黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜

やま

123話 嫌な終わり方

「ベオウルフトニトルス。一度だけ見たことあるが、なんでアルフレッドが……」


 俺の隣で1人で勝手に納得するロンドル。何だよそのベオウルフトニトルスって。魔獣だっていうのはわかるのだが。


 一体何なのかロンドルに尋ねようと思ったが、そんな暇は無いようだ。アルフレッドは黒い雷を体に放電させながら、ガウェインたちに向かう。


「グラァ!」


「ぐうっ!」


 アルフレッドが剣を振り下ろすと、ガウェインは剣と盾を交差させて防ぐ。ガウェインの剣と盾にアルフレッドの剣がぶつかると、雷を迸らせ地面を穿つが、ガウェインには通っていないようで、何とか防ぐ。


「っ! フレイムウィップ!」


 そこに、シャルンが鞭に火魔法を付与させて、攻撃するが、アルフレッドは狼のように早く走り、それを避ける。メイリーンやティリシアたちも魔法を放つが、中々当たらない。


 よく見ればアルフレッドの足が地面に触れるたびに、地面にバチッと雷が走っている。雷を身に纏って速度まで上げているのか。それなら俺も


「魔闘脚・極」


 限界まで両足に魔力を纏い、今からガウェインに襲いかからんとするアルフレッド目掛けて駆け出す。一気に目の前に現れたアルフレッドに向かって左回し蹴りをかます。


 アルフレッドは俺が近づくのに気が付いていたが、反応が遅れて、腕で回し蹴りを防いだ。だが、魔闘脚を限界までした蹴りだ。アルフレッドの腕は悲鳴を上げて、アルフレッド自身が吹き飛ぶ。


 俺は地面に足をつけた瞬間、再びアルフレッド目掛けて駆け出す。アルフレッドは何度か地面を跳ねながらも体制を立て直そうとするが、そこに


「風切!」


 旋風流の風切を放つ。牽制にでもと思い放ったが


「ガル!」


 アルフレッドは自分の周りに雷を放ち、風切をかき消してしまった。そして俺に向かっても放ってくる。俺それを避けようとしたが


「がっ! ぐぅっ!」


 思った以上に雷のスピードは速かった。俺が感知して黒剣を振ろうと思ったら、既に俺の体に当たっていたのだ。これが本来の雷の速さか。


 体が痺れてその場に膝をついてしまう。纏をしていなければさっきの兵士みたいになっていただろう。少し雷を舐めてたな。


 そこにアルフレッドが雷を纏った剣を振り下ろしてくる。確か触れるとあれも痺れるんだっけ。でも、ガウェインは防いでたよな。どうすれば防げるかわからないので、俺は横に飛ぶように避ける。


 地面を叩きつけるように振り下ろされたアルフレッドの剣から、雷が弾け、周りに放たれる。地面はえぐれ、辺りを焦がしていく。


 俺は直ぐ様体制を立て直して、再びアルフレッドに向かう。受ける事が出来ないなら、逸らすまでだ。あまり得意ではないが


「グルゥア!」


 アルフレッドは俺に向けて雷を放つが、俺は明水流、矢流の魔力版、魔流。俺は自分の魔力を目の前には流し、魔力の流れる道を作る。雷はその道に沿って進むため、俺には当たらない。


 ただ、かなりの魔力を消費する上に、集中力も必要になるからあまり連続して使う事が出来ない。俺は雷を逸らしながらアルフレッドに向かう。


 アルフレッドは、何度も雷を放つが当たらない。そして、剣の距離になると、アルフレッドは剣を大きく横振りしてきた。こいつ、この姿になってから剣術じゃなくて、ただ振ってくるようになったな。そのおかげで避けやすい。


 俺は頭を下げ地面スレスレまで体を倒して、横振りの剣を避ける。アルフレッドはそのまま剣を振り下ろしてくるが、少し横にズレて避ける。そして


「悪いな、アルフレッド。後で治してもらってくれ!」


 俺は鞘に戻していた黒剣をすれ違いざまにしたから振り上げる。


「旋風流、風翔!」


 アルフレッドが反応出来ない速さで、俺の限界の速さで一気に切り上げる。そして宙に舞う黒い物体。ドサッと鈍い音と、ガシャンと甲高い音が同時になる。そして


「グルゥ……ガァァァァォァァッ!!!」


 剣持っていた右腕を押さえてのたうち回るアルフレッド。アルフレッドには申し訳ないが、右腕の先を切り落とさせて貰った。


 しばらく地面を痛みで転がっていたアルフレッドだが、突然糸が切れたかのように気を失ってしまった。姿はいつの間にか元のアルフレッドに戻っていたが、あちらこちらから血を流して危険な状態だ。


 俺はちらりとアルフレッドが持っていた剣を見ると、そこに戻ろうとする黒いナニカ。あれが元凶か! アルフレッドも持つだけでは普通に持っていたから、何か条件があるのだろうが、あのまま置いておかない。


 俺は剣の側まで行き、黒剣を上から下に突き刺す構をする。剣はまだ雷を帯びているが、俺はそのまま黒剣を振り下ろす。狙うは柄に付いている宝石のような部分だ。魔闘眼で見ると、その部分が一番魔力が集まっていた。


「はぁぁ!」


 俺は勢いよく突き刺すと、アルフレッドの剣は一瞬抵抗するが、苦なくそのまま突き刺さる。良し、これでこの魔剣は二度と発動しないだろう。そう思った瞬間、魔剣に溜まっていた魔力が一気に放出され、俺は吹き飛ばされてしまった。


 ただ、吹き飛ばされただけだったので、ほとんど怪我はないが、地面を何度も跳ねたのであちこちが痛い。


「レディウス、大丈夫ですか!?」


 その吹き飛ばされた俺を見た、慌ててやってくるヴィクトリア。俺は苦笑いしながらヴィクトリアに手を振り、アルフレッドの方を見る。


 どうやら、アルフレッドが気を失った事により、雷の檻は消えたようで、いつの間にかアルフレッドは兵士たちに囲まれていた。


 今は治療を受けているようだ。ガウェインたちの方も無事で、今は魔力を使いすぎて倒れているガウェインをシャルンが看病していた。


 当然、親善戦は中止になった。アルフレッドとも原因がわかるまで投獄されて、そのチームであるロンドルたちも王宮の部屋で軟禁される事になってしまった。


 俺たちには話を聞くだけと言われたが、何とも嫌な終わり方で親善戦は終わってしまった。

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