が置かれており、パトリシア姫を囲う様に魔法陣が描かれていた。何だあれ? 何かはわからないが、良い予感は全くしない。
「もう既に知っている方もいると思いますが、我が軍には新たな戦力である獣人部隊がおります。この映像に映っている魔石はその獣人部隊に使われているのと同じです。因みに下の魔法陣も同じです。ここまで言えばわかるでしょう」
そう言い笑みを浮かべるアタランタ将軍。そして逆に顔を青ざめる俺たち。オスティーン男爵は怒りで赤を通り越して白くなっている。
「貴様ら、パトリシア姫を実験に使う気かぁ!!!」
「ふふふ、実験なんて人聞きの悪い。既に成功は決まっているのですよ。ただ、獣人になった後、思考力が少し低下するだけですよ……っ!」
ニヤニヤと笑みを浮かべるアタランタ将軍。しかし、そこに1本の矢が放たれた。アタランタ将軍は直ぐに剣を抜こうとしたが、それより早く隣にいるゼファー将軍が俺の身長ほどある武器、青龍刀で矢を弾いた。グレイブが放った強力な矢なのだが、簡単に弾かれたか。
「これは当たりが激しいですね。それに士気を削ぐはずでしたが、怒りで逆に上がっておりますね」
「当たり前だ。自国の姫が殺されるならともかく、訳のわからぬ実験に使われるのだ。誰だって怒るだろう」
「そんなもんですかね。私にはわかりかねますが。まあ、そんなあなたたちに朗報ですよ。パトリシア姫の下にある魔法陣ですが、後3日発動しません。これは確実です。理由としては色々とあるのですが、1番は魔力が足りていない事ですね。なので、残り3日、助けに行きたかった行って下さい。我々の軍から2キロほど離れたところにいますので」
……なんだ? なんでそんな事を教える。教えたところで奴らにメリットは無いはずだが。オスティーン男爵も判断しかねるって感じだな。
「なぜこんな事を話すかって顔をしておりますね。答えは簡単ですよ。助けに行きたくても行けないからです。あなたたちの砦は出入り口が軍を通れるほどとなれば3つ。たったそれだけです。我々を突破できる程の軍でなければ、パトリシア姫のところまでは行けないでしょう。
しかし、軍を進軍させるために何処か1つでも扉が開かれれば、その扉の前で待機している我らの軍がすかさず攻め込むでしょう。そうなればパトリシア姫など言っていられなくなります」
確かにこの砦の出口になる門の前には連合軍の兵士たちが警戒していた。各門の前には連合軍が8千ずつぐらい待機している。
アルバスト軍を送ろうとして砦の門を開けたら、奴らは直ぐに殺到してくるだろう。そう考えると、門を開けない方が良い。しかし、そうなると
「軍が派遣できなければ、パトリシア姫は獣人になってしまいますねぇ。ここまで来ればわかるでしょう。パトリシア姫を助けるために砦を捨てるか。それとも、援軍が来るまでの間、この砦を死守して、パトリシア姫と戦うか。さぁ、どうします?」  
ちっ! ニタニタと笑いやがって。あいつは絶対にぶっ飛ばしてやる。しかし、このままでは、あいつの言う通りだ。このままではパトリシア姫を見殺しにして、更に戦わないといけないかも知らない。くそっ、どうすれば……。
「これは中々の数だな」
砦の上からの景色に俺は声を上げる。一糸乱れずに行進をする軍隊。見渡す限り並べられた兵士たちは、全員が砦を睨んでいた。そしてその先頭には
「あの2人が今回の将軍だな。巨大な老将がブリタリス王国の将軍でゼファー将軍、もう1人がゲルテリウス王国の将軍でアタランタ将軍だ。どちらも猛将で、ゼファー将軍は前の戦争に参加しておれば、戦争は確実に膠着状態、いや、下手すれば負けていたと言われるほどだ」
そんな凄い人がいるのか。その将軍たちが他の兵たちの前に出て来る。なんつーでかい武器だよあれ。俺の身長ぐらいある武器をゼファー将軍とやらが持っている。
「我が名はゼファー。ブリタリス王国軍のこの度の大将を任されておる。この砦を守る将は誰だ!?」
砦の上にいる俺たちの耳にはっきりと聞こえる声で叫ぶゼファー将軍。とんでも無い大声だな。砦がビリビリと震えるほどだ。その声に兵士たちも萎縮してしまったが、そこに
「我がこの砦を任されたフレデリック・オスティーンだ! ブリタリス・ゲルテリウスの将よ! 負けて無駄に兵を散らす前にここから立ち去れ!」
と、ゼファー将軍に負けないほどの大きな声で言い返した。その言葉に合わせて兵士たちも雄叫びを上げる。
うん、とても良い士気だ。増援が来るまで時間がかかるだろうが、この人数差でも耐えられるだろう。
