黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
139話 自分の気持ち
「……ヴィクトリアと結婚か」
俺はベッドに寝転びながら1人で呟く。この部屋にミネルバとヘレナはいない。セプテンバーム公爵が部屋を用意してくれたのだ。ミネルバたちは一緒でも良いと言ったのだが、公爵が無理矢理別の部屋にしたのだ。
多分、俺が考えるのをわかったからだろう。そのため1人で考えられるようにするために、わざわざ部屋を分けてくれたのだと思う。
俺は寝転びながらも色々と考える。さっきセプテンバーム公爵に言われた時は、俺が驚いている間に、俺以上に驚いたヴィクトリアが顔を真っ赤にして、気を失ってしまったから、一旦保留になってしまった。
だけど、今日中には答えを出さないといけない。明日は1日滞在して、明後日には公爵領を出ると言っていた。明日は、ダンゲンさんのところへ行くだろうし。
俺とヴィクトリアとの結婚。正直に言うと確かにヴィクトリアに惹かれている部分はある。ヴィクトリアとの縁を切りたくないから、先生をお願いしたりもした。
一緒になれるのならなりたいが、そこに出てくるのがセプテンバーム公爵家という爵位の高さだ。ヴィクトリアを降家させるにはせめて伯爵ぐらいないと駄目だろう。
だけど、俺は男爵。しかも新興したばかりの成り上がりの貴族。そんな奴とセプテンバーム公爵家の令嬢が結婚すれば、周りの貴族たちは黙っていないだろう。
周りの貴族たちを黙らす方法があれば良いのだけど。そんな事を考えていたら、扉がノックされる。俺は体を起こして扉を開けると
「……お、おじゃましても良いですか?」
顔を赤く染めて上目遣いで俺を見てくるヴィクトリアが立っていた。どうやら目を覚めたようだ。当然断る理由も無いので、ヴィクトリアを部屋の中へ入れる。
ヴィクトリアはそわそわとしながら、席に着く。俺も向かいに座る。
……気まずい。俺もヴィクトリアも公爵に言われた事のお陰で、お互いを物凄く気にしてしまっているのだ。
「そ、その、レディウス、お、お父様が言っていた話なのですが……」
「ああ」
「き、気にしないでくださいね。あれはお父様が勝手に言っていた事ですから」
ヴィクトリアは微笑みながらそんな事を言うが、それが本心で無いことぐらい俺でもわかる。手は白くなるほど握られて、口元は震えている。はぁ、何を悩んでいたんだ、俺は。両想いなら迷う事は無いだろうに。
「わ、私の事は気にしないでください。私の家と縁を結びたいという家は多いんですよ? だ、だから、私の……きゃあっ!」
ヴィクトリアが俺と目を合わせないまま、喋り続けるのを、俺は抱き締めて黙らす。ヴィクトリアはビックとするが、そのまま俺を抱き締めてくる。
「ヴィクトリア、俺と結婚しよう」
「っ! そ、それはどうしてですか? お父様が言ったから?」
「違う。俺自身がヴィクトリアに惹かれたからだ。気が付いたらヴィクトリアの事が好きだった。俺はヴィクトリアと離れたくなくて、先生とかお願いしたりした。俺はヴィクトリアとずっと一緒にいたいんだ」
俺が正直に言うと、ヴィクトリアは先ほど以上にぎゅっと抱き締めてくる。
「……それは本当ですか?」
「ああ、本当だ」
「私はレディウスと一緒になっても良いんですか?」
「ヴィクトリアが俺と一緒になってくれるなら」
「私、嫉妬深いですよ?」
「ヘレネーさんたちとは仲良くしてほしいな」
「……善処します」
それだけ言うと、ヴィクトリアは俺から離れて行く。目の前には涙を流しながらも、微笑むヴィクトリアの顔があった。ああ、とても綺麗だ。
