黒髪の王〜魔法の使えない魔剣士の成り上がり〜
31話 VSコカトリス(1)
「……」
「おーい、アレスー」
「……」
「おーいってばー」
「……なにさ」
「なんでそんなに離れて歩いているんだよ」
「べ、別に良いじゃないか!」
そう言い、再び先を歩くアレス。側にロポが付いてくれているから大丈夫だと思うが、どうしてこうなったんだろうか。
まあ、昨日の川での事が1番の理由なんだろうけど。夜はかなり距離を離れて過ごしたからな。野営の準備でも、俺の顔を一度も見ようとしなかったし。
朝起きてもそれは変わらず、こんな感じでずっと距離がある。自分にも付いているくせに。他人のでそこまで恥ずかしがらなくても良いのに。
朝、歩き始めてから既に数時間は経っている。日もそろそろ真上に上がる頃だ。歩き始めた頃はまだ鬱蒼と木々が茂っていたが、そろそろ中腹辺りになると、周りは膝ぐらいの草が少し生えているだけで、後はゴツゴツに岩があるだけだ。
その岩陰から時折ゴブリンが飛び出してくるのだが
「グゥ!」
2メートル程の大きさになったロポが右手ではたき、ゴブリンが吹き飛ぶ。首の骨がベキッと折れていた。
「はぁ〜。凄いなぁロポは。可愛いし、強いし、柔らかいし。えらいぞ〜」
「ググゥ!」
そんなロポにアレスは褒めて撫でてあげている。ロポも嬉しそうに鳴いている。そんなやり取りを見ている俺は、1人で辺りを警戒してと。べ、別に寂しくなんかねぇし。俺も構って欲しいとか思ってねぇし。
「……レディウス」
俺が1人でしょげていると、アレスに呼ばれた。気がついたらアレスは岩陰に隠れて、ロポは小さくなっている。そして、俺を手招きしている。俺はアレスの側まで寄る。
「さっきまで俺の事避けてたのに、急にどうしたんだ?」
「そ、それはもう良いじゃないか! そんな事よりあれ!」
アレスは、俺の言葉に慌てながらも、ある方向を指差す。俺もつられて指差す方を見ると、そこには
「ゴッゴゲゴゴ」
ガリガリと岩をかじる巨大な鶏がいた。いや、あれはもう鶏とは言えない。鋭く尖ったトサカ。ギョロッと出ている目。紫色のクチバシ。体長3メートルほどの巨体。茶色い体に紫色の斑点がある体。辺りを見回す三尾の蛇。中々気持ち悪いな。
「三尾の蛇か。強さ的にはBランクの少し上ぐらいかな。どうする、レディウス?」
「どうするって?」
「このまま戦うか、あれより弱そうな個体を探すか」
うーん。どうするか。確かに強そうな雰囲気は出ているが、俺とアレスが力を合わせれば戦えそうな気がする。それにロポもいるし。良し。ここは
「行こう。俺が突っ込むから、アレスは魔法で援護。ロポは俺の手伝いだ」
「よ、良し。わかったよ。レディウス」
「ん? どうした?」
「気をつけてね」
アレスは両手を握り締めながらそう言う。俺は笑いながら頷く。良し、先ずはコカトリスが気付く前に一太刀入れたいところだが。腰の剣を抜き
「しっ!」
魔闘脚を発動。一気にコカトリスへ迫る。このまま気付かれる前に一太刀を、っと思ったが、やはりそう簡単には行かないらしい。
理由は、俺が近づくと、尻尾の蛇が反応したのだ。そして俺の方についている蛇が噛み付いてきた。
「シュララ!」
俺はそれを左側に跳んで避ける。蛇はそのまま岩に噛み付いた。うわっ、岩が煙を出しながら溶け始めた。蛇の牙にも毒があるのか。
そして、蛇が動いた事によりコカトリスも俺に気が付いたようだ。そして俺の方を向こうとして
「グゥ!」
2メートル程の大きさになったロポが、右足でコカトリスの顔を殴る。コカトリスは軽く怯むが、直ぐに体勢を立て直してロポを睨む。蛇たちもシュルシュルと舌を出し入れして威嚇してくる。
そこに
「ファイアランス!」
アレスの火の槍が5本、コカトリスに向かって放たれる。しかし、コカトリスはそれらを跳んで避ける。目標を失った火の槍は岩へとぶつかり、岩が弾け飛ぶ。
跳んだコカトリスは、そのまま俺を踏みつけようと落ちてくる。もちろん、そんなの待つわけなく、その場から離れる。コカトリスはズドン! と音を立てて着地し、直ぐに俺に向かって走り出してくる。
首を後ろに逸らして
「ゴゲェェ!」
