黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
85話 闇夜の襲撃
私たちが村にやって来たから数時間が経過しました。すっかり日も暮れて、あたりは真っ暗です。
私たちがこの暗闇の中何をしているかというと、見張りをしています。村長のハタンさんの話では畑を荒らしている原因は、夜にやってくるとのことでしたので。
しかし、村の中も静かでしたね。子供や女の人などを1人も見る事がありませんでした。やっぱりこれは……
「2人とも、来たぞ」
どうやら、目標が来たようです。私は二本の短剣に手をかけます。クルトも背負っている大剣をいつでも抜けるように準備をし、フランさんも杖を構えます。
少しずつ足音が近づいて来ます。かなりの人数のようです。
「どうしましたか、ハタンさん?」
クルトが、畑へとやって来た目標、ハタンさんへと声をかけます。ハタンさんはビクッとしましたが、クルトの方へと振り向きます。
「おお、クルト殿。そこにいましたか」
「ええ。それでどうしたのです? そんなに人数を連れて。しかも武器も持っている」
そう、ハタンさんが連れて来た人たちは全部で30人ほど。その上全員が剣や斧を持っている。明らかに怪しい。
「何、私たちも何か手伝える事があるかもと思いましてね」
「いもしない敵に対してですか?」
「……気が付いていたのか?」
クルトの言葉にハタンさん含む武器を持った人たちが殺気立ちます。やっぱりそうでしたか。不自然だと思ったんです。
村の人は男の人しかいなくて、子供どころか女の人もいません。それに初めにハタンさんと握手した時も、あの手はただ畑仕事をしている人の手ではありませんでした。何か重たいものを振っている手でした。
夜になるまでの間この村を調べましたが、村の大きさの割には人には出会いませんでしたし。
男の人たちはクルトを囲むように動きます。クルトも背負っている大剣を抜き構えます。
「そういえば女どもはどうした? 一緒にいたはずだが?」
「彼女たちはな……」
「ウインドカッター!」
敵だとわかれば容赦はしません! 人数差があるのでまずこちらが奇襲を仕掛けます! 密かに屋根の上まで移動していた私たちは、クルトが囲まれるのを見ていて、隙を伺っていました。
そしてフランさんが風魔法を発動します。男たちと後ろの方にいた3人を風の刃で体の一部を切り落としました。
「な、なんだと!?」
「どらぁっ!」
その隙にクルトが男たちへと大剣を振り下ろします。強化魔法に纏をしているクルトの一撃はかなり重たいですよ。切りかかられた男は剣で防ごうとしますが、剣ごと真っ二つになりました。
私は魔法を放つフランさんの護衛です。屋根の上から撃っていますが、屋根に登ってこないとは限りませんからね。
「ちっ、てめえら、屋根の上の魔法師を狙え! 依頼はこの2人だけだ! 奴は死んでも構わねえ!」
依頼? どういう事でしょうか? 指名された依頼が盗賊らしき男たちに占領されているのはおかしいと思っていたのですが、狙いは私たちですか? しかし、私たちが狙われる理由がわかりません。何故でしょうか?
「いけ、ファイアボール!」
男たちは屋根のフランさん目掛けて火の球を放って来ました。私はフランさんの前に立ちます。あまり得意ではありませんが魔闘眼、魔闘装を発動。放たれる火の球を二刀の短剣で切っていきます!
「はぁっ!」
ふぅ、この程度は簡単ですね。村の人に練習に付き合ってもらっているので成果も出ました!