「ふむ。やはりそう言うか。儂も同じ立場なら同じ事を言うだろう。しかし、これを見ても同じ事が言えるか? アタランタ将軍」
「ええ。ご覧下さい」
ゼファー将軍の言葉に隣に馬を並べるアタランタ将軍がパチンと指を鳴らす。すると、突然空中に何かが映り出した。どういう原理で空に映し出されたのかわからないが、そんな事より別の事に俺たちは注目してしまった。それは
「貴様らぁ!!! パトリシア姫に何をしたぁ!!!」
パトリシア姫が映し出されていたからだ。十字架の様な物に磔にされ手足を縛られて眠らされていた。その光景を見たオスティーン男爵は将軍たちへと怒鳴り声を上げる。当然俺も怒りで暴れそうだ。
「儂もこの様な手を使いたくは無かったがな。我が国が勝つための手段だ。悪く思わないで欲しい。彼女は見ての通り我々が確保している。本来なら捕虜を利用して話し合いなどをするのだが」
「我々はパトリシア姫を返すつもりはありません。彼女の下を見て下さい」
そう言われパトリシア姫が磔にされている場所を見ると、そこには赤く輝く魔石が置かれており、パトリシア姫を囲う様に魔法陣が描かれていた。何だあれ? 何かはわからないが、良い予感は全くしない。
「もう既に知っている方もいると思いますが、我が軍には新たな戦力である獣人部隊がおります。この映像に映っている魔石はその獣人部隊に使われているのと同じです。因みに下の魔法陣も同じです。ここまで言えばわかるでしょう」
そう言い笑みを浮かべるアタランタ将軍。そして逆に顔を青ざめる俺たち。オスティーン男爵は怒りで赤を通り越して白くなっている。
「貴様ら、パトリシア姫を実験に使う気かぁ!!!」
「ふふふ、実験なんて人聞きの悪い。既に成功は決まっているのですよ。ただ、獣人になった後、思考力が少し低下するだけですよ……っ!」
ニヤニヤと笑みを浮かべるアタランタ将軍。しかし、そこに1本の矢が放たれた。アタランタ将軍は直ぐに剣を抜こうとしたが、それより早く隣にいるゼファー将軍が俺の身長ほどある武器、青龍刀で矢を弾いた。グレイブが放った強力な矢なのだが、簡単に弾かれたか。
「これは当たりが激しいですね。それに士気を削ぐはずでしたが、怒りで逆に上がっておりますね」
「当たり前だ。自国の姫が殺されるならともかく、訳のわからぬ実験に使われるのだ。誰だって怒るだろう」
「そんなもんですかね。私にはわかりかねますが。まあ、そんなあなたたちに朗報ですよ。パトリシア姫の下にある魔法陣ですが、後3日発動しません。これは確実です。理由としては色々とあるのですが、1番は魔力が足りていない事ですね。なので、残り3日、助けに行きたかった行って下さい。我々の軍から2キロほど離れたところにいますので」
……なんだ? なんでそんな事を教える。教えたところで奴らにメリットは無いはずだが。オスティーン男爵も判断しかねるって感じだな。
「なぜこんな事を話すかって顔をしておりますね。答えは簡単ですよ。助けに行きたくても行けないからです。あなたたちの砦は出入り口が軍を通れるほどとなれば3つ。たったそれだけです。我々を突破できる程の軍でなければ、パトリシア姫のところまでは行けないでしょう。
しかし、軍を進軍させるために何処か1つでも扉が開かれれば、その扉の前で待機している我らの軍がすかさず攻め込むでしょう。そうなればパトリシア姫など言っていられなくなります」
確かにこの砦の出口になる門の前には連合軍の兵士たちが警戒していた。各門の前には連合軍が8千ずつぐらい待機している。
アルバスト軍を送ろうとして砦の門を開けたら、奴らは直ぐに殺到してくるだろう。そう考えると、門を開けない方が良い。しかし、そうなると
「軍が派遣できなければ、パトリシア姫は獣人になってしまいますねぇ。ここまで来ればわかるでしょう。パトリシア姫を助けるために砦を捨てるか。それとも、援軍が来るまでの間、この砦を死守して、パトリシア姫と戦うか。さぁ、どうします?」  
ちっ! ニタニタと笑いやがって。あいつは絶対にぶっ飛ばしてやる。しかし、このままでは、あいつの言う通りだ。このままではパトリシア姫を見殺しにして、更に戦わないといけないかも知らない。くそっ、どうすれば……。
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コメント
リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!
レイディス。お前1人で行け。