人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第20話 妖術師との思い出 〜狐々愛過去篇〜

 妖術師たちの登場により、戦は人間が優勢になった。
 妖怪たちを次々に封印し、一方的だった妖怪たたの進軍を退けていた。

「妖術師様にかかれば妖怪など恐れるに足らんな!」

「あんなに怖がっておった奴が何を言ってる」

「う、うるさい! あれはそう……武者震いじゃ!」

 初めは武士のプライドから妖術師を毛嫌いしていた者たちも、今では妖術師を様付けで呼ぶようになった。
 妖怪たちの進軍も一先ず止み、人間たちの心にも少しは余裕が出来たようだ。

「皆元気そうじゃの」

 人間たちが和気藹々と話している様子を、狐々愛は物見櫓から嬉しそうに見ていた。

「元気なのは良いことではないですか」

 狐々愛は後ろから聞こえた声に振り返る。
 そこにはまだ若く、青年というべき年齢の男が立っていた。
 手には酒の入った瓢箪と盃を二つ持っている。

「そう言うお主は元気がないのう」

「連日妖怪を封印していたらそれは疲れますよ」

 そう語る青年は狐々愛の呼びかけに応じた妖術師の一人である。
 幼い頃から修行をして、人より早く術を身につけてた天才と言われる部類の人間だ。

「無理はするな。お主も元気が一番じゃからの」

「はい」

 青年は狐々愛の目を見てしっかりと頷いた。

「ん? その手首の数珠は何じゃ?」

「ああ、これは加護があるからとハルアキ様から頂きました」

「加護……」

「おーい火乃香ほのか、そろそろ出発だぞー」

 もっと詳しく聞こうかと思ったが、思わぬ邪魔が入ってしまった。
 遠くから他の妖術師が男を呼ぶ声が聞こえる。

「天狐様と酒でも飲もうかと思っておりましたが、仕方ない。それでは、行って参ります。天狐様」

「無理をするなと言っておる側から……」

「大丈夫ですよ。私は体だけは丈夫ですから」

 火乃香はそう言い一礼すると、酒と盃を置いて仲間の元へと走って行った。

「変わった奴じゃの……」

 妖術師の多くが妖怪によって家族を奪われた者たちだ。
 その者たちが独学で研究して産まれたのが妖術師なのだ。
 奇しくも妖怪を倒すために妖怪の力を借りることになるとは、神はなかなか残酷なことをする。
 覚えていないだろうが火乃香も幼い頃に両親を妖怪に殺されている。
 それなのに妖怪である狐々愛を他の人間と変わらずに接してくれる。

