幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

120話 クラリスちゃん



 放課後、クラリスさんは1度父親にあって施設でゆっくり話すことになった。
 アイリ達はクラリスさんの指示によって付いてきてはダメだと言われてしまい、シンシアが学校にいる間はベタベタと付いてきていた。


「シンシアちゃん本当に不老なんだね〜……可愛いシンシアちゃんのまんま。あっ、可愛いって言われるの嫌だったんだっけ」
「いや……もういいよ」


 身内には可愛いと思われても仕方ない。そう思った方が気が楽だ。


「シンシア僕の事覚えてる〜?」
「イヴ様を忘れる訳ないだろ」


 イヴは昔よりもかなり可愛くなっている。美人になるというより、可愛く、だ。まつ毛も伸びてきて目も大きくてキラキラしている。髪の毛はアイリが結んでくれたのだろうか。とてもオシャレだ。


 まさに両手に薔薇といった感じで、教室の椅子に座らされてアイリとイヴに挟まれている。


「はぁ〜シンシアちゃんの匂い」
「そういえば、なんかアイリ筋肉付いた?」


 抱きしめられた時に、ゴツゴツと筋肉らしき物を感じたシンシアは聞いてみた。


「そうなの! 魔法じゃなくて剣の道を極めようと思ってね。そろそろ王国にある騎士団に入って訓練を受けようと思うの」
「おぉ〜! す……ごいな。俺なんてまだ……」


 俺はまだ可愛い可愛い言われて、サラがいないと何も出来なくて大魔道士として認められない3流だ。


「……イ、イヴはどうなんだ? 将来何するとか決めた?」
「僕はね〜女装の道を突き進むよ」


 ……え? この人魔王だよね? 黒くて大きなドラゴンを使い魔にした魔王だよね?


「女装?」
「男の人にいやらしい目で見られるのが気持ちよくってさ。男だとバレてないっていうドキドキ感と、僕でどんな事想像してるのかなって逆に妄想すると……ね」


 恥ずかしそうに股の部分に触れたイヴ。
 どうやらイヴは悪い方向に進んでいってるようだ。


「クラリスさんは反対しないのか?」
「可愛いし僕がそれで良いなら構わないってさ」


 マジか……確かにクラリスさんは個人の意見を尊重するけど、ダメなものはダメだと言ってあげないとこのままじゃイヴ……大丈夫か。魔王だし。


◆◇◆◇◆


 久しぶりに会った皆と沢山話して、そろそろシンシア達はクラリスさんを連れて父親に会いに行くことになった。


「絶対にまた会いに来てね!」
「ああ。多分すぐ会いに来ると思う」


 アイリ達と別れて、シンシア達はルーさんによってロシアにある施設へと転移した。先にクラリスさんを施設で待たせておいて、その後に父親を探しにいくらしい。
 到着してすぐ、クラリスさんは周りや空を見回して驚きの声を出していた。


「これは……凄いですね」
「この結界は自然に作られてるから消えないんっすよ!」


 消えないってのは俺も初めて聞いた。どういう仕組みで動いているのだろうか。


「ではクラリスちゃんはウチに付いてくるっす!」
「ちゃん……分かりました」


 ちゃん付けされて少し戸惑ったクラリスだが、すぐに冷静になってルーさんについていった。


「シンシアちゃん達はもう部屋に帰ってもいいっすよ!」


 そうだな。多分ルーさんは父さんの部屋にクラリスさんを置いて、しばらく方向音痴の父さんを探しにいくから時間がかかる。


「じゃあ部屋に帰ってる」


 そういって自分の部屋へ向かった。


 と、廊下を少し歩いた時。向かいからアマデオがこちらに歩いてきていた。


「あっ、アマデオ。実は話したい事が……?」


 ハッキリと付き合えないと言おうとしたのだが、アマデオは下を向いて顔を見せないまま通り過ぎていった。
 無視された? 何かアマデオに悪い事でもしたのだろうか。


「アッ、アマデオ! なんで無視するんだっ!?」
「っ……」


 追いかけるとアマデオは早歩きになった。完全に俺を拒絶している。
 嫌われたのか……? 何も悪い事はしてないし……アマデオが嫌な思いになる事はした覚えがない。いや……どこかにあるのか?


「アマデオ待ってくれよ!」
「っ……ごめんっ!!」


 アマデオは最後にそういって、走っていった。


「…………何が…………」


 自分から断ろうとしていたのに、いざ相手から拒絶されると何故こんなに悲しいのだろう。
 シンシアは突然の拒絶に泣きそうになりながら、必死に嫌われる原因となった自分の行動を探す。


 しかし、いくら探しても見つからないのは当然である。


「っ……罪悪感でシンシアちゃんの目を見れないっ……」


 アマデオは、シンシアにキスをした罪悪感で緊張しているだけなのだから。


 しかしシンシアは、好きな人に嫌われたという気持ちで酷く落ち込んでしまった。
 自分は何をやらかしたのだろう。その事をずっと自分の部屋に帰った後も考えていた。

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