黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
130話 ヘレナのお願い
俺が大怪我から目を覚ました日の夜。王宮の中は大騒ぎだった。理由はマンネリー商会に騎士たちが向かったら、半数以上の死傷者が出たからだ。
それを行なったのは漆黒の槍を持った女性の姿をしたものだという。女性には槍から出た黒い物体が纏わり付き、姿を変えたそうだ。背からは羽が生えて、頭から触覚が生えて、まるで蛾のようだったと聞く。
その女性は、マンネリー商会の周りの建物を破壊し、騎士たちを殺しまくった後は、空を飛んでどこかへ行ってしまったそうだ。
そんな危険人物をこのまま、放置して置くわけにもいかないので、王命で討伐隊が組まれたのだ。その準備の為、夜なのに王宮の中は騒がしいのだ。
崩れた商会を調べると、マンネリーは既に死んでいたらしい。胸元にナイフが刺さっていたそうだ。
「……気になりますか?」
俺がじっと窓から見える景色を見ていたら、部屋に入って来たヴィクトリアがそんな事を言ってくる。両手には俺の夕食を持って来てくれた。
「まあ、気にならないと言えば嘘になるかな」
マンネリーの近くにいた槍を持つ女性といえば1人しか思い浮かばない。俺が怪我する前に話したヘレナさんの話に出て来たミネルバさんしか。
「でも、今は安静にして下さいね。明日には動かせるようになるそうですから」
そう言って、ヴィクトリアはベッドの側の椅子に座る。そして、俺と料理を何度も見比べる。どうしたのだろうか。
「ええっと、あの、れ、レディウス。両手が使えないと思いますので、私が食べさせてあげます。あ、あ〜ん」
ヴィクトリアは顔赤くさせてモジモジとしながらも、料理を食べやすいようにナイフで切り、フォークに刺して、俺の口元まで運んでくれる。確かに両手は包帯が巻かれていて動かせないので有難いのだが、俺も物凄く恥ずかしい。
でも、ここで恥ずかしがって食べないわけにもいかない。ここはヴィクトリアの好意に甘えるとしよう。
「あ、あ〜ん」
俺が差し出されたフォークを加えると、ヴィクトリアは恥ずかしそうながらも嬉しそうな表情を見せる。そして、今度は不安そうな顔をして来た。表情がコロコロと変わって、見ていて楽しいな。
「あ、味の方はど、どうでしたか?」
「ん? 普通に美味しかったが、どうしたんだ?」
普通にいつも食べているくらいと変わらなかったので、正直に言うと、ヴィクトリアが物凄く嬉しそうな、それにホッとしたような表情をする。
「ふぅ〜、良かったです。私の初めての手料理でしたから。クララや調理場の人たちの教えてもらった通りには作ったのですが、それでも不安だったもので」
これヴィクトリアが作ったのか!? しかも初めて? はぁ〜、それは凄い。普通に美味しい料理だったからな。初めてとは全く思えない。
もう一口食べたいと思った俺は、餌を取って来た親鳥におねだりする雛のように口を開けて待ってみると、ヴィクトリアがクスクスと笑いながら料理を口に入れてくれた。
今度はヴィクトリアが作った事を噛み締めながら食べるが、うん、やっぱり美味しい。
ヴィクトリアは言われた通りに作ったから当たり前だとは言うが、その当たり前をするのがどれだけ難しいかわかっていない。
他人から聞いた話だが、料理が下手な人は自分で勝手にアレンジするなど、明らか料理慣れしていないと、出来ないような事を突拍子もなくやるらしい。恐ろしい話だ。
それから、料理の感想を話しながらヴィクトリアに食べさせてもらっていると、扉を叩く音が聞こえた。ヴィクトリアと俺は首をかしげるが、お客さんだろう。俺の代わりにヴィクトリアが扉を開けに行ってくれた。
「失礼します」
そして、入って来たのは、ヘレナさんだった……ヘレナさんも捕まえに行っていた兵士たちからでも槍を持った女性の話を聞いたのだろう。目を真っ赤にして腫らしている。ヘレナさんもミネルバさんが今回の騒動を起こしたと聞いたのだろう。
「お二人の時間をお邪魔して申し訳ございません」
「ふふふ、二人の時間っ!? いいいい、良いのよぉ! きききき、気にしないで!」
……慌て過ぎだろ、おい。俺も少しドキッとしたけど、少し落ち着いたらどうだ? 俺がヴィクトリアを見ていたら、ヴィクトリアも深呼吸して、いつものヴィクトリアに戻った。どうやら伝わったらしい。
