幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
66話 仕事完了
「で、こうすると簡単でしょ?」
「本当だ……」
順調に分からない所を教えてあげている。大体中学1年生レベルの問題な為、シンシアなら簡単に解けるような問題だ。
「…………あっ、ここ惜しい」
「っ……」
シンシアがテーブルに身を乗り出しながら間違い点を指差す。そしてダリウス君は、ついついテーブルの上に乗っかる胸に目線が動いてしまった。
「ここ、間違ってるよ」
「あっ、は、はい」
服が寄ってシワができ、そこから胸の谷間が見えてしまう。しかし集中しないとという思いからダリウス君はなんとか宿題に視線を戻す。
「あ、そこじゃなくて隣の問題」
「はい……」
シンシアはダリウス君が間違い点を直している間に他の問題に目を通す。
どう教えたら分かりやすいのか。少し面白い話でもして重い空気を軽くしてみるか。なんて事を考えている。
「そうそう。そういう風に解くと分かりやすいね」
「ふぅ〜……」
「疲れた?」
背中を伸ばして息を吐いたダリウス君に尋ねる。
「い、いえ。大丈……夫です」
ダリウス君はチラリとシンシアの胸元を見たのだが、シンシアは気づいていない。
◆◇◆◇◆
宿題をしている途中から、ダリウス君が下を見ながらモジモジしはじめた。
「体調でも悪い?」
「あっ……その、トイレ……に行ってきます」
なるほど。トイレを我慢していたのか。
「少し休憩にしよっか」
ダリウス君がトイレに向かったのを確認すると、シンシアはすぐさまバッグからパンを取り出し食べる。
魔力補給の為なのだが、パン一つじゃあんまり回復しない。その為他にも栄養のあるお菓子や果物なんかも入っていた。
ダリウス君と一緒に食べるか。
しばらくしてダリウス君が部屋に帰ってきた。
「遅かったけど大丈夫? 腹痛?」
「いえ。大丈夫です」
「あ、良かったらお菓子とか食べながら宿題しない? ずっと集中してると疲れるでしょ」
「今は食欲ないので。すみません」
そ、そうか。それなら仕方ない。
ダリウス君はすぐに宿題を再開させた。
それからしばらくの間はかなり集中して勉強をしていて、シンシアは自分の教え方が良いのかと思い嬉しそうに笑った。
「おっ、最後の1枚だね」
「ふぅ〜……これは多分、僕にも解ける問題です」
「じゃあ頑張ってみよう」
ダリウス君は集中を解くことなく、ついに最後の1枚も終わらせてしまった。
「お疲れ様」
「ありがとうございます……ただその……まだ分からない所とか……あるので」
「分かってるよ。また今度来るね」
「ありがとうございます……」
最初は元気の良い運動っ子かと思ったが、かなり集中して勉強できる真面目な子なのかもしれない。この調子ならクラスの皆にもすぐ追い付きそうだ。
「じゃあそろそろ帰ろうかな」
テーブルの上のお茶を飲み干して、バッグを手に取って立ち上がる。
するとすぐにダリウス君も立ち上がって部屋のドアを開けてくれた。
「あ、ありがとう」
「いえ」
リビングに行って両親に宿題が終わった事を伝えると、いつもは提出日までに宿題を終わらせる事ができていない、と言われてかなり感謝された。
「ちゃんと宿題終わらせるんだよ」
「……はい」
「それじゃあ私はこれで。また1週間後に来ますね」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!!」
そうしてシンシアの初仕事は無事に終わった。
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「…………すんすん……」
部屋に戻ってきたダリウス君は、シンシアが座っていたクッションに顔を埋めて匂いを嗅いでいた。
「シンシアさんっ……」
シンシアが口を付けたコップも大事に保管してから、宿題を片付け始めた。
「……ふふっ……」
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「シンシアちゃんおかえり〜!」
「ただいま〜……疲れたっ……」
帰ってきてすぐ、シンシアは変身を解いてソファに倒れ込んだ。
「個人相手に教師をするのはどうだったかしら?」
「いやぁ〜……なんか相手の子、俺より真剣に集中してたからビックリした……」
「私がシンシアちゃんに魔法陣について教えていた時も似たような感じだったわ」
クラリスはシンシアに2人きりで教えていた時の事を思い出していた。
「1週間後にまた行くよ」
「えぇ〜! それじゃあ休みの日は一緒に買い物できないの?」
「ごめんサラ。でも学校終わりには買い物できるでしょ」
「シンシアちゃん疲れてすぐ家に帰ろうって言うじゃん」
「ま、まあな」
シンシアは一度部屋で服を着替えて、再びリビングに戻ってくると先程の同じようにソファで横になった。
「私が座れないわ」
「ぐふぅっ……」
シンシアの腹部にクラリスが座ってきて、身体の中の空気が吐き出される。
「んん、座り心地良いわね」
「そうだそうだ。今度クラリスに二重魔法陣について教えてほしいんだけど」
その場で落ち着いた2人は、魔法陣について話し始めた。サラはキッチンで夕食の準備をしている。
二重魔法陣というのは、魔法陣と魔法陣を重ねて更に複雑な魔法を扱う技術である。
魔法陣のサイズ、数を増やせば更に新しい魔法を作り出す幅が広がるのである。
「魔法陣が作れるのなら二重魔法陣は簡単だから、すぐ教えれると思うわ」
「よっしゃ」
シンシアはダリウス君の家庭教師をして、学習に対する意欲が大きくなったようだ。
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