俺はヴィクトリアの頰に手を当てる。サラサラと金髪の綺麗な髪が流れるのを、俺は手でヴィクトリアの耳にかけてあげる。
ヴィクトリアは擽ったさで身をよじるが、俺の顔を見ると、目を瞑る。自然と俺とヴィクトリアとの顔の距離が近づいて行き、影はそのまま重なるのだった。
◇◇◇
「それで、お主はヴィクトリアと結婚する事に決めたのか?」
「はい、その通りです」
今俺の目の前には鬼の形相で睨んでくるセプテンバーム公爵と、苦笑いをする陛下がいる。陛下も気になるのだろう。
本当なら自分の息子と結婚するはずだった女性が別の男性と結婚するのは。ましてや、自分の息子が婚約破棄した相手だ。表に出さなくても、悔やんでいるのは当然だろう。
「ヴィクトリアは?」
「私も、レディウスと共に人生を歩んで行きたいです」
俺の隣で堂々と宣言するヴィクトリア。セプテンバーム公爵は自分から言いだした事なのに、俺を視線だけで殺せるんじゃ無いかと思えるほどの目を向けてき、陛下は「ウィリアムに言って欲しかった」と呟いている。
「わかった。もう何も言わん。どこぞのわからん馬の骨ごときに俺の大切なヴィクトリアをやるぐらいなら、お前と結婚させる方が100万倍マシか」
前に同じような事をセプテンバーム公爵が言っていたな。もしかして覚えていたのだろうか。
「カイラは今は王都にゲイルと共にいる。王都に戻ったらお前たち2人で挨拶をしに行くんだ。わかったな」
「「はい」」
「はぁ、後問題なのは……」
「爵位だな」
セプテンバーム公爵の言葉に被せるように陛下が言う。しかし、爵位だけはどうしようも出来ない。そう思っていたら
「ただ、アルノード男爵を子爵にする事は出来るぞ」
「……どう言う事です、陛下?」
突然の言葉に驚くセプテンバーム公爵。そこから陛下はトルネス王国で起きた事を説明する。オークキングを討伐した事。親善戦で暴れたアルフレッドを止めた事。結果親善戦で勝った事。王宮に侵入した暗殺者を倒した事。王都で暴れたミネルバを捕まえた事。
それを聞いていたセプテンバーム公爵の表情が、驚きから次第に呆れ顔になるまでにはそう時間がかからなかった。
「お前って問題に巻き込まれやすいのか?」
うっ、それは言わないでほしい。一回その事でヴィクトリアに恥ずかしいところを見せてしまったし。問題に関してももう諦めている。だから何かが起きてもみんなを守れるように努力しているのだ。
「トルネス側では、アルノード男爵が奴隷を助けるために求めたため、向こうでの褒賞はそれで無くなったが、アルバストでも何か渡そうと思っていたのだ」
「しかし、私はアルバストでは何も貢献していませんが?」
「それは大丈夫だ。いくら他国での出来事だと言っても、お主はこの国の貴族。貴族が手柄を立てたのなら、それを王が褒賞として支払わなければ、貴族は付いて来ぬしな」
そう言い笑う陛下。王都に戻ったら、全員の前で宣言し、子爵を上げさせるらしい。それから、色々と話をして今日は解散となった。俺はヴィクトリアの部屋の前までヴィクトリアを送って行き、そこでヴィクトリアとわかれる。
俺は自分の部屋に戻って再びベットに寝転んだ。今後の事を考えなければならないからだ。1番の問題は、ヘレネーさんたちになんて言うかだ。骨……腕の一本は覚悟をしておこう。
この国は一夫多妻が認められているため、大丈夫だとは思うが、それでも今回の件は、ヘレネーさんに言わずに勝手にやった事だ。全て俺が悪い。だから、何をされても甘んじて受けるつもりだ。
……殺される事は……無いよな? 無いですよね?