「な、なんだあいつは!? 魔法を切りやがったぞ!」
「今です、フランさん!」
「ええ! ウィンドクラッシャー!」
フランさんの掛け声とともに、男たちの上に圧縮された風の塊が発動されます。私は魔闘眼をしているでわかるのですが、男たちは真っ暗なのでわからないでしょう。
そして、風の塊が男たちの上に落ちると
グシャ
と、潰れる音がします……中々エグい技ですねこれ。今ので10人ほどは死にましたよ。
「な、なんなんだお前たちは! なんでそんなに強いんだよ!」
残るはハタンさんを残して数人ほど。何人かは逃げようとして、フランさんの風魔法で切り裂かれます。もう数もかなり減りましたし、私たちも降りましょうか。
私とフランさんも屋根から降りて、ハタンさんたちを挟むように立ちます。残りは6人。全員捕らえますか。 
「ゆ、許してくれ! 俺たちは命令されて仕方なくお前たちを襲ったんだ。本心じゃないんだ!」
「なら、その命令した奴を教えろ。そうしたら考えてやる」
「わ、わかった! は、話すから! 俺たちに襲うように命令したのは、バ……ぐひぁっ」
えっ? ハタンさんが命令して来た人物を話そうとしたら、ハタンさんの頭に突然ナイフが刺さりました。他の男たちにもです。
「ロナ、フランさん!」
そして気が付けばクルトが私たちに向かって走って来ていました。そして背後に殺気! 私は直ぐにフランさんを押してその場から離れさせます、私も反対側にこけます。するとフランさんのいた場所にナイフが通り過ぎました。
そして、私たちの背後には真っ暗なローブを被った男が立っていました。……全く気が付きませんでした。
「はぁっ!」
ローブを被った男にいち早く気が付いたクルトは、男へ切りかかります。男はナイフでクルトの大剣を逸らして、クルトを蹴り飛ばしました。クルトは辛うじて魔闘拳した腕で防いだ様ですが、転がる様にして離れます。
私もその間にフランさんの下まで行き、彼女を庇うように立って構えます。このローブの男の人は先ほどのハタンさんたちと比べ物にならないくらい強いです。
「あんたも、奴らの仲間か?」
「……」
「ちっ、だんまりかよ。それならそのままぶった切ってやる!」
「ダメです、クルト!」
クルトも実力差はわかっているのにどうして!? ローブの男はナイフをしまい無手で構えます。両手両足に魔力が集まっています。
「おらあっ!」
クルトは大剣で切りかかりますが、ローブの男は全て手で逸らします。全く当たる気配がしません。それほどまで私たちとローブの男には差があります。レディウス様ぐらいでないと……。
「ロナ! 早くフランさんを連れて逃げろ!」
クルトはローブの男を見たまま叫びます。でも、ここで逃げたらクルトは!
「はぁっ!」
「ちっ! 馬鹿野郎!」
私がローブの男へ向かうのを見て、クルトは悪態をつきます。何とでも言ってください! 今はこの人をどうにかするのが先です。
私は背後から短剣で切りかかるのですが、ローブの男は後ろにも目があるのかという程、避けられてしまいます。そして
「かはっ!」
右腕をローブの男の人に掴まれて地面へと叩きつけられます。肺にあった全ての空気が口から抜け出します。
「てんめぇ!」
クルトは袈裟切りをしますが、男に軽く避けられてしまい、大剣も弾かれてしまいます。そして、お腹に数発連続して殴られ、クルトは地面に倒れます。
クルトは何とか立とうとしますが、ローブの男に蹴り飛ばされてしまいます。足に魔力を纏った一撃です。かなりの威力でしょう。クルトはピクリとも動きません。胸が上下しているので死んでは無いようです。良かったぁ。
私もその間に立つ事が出来ました。さて、ここからクルトを助けてどう逃げましょうか。フランさんはいつでも魔法を放てるようにしていますが、ローブの男に効くかどうか……。そう思っていたら
「きゃあっ!」
フランさんの声がします。私が振り向くと、そこにはフランさんを掴むローブの男がいました。まさか、他にも仲間がいたなんて!
「短剣を捨てろ。さもなくばその女を殺すぞ?」
ここで初めてローブの男が話します。この男たちの狙いはどうやら私とクルトのようです。だから、ここで短剣を捨てたところで、多分フランさんは殺されるでしょう。それなら
「はぁっ!」
私はフランさんの側にいる男たちに向けて短剣を投げます。いざという時のために投擲を練習していて良かったです!
