黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
81話 次の課題
「いやぁ〜、良くやってくれたわん! 私見ていてスッキリしちゃったもん!」
俺たちの前で、クネクネと喜ぶデズ学園長。筋肉ムキムキの化粧したおじさんがクネクネしても全く可愛く無いのだが……。言ったら殴り殺されそうなので言わないが。
対抗戦を終えて2日が経った昼休み。俺たちティリシアを除くヴィクトリアチームは、現在学園長室にいる。ティリシアは、決勝での傷の療養で現在休みを取っている。俺が戦争の時になった様な感じだな。
今日の放課後にバンハート子爵家にお見舞いに行くつもりだ。ヴィクトリアがマリーさんに先触れをお願いしていると言っていたから大丈夫だろう。
「それで、俺たちを呼んだのって」
「ええ、毎年恒例の親善戦よ」
ガウェインが目の前にある料理を食べながら学園長に何かを尋ねる。そして、学園長も当たり前のように答えるが、なんだ、親善戦って?
俺の表情でわかったのか、ヴィクトリアがクスクスと笑いながら教えてくれた。何だか、恥ずかしいな。
「毎年この時期にはアルバスト王国は、隣国の『トルネス王国』と大きな会議をやっているんです。ですが、何代か前の国王陛下が、ただ会議をやるだけでは面白くないから、自国の生徒を戦わせようと、考えたのがこの親善戦です。自国の中だけで満足せずに外も知るべきだ、と言って」
「まあ、簡単に言えば、自国の生徒の自慢がしたいわけよ。うちの国の生徒は凄いだろうってね」
ヴィクトリアの説明にデズ学園長が補足してくれる。トルネス王国か。確か同盟国で仲が良いんだったっけ。
話を聞けばトルネス王国の第1王子の婚約者に、アルバスト王国の第1王女を送るほどらしい。まあ、どちらも子供の頃から会っており、相思相愛だったと言うが。
「参加者は毎年各学年の優勝チームが出る事になるわ。今回はグダグダと文句を言う貴族たちが多かったけど、黙らしといてあげたから」
何でも、リストニック侯爵家に付く貴族たちが、あの試合はおかしいと言って来たらしい。黒髮の俺が、紫髪のリストニック兄弟に勝てるはずがない、何か不正をしていると。
だから、あの試合は無効。若しくはランバルクチームが親善戦に出場させろと。
それに真っ向から反対したのが、セプテンバーム公爵家に付く貴族たちに、バンハート子爵やオスティーン男爵、その上レイブン将軍なども反論してくれたらしい。
学園長であるデズ学園長も加わり話を押さえ込んでくれたとか。俺だけならまだしも、チームだやっているのに、そんな事を言われるのは腹が立つな。みんなで頑張った結果なのに。
俺が怒っているのがわかったのか、周りのみんなは苦笑いだ。なんだよ。
「ふふふ、レディウスは優しいですね」
「全くだねー」
「顔でわかりすぎだぜ」
「うふふん、良いチームね。それで、どうするかしら?」
デズ学園長は俺たちを見て尋ねてくる。まあ、こんな機会無いし答えはみんな決まっているよな。
「ティリシアに確認してからにはなりますが、俺たちは出たいと思います」
俺が代表で答えると、周りのみんなも頷く。それを見たデズ学園長も頷いて
「わかったわ。国王陛下には私から話しておくから。出発は来週になるからそれまで準備しておいてね」
……思ったより期間が短いな。昨年はトルネス王国側がアルバスト王国に来たらしく、今年はこちらが行く側らしい。片道2週間、滞在2週間、合わせて6週間と中々のスケジュールになる。これは色々と揃えなきゃいけないな。剣も1本無くなって寂しいし。
それからは、学園長室で昼ご飯を食べ終えて部屋を後にする。ヴィクトリアは合同学科の校舎になるので、廊下でお別れだ。放課後はヴィクトリアの専用馬車でティリシアの家まで送ってもらう手筈になっている。
それから、みんなで談笑して廊下を歩いていると、色々な視線で見られる。対抗戦から2日しか経っていないが、みんなの視線は色々だ。
好意的なものもあれば、避けているものや、俺に対して敵意を持っているものなど色々と。
好意的なものは武術に心得がある人が多いかな。見ただけで、実力で勝ったのがわかるのだろう。
避けているものは、やはり黒髪だからだろう。こればかりはすぐに変わるものでは無い。
敵意を持っているものは、当然ながらリストニック侯爵家に付く貴族の子息たちになる。もっと簡単に言えば手下どもだな。そんな奴らは無視だ。どうせ手出ししてくる根性もない。放っておいたら良い。
そんな視線を感じながらも教室に戻ると、教室の中が少し騒がしい。中に入ると、数少ない女生徒たちがある机に群がっていた。そのある机とは
「なあ、あの机って」
「……ああ、俺の机だ」
まさかの俺の机だった。女生徒たちが囲んでいるので机の上は見えないのだが、何かあるのだろうか?
