黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
54話 メイガス学園
「……ここか」
俺はそびえ立つ城のような建物を見上げる。白を基調とした建物で、ここには様々な子供が集まる。レイブン将軍に言われたから1週間が経った。俺が今日から通う場所でもある。
学園の名前はメイガス学園。初代校長メイガス・クロフォードの名前から取ったらしい。
「ねぇ、あれって……」
「初めて見ましたわ」
「凄い傷ね」
そんな風に門の前に立って学園を眺めていると、俺の横を通り過ぎて行く学生が俺の方を見てコソコソと話す。ここには地方から出て来る者用の宿舎があり、そこに住むか、王都に家を持つ者はそこから通っている。
みんな俺の頭を見てコソコソと、俺の左目の傷を見てコソコソとする。……さっさと学園長室に行くかな。そう思い門を潜って建物に向かって歩いていると
「あああっ!?」
と後ろからとんでもない叫び声が聞こえて来る。何なんだよと思い振り返って見ると、そこには俺の方を指指しながら驚いた表情を浮かべる女子生徒が立っていた。
金髪の髪に、腰ぐらいある髪を腰のところで1つに括っている。胸は普通の大きさで、身長は160と言ったところか。腰には2本の剣を差している。
そして俺の方にズバッと走ってきて、俺の襟を掴み前後に振り始める。ちょっ、く、苦しい……。
「なななな、何で! 何でここにいるのよ!?」
「く、くる……」
「何とか言いなさいよ! この馬鹿! 馬鹿レディウス!」
「お、落ちつ……ぐ、ぐるじい……」
「ティナ。その人死にそうよ」
「はっ!?」
後ろから茶色の髪をした女性が俺に掴みかかる女性を止めてくれた。あ、危なかったぁ。天国にいる母上が川の向こうで俺に向かって手を振っていたぞ。危うく橋を渡るところだった。
俺が喉元を押さえて咳き込んでいると、金髪の女性が心配そうに覗き込んで俺を見てくる。
「ご、ごめん! 大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だよ。急に振り回すからビックリしたけど。久し振りだなアレス」
俺は、心配そうに覗いてくる金髪の女性、アレスに話しかける。最後に会ったのはアレスの母親にコカトリスの石化袋を持って行った時だから、1年ほど前になるのか。
「久し振りだな、じゃないよ! レディウスのおかげでお母様も助かって、お礼を言いたかったのに、あのままいなくなるなんて酷いよ! まだいっぱい話したい事があったのに!」
アレスはそう言いながら泣き出してしまった。ちょっ、こんなところで泣くなよ! ま、周りの視線が痛い。ただでさえ髪の色や目の傷で注目されているのに、さらに注目されてしまうじゃないか。
「あーあ、泣かせちゃった。これは責任取って娶るしか無いわね」
そこに、アレスの友人っぽい女性がとんでも無い事を言い出す。何を言っているだこの人は。それを聞いていたアレスは泣いていたはずなのにニマニマと笑っている。
「ええっと、あなたは?」
「私はクリティシア・マクレーンよ。ティナのお父様のオスティーン男爵と私の父親のバルバン・マクレーン伯爵は親友だから子供の私たちも仲が良いの。初めまして、ティナの想い人さん」
「ちょっ! クリア! なんて事を言うのよ!」
「あら、違うの? 事あるごとにレディウスのために綺麗になるんだって言っているじゃ無いの?」
クリティシアさんの発言にアレスは慌てて止めようとするが、クリティシアさんは気にした様子もなく次々と暴露をしていく。……そう言う話は俺のいないところでして欲しいのだが。俺に聞かれると不味くないかそれ?