「ロポさん!」
そして、これもいざという時のために隠れていてもらったロポさんを呼びます。ロポさんは私たちがいた屋根とは別の屋根から飛び降りて、フランさんの近くにいた男の1人に飛びかかります。男は小さいウサギが飛んできたと油断していますが、次の瞬間
「グウッ!」
体を2メートル程の大きさに変えて、男を殴り飛ばします。殴り飛ばされた男は家にぶつかり動かなくなりました。首の骨が折れていますからね。これなら逃げられかも。そう思った瞬間
「グウゥッ!?」
ロポさんが吹き飛びます。一体何が!? そう思い振り返ると、そこにはローブの男が拳を突き出した状態で立っていました。まさか、そこからロポさんに攻撃を?
ロポさんはあまりダメージが無いようですが、ローブの男を警戒しています。でも、このままじゃあ……仕方ありません!
私は体のあるところに隠していた予備の短剣を取り出し、ローブの男へ向かいます。
「ロポさん! 今の内にフランさんを連れて逃げて下さい!」
男たちは私たちを生きた状態で捕らえるのが目的のようです。それなら捕まっても死ぬような事はされないでしょう。
「はぁっ!」
私はローブの男へ切りかかりますが、腕を掴まれます。そしてお腹を数発殴られます。うぅ、痛みで意識が……。
「ちっ、あの女を逃すな!」
微かですが、後ろから声が聞こえます。どうやらフランさんとロポさんは上手く逃げたようです。無事にレディウス様の下まで辿り着けると良いのですが……。私はそこで意識が途絶えました。
◇◇◇
「すまねえ、デリス。逃がしちまった」
「構わん。俺たちへの依頼はこの2人を捕らえる事だ。依頼主の下まで連れて行くぞ」
「へへっ、なあ、デリス。この女味見しても良いか? 黒髪って部分を差し引いても綺麗な女だぜ。まだガキだがな」
「駄目だ。もし、この女に手を出したらお前を殺す。依頼以外の事はするな」
「わ、わかったよ。わかったからそんな殺気を出すなよ全く。お前は強いけど面白くねえな」
「ふん。俺は強い奴と戦えたらそれで良い。そのために裏ギルドにいるのだから」
私たちがこの暗闇の中何をしているかというと、見張りをしています。村長のハタンさんの話では畑を荒らしている原因は、夜にやってくるとのことでしたので。
しかし、村の中も静かでしたね。子供や女の人などを1人も見る事がありませんでした。やっぱりこれは……
「2人とも、来たぞ」
どうやら、目標が来たようです。私は二本の短剣に手をかけます。クルトも背負っている大剣をいつでも抜けるように準備をし、フランさんも杖を構えます。
少しずつ足音が近づいて来ます。かなりの人数のようです。
「どうしましたか、ハタンさん?」
クルトが、畑へとやって来た目標、ハタンさんへと声をかけます。ハタンさんはビクッとしましたが、クルトの方へと振り向きます。
「おお、クルト殿。そこにいましたか」
「ええ。それでどうしたのです? そんなに人数を連れて。しかも武器も持っている」
そう、ハタンさんが連れて来た人たちは全部で30人ほど。その上全員が剣や斧を持っている。明らかに怪しい。
「何、私たちも何か手伝える事があるかもと思いましてね」
「いもしない敵に対してですか?」
「……気が付いていたのか?」
クルトの言葉にハタンさん含む武器を持った人たちが殺気立ちます。やっぱりそうでしたか。不自然だと思ったんです。
村の人は男の人しかいなくて、子供どころか女の人もいません。それに初めにハタンさんと握手した時も、あの手はただ畑仕事をしている人の手ではありませんでした。何か重たいものを振っている手でした。
夜になるまでの間この村を調べましたが、村の大きさの割には人には出会いませんでしたし。
男の人たちはクルトを囲むように動きます。クルトも背負っている大剣を抜き構えます。
「そういえば女どもはどうした? 一緒にいたはずだが?」
「彼女たちはな……」
「ウインドカッター!」
敵だとわかれば容赦はしません! 人数差があるのでまずこちらが奇襲を仕掛けます! 密かに屋根の上まで移動していた私たちは、クルトが囲まれるのを見ていて、隙を伺っていました。
そしてフランさんが風魔法を発動します。男たちと後ろの方にいた3人を風の刃で体の一部を切り落としました。
「な、なんだと!?」
「どらぁっ!」
その隙にクルトが男たちへと大剣を振り下ろします。強化魔法に纏をしているクルトの一撃はかなり重たいですよ。切りかかられた男は剣で防ごうとしますが、剣ごと真っ二つになりました。
私は魔法を放つフランさんの護衛です。屋根の上から撃っていますが、屋根に登ってこないとは限りませんからね。
「ちっ、てめえら、屋根の上の魔法師を狙え! 依頼はこの2人だけだ! 奴は死んでも構わねえ!」
依頼? どういう事でしょうか? 指名された依頼が盗賊らしき男たちに占領されているのはおかしいと思っていたのですが、狙いは私たちですか? しかし、私たちが狙われる理由がわかりません。何故でしょうか?
