【完結】女装男子のインビジブルな恋愛事情。
■【四章 GOOD LUCK,】■
エアコンが快適空間を作る部屋で日課の読書をしていたが、外壁に張り付いている夏の風物詩の電子的な鳴き声によって、集中力がどんどん奪われていく。
蝉が鳴く理由は、子孫を残すためだと訊いた。
蝉の声を人間の言葉に訳すと「子孫を残してえ! 相手はだれでもいいから俺の子どもを産んでくれ、ガチで!」って具合だろうか?
どうして佐竹の声で脳内再生されたのかは兎も角、こうも邪魔されては気が散って仕方がない。勉強卓の上に開いていた〈unhappy umbrella〉に、紐栞を挟んで閉じた。
手元よりもちょっと離れた場所に置いたストレートグラスに手を伸ばし、溶けた氷で薄まったアイスコーヒーを一口飲む。百均で購入した珪藻土のコースターが水滴を吸収してくれるので、水を拭き取る手間がなくていい。我ながら、「いい買い物をした」と思いながら、コースターに浮かび上がっている水跡にグラスの底を重ねた。
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