黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
64話β 再会
「……ここは」
「目が覚めたか、エリシア!」
私が天蓋を見ていると、横から慌てたような声が聞こえて来る。横にいたのは
「……ウィリアム様?」
「ああ、私だよ。良かった、突然倒れてビックリしたんだから!」
……私はどうして気を失ったのかしら? 確か服を買いに行って、そこで、グレモンド領で出会った黒髪の女の子に出会ったんだっけ。それから
「っ! そうだ! ウィリアム様! 彼は? 私の目の前に立っていた彼は!?」
私はウィリアム様に摑みかかるように問いかける。本当はかなり失礼な事をしているのだが、今はそれどころではない。だって! だって死んでいたあの子が!
「お、落ち着け、エリシア! あの黒髪の男は今は牢屋に捕らえている。エリシアに危害を加えたのは彼なのだろ?」
ウィリアム様は何か勘違いをしているけど、それは私が話せばいいでしょう。私が倒れたのは、レディウスが生きている事を信じられなかった事に対する罪悪感ね。
でも、今はそれを上回る程の喜びで溢れている。だって二度と会えないと思っていたレディウスが生きているのだから。
「エリシア様、大丈夫ですか!? あっ! 失礼いたしました!」
そんな風に私とウィリアム様が話していると、慌てて部屋に入って来たのはミアだった。私が倒れたって聞いて急いで来てくれたのね。
「なに、構わないよ。君はエリシアの専属の侍女だからね。気にしないで入って来てくれ」
「は、はい、失礼いたします。エリシア様、お加減はいかがですか?」
「ええ、大丈夫よミア。ごめんね、心配かけて」
私がそう言うと、ミアは首を横に振る。
「でも、どうしたのですか? 突然倒れるなんて……」
「そうだ、ミア! 生きていたのよ!」
「えっ? 誰が生きていたのですか、エリシア様?」
おっと、興奮し過ぎて、大切な事が抜けていた。今の話だけじゃ誰かわからないわよね。私はベッドから降りて、ミアの手を取り
「レディウスがよ! レディウスが生きていたのよ!」
「……見間違いとかでは無くてですか?」
ミアはまるで熱があるかのように私のおでこを触って来る。ちょっと! どうして信じてくれないのよ! 確かに4年近く死んだと思っていた人が、生きているなんて言われても信じられないかもしれないけど!
「それなら今から会いに行きましょう! よろしいですよね、ウィリアム様?」
私はウィリアム様の方を見て尋ねる。ウィリアム様は危険かどうかわからない男に会わせることが出来ないと言うが、会わないとここから話が進まないと言うと、渋々ながら許可が出た。
私はあの子の剣を持って準備をする。たぶん、この時の私の顔は今までにないほど喜びに満ちていたのだろう。後ろの嫉妬に気がつかなかったのだから。
◇◇◇
「……って事です」
「そんな偶然があるんだね。ミストレア様が助けて弟子にした少年が、王子の婚約者になったエリシア様の腹違いの弟だったなんて」
レイブン将軍は、自分が思っていた以上の案件だと気がついて、はぁ〜と溜息を吐く。少し同情します。
「でも、それを証明する事は出来るかい?」
「本人たちに確認してもらえればかと。いくら勘当にしたからと言っても、国から聞かれれば話さない事は出来ないでしょう。それにバルトが俺に兄だと名乗っているところをヴィクトリア様にも聞かれましたし」
「なるほどね。わかった。グレモンド男爵にも確認してみよう」
そんな風に俺とレイブン将軍が話し合っていると、外から扉が叩かれる。俺は当然動けないのでそのまま座って、レイブン将軍が扉を開けると、そこにはレイブン将軍について来た兵士の1人が立っていた。
「レイブン様。お話中失礼します」
「何かあったかな?」
「先ほど王子の近衛兵がやって来まして、捕らえた黒髪の男と合わせて欲しいと」
レイブン将軍は俺と兵士を交互に見比べる。あの王子が俺に何か用なのか?