「それでここに来た理由はなんでしょうか?」
俺がヘレナさんに尋ねると、ヘレナさんは何も言わないままその場で座り込んで頭を下げて来た。流石に俺もヴィクトリアもこの行動に驚きはが隠せない。
「レディウス様! 怪我しているあなたにこんな事をお願いするのは最低な事なのですが、他に頼れる方がいないのです! どうか私のお願いを聞いてもらえないでしょうか!?」
「あ、頭を上げてください、ヘレナさん。取り敢えず話を聞かない事には何も言えません。だから、ね?」
「そうですよ、ヘレナさん。いきなり何も言わずにそんな事をするのはどうかと思いますよ?」
ヴィクトリアが眉間にシワを寄せて少し怒っている。美人だから眉間にシワが寄った表情も綺麗だ。その間に、ヘレナさんは申し訳なさそうに立ち上がった。
「申し訳ございません、レディウス様、ヴィクトリア様。私がここにやって来た理由は、私の姉ミネルバを助けてもらいたいからです」
……まあ、ヘレナさんがこの部屋にやって来た時点で、ある程度予想はついていたが。
「お願い……ですか?」
「はい。多分レディウス様も気が付いているとは思いますが、騎士の方を半数以上を死傷させ、建物を破壊した人物は、アルフレッド様のように、魔武器を持った私の姉、ミネルバになります」
 
「俺もそう思うな。でも、騎士たちが討伐隊を組んでいるんだろ? 俺の力なんて全くの役にも立たないと思うけど」
俺がそう言うと、ヘレナさんは悲しそうに目を伏せる。
「……確かに国としたまま過ごすわけにはいかないと騎士たちが討伐隊を組んだのですが、名前の通り、討伐を目的としています。もしお姉様が騎士たちに先に見つかれば、お姉様は殺されてしまいます」
まあ、討伐隊って言うぐらいだからな。でも、ヘレナさんはそれが嫌だと。まあ、身内が殺されるのを黙って見てはいられないな。
明日には俺の手が治るってヴィクトリアがさっき言っていたな。チラッとヴィクトリアを見ると、ヴィクトリアもじっと俺を見ていた。
「ですから、騎士たちより早くお姉様を見つけて、魔武器に乗っ取られたお姉様を取り返して欲しいのです!」
騎士団より早くか。中々厳しい話だな。だけど……
それを行なったのは漆黒の槍を持った女性の姿をしたものだという。女性には槍から出た黒い物体が纏わり付き、姿を変えたそうだ。背からは羽が生えて、頭から触覚が生えて、まるで蛾のようだったと聞く。
その女性は、マンネリー商会の周りの建物を破壊し、騎士たちを殺しまくった後は、空を飛んでどこかへ行ってしまったそうだ。
そんな危険人物をこのまま、放置して置くわけにもいかないので、王命で討伐隊が組まれたのだ。その準備の為、夜なのに王宮の中は騒がしいのだ。
崩れた商会を調べると、マンネリーは既に死んでいたらしい。胸元にナイフが刺さっていたそうだ。
「……気になりますか?」
俺がじっと窓から見える景色を見ていたら、部屋に入って来たヴィクトリアがそんな事を言ってくる。両手には俺の夕食を持って来てくれた。
「まあ、気にならないと言えば嘘になるかな」
マンネリーの近くにいた槍を持つ女性といえば1人しか思い浮かばない。俺が怪我する前に話したヘレナさんの話に出て来たミネルバさんしか。
「でも、今は安静にして下さいね。明日には動かせるようになるそうですから」
そう言って、ヴィクトリアはベッドの側の椅子に座る。そして、俺と料理を何度も見比べる。どうしたのだろうか。
「ええっと、あの、れ、レディウス。両手が使えないと思いますので、私が食べさせてあげます。あ、あ〜ん」
ヴィクトリアは顔赤くさせてモジモジとしながらも、料理を食べやすいようにナイフで切り、フォークに刺して、俺の口元まで運んでくれる。確かに両手は包帯が巻かれていて動かせないので有難いのだが、俺も物凄く恥ずかしい。
でも、ここで恥ずかしがって食べないわけにもいかない。ここはヴィクトリアの好意に甘えるとしよう。
「あ、あ〜ん」
俺が差し出されたフォークを加えると、ヴィクトリアは恥ずかしそうながらも嬉しそうな表情を見せる。そして、今度は不安そうな顔をして来た。表情がコロコロと変わって、見ていて楽しいな。
「あ、味の方はど、どうでしたか?」
「ん? 普通に美味しかったが、どうしたんだ?」
