俺は5人の勇者の産みの親!!
虚数話 魔法は恋・魔力はクラシック
このお話はどこにもない世界の話。
裏側、そして逆側。
この世界の待遇を取るとするならば、それはきっともっと幸せな場所になるはずだ。
さぁ、指揮棒を手に取れ。
曲はもう始まっているぞ?
─────────────────
最強、なんて言葉は私たちには似合わなかった。
頭が一つ転がり落ち、私は震えながら彼の手を取る。
返されない言葉、彼にはもう応えるための機能が備わってはいなかったのだ。
私は全身で恐怖心を解放し、湿って暖かくなるスボンが黄色く変色している事に気づく。
私の方を向いて止まる彼の目、口が私に『よくもやりやがったな』と言っているような気がして、急に口が苦くなってボトボトと朝食を零してしまう。
「我が名はホルスト!! 戦争をもたらす者なり!!!!!!」
異形の化け物はそう言って血塗られた指揮棒を振り続ける。
地獄と化した周囲の風景、稲妻走る大地、荒れ狂う海が上空を登って私達を噛み殺そうと睨みつけている。
二人掛かりですら敵わない相手に私一人でどうやって勝てっていうの?!
私のちっぽけな魔力であんな化け物に勝てるわけない!
血塗れになったヘソ出しの服に一滴の涙が流れ、流星のような血飛沫が空を彩って行く。
途端、首を失った男の子の体は力なく吹き飛んで行く。
なんで、私はこの男の子に恋をしてしまったのかな?
この男の子に出会わなければ、私は誰かを殺さずに済んだのかな?
私がいなければこの男の子は死なずに済んだのかな?
魔法は決して人を救うためにあるわけではないし、逆に殺すために使うことの方が多い。
私の魔力は直接相手に作用するような便利なものじゃない。
対する相手は、ケーキのような、甘いお菓子みたいな柔らかさの女の子なんて一口でペロリと平らげてしまえる程に強大な敵。
なんで? なんで私はこんな奴と戦うことになったの?
怖い。
怖いよ。
アリア……!
テル……!
アイネ……!
フーガ先生……!
メロ……!
エータ君……!
リュート……!!
私、もう頑張ったよね?
死んでも許してくれるよね?
私が負けたって世界が滅ぶことは変わらないよ。
いいんだ、私にはもう生きる意味が無くなってしまったから。
頭を一つ抱き上げてその男の子の唇にそっとキスをした。
鉄の味、それでも私は好きよ?
こんなにも冷たくなってしまって。
ごめんね、私が力足りないばかりに。
私の名前はパッフェルベル・トゥル・カノン。
白鳥種の王女にして、誰もが欲しがる『世界魔法』の持ち主でもある。
『私が願ったものは全て叶う』
そんな魔力、欲しくなかった。
だったら今すぐにでも蘇らせてください、神様。
私の最愛なる恋人のリュートを……!!
再び流れる流星、私は少しの痛みも感じること無く目を閉じた。
私はカノン。
輪唱を奏でる音が聞こえ、私は冷たくなりゆく彼の体をもう一度抱き締めるために彼のところに這っていく……!!
悲鳴、怒号、終焉。
最悪なフィナーレを迎えようとしている私の人生に光なんてなかった。
潰れた片目、搔き集める彼の事。
お願い、もう一度だけでいい。
もう一度だけでいいから私に夢を見させてください。
あと一度だけでいいんです、神様。
ラビリティカ様!
「お願いします!!!!!! 神さまぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は内臓溢れるこの身を引きずり、ようやく生臭い彼の体へと到着した。
リュート、もう離さないからね?
ホルストの『火星』。
彼の轟音が頭に響き、薄っすらと本物の死が近づいて来ていることを悟り、リュートを抱き枕にしながら小さく呟いた。
願いだ。
この命が潰える前の小さな願い。
こんな願い、きっと誰も認めてくれなんかしないだろうな。
ふふっ、今までありがとね、リュート?
天国でもまた付き合ってくれたら嬉しいな。
そして、風景全てがワインレッド色になった瞬間に、私は変な音を立てて意識に終止符を打った。
『もう一度、リュートを愛させてください』
魔法なんて、無ければいいのに。
─────────────────
あなたは魔法をどう思う?
それを問うために、あなたはこれからクラシックの世界へと迷い込むだろう。
愛する人を守るためなら殺し合いをしてもいい?
必要なのは『覚悟』だ。
さて、初めのト音記号からやり直しだ。
さぁ、指揮棒を手に取れ。
裏側、そして逆側。
この世界の待遇を取るとするならば、それはきっともっと幸せな場所になるはずだ。
さぁ、指揮棒を手に取れ。
曲はもう始まっているぞ?