「わかった。それじゃあ彼を連れて来てくれ」
レイブン将軍は少し考えたが、特に問題は無いと考えたのか、兵士に俺を連れていくように指示を出す。俺は後ろから縛られている手の縄を兵士に掴まれ、無理やり立たされる。
そして、腕を引っ張られ歩かされる。少し雑いぞこの人。縄が手に擦れて痛い。
それからレイブン将軍の後をついていく事10分ほど。王宮の中にある一室に案内された。中に入ると、先ほどの王子が兵士を伴って座っていた。
俺は、王子の前まで連れて来られると、その場で膝をついて膝を立てるように座らされる。
「ウィリアム王子。男を連れて来ました」
「ああ、ありがとうレイブン将軍。申し訳ないね。あなたのような方にお願いして」
「いえ。私もお願いした身です。お気になさらず。それよりこの男ですが」
「そうだね。それで何かわかったかい?」
「はい。彼はエリシア様と腹違いの兄弟のようです」
「……やっぱりか」
ウィリアム王子はボソッと何かをつぶやいて、それからジロジロと俺を見てくる。何だろうか?
「それが本当だと言う証拠は?」
「それはグレモンド男爵に確認してもらうしか無いでしょうな」
それを聞いたウィリアム王子は少し考えるそぶりを見せる。そして
「仕方ない。おい君。彼女たちを入れてくれ」
ウィリアム王子は近くにいた兵士に何かを指示する。そして兵士は部屋を出て、少しすると戻って来た。ただ、行きの時とは違って、2人女性を連れてだけど。その女性は
「姉上。それにミアも」
「……嘘。ほ、本当に……レ、レディウス様が……」
「ねっ! 言った通りでしょ!」
姉上とミアが部屋に入って来たのだ。俺が家を出て4年近くが経つが、あの頃とは比べ物にならない程2人は綺麗になっていた。
ミアは俺の顔を見て目をこれでもかと見開いて、次には顔を手で覆って涙を流し始めた。姉上はそれを抱き締める。……かなり心配をかけてしまったようだ。バルトの反応にもあったが、俺は死んだ事になっていたようだから。
「デイブ。レディウス君の縄を解いてやりなさい」
レイブン将軍はもう間違いないと思ったのか、彼の護衛の1人ーーデイブーーに俺の縄を解くように伝える。デイブは俺の側に来て縄を解いてくれる。
俺は手首をさするが、うわぁ、縄の跡が付いている。俺は構わないのだが、これならロナにも付いているだろうな。
「……レディウス」
俺が手首をさすっていると、側に姉上とミアがやって来ていた。ミアはまだ手を覆うほど涙を流しており、姉上も目に涙を溜めている。
「姉上お元気でしたか? ミアも」
「ええ。私たちは元気だったわよ。ごめんなさい、レディウス。私はあなたが生きていると信じきれなかった。私は……姉失格よね……。レディウスはこんな傷まで負っているのに、私はのうのうと生きていたなんて」
さっきまで笑顔だったのに今度は涙を流し出す姉上。そんな事全く気にしなくていいのに。それから俺の左目を触る。少しくすぐったい。
「姉上心配をかけて申し訳ありませんでした。確かにこの傷を負って死にかけた事はありました。でも、このおかげで俺は色々な出会いをして、強くなる事が出来ました。だから、そんなに悲しまないでください」
「……ふふ。あなたは昔から肉体的にはあまり強くなかったけど、心は強かった。グレモンド家の誰よりも。そんな子が心身ともに強くなって……カッコ良くなったわねレディウス」
そう言って抱きしめられた。なんだか恥ずかしいな。でも、久しぶりに姉上に抱きしめられて嬉しい。昔は良く抱きしめられたな。あの時は周りの目とか恥ずかしさで逃げていたけど、今は駄目だな。それからこの言葉を伝えないと
「ただいま戻りました、姉上」
「ええ、お帰りなさい、レディウス」
俺と姉上はレイブン将軍が咳をして促すまで抱き合っていたのだった。
「目が覚めたか、エリシア!」
私が天蓋を見ていると、横から慌てたような声が聞こえて来る。横にいたのは
「……ウィリアム様?」
「ああ、私だよ。良かった、突然倒れてビックリしたんだから!」
……私はどうして気を失ったのかしら? 確か服を買いに行って、そこで、グレモンド領で出会った黒髪の女の子に出会ったんだっけ。それから
「っ! そうだ! ウィリアム様! 彼は? 私の目の前に立っていた彼は!?」
私はウィリアム様に摑みかかるように問いかける。本当はかなり失礼な事をしているのだが、今はそれどころではない。だって! だって死んでいたあの子が!