トサカで切りかかってきた。俺は後ろにある岩に跳んだ乗って、更にコカトリスを飛び越えるように跳ぶ。コカトリスはそのまま岩に切りかかる。岩は当然スパッと綺麗に切れてしまった。あれは剣でも受けるとヤバイかも。しかし、それ以上に
「シュララ!」
空中で身動き出来ない俺に向かって、蛇たちが噛み付いて来ようとする。まず一尾目の蛇の噛みつきを剣で防ぐ。蛇の上唇を剣で叩き、その反動で上に飛び蛇の頭に乗る。
二尾目の噛みつきを同じく跳んで避ける。三尾目がくる前に俺は二尾目の頭から降り、コカトリスへ切りかかる。しかし
「グゲェ!」
俺の剣を、見えていないはずのコカトリスがトサカで防いだのだ。トサカで防いだのも驚きだが、頭を後ろに逸らすぐらい首を曲げているのに辛そうな雰囲気が無い。どんな首しているんだよ。
地面に俺が降りた瞬間、アレスが再び火の槍を放つ。今度はコカトリスへ命中したが、爆発の煙から出てきたコカトリスは、少し表面が焦げただけだった。
こいつは中々手強いな。想像以上に面倒な相手だ。蛇の牙には毒があるから擦り傷も負えないし、コカトリスのトサカは鋭すぎて受けたく無い。まだ出していないが石化毒もある。
「ゴゴゴォ!!」
そう思っていたら喉が膨らみ出した。それを見たアレスは
「石化毒来るよ!」
と叫び出す。事前にアレスから聞いていた話だと、石化毒の袋は喉にあるって言っていたけど、あれのことか。そして
「グゲェ!」
コカトリスは石化毒を吐いてきた。狙いは俺の様だ。俺は直ぐにその場から避ける。これは喉が膨らむからまだ避けやすいな。
そして、コカトリスが石化毒を吐いた隙に、ロポがコカトリスへ突進する。蛇たちが邪魔をするが、ロポはそれを華麗に避け、コカトリスの横腹は頭突きをかます。
コカトリスは、グラリと体をふらつかせる。俺は直ぐにコカトリスへ迫り、魔闘装した剣で切りかかる。
「ゴゴッ!?」
コカトリスは切られた痛みに驚きの声を上げる。しかし、俺も驚いた。思っていた以上に硬いのだ。魔闘装した剣でも、軽く切れただけだ。今の俺がコカトリスを両断しようと思ったら魔闘装・極じゃないと厳しいな。
本当に面倒な相手だ。
「おーい、アレスー」
「……」
「おーいってばー」
「……なにさ」
「なんでそんなに離れて歩いているんだよ」
「べ、別に良いじゃないか!」
そう言い、再び先を歩くアレス。側にロポが付いてくれているから大丈夫だと思うが、どうしてこうなったんだろうか。
まあ、昨日の川での事が1番の理由なんだろうけど。夜はかなり距離を離れて過ごしたからな。野営の準備でも、俺の顔を一度も見ようとしなかったし。
朝起きてもそれは変わらず、こんな感じでずっと距離がある。自分にも付いているくせに。他人のでそこまで恥ずかしがらなくても良いのに。
朝、歩き始めてから既に数時間は経っている。日もそろそろ真上に上がる頃だ。歩き始めた頃はまだ鬱蒼と木々が茂っていたが、そろそろ中腹辺りになると、周りは膝ぐらいの草が少し生えているだけで、後はゴツゴツに岩があるだけだ。
その岩陰から時折ゴブリンが飛び出してくるのだが
「グゥ!」
2メートル程の大きさになったロポが右手ではたき、ゴブリンが吹き飛ぶ。首の骨がベキッと折れていた。
「はぁ〜。凄いなぁロポは。可愛いし、強いし、柔らかいし。えらいぞ〜」
「ググゥ!」
そんなロポにアレスは褒めて撫でてあげている。ロポも嬉しそうに鳴いている。そんなやり取りを見ている俺は、1人で辺りを警戒してと。べ、別に寂しくなんかねぇし。俺も構って欲しいとか思ってねぇし。
「……レディウス」
俺が1人でしょげていると、アレスに呼ばれた。気がついたらアレスは岩陰に隠れて、ロポは小さくなっている。そして、俺を手招きしている。俺はアレスの側まで寄る。
「さっきまで俺の事避けてたのに、急にどうしたんだ?」
「そ、それはもう良いじゃないか! そんな事よりあれ!」
アレスは、俺の言葉に慌てながらも、ある方向を指差す。俺もつられて指差す方を見ると、そこには
「ゴッゴゲゴゴ」
ガリガリと岩をかじる巨大な鶏がいた。いや、あれはもう鶏とは言えない。鋭く尖ったトサカ。ギョロッと出ている目。紫色のクチバシ。体長3メートルほどの巨体。茶色い体に紫色の斑点がある体。辺りを見回す三尾の蛇。中々気持ち悪いな。
