幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
111話 おめでとう
「とりあえず……またお前達と会えて良かった……本当に良かった」
「うわっ!」
「えっ、ちょっ」
突然お父さんはシンシアとコリンを抱きしめてきた。
傍から見れば巨乳の女性と幼女を抱きしめる変態だが、抱きつかれている2人としては家族の為に今まで頑張っていた尊敬する父親である。
「お父さん髭沿ってないだろ……前も言ってたよな」
「そんな事はどうでもいいんだ。シンシア……小さくなったな」
そこは大きくなったな。が正しいセリフなのだが、幼女に転生したシンシアに言うにはそれが最もな選択肢である。
「コリン……大きくなったな」
「……? ……どっ!? どこみて言ってんのよ!!」
バチィンという大きな音が医務室の中に響いて、シンシアは少しだけ嬉しくなった。
「何笑ってんのよアンタも!」
「い、いやいや! 別に姉ちゃんの胸見て笑ってるわけじゃっ──ひゃぁんっ!」
「お?」
「ふふぅ〜ん?」
コリンに突然、無い胸を両手で抑えられてモミッとされて変な声が漏れてしまった。
「……んだよ」
「女の身体どうよ。何か感想とかないの?」
「感想……つったって……」
自分の身体を見下ろすが、やはり子供のままだと性別なんて分からない。あの少年グループにも男だと間違われた程だ。まああれは仮面をしていたから仕方ない事なのだが、もう少し成長して生まれたかった。
「よし、じゃあ2人に見せてやるか」
「見せてやるって何をだ?」
「アンタまさかここで脱ぐ気?」
「脱がねぇよっ!! ちょっと待ってろ」
シンシアはベッドの横にある大きなリュックの中から大人用の服を取り、隣のベッドのカーテンを閉めてそこで着替えた。
「脱いでるじゃん」
「まあ待ってろって。姉ちゃん父さんもビックリするぞ」
服を着替えて大人の姿に変身する。
一時期記憶を失っていたものの、魔法なんかは普段通り使えるようだ。
サイズもピッタリの服を着たことで、シンシアは自信満々にカーテンの中から姿を現した。
「どうだ。これが俺の大人の姿だ」
「……へ、へぇ……アンタ服を着替えるだけでそんなち変わるのね……」
「違う! 魔法だよ魔法! 不老になっちゃったからこういう魔法作ったんだっ!!」
そういうと、姉ちゃんと父さんも目を丸くして固まった。
「ふっふっふっ……俺は魔法を作れるようになったんだ」
「もう大魔導士じゃない……」
「凄いな。もう学ぶ事なんて必要ないんじゃないか?」
確かに、魔眼も記憶を失う前に使えるようになったし、後は空気中の魔素や魔力の流れを見て自己流にアレンジしていくだけだ。
「いやぁ〜やっぱり俺って天才だな!」
「流石父さんの息子、いや娘だな」
「私より胸大きい……子供に戻れ」
姉ちゃんが怒ったような表情で立ち上がった。
「やだね〜! 前世じゃ散々こき使われたけど、痕跡は俺が上だ!」
「このっっ!! 待ちなさい!!」
シンシアは医務室から飛び出して、サラがいる場所へ向かう。
確か2階の廊下の奥。この向かいの建物の端っこにサラの部屋がある。記憶を取り戻した事を早く伝えたい。
「そんな大きな胸してなんで足速いのよっっ!!」
「え?」
いつの間にか姉ちゃんより足が速くなっていたようだ。
大人の身体って最高だな。
◆◇◆◇◆
「サラッ! 記憶戻ったぞ!!」
「えっ!? あっ! シンシアちゃん! 戻ったの!? わぁっ!? やったぁっ!! おめでとう!!」
いつもハイテンションなサラが更にハイテンションになって即座に抱きついてきた。
「良かったぁぁ〜っっ……! じゃ、じゃああれ覚えてる!? えっと……えっと……」
「ほら、落ち着いて話そう」
「そ、そうだね!」
畳のある部屋に連れられて、布団の上に座ると今頃姉ちゃんが息を切らしてやってきた。
「はぁっ……待ちなさっ……め、女神様?」
「あっ! コリンさんも記憶戻りましたか?」
「あ、は、はい。大変迷惑をおかけしてすみません……こらシンシア、私にも座らせて」
まだメイドの時の癖が抜けないのか、礼儀正しく一礼をしてシンシアの横に座ってきた。
「ん〜! やっぱり雰囲気似てますね!」
「そうか?」
「やめてください」
まだメイドのままかと思ったが、前世の記憶が戻ったことで少し威圧的な雰囲気も入ってきてしまったようだ。
学校で会った時みたいに清楚な雰囲気のままだったら俺も素直に喜んだんだがな。
「後はお母さんだけですね」
「……そうだな」
シンシアは自分の母親を思い出して、少し切なくなった。
きっと今、世界のどこかで必死に生きてるんだろうな。俺みたいに記憶を持ったまま……姿形が分からなくて探すのは大変だろう。
「はぁ〜……早く見つからないかな〜」
「きっとすぐ見つかるよ」
ま、サラがそういうなら大丈夫かな。いや……サラだからこそ凄く心配な時もあるんだけど。
「シンシアちゃん魔力切れ大丈夫?」
「ん? あぁ〜そろそろ不味いかな」
「ねぇ、二人共。今日は私と一緒に寝ない?」
突然変な事を言い出したサラに、シンシアとコリンは頭を傾げた。
「なんで?」
「えっ、いいじゃん。ほら折角記憶が戻ったんだし、記念に! ね? お願い!」
記念に一緒に寝るってさっぱり分からないな。
でもまぁ……俺が記憶を失っている間、サラあんまり元気無かったからな。いつも一緒に寝てたし、別に良いか。
「俺はいいよ。姉ちゃんは?」
「わ、私は……じゃあ……仕方ないですね。分かりました」
これで父さんが仲間外れにされた訳だが、そんな事は気にしない。
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