人外と友達になる方法
第10話 転入生特有のやつ 〜学校篇〜
時は流れ数日後。
「はい、静かにー。今日は皆さんにお知らせがありまーす」
ざわついていた教室が静かになり、担任の三善の話に耳を傾ける。
「今日からこのクラスに一人転入生が入ることになりました。それじゃ入って来て」
三善は廊下の方に向かって声をかける。
すると、教室の扉がゆっくりと開き転校生と思われる女子生徒が入って来た。
「はい、みんな静かに。それじゃあ自己紹介してくれるか?」
三善に促されて、女子生徒は一歩前に出る。
「今日からこのクラスに転入して来た、伊鳴狐々愛と申します。よろしくお願いします!」
転入生、伊鳴狐々愛の正体は何を隠そう天狐である。
この数日で悠火が基本的な知識や学力、常識や喋り方などを叩き込んだ甲斐あって、天狐は現代の女子高生と比べても遜色ないほどの仕上がりになっていた。
「皆んな、伊鳴と仲良くするようにな。席はあそこだ」
三善が指差したのは、悠火の隣の席である。これも静香と校長の差し金だろう。
クラスメイトの拍手に迎えられ、天狐改め狐々愛の学園生活がスタートした。
息つく間もなく、狐々愛は転校生特有の質問責めにあっていた。
「ねぇ! 狐々愛ちゃんって前はどこに住んでたの?」
「部活何に入るか決めた?」
「伊鳴って悠火の親戚か何かか?」
急に何人もの生徒に囲まれて狐々愛は慌てふためいていた。
見かねた悠火が助け船を出す。
「狐々愛は俺の従姉妹で、こっちに来る前はど田舎に住んでて、部活は今のところ入らない予定だ」
下手に答えて狐々愛がボロを出してしまってはいけない。
「何でお前が答えるんだよ! 俺だって狐々愛ちゃんと話したい〜!」
奏鳴が口を尖らせる。
こいつはお前の記憶を消した張本人だぞ。
「悪い悪い。でも、こいつあんまり大勢に囲まれるの慣れてないんだ。だから、あんまり質問責めにしてやるなよ」
「そうなのか……ごめんな狐々愛ちゃん」
「ううん。大丈夫よ」
狐々愛は愛想のいい笑顔で答える。
それにしても狐々愛の豹変っぷりには驚かされる。
たった数日でカタカナや、簡単な英語、一般常識を身につけた学習能力の高さには頭が上がらない。
「お前ら〜席につけ〜。授業始まるぞ〜」
先生の一声によりなんとか質問責めから解放された狐々愛は隣の悠火にしか聞こえないくらいの小さなため息をついた。
大分疲れたのだろう。
長い長い一日が終わり、悠火と狐々愛は一緒に帰ろうとしていた。
「おい、悠火。ちょっとこっち来い」
奏鳴が何やら手招きをしている。
その表情はとても神妙だ。
「何だよ? 今から帰るところなのに」
「まさかとは思うけどな、念のため、念のために確認なんだが……」
「何だよ? 早く言えよ」
奏鳴は深呼吸をすると悠火を真っ直ぐに見つめて早口で尋ねた。
「狐々愛ちゃんってどこに住んでんの?」
「どこって、うちだけど」
「お前ん家?」
「そう」
「そうか……」
奏鳴が悠火との距離を取る。
何やら嫌な予感がする。
そしてその予感は的中した。
「この、裏切り者がぁー!」
奏鳴の飛び蹴りを躱し、悠火は弁解のために口を開く。
「ちょ、ちょっと待てよ奏。第一、裏切りって何だよ!」
「こんな可愛い子と一つ屋根の下だと!? 何て羨ま……羨ましい!」
「言い直してねぇ! 狐々愛は従姉妹だって!」
「問答無用だぁ!」
その後数分に及ぶ格闘の末、なんとか奏鳴を説得できたのであった。
「「だだいま〜」」
二人で下校(途中まで奏鳴同伴)した悠火と狐々愛は一日の疲れを感じていた。
「疲れた〜」
「転入生があんなに大変じゃとは知らんかったぞ……」
