幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

57話 プールですること



 次の日、いよいよプールの時間がやってきた。
 全員が外にあるプールの更衣室に入って着替える。


「こんなスク水着るの人生初だよ。シンシアちゃんもだよね」
「お、俺は元男だから……当たり前だろ」


 タオルを身体に巻いてその中で水着に着替えるのだが、アイリがシンシアのタオルの隙間をじっと見つめてくる為、更衣室の端っこに行って着替える。


「女の子同士なんだから見せてよ〜」
「い、嫌だよ」


 するとアイリは身体を隠すことなく目の前で服を脱ぎ始めた。


「何してっ!」


 見たい気持ちを抑えて手で目を隠す。


「隙ありっ!」
「わぁっ!?」


 その瞬間、シンシアの身体を隠していたタオルが剥がされてシンシアの白い裸体が顕になった。


「何すんだよっ!」
「いいじゃんいいじゃん♪ 可愛いよ。ほら着替えよ」
「くそっ……」


 といいつつ、シンシアはアイリの裸をしっかりと見ながらスク水に着替えた。


◆◇◆◇◆


「きゃ〜っ! シンシアちゃん可愛いっ!」


 サラとクラリスは普通のシャツのような水着を着ていて、シンシアやアイリのように露出が多い訳では無い。しかしクラリスの普段隠している白い肌がかなり見えている為、男子達はクラリスに注目していた。


「ぷっくりお腹!」
「皆の前でそういう事するなって」
「あとはイヴさんだけですね」


 イヴは特別に倉庫で着替えているらしい。


「お、お待たせ〜」
「「おぉっ!!」」


 ついにイヴがやってきて、何故か男達が嬉しそうな声を出した。その理由は簡単、イヴが女物のスク水を着ていたからだ。


「イヴ大丈夫なのか?」
「大丈夫! 結構動きにくいけどね」


 そういって胸元をバッと開いて中を覗いたので、シンシアがすぐに中が見えないように視線の盾となる。
 いくら男とはいえ、女と変わらない見た目で女物の水着を着ているのなら見せられない物がある。


「イヴちゃんここどうしたの?」


 アイリが自分の下半身らへんを抑えて聞いた。
 男なのに、今の状態だと完全に何も生えていない女の身体と変わらないからだ。不思議に思うだろう。


「ここはね〜クラリスにこれ股に入れてって言わ──」
「取らなくていいからっ!!」


 危ない。イヴがまた股の布を開いて中にある何かを取り出そうとしていた。それも男達の前で。


「イヴ様。女装をするなら肌をあまり見せない、というのも大事なんですよ」
「そうなのか? 分かった。次からは気をつけてみる」


 安心しつつふとクラリスを見ると、イヴを見て頬を赤くしながらモジモジしていた。


「ク、クラリスさん? 大丈夫ですか?」
「えぇ……大丈夫……よ」


 明らかにイヴのスク水姿に興奮しているように見えるのだが、こんなクラリスを見れるのは今だけだと思い目に焼き付けることにした。


◆◇◆◇◆


 ストレッチを終えた後、大きなシャワーで身体を冷たい水に慣れさせる。


「それでは早速ですけど、皆さん1人ずつに50m泳いでもらいます。泳ぎ方はイヴちゃん以外は前世で教わっていると思うので、魔力で身体強化をした上で泳いでください」
「「はい」」


 出席番号順に並んで、最初は1番から5番の人が泳ぐ。その5人が50mを泳ぎ終えたら6番からイヴまで泳ぐ。
 身体強化OKなら簡単に泳ぎ切れそうだ。


「では、最初の5人お願いします! スタート!」


 サラの合図で最初の5人が泳ぎ始めた。泳ぎ方は自由だが、全員クロールが安定だろう。


「シンシアちゃん泳げる?」
「前世では泳げたけどこの身体だとどうだろうな。そもそも足が下に着くかどうかも怪しい」


 小さな身体だと泳ぐ時の感覚や関節の動きが若干違うと思うんだ。だから最初は上手く泳げないかもしれない。


「サラ先生〜! もしシンシアちゃんの足が床に届かなかった場合どうしたらいいですか?」
「ビート板を使いましょう! それが可愛いです!」
「だって、シンシアちゃん」


 だって、じゃない。サラの判断基準は可愛いか可愛くないかであって、ビート板を使う事が何かの改善になる訳では無い。しかしビート板を使わないと溺れるかもしれない。
 今まで足の届かないプールに入ったことがないないシンシアは、1人で浮かぶ事ができるのか心配なのだ。


「最初はビート板をお試しで使うか」
「あ、もう私達の番だよ」


 一先ずはビート板を持たずに足が地面に着くかどうか、入ってみる。
 ゆっくり……ゆっくり…………うん、これギリギリ着くのは着くけど、口に水入るわ。


「ビート板取って、サラ」
「はい! 頑張ってね」


 ビート板の上に両手を乗せて浮かぶと、かなり安定し始めた。


「……なんか俺だけビート板って恥ずかしいな」
「大丈夫だよ。皆シンシアちゃんを応援してるから」


 全員がプールの中に入ると、サラがスタートと合図を出した。


「よしっ」


 身体強化で足だけを強化し、バタバタと前に進む。
 アイリやイブはクロールでどんどん前に進んでいっている為、このままだとシンシアが最後まで泳ぎきるのを皆に注目されることになる。恥ずかしい。


 もうあっという間に前の人達は25mを泳ぎ切り、残り25mを泳ぎながらシンシアの横を通り過ぎていった。
 そこでやっとシンシアも25m地点に到着。後ろに方向転換して足をバタバタさせる。


「シンシアちゃん頑張れ〜!」


 そういう応援が一番精神的に来る……。出来れば静かに見守ってほしいのだが。


◆◇◆◇◆


 やっと50mを泳ぎきり、壁をタッチした瞬間にサラに抱き上げられてしまった。


「やっぱり皆泳ぎは得意みたいだね。こっちの世界だとあんまり泳ぐ練習はしないとみたいだから、これくらい泳げたら充分だよ」


 確かにこっちの世界の仕事だと海を泳ぐ事は滅多にない。唯一あったとしてもハンターが海の魔物を狩るだけだ。


「では、今からは泳ぐ練習ではなく水の中で運動して身体を鍛えましょう! ルールは簡単。この剣の形をしたスポンジのオモチャと水属性の魔法を使ってバトルをしてもらいます!」


 プール内での戦闘訓練か。面白そうだ。


「でもシンシアちゃんは足が届かないので、大人になってもらいます」
「……はぁっ!? なら俺、魔法使いながらだから1時間も戦えないぞ?」
「20分も戦えれば充分だよ。ね? 大人のサイズに合わせたスク水も用意してあるから!」
「なんであるんだ……」


 何故か大人に変身したシンシアの身体に合わせたスク水をサラが持っていた。


「シンシアちゃんが着替えてきて全員がプールに入ったらバトルスタート!」


 仕方なくシンシアは更衣室で大人に変身し、スク水に着替えた。


「む、胸が苦しい……というか色々と刺激的過ぎて皆の前に出たくない」


 しかし出るしかないのだ。
 シンシアは覚悟を決めて、大人の姿になり更衣室を出た。

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