黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

133話 より速く

 ミネルバさんが放つ鱗粉のせいでこちらの動きがわかってしまうが、地上に降りている今がチャンスだ。俺も纏・真を発動する。


 なんだか、最近はこれを使う度に魔力の量が増えている気がする。気のせいか? そんな事を思いながらミネルバさんへ切りかかる。


 周りに舞う鱗粉のせいか、ミネルバさんはゆらりゆらりと俺の斬撃を避けるが、そんなものは関係ない。俺がミネルバさんが反応するよりも速く動けば良いだけだ。


 周りの攻撃から距離を取ろうとするミネルバさんへ俺は距離を詰めて黒剣を振り下ろす。ミネルバさんは体を逸らして避けるが、振り下ろした剣をそのまま振り上げる。


 鱗粉め動きがわかるミネルバさんは、槍で俺の剣を弾き、お返しにと槍で突きの連撃を放ってくる。ただ、ミネルバさんの動きは俺よりも遅い。こちらは見てからでも反応出来る。


 自分の槍が普通に防がれるのが苛立つのか、怒っているように見える。魔獣に体を乗っ取られても本能では自分の技が通用しないのが嫌なのかもしれないな。


 ミネルバさんの連撃を全て防ぐと、今度は足払いをしてくる。俺は剣を下にして防ぐが、その時に風魔法を放ってきた。羽で魔法が放てるのは便利だな。こっちとしてはやりづらいが。


 俺はすぐに手元に黒剣を戻して、風間法を防ぐ。ちっ、1発が地味に重たい。そこには風魔法を放ちながら近づいてくるミネルバさん。


 ロンドルたちがミネルバさんを止めようとした瞬間、周りに飛んでいた鱗粉が一気にミネルバさんの羽へと戻った。戻せるのかあれ。


 そして、魔闘眼では魔力の光で輝く羽を自分の体を包むように体の前にやり、一気に開く。開いた瞬間、羽に集まった魔力は一気に放たれる。


 周りに風の刃が乱雑に放たれた。ロンドルは直感で風の刃を避けるが、全て避けきれずに体のどこかしらが切られていた。ガウェインとティリシアは俺と同じように魔闘眼をしていたようで擦り傷のみだ。


 メイリーンが直様ロンドルを回復させるが、そこに追い打ちをかけるかのように槍を構えてロンドルへと向かう。


 そこに、立ち塞がるようにガウェインが立つ。しかし、ミネルバさんの槍術にガウェインは防戦一方だ。後ろからティリシアが切りかかるが、さっきと同じように鱗粉が当たりを舞っているので、避けられる。


 俺はそこに加わらず、魔力を溜める。足と腕に自分の肉体の限界以上の魔力を。今までの魔力の量だったら、これ以上は出来なかったが、今の増えた量なら、自分の体の限界以上の魔力を纏っても、体が壊れないように魔力を流す事が出来る。


 ただ、初めてやる上に、普通の纏に比べて格段に難しい。そのせいで時間がかかってしまう。だけど、鱗粉で動きに反応するミネルバさんよりも速く動くにはこれしかない。


「纏・天」


 自分の体の限界以上の力だ。持って数分だろう。その間にミネルバさんを止める。今はガウェインとティリシア、回復したロンドルの攻撃を捌きながら、メイリーンの魔法を避ける。


 悠然と攻撃をかわし続けるミネルバさんへ、俺は一気に迫る。周りの景色が一瞬だと思うほどの速さ。くっ、全く制御できていない! 俺は無理矢理地面に足をつけて何とかミネルバさんの目の前で止まるようにする。


 ミネルバさんの目の前で何とか止まり、ミネルバさんへ一気に黒剣を振り下ろす。俺が自分の足で勢いを止めたため、ミネルバさんが反応する時間を与えてしまった。だが、それ以上に速く振り下ろされる黒剣。


 ミネルバさんは避けきれずに左肩から先が弧を描くように飛んで行った。やばい! 全く手加減が出来ていない!


 俺の放った斬撃はそのまま、洞窟までも切り裂いていた。防がれていた岩立は切られて、新たに天井から岩が落ちてくるという、意味のない事まで起きた。


「ーーーー!!!!!」


 ミネルバさんは先の無くなった左肩を押さえて悲鳴をあげる。申し訳ない気持ちでいっぱいだが、今はミネルバさんを止めるために許してほしい。後で治してもらうから!


 俺はそのままミネルバさんに当身をする。だが、ここでも加減が出来ずにミネルバさんは吹き飛ぶ。木々を折りながら吹き飛ぶが、何本か折って止まった。


 今の一撃で、羽は折れて、右足も本来では曲がらない方へ曲がり、右手に持つ槍を支えにして何とか立っている状態だ。


 ……これ以上攻撃するのは不味いな。狙うは槍だな。俺は黒剣を持つ右手を引き、突きの構えをする。狙うは槍に付いている宝石部分だ。


「旋風流奥義……」


 俺は一気に駆け出す。限界まで引き絞った腕を一気に解放する。


「死突!」


 一気に放たれた突きは、槍の宝石を砕き、槍をへし折り、後ろの木々を貫通していった。やっぱりこれもいつも以上の威力になっている。


 槍に付いていた宝石が砕けた事によってミネルバさんに纏っていた黒い物体が消えていく。元の姿に戻ったミネルバさんを見るけど、物凄く顔色が悪い。


 そこに、ミネルバさんの腕をメイリーンが抱えて持ってきてくれた。そして、いざという時用に持ってきていたのだろう、ポーションを取り出す。肩に腕を付けてポーションをかけると……ふぅ、何とか治ったか。


 俺も安心して纏を解くと、一気に体が重たく感じる。俺は思わず尻餅をついてしまった。そしてそのまま瞼が重くなる。ああ、これは魔力の使い過ぎだな。


 みんなが俺を呼ぶ中、俺の意識はそのまま落ちてしまった。

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コメント

  • 白華

    ほんと気絶多いな、終わり方気絶しか思いつかないんじゃね?ww

    0
  • リムル様と尚文様は神!!サイタマも!!

    最近気絶多いな

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