俺が近づくと、女生徒たちもさすがに気が付き、
「あっ、レディウス! この子ってあなたのペットなの?」
と、女生徒が尋ねてくる。ペット? ……まさかな? 俺は軽く現実逃避をしながらも、自分の席まで行くと、そこには
「グゥ」
よっ! って感じで右足を上げるロポの姿があった。その姿を見た女生徒たちは歓声を、ついでにクララも歓声を上げる。やはり、騎士学科にいても女性は女性。可愛いものは好きらしい。結構失礼な事だから口には出さないが。
俺はロポの首根っこを掴むと、ロポはだらーんと宙ぶらりんになる。
「なんでお前がここにいるんだよ。ロナは? クルトはどうした?」
「グゥ」
俺が尋ねると、ロポは器用に俺に背を向けてくる。ロポの背中には手紙が2枚背負われていた。俺はロポの背中から手紙を取り、ロポを机の上に降ろす。ロポは再び女生徒たちに囲まれてしまった。
俺はそれを横目で見ながらも、手紙を確認する。手紙は1枚は姉上からで、もう1枚はロナからだった。
姉上からの手紙の内容は対抗戦の事だった。俺のチームが勝った事へのお祝いの言葉や、俺がかなり強くなっていて驚いたとか、今度は親善戦頑張ったとか色々と書かれていた。姉上は、王妃になるための修行中のため、親善戦には来ないらしい。
次にロナの手紙を見ると、書かれている内容は、急遽ギルドの依頼で遠出をする事になったから5日ほど村を離れるというものだった。
本当は俺が帰ってきたから行きたかったらしいが、かなり急いでいるとの事で、手紙での連絡をお許し下さい、と書いてあった。そこまで縛っていないから全然良いのだが。まあ、ロナらしいと言えばロナらしいが。
そうなったら晩飯とか考えなければな。最近は全部ロナがしてくれていたから。……やばい。ロナ無しでは生きられない体になっていっているかもしれない。
「それじゃあ、ロナの方に先手紙を書くか。ロポ、すぐ書き終えるから待っていてくれ。ほらみんなも机使うから退いてくれ」
俺は、女生徒たちからのブーイングを浴びながらもロナへの手紙を書く。内容はロナの自由にして良いという事。俺もまた来週から長期で離れる事になるから、その前に会えたら会おうという事。ロナ無しでは生きられないかも、と冗談めかしに書いて封をする。
「ロポ。それじゃあ頼むよ。ロポはそのままロナたちを手伝ってやってくれ」
「グゥ!」
ロポは一鳴きして、窓から外へと駆けて行く。中々すばしっこいからなあいつは。それを名残惜しそうに見る女生徒たち。まあ、許してくれ。
それからは、普通に授業を受けて今日も終わった。やはりランベルトは来なかったな。昨日も来てないし。昼の時にヴィクトリアに尋ねたらランバルクも来ていないそうだ。他の3人は来ていたそうだが。家で何かあったのだろうか? まあ、別に良いのだが。
「レディウス、行こうぜ」
俺が帰りの支度をしていると、既に準備を終えているガウェインとクララに急かされる。少し待ってくれよ。それから廊下を歩き騎士学科の校舎を出ると
「お久しぶりです、レディウス様」
俺に声をかける男がいた。俺はその男を見て固まってしまった。その次に浮かんで来たの怒りだった。その男は
「……グルッカス」
昔バルト・グレモンドと一緒に俺を痛めつけて楽しんでいた男だった。
俺たちの前で、クネクネと喜ぶデズ学園長。筋肉ムキムキの化粧したおじさんがクネクネしても全く可愛く無いのだが……。言ったら殴り殺されそうなので言わないが。
対抗戦を終えて2日が経った昼休み。俺たちティリシアを除くヴィクトリアチームは、現在学園長室にいる。ティリシアは、決勝での傷の療養で現在休みを取っている。俺が戦争の時になった様な感じだな。
今日の放課後にバンハート子爵家にお見舞いに行くつもりだ。ヴィクトリアがマリーさんに先触れをお願いしていると言っていたから大丈夫だろう。
「それで、俺たちを呼んだのって」
「ええ、毎年恒例の親善戦よ」
ガウェインが目の前にある料理を食べながら学園長に何かを尋ねる。そして、学園長も当たり前のように答えるが、なんだ、親善戦って?