ちなみに、狐々愛は家では今まで通りの口調である。
「あれはお約束だからな」
「そうなのか? まあ、楽しかったからいいんじゃが」
「二人ともご飯までまだ時間あるから、先にお風呂入っちゃいなさい」
「「は〜い」」
お風呂に入る順番は狐々愛が一番最初と決まっている。
そして、その後が悠火、最後が静香だ。
「極楽じゃった〜」
風呂場の方から狐々愛の声が聞こえる。
「お、上がったか? じゃあ、続いて俺も……!」
風呂場の方に視線をやると、そこには白く艶やかな肢体を曝け出した狐々愛がいた。
「おい! 狐々愛! 服を着ろ!」
今現在の狐々愛は見た目同い年の人間にしか見えない。
いくら相手が何百歳も年上の妖怪で、変幻した仮の姿だとしても、流石に同い年の女子(それも美少女)の裸はマズイ……ありがとうございます。
「お、すまんのぉ。なんせ何百年も封印されてずっと一人じゃったから、人目なんぞ気にしてなくてのう」
孤々愛は笑っているが早く隠して欲しい。
「いいから早く!」
「わかったわかった。変化!」
狐々愛が変幻しいつもの和装に戻る。
ついでに耳も尻尾も生え、見た目も少女に戻っている。
「……もう少し見惚れてもいいんじゃぞ?」
「うるさい! 風呂行くから!」
「……つまらんのぉ」
悠火は風呂場に逃げ込むように駆け込む。
「眼福です!」
悠火は小さくガッツポーズをした。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ついに天狐の名前が決まりました!
“狐々愛”割と本気で気に入ってます。
これからも妖怪に名前をつけると思いますが、多分キラキラネームになるかと…
それではまた次回!
2020/4/13一部改稿
「はい、静かにー。今日は皆さんにお知らせがありまーす」
ざわついていた教室が静かになり、担任の三善の話に耳を傾ける。
「今日からこのクラスに一人転入生が入ることになりました。それじゃ入って来て」
三善は廊下の方に向かって声をかける。
すると、教室の扉がゆっくりと開き転校生と思われる女子生徒が入って来た。
「はい、みんな静かに。それじゃあ自己紹介してくれるか?」
三善に促されて、女子生徒は一歩前に出る。
「今日からこのクラスに転入して来た、伊鳴狐々愛と申します。よろしくお願いします!」
転入生、伊鳴狐々愛の正体は何を隠そう天狐である。
この数日で悠火が基本的な知識や学力、常識や喋り方などを叩き込んだ甲斐あって、天狐は現代の女子高生と比べても遜色ないほどの仕上がりになっていた。
「皆んな、伊鳴と仲良くするようにな。席はあそこだ」
三善が指差したのは、悠火の隣の席である。これも静香と校長の差し金だろう。
クラスメイトの拍手に迎えられ、天狐改め狐々愛の学園生活がスタートした。
息つく間もなく、狐々愛は転校生特有の質問責めにあっていた。
「ねぇ! 狐々愛ちゃんって前はどこに住んでたの?」
「部活何に入るか決めた?」
「伊鳴って悠火の親戚か何かか?」
急に何人もの生徒に囲まれて狐々愛は慌てふためいていた。
見かねた悠火が助け船を出す。
「狐々愛は俺の従姉妹で、こっちに来る前はど田舎に住んでて、部活は今のところ入らない予定だ」
下手に答えて狐々愛がボロを出してしまってはいけない。
「何でお前が答えるんだよ! 俺だって狐々愛ちゃんと話したい〜!」
奏鳴が口を尖らせる。
こいつはお前の記憶を消した張本人だぞ。
「悪い悪い。でも、こいつあんまり大勢に囲まれるの慣れてないんだ。だから、あんまり質問責めにしてやるなよ」