◇◇◇
「くしゅん!」
「風邪ですか、ヘレネーさん?」
「うーん、さっきまでそんな感じではなかったんだけどね。誰か私の噂でもしているのかしら?」
「あー、多分それ冒険者たちですよ。昨日、ヘレネーさんがギルドに現れたって大騒ぎだったんですから」
「はぁ〜、本当にここの冒険者って諦めが悪いわよね。レディウスっていう彼氏がいるって言っているのに、付きまとってくるのだから」
「ふふ、それも、もう直ぐ終わりですよ。少しトルネス王国で問題が起きたため、帰ってくるのが置かれたようですが、今日王都に先触れが来たらしく、既にセプテンバーム公爵領まで帰って来ているそうですから」
「そうなの? はぁ〜、早く会いたいな、レディウス」
俺はベッドに寝転びながら1人で呟く。この部屋にミネルバとヘレナはいない。セプテンバーム公爵が部屋を用意してくれたのだ。ミネルバたちは一緒でも良いと言ったのだが、公爵が無理矢理別の部屋にしたのだ。
多分、俺が考えるのをわかったからだろう。そのため1人で考えられるようにするために、わざわざ部屋を分けてくれたのだと思う。
俺は寝転びながらも色々と考える。さっきセプテンバーム公爵に言われた時は、俺が驚いている間に、俺以上に驚いたヴィクトリアが顔を真っ赤にして、気を失ってしまったから、一旦保留になってしまった。
だけど、今日中には答えを出さないといけない。明日は1日滞在して、明後日には公爵領を出ると言っていた。明日は、ダンゲンさんのところへ行くだろうし。
俺とヴィクトリアとの結婚。正直に言うと確かにヴィクトリアに惹かれている部分はある。ヴィクトリアとの縁を切りたくないから、先生をお願いしたりもした。
一緒になれるのならなりたいが、そこに出てくるのがセプテンバーム公爵家という爵位の高さだ。ヴィクトリアを降家させるにはせめて伯爵ぐらいないと駄目だろう。
だけど、俺は男爵。しかも新興したばかりの成り上がりの貴族。そんな奴とセプテンバーム公爵家の令嬢が結婚すれば、周りの貴族たちは黙っていないだろう。
周りの貴族たちを黙らす方法があれば良いのだけど。そんな事を考えていたら、扉がノックされる。俺は体を起こして扉を開けると
「……お、おじゃましても良いですか?」
顔を赤く染めて上目遣いで俺を見てくるヴィクトリアが立っていた。どうやら目を覚めたようだ。当然断る理由も無いので、ヴィクトリアを部屋の中へ入れる。
ヴィクトリアはそわそわとしながら、席に着く。俺も向かいに座る。
……気まずい。俺もヴィクトリアも公爵に言われた事のお陰で、お互いを物凄く気にしてしまっているのだ。
「そ、その、レディウス、お、お父様が言っていた話なのですが……」
「ああ」
「き、気にしないでくださいね。あれはお父様が勝手に言っていた事ですから」
ヴィクトリアは微笑みながらそんな事を言うが、それが本心で無いことぐらい俺でもわかる。手は白くなるほど握られて、口元は震えている。はぁ、何を悩んでいたんだ、俺は。両想いなら迷う事は無いだろうに。
「わ、私の事は気にしないでください。私の家と縁を結びたいという家は多いんですよ? だ、だから、私の……きゃあっ!」
ヴィクトリアが俺と目を合わせないまま、喋り続けるのを、俺は抱き締めて黙らす。ヴィクトリアはビックとするが、そのまま俺を抱き締めてくる。
「ヴィクトリア、俺と結婚しよう」
「っ! そ、それはどうしてですか? お父様が言ったから?」
「違う。俺自身がヴィクトリアに惹かれたからだ。気が付いたらヴィクトリアの事が好きだった。俺はヴィクトリアと離れたくなくて、先生とかお願いしたりした。俺はヴィクトリアとずっと一緒にいたいんだ」
俺が正直に言うと、ヴィクトリアは先ほど以上にぎゅっと抱き締めてくる。
「……それは本当ですか?」
「ああ、本当だ」
「私はレディウスと一緒になっても良いんですか?」
「ヴィクトリアが俺と一緒になってくれるなら」
「私、嫉妬深いですよ?」
「ヘレネーさんたちとは仲良くしてほしいな」
「……善処します」
それだけ言うと、ヴィクトリアは俺から離れて行く。目の前には涙を流しながらも、微笑むヴィクトリアの顔があった。ああ、とても綺麗だ。
俺はヴィクトリアの頰に手を当てる。サラサラと金髪の綺麗な髪が流れるのを、俺は手でヴィクトリアの耳にかけてあげる。
