幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
47話 ユニコーンとかいう変態
「ほう……ここが図書室という所か」
「ベネディ文字読める?」
シンシアを背中に乗せたベネディは、図書室の中を歩きながら目を凝らしていた。
「文字……なんだそれは」
「例えば今喋って意思疎通を取ってるだろ?」
「ああそうだな。声は群れにとって最も大事な物だ」
「でも、文字なら目でみるだけで意思疎通の取れる便利な物なんだ。例えば狼は〜……北に獲物がいる時、声で他の仲間に知らせたら獲物にバレるでしょ?」
それを聞いたベネディは、目を見開いて立ち止まった。どうやら文字の便利さに興味が出たようだ。
「その文字とやら。教えてくれないか?」
「いいけどまずはユニコーンについての本を探してからな」
シンシアとベネディは一緒にユニコーンについての本を探して、なんとか見つけ出した神話の生物についての本を持って椅子に座った。
「ユニコーンのページ……あったあった。171pっと」
「本当に見ただけで何でも分かるのだな……」
「何でもは分からないよ。書いてあることだけ」
171ページを開いて、ユニコーンについてベネディにも分かりやすく読み上げることにした。
「何何……ユニコーンは馬に1本の角が生えた神聖な生き物とされている。しかし、ユニコーンは処女の血を好み……媚薬のような効果のある唾液を塗って、そのまま…………」
「どうした? 読まないのか? 続きが気になる」
この先を読むのは勇気がいる。
シンシアは1度深呼吸をした後、改めて続きを読むことにした。
「長い角を深く差し込み、流れてきた処女の血を飲む。襲われた女性はユニコーンがすぐに傷を治してくれるものの、トラウマは一生植え付けられるであろう。その為ユニコーンの角を取って人間界に神々が落としたと言われている……だって」
最後まで読んだシンシアは、精神的ダメージが大きくしばしの間何も喋らずに俯いていた。
「ふむ。つまりどういう事だ?」
「言わせるな……」
それからシンシアは本をそっと閉じて元あった場所に戻し、ベネディの背中に乗って何もかもを忘れることにした。
「だ、大丈夫かシンシア。好きなだけモフると良い」
「ありがとう……このまま教室まで運んで。案内するから」
◆◇◆◇◆
教室に戻ってくると、イヴとアイリとアデルも帰ってきていた。
「うっ……ユニコーン……」
「シンシアちゃん元気ないけど、ユニコーンについて何か分かった?」
アイリとその使い魔のルナが心配そうにやってきた。
「シ、シンシア以外が触れるな!」
「あぁ〜ベネディが俺以外には触れられたくないってさ」
「そ、そう……それでどう?」
果たして、皆に言っても良いのだろうか。アデルが危険な生物を使い魔にしてしまったのだが、今言ってしまえばアデルが悲しむのではないだろうか。
いや、これ以上の悲しみを起こさせない為にも教えてやるべきだろう。
「アデル、ユニコーンの角切り落とせ」
「は……はっ!? カクの角はユニコーンの証なんだぞ!?」
「それが危険なんだよ」
しかしあまり言い出せず、遠回りにしか伝えることができない。
すると窓の外にいたイヴの使い魔、黒龍ウルドが教室を覗いてきた。
「我輩が説明しよう」
そうしてウルドが全て説明してくれた。ドラゴンなだけあって知識は豊富だな。
全てを知ったアデルは、残念そうな顔をしつつもシンシアがああなってしまった責任を感じ、使い魔のカクの方を向いた。
「カク、ごめんな……悪い。友達の為なんだ。お前だって嫌われたくないだろ? 生き甲斐? いや、カクは俺と一緒に生きていくだけでいい。な?」
何やらカクは抵抗しているようだな。変態め。
「せめて1人くらい? ……皆、ダメだよな……?」
「駄目に決まってるでしょ!? 誰か好んで変態な馬にしょ……処女を捧げなきゃいけないのよ!」
