幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

42話 平和的解決



 シンシアが目を覚ますと、部屋ではサラとイヴとゼウスが起きていた。


「おはよう……」


 目を擦りながら身体を起こすと、イヴが突然抱きついてきた。


「僕の為に戦ってくれたんだって? 凄いよ!!」
「あ、あぁいや……ボコボコにされてましたけどね……」


 きっとゼウスが皆を助けてくれたのだろう。


「あっ、サラはもう大丈夫なのか?」
「う、うん。本当にごめん……」


 サラは凄く気まずそうに顔を下に向けた。


「サラは謝ることないよ。俺がサラを寂しくさせたのが問題なんだ」
「まあまあ。皆無事に終わった事だし、今から色んな事を平和的に話し合いで解決していこうじゃないか。とりあえず人呼ぶぞ」
「人……?」


 ゼウスが床に手をかざすと、その床が光って二人の人物が現れた。


「あ、あれっ……私はいつの間にここに……」
「ここはっ、どこ?」


 クラリスとイヴの部屋で見つけた女性だった。2人は突然ここに召喚されてアタフタしている。


「さて、まずは2人に自己紹介だな。私はゼウスだ」
「ゼッ……ゼウス……? と、いう事は……私は殺されるのですか……?」


 クラリスは目の前でサラと仲良く座っているゼウスを見て、確実にアウェイだと感じ取ったようだ。


「クラリス! とりあえずこっち座ってよ」
「ま、魔王様と……シンシアちゃん」
「今日は色々と平和的な解決をしようと思ってな」


 クラリスがベッドに座って、イヴの部屋にいた女性は部屋の隅に隠れるように座っていた。


「そこの人、大丈夫か?」
「……」
「心配するな。死んだ家族に会わせてやる事くらい簡単だ」


 するとその女性も、ゆっくりではあるがこちら側にやってきた。


「よし、まず最初にシンシアがどちら側に行くか、だ」
「俺ですか……」


 サラ側に戻るのか。クラリス達の元に残るのか。どちらかを選ばなければならないのだろう。


「どうする。クラリスとイヴもサラ達の方に行って、イヴとシンシアは同じ学園に通わせれば同年代の友達は沢山出来るぞ」
「魔王様に友達……しっ、しかし! そこには魔物を殺すのを目的とした生徒が何人も!」
「まあそこは仕方ないだろ。魔物というのも、中には本能のままに人を喰らう危険な物だっている。魔物と人はお互いに不完全な存在でもある。そういうのは割り切って考えた方が良い」


 するとクラリスはしょんぼりとしながらも、シンシアに抱きつくイヴを見て頭を縦に振った。


「サラも良いか?」
「シンシアちゃんと一緒に要られるんなら問題ないです! クラリスさんも酷い事しないなら大丈夫ですよっ!」
「……すみません」


◆◇◆◇◆


 あれから色々と話し合いが行われ、イヴの部屋にいた女性はここの国で過ごすことになった。
 そして、そもそもイヴの部屋が何なのかゼウスに訪ねたところ 「神々が見捨てた魔素の少ない世界だ」 そうだ。
 あの爆発は、俺達が戦っていた近くに少ない魔素が集まり、たまたま裸の女性が召喚されただけらしい。爆発音はその衝撃だとか。


 イヴはこの国に残るよりはシンシアと一緒に居たいという気持ちが強いようで、サラに対しても敵対心は無いようだ。しかし魔王を目指すというのは変わらないらしい。それに対しゼウスは 「夢を追い続ける事は良い事だ」 と言った。


「とにかく争い事はやめるように。私は常に監視しているからな」
「わ〜! 変態だ!」
「ちょっイヴ様っ!」
「へ、変態なんかじゃない!」


 クラリスもサラも笑っていて、シンシアは安心したように笑った。
 クラリスさんとサラが一緒に住むのは心配だったが、この調子だと良い感じにバランスが取れそうだ。


「……あっ、そもそもクラリスさんってなんで俺を連れ去ったんですか? 強引に」
「だ……だって可愛いじゃないですか。それにシンシアちゃんから一緒に居たいって欲が感じれたし、この子なら魔王様のお友達になれるのではと思って……強引に……」


 珍しくクラリスはもごもごと話した。


「まあいいや! シンシアの家に行くんでしょ? 早く行こうよ。それに学園? ってところにも行ってみたいな」
「そう焦るな。まずは全員が約束を守る為に全員でハグしろ」
「ハグっ!?」


 するとゼウスは立ち上がって全員の背中を押した。


「「っ!?」」


 サラはクラリスと。シンシアはイヴと。それぞれハグをして、サラとクラリスはお互いに顔を赤くした。


「ほら、いつまで抱き合ってるんだ。準備しないのか?」
「クッ、クロア様がさせたんでしょうがっ!」


 今日から面白い事になりそうだ。


◆◇◆◇◆


 準備といいつつあれから2日が経った。
 やっと準備ができたシンシア、クラリス、イヴは荷物を持って城の庭に出る。


「魔王様〜!! 行ってしまうのですね〜!」
「シンシア元気でやれよ〜!!」
「クラリス! たまには顔を見せるんだよ!」


 メイド達や執事達、他にも魔女らしき女性達がこちらに手を振っている。
 メイドのグリゼルダさんなんて泣きながら俺の名前を呼んでいる。そこまで好かれていたなんて知らなかったな。


「よし、3人とも転移するぞ」


 ゼウスがやってきて、3人をサラの家へ転移させた。


──
────
──


「おぉっ、懐かしい匂いだ」
「シンシアちゃんっ!!」
「うわぁっ!?」


 懐かしい家に到着してきてすぐ、アイリが抱きついてきた。


「心配したんだよっ!? どうして急にっ……まあ、サラ先生から話は聞いたけど……もうっ……馬鹿っ!」
「あはは……ごめんごめん……」


 アイリはシンシアの肩をポカポカ殴りながら泣いた。


「えっと……サラさん……今日からお世話になります」
「緊張しないで! クラリスさんも学園の先生になるといいよ。副担任って事にすれば問題ないから!」
「ありがとうございます」


 クラリスはサラに、改めて謝罪も込めて頭を下げていた。きっと2人は良い仲になるだろうな。


「そ、それでシンシアちゃん。その後ろの子は誰?」
「僕は魔王イヴ! いつか世界を支配するんだ!」
「まお……危ない、思わず叫ぶところだった。サラ先生から聞いたわ。よろしくね」


 アイリはまた驚きかけたがギリギリの所で持ちこたえたようだ。アイリとイヴも握手をして、何事もなく初対面の挨拶は終わった。


 それから全員の部屋分けが行われて、外が暗くなった頃には夕食にし、久しぶりにサラと眠る夜がやってきた。


「シンシアちゃんおかえり……」
「く、苦しいよ。ただいま」


 かなりの強さで抱きしめてきたが、シンシアは抵抗せずにそのままにした。


「シンシアちゃんのメイド姿も可愛かったよ」
「子供扱いしないんじゃなかったっけ」
「シンシアちゃんは子供じゃなくても可愛いの」


 それからシンシアとサラは、夜遅くまで話し続けた。
 お互いに話したい事が沢山あったのだろう。笑ったり泣いたりしながら昨日までの事を話して、サラだけニヤニヤしながらこれからの事を話して。
 2人とも寝ないようにお互いの頬を抓りながら、結局いつの間にか眠っていた。

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