ヴィクトリアは擽ったさで身をよじるが、俺の顔を見ると、目を瞑る。自然と俺とヴィクトリアとの顔の距離が近づいて行き、影はそのまま重なるのだった。
◇◇◇
「それで、お主はヴィクトリアと結婚する事に決めたのか?」
「はい、その通りです」
今俺の目の前には鬼の形相で睨んでくるセプテンバーム公爵と、苦笑いをする陛下がいる。陛下も気になるのだろう。
本当なら自分の息子と結婚するはずだった女性が別の男性と結婚するのは。ましてや、自分の息子が婚約破棄した相手だ。表に出さなくても、悔やんでいるのは当然だろう。
「ヴィクトリアは?」
「私も、レディウスと共に人生を歩んで行きたいです」
俺の隣で堂々と宣言するヴィクトリア。セプテンバーム公爵は自分から言いだした事なのに、俺を視線だけで殺せるんじゃ無いかと思えるほどの目を向けてき、陛下は「ウィリアムに言って欲しかった」と呟いている。
「わかった。もう何も言わん。どこぞのわからん馬の骨ごときに俺の大切なヴィクトリアをやるぐらいなら、お前と結婚させる方が100万倍マシか」
前に同じような事をセプテンバーム公爵が言っていたな。もしかして覚えていたのだろうか。
「カイラは今は王都にゲイルと共にいる。王都に戻ったらお前たち2人で挨拶をしに行くんだ。わかったな」
「「はい」」
「はぁ、後問題なのは……」
「爵位だな」
セプテンバーム公爵の言葉に被せるように陛下が言う。しかし、爵位だけはどうしようも出来ない。そう思っていたら
「ただ、アルノード男爵を子爵にする事は出来るぞ」
「……どう言う事です、陛下?」
突然の言葉に驚くセプテンバーム公爵。そこから陛下はトルネス王国で起きた事を説明する。オークキングを討伐した事。親善戦で暴れたアルフレッドを止めた事。結果親善戦で勝った事。王宮に侵入した暗殺者を倒した事。王都で暴れたミネルバを捕まえた事。
それを聞いていたセプテンバーム公爵の表情が、驚きから次第に呆れ顔になるまでにはそう時間がかからなかった。
「お前って問題に巻き込まれやすいのか?」
うっ、それは言わないでほしい。一回その事でヴィクトリアに恥ずかしいところを見せてしまったし。問題に関してももう諦めている。だから何かが起きてもみんなを守れるように努力しているのだ。
「トルネス側では、アルノード男爵が奴隷を助けるために求めたため、向こうでの褒賞はそれで無くなったが、アルバストでも何か渡そうと思っていたのだ」
「しかし、私はアルバストでは何も貢献していませんが?」
「それは大丈夫だ。いくら他国での出来事だと言っても、お主はこの国の貴族。貴族が手柄を立てたのなら、それを王が褒賞として支払わなければ、貴族は付いて来ぬしな」
そう言い笑う陛下。王都に戻ったら、全員の前で宣言し、子爵を上げさせるらしい。それから、色々と話をして今日は解散となった。俺はヴィクトリアの部屋の前までヴィクトリアを送って行き、そこでヴィクトリアとわかれる。
俺は自分の部屋に戻って再びベットに寝転んだ。今後の事を考えなければならないからだ。1番の問題は、ヘレネーさんたちになんて言うかだ。骨……腕の一本は覚悟をしておこう。
この国は一夫多妻が認められているため、大丈夫だとは思うが、それでも今回の件は、ヘレネーさんに言わずに勝手にやった事だ。全て俺が悪い。だから、何をされても甘んじて受けるつもりだ。
……殺される事は……無いよな? 無いですよね?
◇◇◇
「くしゅん!」
「風邪ですか、ヘレネーさん?」
「うーん、さっきまでそんな感じではなかったんだけどね。誰か私の噂でもしているのかしら?」
「あー、多分それ冒険者たちですよ。昨日、ヘレネーさんがギルドに現れたって大騒ぎだったんですから」
「はぁ〜、本当にここの冒険者って諦めが悪いわよね。レディウスっていう彼氏がいるって言っているのに、付きまとってくるのだから」
「ふふ、それも、もう直ぐ終わりですよ。少しトルネス王国で問題が起きたため、帰ってくるのが置かれたようですが、今日王都に先触れが来たらしく、既にセプテンバーム公爵領まで帰って来ているそうですから」
「そうなの? はぁ〜、早く会いたいな、レディウス」
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コメント
ノベルバユーザー339879
ヘレネーさん(´•ω•̥`)
白華
主人公浮気〜浮気〜浮気