人外と友達になる方法
第7話 コーヒーとココア 〜学校篇〜
天狐のことが静香にばれ、仕方なく悠火は今日あった出来事を包み隠さず話した。
天狐が妖怪であること。
裏山に河童が出て、襲われたこと。
その河童を天狐が退治したこと。
「じゃあ、この子……天狐ちゃんは妖怪なの?」
「うん……そういうこと。で、でも俺が天狐に助けられたのは事実だし、こいつは悪い奴じゃないんだ」
「静香殿、悠火を叱らんでやってくれ」
悠火と天狐は必死に互いを庇う。
しかし、それに対する静香の返答は意外なものだった。
「わかったわ。つまり天狐ちゃんはいい妖怪なのね? それなら好きなだけここに居てもいいわよ」
「「え?」」
意外にあっさりと受け入れられたことに、二人は驚く。
てっきりもっと悩まれるかと思ったのだが。
「伊鳴家は先祖代々、お稲荷様を祀ってるの。だから狐の妖怪は神様の使いみたいなものだわ」
「い、いいのか婆ちゃん」
まさか受け入れられるとは思わず、悠火は戸惑っていた。
「ええ、悪い妖怪だったらうちの敷居を跨がせることはさせないけどね。でも、天狐ちゃんはいい子なんでしょ? じゃあ、うちに上がるのに何の問題もないわ。天狐ちゃん、こんなところでよかったらゆっくりしてね。悠火とも仲良くしてあげてね?」
「勿論じゃ!」
天狐は嬉しそうに尻尾を振っている。
「なら、今日から天狐ちゃんはうちの家族よ。よろしくね」
「よろしくの、静香殿」
静香からの許可も得て、正式に天狐が家族となった。
そして長い回想を経て。
「おお! 遅かったのう。先に頂いておるぞ!」
「馴染み過ぎだろ…」
食卓には姿勢正しく椅子に座り、箸とお碗を持って口をもぐもぐとさせている天狐の姿があった。
ご飯に味噌汁、焼き魚に漬物とThe和食といったメニューだ。
「はい、悠火はいつものパンとコーヒーね」
静香が悠火の朝食を運んでくる。
悠火は朝食にいつも食パンとコーヒーを食べている。
朝はご飯よりパン派だ。
「ありがと」
朝に飲むコーヒーは格別に美味しい。
うん。
この刺さるような視線が無ければ。
「ゆ、悠火! この禍々しい汁は何じゃ!」
天狐がまるでゲテモノでも見ているのような目付きで悠火のことを見てくる。
いや、正確には手に持ってあるマグカップの中のコーヒーを見ている。
「ん? コーヒーのことか?」
長い間封印されていた天狐はどうやらコーヒーを知らないらしい。
「今の人間はそんな物を飲むのか? 妾が封印されておった間に日本は変わってしもうたのう……」
「まあ、そう言わず飲んでみなよ。美味しいぞ?」
天狐の前にコーヒーを置くが手を触れようともしない。
「しかし、この禍々しさは……」
「食べず嫌いはお父さん関心しないなぁ」
「妾の父親面をするでない! わかったわい! 飲めば良いのだろう! 飲めば!」
天狐は目の前に置かれたマグカップを勢いよく手に取り、そして一気に飲み干した。
「苦っ!」
そして、吹き出した。
少し時間が経ち、悠火が学校へ行ったため家には天狐と静香の2人になった。
先の一件以来、天狐はご機嫌斜めだ。
「静香殿の作る料理はどれも美味いが、こーひーはダメじゃ……あれはダメじゃ……」
「まあ、さっきのはブラックだったからね。これなら天狐ちゃんでも飲めるわよ」
そう言って、静香は天狐の前にココアを置いた。
「さっきのこーひーよりは色が白いのう?」
「これはココアって言うのよ。これは甘いくて美味しいわよ。実は私もコーヒーは苦手でね。ココアの方が好きなのよ」
静香は少し恥ずかしそうにそう言った。
天狐は恐る恐るココアを飲む。
「ゴクンッ……! 美味い! 美味いぞ!」
「それは良かったわ」
静香はキッチンで食器洗いをしに戻る。
その背中に向かって天狐は問いかけた。
「静香殿。聞きたいことがあるんじゃが」
「何かしら?」
「どうして昨日の夜、悠火に本当のことを言ってやらなかった?」
その言葉を聞いた静香の足が止まる。
後ろから表情は見えないが先ほどまでのニコニコとした顔をしていないのは確かだろう。
「何のことかしら?」
そう言った静香の声は本当に何を言っているかわからないかのようだった。
普通なら騙されていただろう。
しかし相手は悠久の時を生きてきた大妖怪だ。
そんなハッタリが通じる相手ではない。
「とぼけても無駄じゃぞ。伊鳴家は先祖代々お稲荷様を祀っている、これは本当のことじゃが、静香殿は悠火に1番大事なことを伝えていない。それはー」
天狐が小さく息を吸う。
「伊鳴家が代々続く妖術師の家系だということじゃ」
読んでいただきありがとうございます。コングです。
僕もブラックコーヒーが飲めません。ミルクがあると飲めますが、ココアの方が好きです。
今回は少し短くてすみません。
それではまた次回!
