黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

168話 誕生会

「……いつ着ても見慣れないなぁ、これ」


「そんな事ないですよ、レディウス様。素敵です」


 俺が鏡を見て唸っていると、他の侍女たちと一緒に、俺の着付けを手伝ってくれたヘレナがニコニコと笑みを浮かべながらそんな事を言ってくる。


 今日は国王陛下の誕生会が行われる。近隣貴族は全員参加で、夫人も連れていく事が許可されている。そのため、ヴィクトリアとヘレネーは別の部屋で、マリーと他の侍女たちに着付けされているところだ。


「2人はそろそろ用意出来たかな?」


「マリーさんが着付けをしていますので、もう直ぐでしょう。少し様子を見て来ますので、ここでお待ちください」


「うん、わかったよ」


 ヘレナが部屋を出て行くのと入れ替わるようにロナが入ってくる。ロナは俺の服装を見て目を輝かせる。


「うわぁ、物凄くカッコいいです、レディウス様!」


「そうか? 俺は服に着られていると思うのだけど」


「そんなことありません! とてもお似合いです!」


 自分ではそうでもないと思っても、ここまで褒められるとそんな気がしてくるな。ロナと色々話していると


「レディウス、入りますよ」


 扉の向こうからヴィクトリアの声がする。返事をするとヴィクトリアとヘレネーが部屋に入って来た。


 ヴィクトリアは、今日は大好きな翡翠色のドレスではなくて、紫色の色気のあるドレスを着ていた。なんかエロい。


 ヘレネーは濃い紺色に上半身は花柄が散りばめられており、スカート部分は広がっているドレスを着ている。


「2人ともとても綺麗だけど、いつもと違うな。全く雰囲気が違うくて驚いたよ」


「ふふ、私も慣れない色ですが、少し頑張って見ました」


「ヴィクトリアのここを押すと」


「ひゃぁん!」


 照れて顔を赤くする背後からゆっくりと近づくヘレネー。そして、ヴィクトリアの脇下から手を入れて、両手で胸を挟む。ムニュっと形を変えるヴィクトリアの大きな胸。うむ、これは良い。


「ちょっと! 何をするのですか、ヘレネー!」


「いつ見ても羨ましわね〜と思って!」


 ドレス姿で走り回るヴィクトリアとヘレネー。仲が良くて何よりだよ。そしてロナよ、ヴィクトリアと比べたら駄目だぞ。ヴィクトリアは、大きい中でも上の方だからな。


 そんな2人を連れて俺たちは準備されていた馬車へと乗る。ロナはヘレナたちと留守番だ。護衛にはグリムドがいるからな。


 俺たちの贈り物は既に王宮へと届けられている。陛下にお見せする前に、事前に危ない物が無いか確認するためだ。その確認のために一回文官が屋敷に訪ねて来たのは笑ってしまったが。箱を開けたらドラゴンの首の剥製が入っていて驚いたそうだ。


 手伝いの侍女や文官の何人かは驚き過ぎて気を失ってしまったらしい。それは悪い事をしてしまったと思っている。


 屋敷に来た文官からも、事前に連絡をしていて欲しいと怒られてしまった。まあ、最終的には剥製と特大魔石は認められたが。


 他の貴族も何人かは剥製を持って来ている人がいるらしいが、ドラゴンの首ほどでは無いとも言われたな。


 そんな事でやっかまれるのは嫌なのだが、プライドを傷つけられた貴族が何を言い出すかわからないから、用心しておこう。


 一応ヴィクトリアとヘレネーには伝えたが、ヴィクトリアは経験済みなのか余裕な表情で、ヘレネーはそんな事を言って来たら殴ってやると言い出した。


 そんな事をされたら困るので、言ってくる貴族がいないで欲しい。ヘレネーは絶対やるからな。


 そうこうしている内に王宮へと辿り着いた。馬車の数からして、早過ぎず遅過ぎずと言ったところか。上級貴族より遅過ぎたら色々と言われるし、そこら辺貴族は面倒だ。


 馬車を降りて、ヴィクトリア、ヘレネーの順番に手を差し出しエスコートする。周りにいた兵士や確認しに来た文官、貴族たちは、綺麗な2人を見て固まる。ふふっ、どうだ羨ましいだろう。2人とも俺の奥さんなんだぜ!


「……何変な顔をしているのよ、レディウス。文官さんが待っているわよ」


 おっと、そうだった。首を横に振って俺の前に立つ文官へと招待状を渡す。文官は、俺の招待状を確認すると、許可が下りる。そして、案内役の侍女がやって来て、王宮の中へと入る。


 俺たちが案内された部屋には、既に貴族たちが集まっている。時間的には男爵が俺と同じ子爵ぐらいだが。周りを見ていると


「アルノード子爵」


 俺を呼ぶ声が聞こえてくる。この方を見るとそこには、オスティーン男爵と夫人、それからアレスが立っていた。


「これは、オスティーン男爵、お久しぶりです。夫人も元気そうで何よりです」


「はっはっ、そこまでかしこまらなくても構いませんぞ、アルノード子爵よ。アルノード子爵の方が爵位は上なのですから。お久しぶりですヴィクトリア夫人、ヘレネー夫人も。見惚れてしまうほどの美しさですな」


 オスティーン男爵に褒められた2人は、クネクネとしながら満更でも無さそうだ。その間に俺は


「久し振りだな、アレス」


「そ、そうですわね、アルノード子爵」


 アレスに挨拶をしようと思ったのだが……なんか余所余所しく無いか? まあ、人目があるから気にしているのかな? でも、アレスの話し方に俺は思わず笑い出してしまった。


「な、何笑っているのさ! ……あっ」


「俺の時はそんな無理した笑い方をしなくても良いぞ、アレス。久し振りだな」


 俺がぽんぽんと頭を叩いてあげると、アレスは下を向いてしまった。そこまで口調を間違えた事が恥ずかしいのかな?


 それからオスティーン男爵と色々と情報交換をする。そろそろアレスの相手を探さないと駄目だとか、アレスの好きな相手は強い人だとか、アレスに関する事ばかりなのだが、中には俺の贈り物が噂になっているそうだ。侍女から漏れたのだろうと。


 そんな事を色々と話していたら、周りが騒つく。思ったより貴族たちは集まっていたようで、残るは高位貴族のみとなっていた。


 そして入って来たのが、リストニック侯爵にリストニック兄弟だ。ランバルクは俺を見つけると忌々しそうに睨んでくる。何だよ。まだ対抗戦の事根に持ってるのかよ。


 その後には南の侯爵家ハスフォート家が入って来た。それからセプテンバーム公爵もだ。夫人と義兄であるゲイルさんもいる。


 ある程度揃うと、ぞろぞろと兵士も入って来た。そろそろ始まるかな?

「黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く