「お、落ち着け、エリシア! あの黒髪の男は今は牢屋に捕らえている。エリシアに危害を加えたのは彼なのだろ?」
ウィリアム様は何か勘違いをしているけど、それは私が話せばいいでしょう。私が倒れたのは、レディウスが生きている事を信じられなかった事に対する罪悪感ね。
でも、今はそれを上回る程の喜びで溢れている。だって二度と会えないと思っていたレディウスが生きているのだから。
「エリシア様、大丈夫ですか!? あっ! 失礼いたしました!」
そんな風に私とウィリアム様が話していると、慌てて部屋に入って来たのはミアだった。私が倒れたって聞いて急いで来てくれたのね。
「なに、構わないよ。君はエリシアの専属の侍女だからね。気にしないで入って来てくれ」
「は、はい、失礼いたします。エリシア様、お加減はいかがですか?」
「ええ、大丈夫よミア。ごめんね、心配かけて」
私がそう言うと、ミアは首を横に振る。
「でも、どうしたのですか? 突然倒れるなんて……」
「そうだ、ミア! 生きていたのよ!」
「えっ? 誰が生きていたのですか、エリシア様?」
おっと、興奮し過ぎて、大切な事が抜けていた。今の話だけじゃ誰かわからないわよね。私はベッドから降りて、ミアの手を取り
「レディウスがよ! レディウスが生きていたのよ!」
「……見間違いとかでは無くてですか?」
ミアはまるで熱があるかのように私のおでこを触って来る。ちょっと! どうして信じてくれないのよ! 確かに4年近く死んだと思っていた人が、生きているなんて言われても信じられないかもしれないけど!
「それなら今から会いに行きましょう! よろしいですよね、ウィリアム様?」
私はウィリアム様の方を見て尋ねる。ウィリアム様は危険かどうかわからない男に会わせることが出来ないと言うが、会わないとここから話が進まないと言うと、渋々ながら許可が出た。
私はあの子の剣を持って準備をする。たぶん、この時の私の顔は今までにないほど喜びに満ちていたのだろう。後ろの嫉妬に気がつかなかったのだから。
◇◇◇
「……って事です」
「そんな偶然があるんだね。ミストレア様が助けて弟子にした少年が、王子の婚約者になったエリシア様の腹違いの弟だったなんて」
レイブン将軍は、自分が思っていた以上の案件だと気がついて、はぁ〜と溜息を吐く。少し同情します。
「でも、それを証明する事は出来るかい?」
「本人たちに確認してもらえればかと。いくら勘当にしたからと言っても、国から聞かれれば話さない事は出来ないでしょう。それにバルトが俺に兄だと名乗っているところをヴィクトリア様にも聞かれましたし」
「なるほどね。わかった。グレモンド男爵にも確認してみよう」
そんな風に俺とレイブン将軍が話し合っていると、外から扉が叩かれる。俺は当然動けないのでそのまま座って、レイブン将軍が扉を開けると、そこにはレイブン将軍について来た兵士の1人が立っていた。
「レイブン様。お話中失礼します」
「何かあったかな?」
「先ほど王子の近衛兵がやって来まして、捕らえた黒髪の男と合わせて欲しいと」
レイブン将軍は俺と兵士を交互に見比べる。あの王子が俺に何か用なのか?