アレスはクリティシアさんを止められないと思ったのか、先ほどとは違った涙を見せながら俺の方を見てくる。
「ち、違うからね! 違わないけど違うからね! わ、私はレディウスの伝言を守っているだけだからぁ!」
アレスは顔を真っ赤にしたまま校舎の方へ走って行ってしまった。取り残されたクリティシアさんはやれやれといった風に首を横に振る。……いや、今のはあんたが悪いよ。
「まあ、いいわ。ティナの代わりにどうしてあなたがここにいるのか聞いておきましょう。どうして?」
「どうしてって、この前の戦争がありましたよね。そこで何とか手柄を立てる事ができて近衛騎士団に誘われたんですよ。ただ、近衛騎士団に入るにしても基礎的な事は知らないのでここで学べと入れられたんです」
「へぇ〜、近衛騎士団にねぇ。この歳で選ばれるなんて余程優秀なんでしょうね。ティナには悪いけど、私が唾をつけておきましょうか?」
そう言うクリティシアさんはつつぅ〜と俺の胸元を指先で這わしてくる。この人本当にアレスと同級生か? とんでもない色気を放ってくるのだが。
俺が若干困っていると、大きな馬車が門から入ってくる。何だあれ? 俺が不思議そうに見ているのがわかったのか、クリティシアさんは入ってきた馬車について教えてくれた。
「あれはヴィクトリア・セプテンバーム様の馬車よ。ほら馬車の後ろにセプテンバーム公爵家の紋章が入っているでしょ?」
セプテンバーム公爵家の紋章が何なのかはわからないが、馬車の後ろに鷲が羽根を広げているような紋章がある。しかもどこかで見た事があるぞ。どこだったかはちょっと思い出せないが。
まあ、公爵家なんて俺とは何の関わりもないのだから覚える必要も無い気もするけど。
「騎士団に入るからこの学園に来たって事は騎士学科に入るのかしら?」
「え? ああ、そうですよ」
学園の中を走り去っていく馬車を見ていたら、クリティシアさんに急に話しかけられたので驚いてしまった。
「それなら私たちは合同学科にいるからいつでも遊びにきてね。ティナも待っているだろうから」
そう言いながらクリティシアさんも校舎の方へ行ってしまった。この学園には合同学科、商業科、騎士学科がある。
合同学科は貴族が3割、平民が7割の計200人でそれを5クラスに分けてある。この学園を立てたメイガス学園長が、貴族平民問わずに優秀な人材を見つけ出すためにと作った学園だから、みんな一緒になっている。
そこから派生して出来た学科が商業科と騎士学科になる。どちらも普通の合同学科に比べて専門的な事を習うので、それなら分けた方が良いだろうと言う事で、出来た様だ。
しかし、ここに来て早々にアレスと会う事が出来るとはな。挨拶ぐらいはしておこうと思っていたから、会えてよかった。俺のふざけた伝言にも守っていたし。今度会ったら綺麗になったなって言ってあげないとな。
まあ、取り敢えずは学園長室に向かうかな。
俺はそびえ立つ城のような建物を見上げる。白を基調とした建物で、ここには様々な子供が集まる。レイブン将軍に言われたから1週間が経った。俺が今日から通う場所でもある。
学園の名前はメイガス学園。初代校長メイガス・クロフォードの名前から取ったらしい。
「ねぇ、あれって……」
「初めて見ましたわ」
「凄い傷ね」
そんな風に門の前に立って学園を眺めていると、俺の横を通り過ぎて行く学生が俺の方を見てコソコソと話す。ここには地方から出て来る者用の宿舎があり、そこに住むか、王都に家を持つ者はそこから通っている。
みんな俺の頭を見てコソコソと、俺の左目の傷を見てコソコソとする。……さっさと学園長室に行くかな。そう思い門を潜って建物に向かって歩いていると
「あああっ!?」
と後ろからとんでもない叫び声が聞こえて来る。何なんだよと思い振り返って見ると、そこには俺の方を指指しながら驚いた表情を浮かべる女子生徒が立っていた。
金髪の髪に、腰ぐらいある髪を腰のところで1つに括っている。胸は普通の大きさで、身長は160と言ったところか。腰には2本の剣を差している。
そして俺の方にズバッと走ってきて、俺の襟を掴み前後に振り始める。ちょっ、く、苦しい……。
「なななな、何で! 何でここにいるのよ!?」
「く、くる……」
「何とか言いなさいよ! この馬鹿! 馬鹿レディウス!」
「お、落ちつ……ぐ、ぐるじい……」
「ティナ。その人死にそうよ」
「はっ!?」
後ろから茶色の髪をした女性が俺に掴みかかる女性を止めてくれた。あ、危なかったぁ。天国にいる母上が川の向こうで俺に向かって手を振っていたぞ。危うく橋を渡るところだった。
俺が喉元を押さえて咳き込んでいると、金髪の女性が心配そうに覗き込んで俺を見てくる。
