俺は5人の勇者の産みの親!!

快晴シャリラ

第24話 リュートなり


 教室に入ると、何やら辺りがざわざわしている。
 私は何も気づいていないように1番奥の席に座って机を耳につける。

「……スティピッチ・ウラウ・ディレンネ」

 きーん、と耳あたりに魔法を装着して、あたりの言葉を振動として聞く『聴覚魔法』を使ってみる。

 ザザッ。

「え! なんでアリアちゃん入院したの?!」

「二限の先生が言ってたんだけどね、通り魔にあったがどうとかって!」

「え、露出狂が出たのか?! 昨日!?」

「アリアちゃんになんてことを……! 見つけたら首の骨へし折ってやる!」

「可哀想だな、実に不愉快だ」

「犯人、ストーカーらしいぞ」

「やっば! さすがじゃねぇけど、やっぱり春日さんって可愛いし、胸も大きいし、金髪で顔立ちも外国人ぽいし、火の打ち所がねぇよな! ストーカーしたくなる気持ちもわかるよ」

 ……なんて、会話よ。
 バカじゃない。

 ストーカーはアリアだし、アリアにリュートのブツを見せたのも私。
 ほんと、みんなって騙されやすくてダメよね。
 見た目で中身が分かるわけないじゃない。
 リュートだって、ちゃらんぽらんのくせに優しいし、ちゃんとしてるし、バカだけど私のことをちゃんと考えてくれてて……。

 もういいわ、リュートのことばっかり。

 ……隣に来ないかな、リュート。

 キーンコーンカーンコーン。

 予鈴がなると、先生が入って来る。
 騒々しかった空間が一瞬で集中の場に仕上がり、筆箱を開ける音やルーズリーフを出す音で賑やかになる。

 ……結局、リュートとエータは教室に来なかった。

「……怒ってるかな、リュート」

 何度も、何度も教室の扉を見てみるが、誰かが入ってくる気配は全くない。

「ほいなぁ、授業始めるどー」

 丸鼻の先生がチョークを持つと、数学の公式を書き始める。
 フィボナッチ数列?
 因数定理?

 そんなこと、どうでもよかった。
 横に、リュートが来さえしてくれれば。

「はぁ……」

 私はベルの下に置いてあるバッグを動かそうとした、その時。
 王子様は重たい扉を強い力で開けた。

 ばたんっ!!!!!!

「なっ、どうした!!」

 先生がチョークを止めて、ドアを見る。

 現われたのは、唇にドロドロになったリュートと呆れ返ったエータだった。

「先生! 遅れました!」

「わ、わかってるけど、なんだその顔は!」

 唇に塗ってあるのは茶色いソースか何かだ。
 ハンバーガーを急いで食べてもここまで汚くなることはないだろう。

 な、何やってんのリュート。

「すみません! 速食の練習してたもんで、遅くなりました!」

「何言ってるかわからんが、私の授業を邪魔するなら、帰ってもらうぞ!」

「あ、いえいえ、ぜひ受けさせてください!!」

 そういうと、リュートは唇についたソースを人差し指でぺろっと取ってみる。

 そして、私の方を向いて、にこりと笑う。

 感情のリンクをしていたのが原因なのか、リュートの声が流れ込んでくる。

『今度は、俺に奢らせてくれよな、カノン!』

 にこりとリュートは笑う。
 その笑顔の光は私に直撃すると、何かが瞬間、体の中を駆け巡る。

 ぶわっ!!!!

 私は心の奥に入ってくるリュートの言葉に撃たれて、呼吸が荒くなる。
 顔が熱くなるのがわかり、とっさに頰を両手で触ってみる。

 熱い!
 熱い!
 なんなのよ、これ!
 本当に、リュートは……!!

 リュートは指先についたソースを舌でぺろりと舐めると、そのまま1番前の席に座った。

 もっと、リュートの近くにいたい……!!
 隣に来て欲しい……!!

 そう語りかけても、伝わるわけなんてない。
 一方通行の言葉に、私はもどかしさを感じる。
 どうしてリュートの率直な言葉が伝わって来たかはわからないけど、そんなことはどうでもいい。

 ただ、リュートが横に来てくれたらなぁ……。

 ◆◆◆◆◆

「リュート、あれで江夏さん許してくれるのかよ。意味わかんねぇ」

「大丈夫だよ、カノンには一様もう伝えといたから」

「は、何をだよ。伝わらねぇよ、あんなんじゃ。リュート、頭吹き飛ばされておかしくなったんじゃないか?」

「いいや、伝わったね。俺とカノンは一心同体なんだ」

「ああ、そっちね。セックスの話か」

「……っちげえよ猿」

 俺はエータの言うことに耳を傾けずに、バッグの中に手を突っ込む。
 すでに授業は始まっている上に、席の先頭で喋っていては、入学してすぐに騒ぎ倒すヤンキーに見られても仕方がない。

 そんな風に見られては、今後の生活に支障をきたすのは目に見えてわかる。
 早く筆箱でも出して授業を受けるフリをしなければ。

 そして、筆箱を取ると机の上にポンと置こうとする。

 しかし俺が取り出したのは、筆箱ではなく真っ赤っかな太い棒だった。

「は、何これ?」

 31号と書いた柔らかい棒。
 それは、男性の象徴。
 力強くいきり勃つそれは、ピンク色に光ってクラスの全員に眩く見せる。

「でぃ、ディルドじゃねぇか!」

 エータが叫ぶと、あたりの視線を俺のそれに持って行かせる。

「えっ! 何でこんなものが俺のバッグに入ってんだよ!」

 ブルブルと震える31号は、まさに聖火の如く掲げあげてしまう。


「うわっ、季本のヤツ、あんなん持ってるぞ」

「変態! あれ、もしかして江夏さんに使うつもりかしら?!」

「学校にあんなもの持ってくるなんて、信じられんわ」

 あたりからヒソヒソと罵倒の声を浴びされる中、俺はリスみたいな顔をするしかなかった。

「いや、ちがう! これ俺のじゃない!」

 オロオロとディルドを振り回して弁解しようとするも、そんなの効くはずもない。
 え、本当に誰のこれ!
 全く記憶にないんだが!
 なんだよ31号って!

 ◆◆◆◆◆◆

 真後ろにいた私はゆっくりと下を向いて頭を抱える。
 リュートは私の愛用のディルちゃんを振り回してる。
 そりゃそうだよね、記憶消しちゃったんだから。

「……あれの存在、忘れてた……」

 ディルドの存在の全てを記憶から消してしまった為に、起こった事故だということは私だけしか理解できない。
 そして、あれの存在を知られても数日間は魔法を使えなくなってしまった私には、もうどうすることもできず……。

 ええい、リュートが変態って設定で行くしかない。
 そうね、それで許してあげるわ、リュート。

 ウンウンと後ろ頷くと、私は少しだけクスッと笑う。

 あいつ、バッカじゃない。

 ふふっ。

 つづく。

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