俺の表情でわかったのか、ヴィクトリアがクスクスと笑いながら教えてくれた。何だか、恥ずかしいな。
「毎年この時期にはアルバスト王国は、隣国の『トルネス王国』と大きな会議をやっているんです。ですが、何代か前の国王陛下が、ただ会議をやるだけでは面白くないから、自国の生徒を戦わせようと、考えたのがこの親善戦です。自国の中だけで満足せずに外も知るべきだ、と言って」
「まあ、簡単に言えば、自国の生徒の自慢がしたいわけよ。うちの国の生徒は凄いだろうってね」
ヴィクトリアの説明にデズ学園長が補足してくれる。トルネス王国か。確か同盟国で仲が良いんだったっけ。
話を聞けばトルネス王国の第1王子の婚約者に、アルバスト王国の第1王女を送るほどらしい。まあ、どちらも子供の頃から会っており、相思相愛だったと言うが。
「参加者は毎年各学年の優勝チームが出る事になるわ。今回はグダグダと文句を言う貴族たちが多かったけど、黙らしといてあげたから」
何でも、リストニック侯爵家に付く貴族たちが、あの試合はおかしいと言って来たらしい。黒髮の俺が、紫髪のリストニック兄弟に勝てるはずがない、何か不正をしていると。
だから、あの試合は無効。若しくはランバルクチームが親善戦に出場させろと。
それに真っ向から反対したのが、セプテンバーム公爵家に付く貴族たちに、バンハート子爵やオスティーン男爵、その上レイブン将軍なども反論してくれたらしい。
学園長であるデズ学園長も加わり話を押さえ込んでくれたとか。俺だけならまだしも、チームだやっているのに、そんな事を言われるのは腹が立つな。みんなで頑張った結果なのに。
俺が怒っているのがわかったのか、周りのみんなは苦笑いだ。なんだよ。
「ふふふ、レディウスは優しいですね」
「全くだねー」
「顔でわかりすぎだぜ」
「うふふん、良いチームね。それで、どうするかしら?」
デズ学園長は俺たちを見て尋ねてくる。まあ、こんな機会無いし答えはみんな決まっているよな。
「ティリシアに確認してからにはなりますが、俺たちは出たいと思います」
俺が代表で答えると、周りのみんなも頷く。それを見たデズ学園長も頷いて
「わかったわ。国王陛下には私から話しておくから。出発は来週になるからそれまで準備しておいてね」
……思ったより期間が短いな。昨年はトルネス王国側がアルバスト王国に来たらしく、今年はこちらが行く側らしい。片道2週間、滞在2週間、合わせて6週間と中々のスケジュールになる。これは色々と揃えなきゃいけないな。剣も1本無くなって寂しいし。
それからは、学園長室で昼ご飯を食べ終えて部屋を後にする。ヴィクトリアは合同学科の校舎になるので、廊下でお別れだ。放課後はヴィクトリアの専用馬車でティリシアの家まで送ってもらう手筈になっている。
それから、みんなで談笑して廊下を歩いていると、色々な視線で見られる。対抗戦から2日しか経っていないが、みんなの視線は色々だ。
好意的なものもあれば、避けているものや、俺に対して敵意を持っているものなど色々と。
好意的なものは武術に心得がある人が多いかな。見ただけで、実力で勝ったのがわかるのだろう。
避けているものは、やはり黒髪だからだろう。こればかりはすぐに変わるものでは無い。
敵意を持っているものは、当然ながらリストニック侯爵家に付く貴族の子息たちになる。もっと簡単に言えば手下どもだな。そんな奴らは無視だ。どうせ手出ししてくる根性もない。放っておいたら良い。
そんな視線を感じながらも教室に戻ると、教室の中が少し騒がしい。中に入ると、数少ない女生徒たちがある机に群がっていた。そのある机とは
「なあ、あの机って」
「……ああ、俺の机だ」
まさかの俺の机だった。女生徒たちが囲んでいるので机の上は見えないのだが、何かあるのだろうか?
