人外と友達になる方法

コング“シルバーバック”

第17話 掃除問答 〜雷王篇〜

 放課後の科学室に生徒四人の影があった。

「頼む!」

「「嫌だ」」

「そこをなんとか!」

「「嫌だ」」

 奏鳴は悠火と光秀に掃除を手伝って欲しいと頼み込んでいる。
 それを狐々愛は面白そうに見守っている。

「なら妾が手伝うぞ?」

「えっ! いいの狐々愛ちゃん!」

「うむ。元はと言えば妾にも非がないわけでもない」

「狐々愛ちゃんマジ天使!」

「妾は妖狐じゃ」

 なかなか鋭いつっこみだ。
 こういう現代ならではのノリもおいおい教えていかなくてはなるまい。

「ちょっと待て、狐々愛が残るなら俺も残らなくちゃいけなねぇじゃん」

 悠火の式神である狐々愛が学校に残るのなら、その主人たる悠火が残らないわけにもいかない。

「悠火も残るの?」

「狐々愛が残るならな」

 すると光秀が少し曇った表情をする。

「……悠火、噂になってるの知ってる?」

「噂?」

 高校生の定番、恋バナは何度か聞いたことがあるが、自分に関する噂などは聞いたことがない。

「どんな噂だよ?」

「悠火と狐々愛さんがその………できてるんじゃないかって」

「はぁ!?」

 できてるとはつまり、そういうことである。

「悠火。できてるとは何じゃ?」

「できてるってのは…あれだ、つがい?」

「なっ! ………ボンッ!」

 狐々愛の顔が真っ赤になる。
 そして、爆発した。

「つがいは言い過ぎだよ。恋仲ってことだよ狐々愛さん」

「こっ!…………ボンッ!」

 そして再び爆発。
 ここまでパニックに陥っている狐々愛はなかなか見れない。

「まあ、狐々愛と俺は従姉妹って設定だから、ある程度は大丈夫だろ」

「ほどほどにね。狐々愛さんを狙ってる男子もいるみたいだから」

「へ〜、よかったな狐々愛」

「…………」

 狐々愛に話しかけるが応答はない。

「狐々愛?」

 顔を除き込むように見ると、狐々愛は顔を真っ赤に染め泣いていた・・・・・
 女の涙の理由わけを詮索するようなことはしない。
 それに気付いたのが悠火だったので、二人に気付かれる前に話題を変えることにした。

「それはそうと、光秀はどうするんだ?」

「僕は今日塾」

「あ、そうか。ガンバ」

 光秀はカバンを持ち、帰る準備を完了させていた。

「それじゃ。奏、ちゃんと掃除するんだよ」

「おうよ! 任せとけ!」

「それじゃ」

 光秀は三人に手を振りながら教室の戸を開けて帰って行った。

「さて、早く掃除終わらせようぜ!」

「お前が仕切んな!」




 化学室の掃除は、床の掃き掃除と拭き掃除、白衣の洗濯やビーカーの掃除などなどだ。

「終わったぁ」

「疲れたのじゃ」

「二人とも本当ありがと!」

「コーヒーな」

「……わかったよ」

 三人は化学室を施錠し、先生に謝罪し、学校を後にした。
 途中コンビニに寄り奏鳴にコーヒーを奢ってもらう。
 狐々愛はもちろんココアだ。

「なあ奏鳴」

「ん?」

「最近噂とかは無いのか? 前の七不思議みたいな」

 今のところ河童も雷王も情報は奏鳴経由で聞いている。
 噂というのもなかなか馬鹿に出来ないものだ。

「ん〜……無いなぁ」

 しばらく考えたが結局特に思い当たる節はなかったらしい。

「そもそもそう言う噂はどこで仕入れるんだよ」

 河童や雷王の件はどちらもかなり具体的だった。
 一体どこでそんな噂を仕入れるのだろう。

「裏山のはうちの爺ちゃんからで、パソコン室のは先輩から」

 奏鳴の祖父は寺の住職をしている。
 もしかしたらそう言う噂が集まるのかもしれない。

「なるほどな。また仕入れたら教えてくれよな」

「おう!」

 三人は再び家へと歩みを進めた。




 家に帰り宿題と晩ご飯を済ませた悠火と狐々愛はゲームをしている。
 狐々愛は現代の技術にとにかく驚いている。
 一番驚いていたのがゲームだ。
 中でも格ゲーが好みのようだ。

「また妾の勝ちじゃな!」

 しかも強い。

「……もう一戦」

「望むところじゃ!」

 結局その夜は一勝もできなかった。




読んでいただきありがとうございます。コングです。

今回はほのぼの日常回です。
日常回は書いてて楽しいしアイデアが出るので更新早めです。

それではまた次回!



2020/4/18一部改稿

コメント

  • 白葉南瓜

    読んでて、やっぱりその世界に引き込まれていきますね…最高です!

    1
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