幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
99話 施設の中身
「おぉ〜……意外と……普通だ」
外から見た建物は、真っ白で異様な雰囲気を漂わせる建物だったが中は意外と普通の作りだ。木製でツルツルの壁や床。窓もピカピカに磨かれている。
部屋の中もごく普通に過ごしやすい配置で家具が置かれている。
「ベッドも……丁度良い柔らかさだ」
色んな所を旅してきた身としてベッドの寝心地はとても重要である。ここは流石一流の魔法使いが集まる施設、柔らかすぎずに程よく身体が沈むようになっている。
化粧台、立ち鏡、クローゼット、机。窓から見る外の景色は一面雪で真っ白だ。
それに1つ1つの部屋に風呂場がしっかり設置してある。まるで日本のようだ。
「今日からここで生活か」
旅は一時中断する事になったが、大魔道士を目指す俺にとってこの施設はとても重要だ。それに異世界人のルーさんまで関わってるとなるとかなり信用できる。
シンシアは荷物を部屋の端に置いて、1度部屋から出ることにした。
「ん?」
「あっ」
部屋から出ると、すぐ横に1人の女性が立っていた。
黒髪で少しミステリアスな雰囲気だ。
「初めまして、私はセシリャ。よろしくシンシアさん」
「セシ……セシリャ?」
発音しにくい名前だ。
「そう、セシリータには会ったわよね。私はセシリータの姉で、シンシアさんにこの施設の事を色々と教えるように言われたの」
なるほど。セシリータさんと似てると言われれば似ている。
シンシアはふと背後から視線を感じて振り返ると、こちらを見ている小さな男の子を見つけた。
「この施設にはシンシアさんより小さい子もいるの。ほとんどはこの施設だけで育てているのだけれど、シンシアさんのように元から基礎戦闘能力が備わっている場合は戦場に行くことが多いわ」
「へぇ〜、そういえば皆見ただけで戦闘能力があるとか言うけど、そういうのって分かるものなのか?」
するとセシリャさんが片目を軽く抑えた。そして再び目を開けると、セシリャさんの黒い目が黄色に変わっていた。
「おぉっ……」
「魔眼よ。練習すればシンシアさんも使えるようになるわ」
魔眼、カッコイイ響きだ。現にセシリャさんの変色した片目が物凄くカッコイイ。男心を擽られる。
「でも、まずはシンシアさんがどのくらいの知識を持っているか調べる為にテストをしないといけないの。だから本格的な訓練に入るのは早くて1週間後ね」
「分かった」
「理解が早くて助かるわ。それじゃあまずはこの施設の案内をするから、付いてきて」
セシリャさんによる施設の案内が始まり、シンシアは少しずつここで生活していくという気持ちに切り替えていった。
◆◇◆◇◆
「……怪しい仮面をした新人が来たみたいだ」
「俺達であの不審人物の正体を暴くぞ」
「良いか。アイツは隠れていた俺達の気配に気付ける程の手練だ。しかし、全員で襲いかかれば抵抗はできない」
「俺達の手にかかれば、あの怪しいヤツもすぐ舎弟だ」
「ふっふっふっ……闇の力が疼くぜ」
階段裏の暗い倉庫の中、小さな影がヒソヒソと何かを企んでいる。
「コラ! またそこにいたんすね!」
「うわぁっ!!」
「ルーだ! ルーが来たぞ!!」
「逃げろっっ!!」
「戦略的撤退!!」
少年達は一目散に逃げていき、たまたま通りかかったルーとサラはそれをみて笑っていた。
「倉庫は危ないって言ってるのに、いっつもあそこにいるんすよ〜」
「ちゃんと注意しないといけませんね」
「にしても、主人サマと知り合いだったなんて驚きっすよ! きっと女神様と主人サマが協力すればここも素晴らしい施設になるっす!」
「ですね! 頑張りましょう!」
意外と息の合っている2人は、サラに用意された部屋へと向かっていった。
◆◇◆◇◆
「おぉ! セシリャさんも大食いなのか!」
「今度セシリータと一緒に食堂に行きましょうか。私のオススメのメニューがあるのよ」
「是非! 大食いなら負けないぞ!」
「ふふふ、どうかしらね」
一方その頃、シンシアとセシリャは大食いの話で盛り上がっていた。
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