「いけ、ファイアボール!」
男たちは屋根のフランさん目掛けて火の球を放って来ました。私はフランさんの前に立ちます。あまり得意ではありませんが魔闘眼、魔闘装を発動。放たれる火の球を二刀の短剣で切っていきます!
「はぁっ!」
ふぅ、この程度は簡単ですね。村の人に練習に付き合ってもらっているので成果も出ました!
「な、なんだあいつは!? 魔法を切りやがったぞ!」
「今です、フランさん!」
「ええ! ウィンドクラッシャー!」
フランさんの掛け声とともに、男たちの上に圧縮された風の塊が発動されます。私は魔闘眼をしているでわかるのですが、男たちは真っ暗なのでわからないでしょう。
そして、風の塊が男たちの上に落ちると
グシャ
と、潰れる音がします……中々エグい技ですねこれ。今ので10人ほどは死にましたよ。
「な、なんなんだお前たちは! なんでそんなに強いんだよ!」
残るはハタンさんを残して数人ほど。何人かは逃げようとして、フランさんの風魔法で切り裂かれます。もう数もかなり減りましたし、私たちも降りましょうか。
私とフランさんも屋根から降りて、ハタンさんたちを挟むように立ちます。残りは6人。全員捕らえますか。 
「ゆ、許してくれ! 俺たちは命令されて仕方なくお前たちを襲ったんだ。本心じゃないんだ!」
「なら、その命令した奴を教えろ。そうしたら考えてやる」
「わ、わかった! は、話すから! 俺たちに襲うように命令したのは、バ……ぐひぁっ」
えっ? ハタンさんが命令して来た人物を話そうとしたら、ハタンさんの頭に突然ナイフが刺さりました。他の男たちにもです。
「ロナ、フランさん!」
そして気が付けばクルトが私たちに向かって走って来ていました。そして背後に殺気! 私は直ぐにフランさんを押してその場から離れさせます、私も反対側にこけます。するとフランさんのいた場所にナイフが通り過ぎました。
そして、私たちの背後には真っ暗なローブを被った男が立っていました。……全く気が付きませんでした。
「はぁっ!」
ローブを被った男にいち早く気が付いたクルトは、男へ切りかかります。男はナイフでクルトの大剣を逸らして、クルトを蹴り飛ばしました。クルトは辛うじて魔闘拳した腕で防いだ様ですが、転がる様にして離れます。
私もその間にフランさんの下まで行き、彼女を庇うように立って構えます。このローブの男の人は先ほどのハタンさんたちと比べ物にならないくらい強いです。
「あんたも、奴らの仲間か?」
「……」
「ちっ、だんまりかよ。それならそのままぶった切ってやる!」
「ダメです、クルト!」
クルトも実力差はわかっているのにどうして!? ローブの男はナイフをしまい無手で構えます。両手両足に魔力が集まっています。
「おらあっ!」
クルトは大剣で切りかかりますが、ローブの男は全て手で逸らします。全く当たる気配がしません。それほどまで私たちとローブの男には差があります。レディウス様ぐらいでないと……。
「ロナ! 早くフランさんを連れて逃げろ!」
クルトはローブの男を見たまま叫びます。でも、ここで逃げたらクルトは!