─────────────────
最強、なんて言葉は私たちには似合わなかった。
頭が一つ転がり落ち、私は震えながら彼の手を取る。
返されない言葉、彼にはもう応えるための機能が備わってはいなかったのだ。
私は全身で恐怖心を解放し、湿って暖かくなるスボンが黄色く変色している事に気づく。
私の方を向いて止まる彼の目、口が私に『よくもやりやがったな』と言っているような気がして、急に口が苦くなってボトボトと朝食を零してしまう。
「我が名はホルスト!! 戦争をもたらす者なり!!!!!!」
異形の化け物はそう言って血塗られた指揮棒を振り続ける。
地獄と化した周囲の風景、稲妻走る大地、荒れ狂う海が上空を登って私達を噛み殺そうと睨みつけている。
二人掛かりですら敵わない相手に私一人でどうやって勝てっていうの?!
私のちっぽけな魔力であんな化け物に勝てるわけない!
血塗れになったヘソ出しの服に一滴の涙が流れ、流星のような血飛沫が空を彩って行く。
途端、首を失った男の子の体は力なく吹き飛んで行く。
なんで、私はこの男の子に恋をしてしまったのかな?
この男の子に出会わなければ、私は誰かを殺さずに済んだのかな?
私がいなければこの男の子は死なずに済んだのかな?
魔法は決して人を救うためにあるわけではないし、逆に殺すために使うことの方が多い。
私の魔力は直接相手に作用するような便利なものじゃない。
対する相手は、ケーキのような、甘いお菓子みたいな柔らかさの女の子なんて一口でペロリと平らげてしまえる程に強大な敵。
なんで? なんで私はこんな奴と戦うことになったの?
怖い。
怖いよ。
アリア……!
テル……!
アイネ……!
フーガ先生……!
メロ……!
エータ君……!
リュート……!!
私、もう頑張ったよね?
死んでも許してくれるよね?
私が負けたって世界が滅ぶことは変わらないよ。
いいんだ、私にはもう生きる意味が無くなってしまったから。
頭を一つ抱き上げてその男の子の唇にそっとキスをした。
鉄の味、それでも私は好きよ?
こんなにも冷たくなってしまって。
ごめんね、私が力足りないばかりに。
私の名前はパッフェルベル・トゥル・カノン。
白鳥種の王女にして、誰もが欲しがる『世界魔法』の持ち主でもある。
『私が願ったものは全て叶う』
そんな魔力、欲しくなかった。
だったら今すぐにでも蘇らせてください、神様。
私の最愛なる恋人のリュートを……!!
再び流れる流星、私は少しの痛みも感じること無く目を閉じた。
私はカノン。
輪唱を奏でる音が聞こえ、私は冷たくなりゆく彼の体をもう一度抱き締めるために彼のところに這っていく……!!
悲鳴、怒号、終焉。
最悪なフィナーレを迎えようとしている私の人生に光なんてなかった。
潰れた片目、搔き集める彼の事。
お願い、もう一度だけでいい。
もう一度だけでいいから私に夢を見させてください。
あと一度だけでいいんです、神様。
ラビリティカ様!
「お願いします!!!!!! 神さまぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は内臓溢れるこの身を引きずり、ようやく生臭い彼の体へと到着した。
リュート、もう離さないからね?
ホルストの『火星』。
彼の轟音が頭に響き、薄っすらと本物の死が近づいて来ていることを悟り、リュートを抱き枕にしながら小さく呟いた。
願いだ。
この命が潰える前の小さな願い。
こんな願い、きっと誰も認めてくれなんかしないだろうな。
ふふっ、今までありがとね、リュート?
天国でもまた付き合ってくれたら嬉しいな。
そして、風景全てがワインレッド色になった瞬間に、私は変な音を立てて意識に終止符を打った。
『もう一度、リュートを愛させてください』
魔法なんて、無ければいいのに。
─────────────────
あなたは魔法をどう思う?
それを問うために、あなたはこれからクラシックの世界へと迷い込むだろう。
愛する人を守るためなら殺し合いをしてもいい?
必要なのは『覚悟』だ。
さて、初めのト音記号からやり直しだ。
さぁ、指揮棒を手に取れ。
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コメント
王一歩
アルさん
読んでいただきありがとうございます!
そう言っていただき光栄です!
アル
面白い
王一歩
ぴろるさん
YouTube rだったらやってましたね笑
王一歩
まさまるさん
実は...男です!
でないと、こんな話書けませんよ笑