「ご、ごめん! 大丈夫?」
「あ、ああ、大丈夫だよ。急に振り回すからビックリしたけど。久し振りだなアレス」
俺は、心配そうに覗いてくる金髪の女性、アレスに話しかける。最後に会ったのはアレスの母親にコカトリスの石化袋を持って行った時だから、1年ほど前になるのか。
「久し振りだな、じゃないよ! レディウスのおかげでお母様も助かって、お礼を言いたかったのに、あのままいなくなるなんて酷いよ! まだいっぱい話したい事があったのに!」
アレスはそう言いながら泣き出してしまった。ちょっ、こんなところで泣くなよ! ま、周りの視線が痛い。ただでさえ髪の色や目の傷で注目されているのに、さらに注目されてしまうじゃないか。
「あーあ、泣かせちゃった。これは責任取って娶るしか無いわね」
そこに、アレスの友人っぽい女性がとんでも無い事を言い出す。何を言っているだこの人は。それを聞いていたアレスは泣いていたはずなのにニマニマと笑っている。
「ええっと、あなたは?」
「私はクリティシア・マクレーンよ。ティナのお父様のオスティーン男爵と私の父親のバルバン・マクレーン伯爵は親友だから子供の私たちも仲が良いの。初めまして、ティナの想い人さん」
「ちょっ! クリア! なんて事を言うのよ!」
「あら、違うの? 事あるごとにレディウスのために綺麗になるんだって言っているじゃ無いの?」
クリティシアさんの発言にアレスは慌てて止めようとするが、クリティシアさんは気にした様子もなく次々と暴露をしていく。……そう言う話は俺のいないところでして欲しいのだが。俺に聞かれると不味くないかそれ?
アレスはクリティシアさんを止められないと思ったのか、先ほどとは違った涙を見せながら俺の方を見てくる。
「ち、違うからね! 違わないけど違うからね! わ、私はレディウスの伝言を守っているだけだからぁ!」
アレスは顔を真っ赤にしたまま校舎の方へ走って行ってしまった。取り残されたクリティシアさんはやれやれといった風に首を横に振る。……いや、今のはあんたが悪いよ。
「まあ、いいわ。ティナの代わりにどうしてあなたがここにいるのか聞いておきましょう。どうして?」
「どうしてって、この前の戦争がありましたよね。そこで何とか手柄を立てる事ができて近衛騎士団に誘われたんですよ。ただ、近衛騎士団に入るにしても基礎的な事は知らないのでここで学べと入れられたんです」
「へぇ〜、近衛騎士団にねぇ。この歳で選ばれるなんて余程優秀なんでしょうね。ティナには悪いけど、私が唾をつけておきましょうか?」
そう言うクリティシアさんはつつぅ〜と俺の胸元を指先で這わしてくる。この人本当にアレスと同級生か? とんでもない色気を放ってくるのだが。
俺が若干困っていると、大きな馬車が門から入ってくる。何だあれ? 俺が不思議そうに見ているのがわかったのか、クリティシアさんは入ってきた馬車について教えてくれた。
「あれはヴィクトリア・セプテンバーム様の馬車よ。ほら馬車の後ろにセプテンバーム公爵家の紋章が入っているでしょ?」
セプテンバーム公爵家の紋章が何なのかはわからないが、馬車の後ろに鷲が羽根を広げているような紋章がある。しかもどこかで見た事があるぞ。どこだったかはちょっと思い出せないが。
まあ、公爵家なんて俺とは何の関わりもないのだから覚える必要も無い気もするけど。
「騎士団に入るからこの学園に来たって事は騎士学科に入るのかしら?」
「え? ああ、そうですよ」
学園の中を走り去っていく馬車を見ていたら、クリティシアさんに急に話しかけられたので驚いてしまった。
「それなら私たちは合同学科にいるからいつでも遊びにきてね。ティナも待っているだろうから」
そう言いながらクリティシアさんも校舎の方へ行ってしまった。この学園には合同学科、商業科、騎士学科がある。
合同学科は貴族が3割、平民が7割の計200人でそれを5クラスに分けてある。この学園を立てたメイガス学園長が、貴族平民問わずに優秀な人材を見つけ出すためにと作った学園だから、みんな一緒になっている。
そこから派生して出来た学科が商業科と騎士学科になる。どちらも普通の合同学科に比べて専門的な事を習うので、それなら分けた方が良いだろうと言う事で、出来た様だ。
しかし、ここに来て早々にアレスと会う事が出来るとはな。挨拶ぐらいはしておこうと思っていたから、会えてよかった。俺のふざけた伝言にも守っていたし。今度会ったら綺麗になったなって言ってあげないとな。
まあ、取り敢えずは学園長室に向かうかな。
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