「そうなのか……ごめんな狐々愛ちゃん」
「ううん。大丈夫よ」
狐々愛は愛想のいい笑顔で答える。
それにしても狐々愛の豹変っぷりには驚かされる。
たった数日でカタカナや、簡単な英語、一般常識を身につけた学習能力の高さには頭が上がらない。
「お前ら〜席につけ〜。授業始まるぞ〜」
先生の一声によりなんとか質問責めから解放された狐々愛は隣の悠火にしか聞こえないくらいの小さなため息をついた。
大分疲れたのだろう。
長い長い一日が終わり、悠火と狐々愛は一緒に帰ろうとしていた。
「おい、悠火。ちょっとこっち来い」
奏鳴が何やら手招きをしている。
その表情はとても神妙だ。
「何だよ? 今から帰るところなのに」
「まさかとは思うけどな、念のため、念のために確認なんだが……」
「何だよ? 早く言えよ」
奏鳴は深呼吸をすると悠火を真っ直ぐに見つめて早口で尋ねた。
「狐々愛ちゃんってどこに住んでんの?」
「どこって、うちだけど」
「お前ん家?」
「そう」
「そうか……」
奏鳴が悠火との距離を取る。
何やら嫌な予感がする。
そしてその予感は的中した。
「この、裏切り者がぁー!」
奏鳴の飛び蹴りを躱し、悠火は弁解のために口を開く。
「ちょ、ちょっと待てよ奏。第一、裏切りって何だよ!」
「こんな可愛い子と一つ屋根の下だと!? 何て羨ま……羨ましい!」
「言い直してねぇ! 狐々愛は従姉妹だって!」
「問答無用だぁ!」
その後数分に及ぶ格闘の末、なんとか奏鳴を説得できたのであった。
「「だだいま〜」」
二人で下校(途中まで奏鳴同伴)した悠火と狐々愛は一日の疲れを感じていた。
「疲れた〜」
「転入生があんなに大変じゃとは知らんかったぞ……」
ちなみに、狐々愛は家では今まで通りの口調である。
「あれはお約束だからな」
「そうなのか? まあ、楽しかったからいいんじゃが」
「二人ともご飯までまだ時間あるから、先にお風呂入っちゃいなさい」
「「は〜い」」
お風呂に入る順番は狐々愛が一番最初と決まっている。
そして、その後が悠火、最後が静香だ。
「極楽じゃった〜」
風呂場の方から狐々愛の声が聞こえる。
「お、上がったか? じゃあ、続いて俺も……!」
風呂場の方に視線をやると、そこには白く艶やかな肢体を曝け出した狐々愛がいた。
「おい! 狐々愛! 服を着ろ!」
今現在の狐々愛は見た目同い年の人間にしか見えない。
いくら相手が何百歳も年上の妖怪で、変幻した仮の姿だとしても、流石に同い年の女子(それも美少女)の裸はマズイ……ありがとうございます。
「お、すまんのぉ。なんせ何百年も封印されてずっと一人じゃったから、人目なんぞ気にしてなくてのう」
孤々愛は笑っているが早く隠して欲しい。
「いいから早く!」
「わかったわかった。変化!」
狐々愛が変幻しいつもの和装に戻る。
ついでに耳も尻尾も生え、見た目も少女に戻っている。
「……もう少し見惚れてもいいんじゃぞ?」
「うるさい! 風呂行くから!」
「……つまらんのぉ」
悠火は風呂場に逃げ込むように駆け込む。
「眼福です!」
悠火は小さくガッツポーズをした。
読んでいただきありがとうございます。コングです。
ついに天狐の名前が決まりました!
“狐々愛”割と本気で気に入ってます。
これからも妖怪に名前をつけると思いますが、多分キラキラネームになるかと…
それではまた次回!
2020/4/13一部改稿
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コメント
ノベルバユーザー269644
ココア…狐々愛…あっ(察し)( ・ω・)