2020/4/13一部改稿
天狐が妖怪であること。
裏山に河童が出て、襲われたこと。
その河童を天狐が退治したこと。
「じゃあ、この子……天狐ちゃんは妖怪なの?」
「うん……そういうこと。で、でも俺が天狐に助けられたのは事実だし、こいつは悪い奴じゃないんだ」
「静香殿、悠火を叱らんでやってくれ」
悠火と天狐は必死に互いを庇う。
しかし、それに対する静香の返答は意外なものだった。
「わかったわ。つまり天狐ちゃんはいい妖怪なのね? それなら好きなだけここに居てもいいわよ」
「「え?」」
意外にあっさりと受け入れられたことに、二人は驚く。
てっきりもっと悩まれるかと思ったのだが。
「伊鳴家は先祖代々、お稲荷様を祀ってるの。だから狐の妖怪は神様の使いみたいなものだわ」
「い、いいのか婆ちゃん」
まさか受け入れられるとは思わず、悠火は戸惑っていた。
「ええ、悪い妖怪だったらうちの敷居を跨がせることはさせないけどね。でも、天狐ちゃんはいい子なんでしょ? じゃあ、うちに上がるのに何の問題もないわ。天狐ちゃん、こんなところでよかったらゆっくりしてね。悠火とも仲良くしてあげてね?」
「勿論じゃ!」
天狐は嬉しそうに尻尾を振っている。
「なら、今日から天狐ちゃんはうちの家族よ。よろしくね」
「よろしくの、静香殿」
静香からの許可も得て、正式に天狐が家族となった。
そして長い回想を経て。
「おお! 遅かったのう。先に頂いておるぞ!」
「馴染み過ぎだろ…」
食卓には姿勢正しく椅子に座り、箸とお碗を持って口をもぐもぐとさせている天狐の姿があった。
ご飯に味噌汁、焼き魚に漬物とThe和食といったメニューだ。
「はい、悠火はいつものパンとコーヒーね」
静香が悠火の朝食を運んでくる。
悠火は朝食にいつも食パンとコーヒーを食べている。
朝はご飯よりパン派だ。
「ありがと」
朝に飲むコーヒーは格別に美味しい。
うん。
この刺さるような視線が無ければ。
「ゆ、悠火! この禍々しい汁は何じゃ!」
天狐がまるでゲテモノでも見ているのような目付きで悠火のことを見てくる。
いや、正確には手に持ってあるマグカップの中のコーヒーを見ている。
「ん? コーヒーのことか?」
長い間封印されていた天狐はどうやらコーヒーを知らないらしい。
「今の人間はそんな物を飲むのか? 妾が封印されておった間に日本は変わってしもうたのう……」
「まあ、そう言わず飲んでみなよ。美味しいぞ?」
天狐の前にコーヒーを置くが手を触れようともしない。
「しかし、この禍々しさは……」
「食べず嫌いはお父さん関心しないなぁ」
「妾の父親面をするでない! わかったわい! 飲めば良いのだろう! 飲めば!」
天狐は目の前に置かれたマグカップを勢いよく手に取り、そして一気に飲み干した。
「苦っ!」
そして、吹き出した。
少し時間が経ち、悠火が学校へ行ったため家には天狐と静香の2人になった。
先の一件以来、天狐はご機嫌斜めだ。
「静香殿の作る料理はどれも美味いが、こーひーはダメじゃ……あれはダメじゃ……」
「まあ、さっきのはブラックだったからね。これなら天狐ちゃんでも飲めるわよ」
そう言って、静香は天狐の前にココアを置いた。
「さっきのこーひーよりは色が白いのう?」
「これはココアって言うのよ。これは甘いくて美味しいわよ。実は私もコーヒーは苦手でね。ココアの方が好きなのよ」
静香は少し恥ずかしそうにそう言った。
天狐は恐る恐るココアを飲む。
「ゴクンッ……! 美味い! 美味いぞ!」
「それは良かったわ」
静香はキッチンで食器洗いをしに戻る。
その背中に向かって天狐は問いかけた。
「静香殿。聞きたいことがあるんじゃが」
「何かしら?」
「どうして昨日の夜、悠火に本当のことを言ってやらなかった?」
その言葉を聞いた静香の足が止まる。
後ろから表情は見えないが先ほどまでのニコニコとした顔をしていないのは確かだろう。
「何のことかしら?」
そう言った静香の声は本当に何を言っているかわからないかのようだった。
普通なら騙されていただろう。
しかし相手は悠久の時を生きてきた大妖怪だ。
そんなハッタリが通じる相手ではない。
「とぼけても無駄じゃぞ。伊鳴家は先祖代々お稲荷様を祀っている、これは本当のことじゃが、静香殿は悠火に1番大事なことを伝えていない。それはー」
天狐が小さく息を吸う。
「伊鳴家が代々続く妖術師の家系だということじゃ」
読んでいただきありがとうございます。コングです。
僕もブラックコーヒーが飲めません。ミルクがあると飲めますが、ココアの方が好きです。
今回は少し短くてすみません。
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