「わかった。それじゃあ彼を連れて来てくれ」
レイブン将軍は少し考えたが、特に問題は無いと考えたのか、兵士に俺を連れていくように指示を出す。俺は後ろから縛られている手の縄を兵士に掴まれ、無理やり立たされる。
そして、腕を引っ張られ歩かされる。少し雑いぞこの人。縄が手に擦れて痛い。
それからレイブン将軍の後をついていく事10分ほど。王宮の中にある一室に案内された。中に入ると、先ほどの王子が兵士を伴って座っていた。
俺は、王子の前まで連れて来られると、その場で膝をついて膝を立てるように座らされる。
「ウィリアム王子。男を連れて来ました」
「ああ、ありがとうレイブン将軍。申し訳ないね。あなたのような方にお願いして」
「いえ。私もお願いした身です。お気になさらず。それよりこの男ですが」
「そうだね。それで何かわかったかい?」
「はい。彼はエリシア様と腹違いの兄弟のようです」
「……やっぱりか」
ウィリアム王子はボソッと何かをつぶやいて、それからジロジロと俺を見てくる。何だろうか?
「それが本当だと言う証拠は?」
「それはグレモンド男爵に確認してもらうしか無いでしょうな」
それを聞いたウィリアム王子は少し考えるそぶりを見せる。そして
「仕方ない。おい君。彼女たちを入れてくれ」
ウィリアム王子は近くにいた兵士に何かを指示する。そして兵士は部屋を出て、少しすると戻って来た。ただ、行きの時とは違って、2人女性を連れてだけど。その女性は
「姉上。それにミアも」
「……嘘。ほ、本当に……レ、レディウス様が……」
「ねっ! 言った通りでしょ!」
姉上とミアが部屋に入って来たのだ。俺が家を出て4年近くが経つが、あの頃とは比べ物にならない程2人は綺麗になっていた。
ミアは俺の顔を見て目をこれでもかと見開いて、次には顔を手で覆って涙を流し始めた。姉上はそれを抱き締める。……かなり心配をかけてしまったようだ。バルトの反応にもあったが、俺は死んだ事になっていたようだから。
「デイブ。レディウス君の縄を解いてやりなさい」
レイブン将軍はもう間違いないと思ったのか、彼の護衛の1人ーーデイブーーに俺の縄を解くように伝える。デイブは俺の側に来て縄を解いてくれる。
俺は手首をさするが、うわぁ、縄の跡が付いている。俺は構わないのだが、これならロナにも付いているだろうな。
「……レディウス」
俺が手首をさすっていると、側に姉上とミアがやって来ていた。ミアはまだ手を覆うほど涙を流しており、姉上も目に涙を溜めている。
「姉上お元気でしたか? ミアも」
「ええ。私たちは元気だったわよ。ごめんなさい、レディウス。私はあなたが生きていると信じきれなかった。私は……姉失格よね……。レディウスはこんな傷まで負っているのに、私はのうのうと生きていたなんて」
さっきまで笑顔だったのに今度は涙を流し出す姉上。そんな事全く気にしなくていいのに。それから俺の左目を触る。少しくすぐったい。
「姉上心配をかけて申し訳ありませんでした。確かにこの傷を負って死にかけた事はありました。でも、このおかげで俺は色々な出会いをして、強くなる事が出来ました。だから、そんなに悲しまないでください」
「……ふふ。あなたは昔から肉体的にはあまり強くなかったけど、心は強かった。グレモンド家の誰よりも。そんな子が心身ともに強くなって……カッコ良くなったわねレディウス」
そう言って抱きしめられた。なんだか恥ずかしいな。でも、久しぶりに姉上に抱きしめられて嬉しい。昔は良く抱きしめられたな。あの時は周りの目とか恥ずかしさで逃げていたけど、今は駄目だな。それからこの言葉を伝えないと
「ただいま戻りました、姉上」
「ええ、お帰りなさい、レディウス」
俺と姉上はレイブン将軍が咳をして促すまで抱き合っていたのだった。
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