「はぁっ!」
「ちっ! 馬鹿野郎!」
私がローブの男へ向かうのを見て、クルトは悪態をつきます。何とでも言ってください! 今はこの人をどうにかするのが先です。
私は背後から短剣で切りかかるのですが、ローブの男は後ろにも目があるのかという程、避けられてしまいます。そして
「かはっ!」
右腕をローブの男の人に掴まれて地面へと叩きつけられます。肺にあった全ての空気が口から抜け出します。
「てんめぇ!」
クルトは袈裟切りをしますが、男に軽く避けられてしまい、大剣も弾かれてしまいます。そして、お腹に数発連続して殴られ、クルトは地面に倒れます。
クルトは何とか立とうとしますが、ローブの男に蹴り飛ばされてしまいます。足に魔力を纏った一撃です。かなりの威力でしょう。クルトはピクリとも動きません。胸が上下しているので死んでは無いようです。良かったぁ。
私もその間に立つ事が出来ました。さて、ここからクルトを助けてどう逃げましょうか。フランさんはいつでも魔法を放てるようにしていますが、ローブの男に効くかどうか……。そう思っていたら
「きゃあっ!」
フランさんの声がします。私が振り向くと、そこにはフランさんを掴むローブの男がいました。まさか、他にも仲間がいたなんて!
「短剣を捨てろ。さもなくばその女を殺すぞ?」
ここで初めてローブの男が話します。この男たちの狙いはどうやら私とクルトのようです。だから、ここで短剣を捨てたところで、多分フランさんは殺されるでしょう。それなら
「はぁっ!」
私はフランさんの側にいる男たちに向けて短剣を投げます。いざという時のために投擲を練習していて良かったです!
「ロポさん!」
そして、これもいざという時のために隠れていてもらったロポさんを呼びます。ロポさんは私たちがいた屋根とは別の屋根から飛び降りて、フランさんの近くにいた男の1人に飛びかかります。男は小さいウサギが飛んできたと油断していますが、次の瞬間
「グウッ!」
体を2メートル程の大きさに変えて、男を殴り飛ばします。殴り飛ばされた男は家にぶつかり動かなくなりました。首の骨が折れていますからね。これなら逃げられかも。そう思った瞬間
「グウゥッ!?」
ロポさんが吹き飛びます。一体何が!? そう思い振り返ると、そこにはローブの男が拳を突き出した状態で立っていました。まさか、そこからロポさんに攻撃を?
ロポさんはあまりダメージが無いようですが、ローブの男を警戒しています。でも、このままじゃあ……仕方ありません!
私は体のあるところに隠していた予備の短剣を取り出し、ローブの男へ向かいます。
「ロポさん! 今の内にフランさんを連れて逃げて下さい!」
男たちは私たちを生きた状態で捕らえるのが目的のようです。それなら捕まっても死ぬような事はされないでしょう。
「はぁっ!」
私はローブの男へ切りかかりますが、腕を掴まれます。そしてお腹を数発殴られます。うぅ、痛みで意識が……。
「ちっ、あの女を逃すな!」
微かですが、後ろから声が聞こえます。どうやらフランさんとロポさんは上手く逃げたようです。無事にレディウス様の下まで辿り着けると良いのですが……。私はそこで意識が途絶えました。
◇◇◇
「すまねえ、デリス。逃がしちまった」
「構わん。俺たちへの依頼はこの2人を捕らえる事だ。依頼主の下まで連れて行くぞ」
「へへっ、なあ、デリス。この女味見しても良いか? 黒髪って部分を差し引いても綺麗な女だぜ。まだガキだがな」
「駄目だ。もし、この女に手を出したらお前を殺す。依頼以外の事はするな」
「わ、わかったよ。わかったからそんな殺気を出すなよ全く。お前は強いけど面白くねえな」
「ふん。俺は強い奴と戦えたらそれで良い。そのために裏ギルドにいるのだから」
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