普通にいつも食べているくらいと変わらなかったので、正直に言うと、ヴィクトリアが物凄く嬉しそうな、それにホッとしたような表情をする。
「ふぅ〜、良かったです。私の初めての手料理でしたから。クララや調理場の人たちの教えてもらった通りには作ったのですが、それでも不安だったもので」
これヴィクトリアが作ったのか!? しかも初めて? はぁ〜、それは凄い。普通に美味しい料理だったからな。初めてとは全く思えない。
もう一口食べたいと思った俺は、餌を取って来た親鳥におねだりする雛のように口を開けて待ってみると、ヴィクトリアがクスクスと笑いながら料理を口に入れてくれた。
今度はヴィクトリアが作った事を噛み締めながら食べるが、うん、やっぱり美味しい。
ヴィクトリアは言われた通りに作ったから当たり前だとは言うが、その当たり前をするのがどれだけ難しいかわかっていない。
他人から聞いた話だが、料理が下手な人は自分で勝手にアレンジするなど、明らか料理慣れしていないと、出来ないような事を突拍子もなくやるらしい。恐ろしい話だ。
それから、料理の感想を話しながらヴィクトリアに食べさせてもらっていると、扉を叩く音が聞こえた。ヴィクトリアと俺は首をかしげるが、お客さんだろう。俺の代わりにヴィクトリアが扉を開けに行ってくれた。
「失礼します」
そして、入って来たのは、ヘレナさんだった……ヘレナさんも捕まえに行っていた兵士たちからでも槍を持った女性の話を聞いたのだろう。目を真っ赤にして腫らしている。ヘレナさんもミネルバさんが今回の騒動を起こしたと聞いたのだろう。
「お二人の時間をお邪魔して申し訳ございません」
「ふふふ、二人の時間っ!? いいいい、良いのよぉ! きききき、気にしないで!」
……慌て過ぎだろ、おい。俺も少しドキッとしたけど、少し落ち着いたらどうだ? 俺がヴィクトリアを見ていたら、ヴィクトリアも深呼吸して、いつものヴィクトリアに戻った。どうやら伝わったらしい。
「それでここに来た理由はなんでしょうか?」
俺がヘレナさんに尋ねると、ヘレナさんは何も言わないままその場で座り込んで頭を下げて来た。流石に俺もヴィクトリアもこの行動に驚きはが隠せない。
「レディウス様! 怪我しているあなたにこんな事をお願いするのは最低な事なのですが、他に頼れる方がいないのです! どうか私のお願いを聞いてもらえないでしょうか!?」
「あ、頭を上げてください、ヘレナさん。取り敢えず話を聞かない事には何も言えません。だから、ね?」
「そうですよ、ヘレナさん。いきなり何も言わずにそんな事をするのはどうかと思いますよ?」
ヴィクトリアが眉間にシワを寄せて少し怒っている。美人だから眉間にシワが寄った表情も綺麗だ。その間に、ヘレナさんは申し訳なさそうに立ち上がった。
「申し訳ございません、レディウス様、ヴィクトリア様。私がここにやって来た理由は、私の姉ミネルバを助けてもらいたいからです」
……まあ、ヘレナさんがこの部屋にやって来た時点で、ある程度予想はついていたが。
「お願い……ですか?」
「はい。多分レディウス様も気が付いているとは思いますが、騎士の方を半数以上を死傷させ、建物を破壊した人物は、アルフレッド様のように、魔武器を持った私の姉、ミネルバになります」
 
「俺もそう思うな。でも、騎士たちが討伐隊を組んでいるんだろ? 俺の力なんて全くの役にも立たないと思うけど」
俺がそう言うと、ヘレナさんは悲しそうに目を伏せる。
「……確かに国としたまま過ごすわけにはいかないと騎士たちが討伐隊を組んだのですが、名前の通り、討伐を目的としています。もしお姉様が騎士たちに先に見つかれば、お姉様は殺されてしまいます」
まあ、討伐隊って言うぐらいだからな。でも、ヘレナさんはそれが嫌だと。まあ、身内が殺されるのを黙って見てはいられないな。
明日には俺の手が治るってヴィクトリアがさっき言っていたな。チラッとヴィクトリアを見ると、ヴィクトリアもじっと俺を見ていた。
「ですから、騎士たちより早くお姉様を見つけて、魔武器に乗っ取られたお姉様を取り返して欲しいのです!」
騎士団より早くか。中々厳しい話だな。だけど……
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