「三尾の蛇か。強さ的にはBランクの少し上ぐらいかな。どうする、レディウス?」
「どうするって?」
「このまま戦うか、あれより弱そうな個体を探すか」
うーん。どうするか。確かに強そうな雰囲気は出ているが、俺とアレスが力を合わせれば戦えそうな気がする。それにロポもいるし。良し。ここは
「行こう。俺が突っ込むから、アレスは魔法で援護。ロポは俺の手伝いだ」
「よ、良し。わかったよ。レディウス」
「ん? どうした?」
「気をつけてね」
アレスは両手を握り締めながらそう言う。俺は笑いながら頷く。良し、先ずはコカトリスが気付く前に一太刀入れたいところだが。腰の剣を抜き
「しっ!」
魔闘脚を発動。一気にコカトリスへ迫る。このまま気付かれる前に一太刀を、っと思ったが、やはりそう簡単には行かないらしい。
理由は、俺が近づくと、尻尾の蛇が反応したのだ。そして俺の方についている蛇が噛み付いてきた。
「シュララ!」
俺はそれを左側に跳んで避ける。蛇はそのまま岩に噛み付いた。うわっ、岩が煙を出しながら溶け始めた。蛇の牙にも毒があるのか。
そして、蛇が動いた事によりコカトリスも俺に気が付いたようだ。そして俺の方を向こうとして
「グゥ!」
2メートル程の大きさになったロポが、右足でコカトリスの顔を殴る。コカトリスは軽く怯むが、直ぐに体勢を立て直してロポを睨む。蛇たちもシュルシュルと舌を出し入れして威嚇してくる。
そこに
「ファイアランス!」
アレスの火の槍が5本、コカトリスに向かって放たれる。しかし、コカトリスはそれらを跳んで避ける。目標を失った火の槍は岩へとぶつかり、岩が弾け飛ぶ。
跳んだコカトリスは、そのまま俺を踏みつけようと落ちてくる。もちろん、そんなの待つわけなく、その場から離れる。コカトリスはズドン! と音を立てて着地し、直ぐに俺に向かって走り出してくる。
首を後ろに逸らして
「ゴゲェェ!」
トサカで切りかかってきた。俺は後ろにある岩に跳んだ乗って、更にコカトリスを飛び越えるように跳ぶ。コカトリスはそのまま岩に切りかかる。岩は当然スパッと綺麗に切れてしまった。あれは剣でも受けるとヤバイかも。しかし、それ以上に
「シュララ!」
空中で身動き出来ない俺に向かって、蛇たちが噛み付いて来ようとする。まず一尾目の蛇の噛みつきを剣で防ぐ。蛇の上唇を剣で叩き、その反動で上に飛び蛇の頭に乗る。
二尾目の噛みつきを同じく跳んで避ける。三尾目がくる前に俺は二尾目の頭から降り、コカトリスへ切りかかる。しかし
「グゲェ!」
俺の剣を、見えていないはずのコカトリスがトサカで防いだのだ。トサカで防いだのも驚きだが、頭を後ろに逸らすぐらい首を曲げているのに辛そうな雰囲気が無い。どんな首しているんだよ。
地面に俺が降りた瞬間、アレスが再び火の槍を放つ。今度はコカトリスへ命中したが、爆発の煙から出てきたコカトリスは、少し表面が焦げただけだった。
こいつは中々手強いな。想像以上に面倒な相手だ。蛇の牙には毒があるから擦り傷も負えないし、コカトリスのトサカは鋭すぎて受けたく無い。まだ出していないが石化毒もある。
「ゴゴゴォ!!」
そう思っていたら喉が膨らみ出した。それを見たアレスは
「石化毒来るよ!」
と叫び出す。事前にアレスから聞いていた話だと、石化毒の袋は喉にあるって言っていたけど、あれのことか。そして
「グゲェ!」
コカトリスは石化毒を吐いてきた。狙いは俺の様だ。俺は直ぐにその場から避ける。これは喉が膨らむからまだ避けやすいな。
そして、コカトリスが石化毒を吐いた隙に、ロポがコカトリスへ突進する。蛇たちが邪魔をするが、ロポはそれを華麗に避け、コカトリスの横腹は頭突きをかます。
コカトリスは、グラリと体をふらつかせる。俺は直ぐにコカトリスへ迫り、魔闘装した剣で切りかかる。
「ゴゴッ!?」
コカトリスは切られた痛みに驚きの声を上げる。しかし、俺も驚いた。思っていた以上に硬いのだ。魔闘装した剣でも、軽く切れただけだ。今の俺がコカトリスを両断しようと思ったら魔闘装・極じゃないと厳しいな。
本当に面倒な相手だ。
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