黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

162話 VSロックドラゴン(1)

「ここが、目的の洞窟だ」


 レイグに案内されて、俺たちは目的の洞窟へと辿り着いた。確かにここが目的の洞窟なのだろうな。


 洞窟の前に置かれている動物や魔獣の骨。洞窟の中から感じる雰囲気は、明らか俺たちを警戒している。そして、放たれる殺気。俺たちを威嚇するように。


「気付いてやがるな」


 レイグも洞窟から放たれる殺気に気が付いたようだ。他にもグリムドやロナも。


 そしてそいつは現れた。体長は10メートル程だろうか。ゴツゴツとした鱗、太陽に辺り、茶色く輝かせている。


 片足だけで、俺たち人間なんて簡単に踏み潰せるほどの大きさの足。後ろ足に比べて大きく発達しているのが特徴だ。その足の先には剣よりも鋭い爪が輝いている。


 ドシンッ、ドシンッ、と尻尾を地面に叩いては、砂埃が起こる。そして、獲物の俺たちを見て


「グゥガァァァァ!」


 と、雄叫びをあげる。ビリビリと震える空気。ははっ、なんつぅ圧だよ。これがドラゴンか。とんでもないな。


 そしてロックドラゴンは前足に力を入れて跳躍。こいつ、飛べないけど跳んできやがった!


「全員、散開!」


 グリムドの号令で、散らばる兵士たち。レイグたちも下がる。俺とロナもその場から離れる。そこに落ちて来るロックドラゴン。俺たちが元いた場所に落ちると、ズシン! と大きな音を立てて、地面が揺れる。そこに


「撃て!」


 再び号令を出すグリムド。それと同時に、兵士たちから放たれる魔法。大小属性様々な魔法が、ロックドラゴンへと当たるが、ドラゴンの鱗は硬い。


 更にこいつはロックドラゴン。ドラゴンの中でも高い防御力を誇っているこいつは、魔法が当たっても、煩わしそうに、体を揺らすだけ。


 そして、魔法を放った兵士たちを睨む。そして兵士たちへと向かって来た。兵士たちは障壁を張ろうとするが、間に合わないだろう。


 俺は腰にあるシュバルツとレイディアントを抜き、旋風流、風切を放つ。当然、ロックドラゴンの鱗では弾かれてしまうが、顔に当たるのを無視出来ない。


 兵士たちへと向かって走っていたロックドラゴンは、足を利用して、滑るように方向転換。俺の方へと向かって来る。


 俺は纏・真を発動。一気にロックドラゴンへと駆け出す。放つは烈炎流。2剣に魔力を流して、それぞれの属性を発動。


「烈炎流、大花火!」


 迫り来るロックドラゴンへと、俺は下から2剣を振り上げる。2剣がロックドラゴンの顎に当たるが、まるで鉄を叩いた時のような硬さ。手に走る衝撃で、力を緩めそうになるが、魔闘脚全開で踏ん張る。


「お、らぁっ!」


 下から、振り上げた2剣で、ロックドラゴンの進行方向を逸らす。更に通り過ぎる時に、脇腹を切る。他の部分に比べて、やはり脇腹は少し柔らかい。深くはないが傷が付いた。


 ロックドラゴンは、痛むようだが動きを止めない。そのまま振り返り、俺に向かって腕を振り下ろす。あんな腕を受け止める事は出来ない。ロックドラゴンの腕をバックで避けるが、連続で足を振り下ろして来る。


 何度目になるかわからないが、再び俺に前足を振り下ろそうとするロックドラゴンに向かって


「サンドロック!」


 グリムドが地面に手をつきながら、魔法を発動する。その瞬間、ロックドラゴンの足元が砂へと変わり、ロックドラゴンの足を沈めていく。


 そして、足がガッチリと沈んだのを確認すると、グリムドは砂を固め始めた。凄い魔法だな。だけど、ロックドラゴンを止めるには強度が足りなかった。


 ロックドラゴンは地中の中を移動する事が出来ると聞いていた。それが本当であるのなら、土を掘る事など容易いのだろう。


 足を埋められたロックドラゴンは、腕に魔力を纏わせているのがわかる。そして、力づくで地面から腕を引き抜いた。


 だけど、その一瞬が隙にもなった。俺は2剣共鞘に戻して、シュバルツに手をかける。鞘に入れた状態だが、鞘の中から噴き出る黒い魔力。


「烈炎流亜流奥義、黒天白炎双!」


 まず右手に持つシュバルツを鞘から引き抜く。居合抜きにより引き抜かれたシュバルツの斬撃は、ロックドラゴンの顔の左側を切り裂いた。


 余りの激痛だったのだろう。痛みに雄叫びを上げるロックドラゴン。だけど、これで終わりでは無い。


 俺は空いている左手で、まだ鞘に刺さっているレイディアントの柄を逆手持ちに掴む。そして、そのまま先ほどのシュバルツと同じ様に引き抜く。


 レイディアントの先から放たれる斬撃は、天に向かって雄叫びを上げるロックドラゴンの下顎へと向かった。


 斬撃はロックドラゴンの下顎を切り裂き、切り傷からは、止めどなく血が溢れて来る。そして、ロックドラゴンはそのまま地面へと倒れた。


 もう動かないと思った兵士たちは、歓声をあげるが、こいつからは、まだ魔力が感じられる……って事はまだ生きてやがる。


 俺のその予想は当たっていた様で、ロックドラゴンは直ぐに起き上がる。そして、自分の体に魔力を流し始めた。


 何が起こるかわからないため、俺は直ぐにロックドラゴンの側から離れる。それと同時に、ロックドラゴンの周りの地面から土が、ロックドラゴンへと纏わり付いていく。まるで鎧を着ているかの様に。


 先程まで、切りやすかった脇腹や喉元なども厚く防がれてしまった。そして、準備が整ったロックドラゴンは、俺に憎悪の目を向けて来る。ここからが本番って訳か。どう攻撃しようか。

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