「人間が皆彼奴の様じゃったらもしかしたらこんな戦も起きなかったかもしれないの……まぁ、妖怪たちが聞く耳を持っておらんから土台無理な話か……」

 狐々愛は寂しそうな声でそう呟いた。




 妖術師たちが参戦してからと言うもの、妖怪たちの勢力は瞬く間に衰弱していった。

「我々の勝利は遠くない! 皆の者、後少しの辛抱だ、後少しので全ての妖怪どもを封印することが出来る!」

 力強く語るのは妖術師のリーダーの男だ。

「おお! 流石はハルアキ様だ!」

「ハルアキ様万歳!」

 妖術師の力を疑う者はもう誰一人としてい無くなっていた。

「長かった戦いもようやく終わりですね」

「そうじゃな……」

 火乃香の言葉に答える狐々愛の表情はどこか暗い。
 かつての仲間である妖怪たちが封印されるのだ、無理もないだろう。

「天狐様」

「何じゃ?」

「辛い時は言ってください、私でよければ話を聞くことくらい出来ます。天狐様も元気が一番ですよ」

 本当にこの男は妖怪との壁が無い、不思議な男だ。

「そうじゃの、それじゃあ早速一つ悩みを聞いてもらおうかの」

「お、いいですよ。何でも言ってみてください」

 火乃香は自信満々に胸を叩いた。

「最近妾に馴れ馴れしくしてくる輩がおってな? 其奴をどのように対処すれば良いかわからんのじゃ」

「へぇ〜そんな奴が………って、それ私じゃないですか!?」

 火乃香が綺麗にノリツッコミを入れる。
 もしかするとこれが日本初のノリツッコミかもしれない。

「ふふ、冗談じゃ。むしろお主には感謝しておる」

 狐々愛は悪戯な笑顔を浮かべる。

「感謝?」

「うむ。人間たちは皆、心の何処かで妾のことを恐れておる。しかしお主は、お主だけは妾に恐れを抱いておらん。お主は妾が怖くないのか?」

「当たり前でしょ? だって天狐様のどこを見たら怖い何て思うんですか?」

 意外だった。
 火乃香は当然のように怖くないと言ってくれた。

「私は知っていますから。天狐様が封印された妖怪たちに対して涙を流していることも、傷ついた妖術師や武士たちのために、夜な夜な治癒の術をかけて回っていることも、今までに命を落とした人間たちの墓に毎日花を生けていることも」

 火乃香は夜空を見上げながら言った。

「火乃香……」

「私は知っています」

 そう言うと火乃香は狐々愛の目を見た
 そして一呼吸置いて言った。

「天狐様がこの国で一番優しく、強いことを」

 狐々愛は驚きのあまり言葉が出なかった。
 今までの自分の行いを、見てくれていた人がいたのだ。

「天狐様?」

 黙っている狐々愛を心配して火乃香が名前を呼ぶ。

「……とう」

「何です?」

「ありがとう……火乃香」

 それはこれまで人間と一定の距離を置いていた狐々愛にとって、初めての心の底からの本音だった。

「どういたしまして」

 火乃香は子供のような顔で笑った。
 狐々愛はその輝くような笑顔を忘れまいと瞼の裏に焼き付けた。

「そうだ! 私三日後に休みをもらいまして、もし天狐様が良ければ一緒に町に行きませんか?」

「町に? どうして?」

 火乃香は少し恥ずかしそうに頭を掻いている。

「えっと……買い物ですよ。その……最近気になる女子おなごがおりまして……」

「……妾と一緒でいいのか?」

 狐々愛が不安そうに聞くと、火乃香は少し驚いた顔をした。

「天狐様とがいいんです!」

 そう言う火乃香の顔は年相応の青年のそれだ。
 本来なら妖怪などと戦わず、普通の恋愛をして、普通の家庭を築くはずだったのだ。
 それを妖怪のせいで奪われてしまった。
 狐々愛はどうしてもその罪滅ぼしがしたかった。

「わかった、一緒に行ってやろう。約束じゃ」

「約束ですからね!」

 火乃香は嬉しそうに笑った。




「ハルアキ様、例の準備滞りなく進んでおります」

「そうか、御苦労」

「完成にはもう少し時間がかかるかと」

「構わん。引き続きやれ」

「はっ」

 ハルアキは呪符に妖力を込める作業に戻る。

「後少しで我々の悲願が果たされる……ふふ、ふはははは!」

 ハルアキの不気味な笑い声が暗い部屋に響いていた。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

皆さま明けましておめでとうございます!

これからしばらく過去篇が続きます、ご了承ください。
これからもこの作品をよろしくお願いします!




それでは今回紹介するのは、『クロシヲ』先生です!




タイトル: 「邪神と一緒にVRMMO 〜邪神様は自重しない〜」

ジャンル:SF

紹介文:はじめまして、クロシヲです。主人公が邪神とワイワイしたり、邪神をドン引きさせたり、そんな小説です。
読んでみてください

書いてみたけどくそ下手だなちくせう



前にSF小説を書いてた時に一度も勝てなかった作品です。
読んで損はさせません。

次回も作品紹介をしていきます!
それではまた次回!



2020/4/24一部改稿

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