最もである。
「ねぇねぇ、その処女っての何か知らないんだけど。僕に何かできる?」
「いやいやイヴは男だから──」
するとユニコーンのカクは尻尾を振りながらピョンピョンと前足を跳ねさせている。ヤるき満々かよ……。
「男だからダメだろ」
「とにかく角切れ、アデル」
「本当にごめんな。カク」
アデルが角を掴むと、カクは暴れて抵抗を始めた。
「さっさとせんかノロマめ」
「あっ」
その時、窓の外からこちらの様子を見ていたウルドが小さな石ころを当ててカクの角を根元から砕いた。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁあっっっ!!??」
アデルとカクは一緒にビックリして、その場で固まってしまった。
「そこのユニコーン。我輩の前でイヴの友達に無礼を働いたらどうなるか、覚えておれ。次はお前の身体が今の角のようになる」
するとカクはバタバタと教室から逃げていった。
少し可愛そうな気もするが、これは平和の為だ。
「ありがとうウルド」
「構わん。知能が足りないのだ。あやつらは」
そうしてウルドはグラウンドで再び眠りについた。
窓の外を見ると、遊び場がなくなって立ち尽くす一般生徒の姿が見える。場所考えてやらないとな。
◆◇◆◇◆
「は〜い! ちゃんと皆集まってますね」
日が沈んできて、サラとクラリスが教室にやってきた。しかしまだアデルの使い魔は帰ってこない。何をしているのだろうか。
それぞれに使い魔が出来たことで、教室はいつもより狭くなり。そして賑やかにもなっている。
「今日は皆さん使い魔を手にすることができました。が、これはまだまだ最初の方の授業ですよ。次は精霊を召喚して契約してもらいます」
そう、俺達は白魔法を使う為にこの授業をしている。召喚魔法、そして契約。この二つは使い魔より精霊の方が難しいのだ。
「明日、準備してきますので皆さんは使い魔と仲良くしていてください」
「「は〜い」」
本当にクラリスさんは先生らしい。サラなんて教室の左前に座って偉そうに腕を組んでいる。あれで先生面をしているようだ。
「ではサラ先生」
「よしっ! 今日も皆お疲れさん! 気をつけて帰るように!」
サラは今日1日何をしたのだろう。ほとんどクラリスさんに任せていただけのような……まあいいか。
「帰るのか?」
「ああ。ベネディも一緒にな」
皆が解散するとすぐにサラ、クラリス、イヴが俺の周りに集まってきた。
「皆で帰りましょうか」
「ですね」
「アイリちゃんばいばい!」
「はい! 明日の授業楽しみにしてます!」
◆◇◆◇◆
皆で家に到着すると、いつの間にか知らない女の子がイヴの隣を歩いていた。
「あれ……君だれ?」
「? 我輩はウルドだ。人間の姿になる事くらい容易い」
なんて、黒髪ショートカットの可愛い女の子が言っている。面白い冗談だな。
「ちゃんと自分のお家に帰りなさい」
「失礼な。家など無いからイヴの家に来てるんだろうが!」
そういってシンシアの腕を物凄い力で握ってきた。
「いたたたたた!! こ、この力は確かにウルドだ。疑ってごめん」
「ふんっ。特別に許してやる」
しかしあの巨大な黒龍がこんな可愛い女の子になるなんてな。まさかイヴみたいに男の娘……って訳では無いな。胸が少しある。
それから全員で使い魔の寝る場所や食事、明日の準備を色々として一日を終えた。
「こんなフワフワで眠れるなんて幸せだぁ……」
「随分と寝心地が良いな」
シンシアのベッドの上にベネディ、その上にシンシアが乗って眠っている。バランスの悪そうなベッドだが、シンシア程の小さな身体であれば綺麗に横になることができた。
「おやすみベネディ」
「しっかり休め。我は眠くない」
あぁそういえば、ベネディは夜行性なのか。
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