俺が近づくと、女生徒たちもさすがに気が付き、
「あっ、レディウス! この子ってあなたのペットなの?」
と、女生徒が尋ねてくる。ペット? ……まさかな? 俺は軽く現実逃避をしながらも、自分の席まで行くと、そこには
「グゥ」
よっ! って感じで右足を上げるロポの姿があった。その姿を見た女生徒たちは歓声を、ついでにクララも歓声を上げる。やはり、騎士学科にいても女性は女性。可愛いものは好きらしい。結構失礼な事だから口には出さないが。
俺はロポの首根っこを掴むと、ロポはだらーんと宙ぶらりんになる。
「なんでお前がここにいるんだよ。ロナは? クルトはどうした?」
「グゥ」
俺が尋ねると、ロポは器用に俺に背を向けてくる。ロポの背中には手紙が2枚背負われていた。俺はロポの背中から手紙を取り、ロポを机の上に降ろす。ロポは再び女生徒たちに囲まれてしまった。
俺はそれを横目で見ながらも、手紙を確認する。手紙は1枚は姉上からで、もう1枚はロナからだった。
姉上からの手紙の内容は対抗戦の事だった。俺のチームが勝った事へのお祝いの言葉や、俺がかなり強くなっていて驚いたとか、今度は親善戦頑張ったとか色々と書かれていた。姉上は、王妃になるための修行中のため、親善戦には来ないらしい。
次にロナの手紙を見ると、書かれている内容は、急遽ギルドの依頼で遠出をする事になったから5日ほど村を離れるというものだった。
本当は俺が帰ってきたから行きたかったらしいが、かなり急いでいるとの事で、手紙での連絡をお許し下さい、と書いてあった。そこまで縛っていないから全然良いのだが。まあ、ロナらしいと言えばロナらしいが。
そうなったら晩飯とか考えなければな。最近は全部ロナがしてくれていたから。……やばい。ロナ無しでは生きられない体になっていっているかもしれない。
「それじゃあ、ロナの方に先手紙を書くか。ロポ、すぐ書き終えるから待っていてくれ。ほらみんなも机使うから退いてくれ」
俺は、女生徒たちからのブーイングを浴びながらもロナへの手紙を書く。内容はロナの自由にして良いという事。俺もまた来週から長期で離れる事になるから、その前に会えたら会おうという事。ロナ無しでは生きられないかも、と冗談めかしに書いて封をする。
「ロポ。それじゃあ頼むよ。ロポはそのままロナたちを手伝ってやってくれ」
「グゥ!」
ロポは一鳴きして、窓から外へと駆けて行く。中々すばしっこいからなあいつは。それを名残惜しそうに見る女生徒たち。まあ、許してくれ。
それからは、普通に授業を受けて今日も終わった。やはりランベルトは来なかったな。昨日も来てないし。昼の時にヴィクトリアに尋ねたらランバルクも来ていないそうだ。他の3人は来ていたそうだが。家で何かあったのだろうか? まあ、別に良いのだが。
「レディウス、行こうぜ」
俺が帰りの支度をしていると、既に準備を終えているガウェインとクララに急かされる。少し待ってくれよ。それから廊下を歩き騎士学科の校舎を出ると
「お久しぶりです、レディウス様」
俺に声をかける男がいた。俺はその男を見て固まってしまった。その次に浮かんで来たの怒りだった。その男は
「……グルッカス」
昔バルト・グレモンドと一緒に俺を痛めつけて楽しんでいた男だった。
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