俺は5人の勇者の産みの親!!

快晴シャリラ

快晴、春風、告白。


「私と付き合ってください!」

 春風が優しく頰を撫で、鼻の先に俺好みの香水の香りが漂ってくる。
 美しい花が咲き誇り、まるで理想郷の真ん中に立っているような感覚に陥り、空を見上げて暖かな陽射しを目の奥に吸い込みながら瞼を閉じる。
 雲一つない美しい快晴、種のわからない白い鳥が一羽だけ俺の風景の中を横切って行った。
 桜舞い散る季節半ば、一人の美少女が俺に向かって頭を下げている。

 なんなんだ、これは……!

 しっとりと唇に塗った薄い口紅、綺麗に乗せられたファンデーション。
 周りを見渡せば、スーツの人ばかり。
 ここは一体どこだと思っているのだろうか。

「えっと……」

 俺は頰を掻きながら、ふと桜の散る姿を眺めてみる。
 踊りながら舞い降りる花びら達は、まるで俺に向けて落下してくるように見える。
 まぁ、それは俺の精神状態による錯覚なのだろう。

 頭を下げ続ける少女は清楚系女子だということは髪の色でわかる。
 人形のように綺麗な顔立ちで、こんな美女は見たことないってレベルの神々しいお姿。
 少なくとも日本人ではないことはなんとなく理解した。

 長い髪が風でなびかれる。
 直角定規を当てたくなるような腰の角度。
 平坦な彼女の背中に一枚、二枚と桜の花びらが着地する。
 美しきかな、春うらら。

 まぁ、あたりは弾丸飛び交う戦場のようになりつつあるのだが。

「どうか! おねがいします!!」

 俺は、キョロキョロしながら現場の状況を確認する。
 ここはたった今、大学の入学式が終わったばかりの出入り口の前。
 少し開けた広場で友達と駄弁ってたらこんな状況になっていたのだ。

 はい、速攻意味わかんねぇ。

 俺たちから数メートル距離を置いたオーディエンスが輪を作り、俺がどう答えるかを見つめている。
 眼球から放たれる熱視線が痛く頰や胸に突き刺さり、今にも心臓の風船が弾け飛びそうだ!

 ただ、一つ言えることがある。
 でも、こんな状況ではそれを言い出せるわけがねぇし……。

「おい!  リュート!!  こりゃ一体どういうことだ!?」

 オーディエンスから投げ込まれた声は、俺の鼓膜を破るかのような攻撃性を持っていた。
 それもそのはず、いきなりの告白だ童貞諸君?
 こんな美少女の告白を外から見ている自分の方が恥ずかしくなるだろう、セックスを知らない亡者どもめ!
 しまった、俺も亡者だった。

 嫉妬を抑えられない大衆が一気に俺の体を焼き尽くすように見守る。
 あついあつい! 視線が痛い!

「おねがいします! おねがいします!」

 ただ、それだけを連呼する美少女。
 俺は、キュッと引き締まったボディラインをまじまじと見る。
 何度も頭を下げる拍子、おっぱいがたるんと重力で落下して隙間から綺麗な肉がチラチラと見える!
 たぷんたぷんのお肉が上下に揺れるので、俺はその動きに合わせて首を縦に振ってしまった。
 もう少しで出っ張りまで見えそう!
 俺は気づけばチューチューがトレインしそうなダンスを踊っていた。
 これこそが『美女』の谷間であり、俺が大学で求める至高のラッキー風景なのだ!

 めっちゃエロい身体つきだなぁ……。
 でも、もう少し腹回りがムチムチしてた方が俺好みかもしれん……。
 嗚呼、こういう女の子を素っ裸にして抱き枕にしたら一生寝ずに済むのになぁ。
 ストレス社会なんて言葉、一撃で吹っ飛ぶぞ。

 むくむく。

 おっと、ここは大学だった。
 昼からこんなにガチガチになってしまったら真夜中の楽しみまで取っておくことはできないだろう。
 この風景を思い出すのはベッドの上で左手にくしゃっとしたティッシュを握った状態の時にしよう。

 と、言っているがこれはエッチとは別の話。
 状況を考えろ、どう考えてもおかしい。

 俺はゆっくり女の子に手を差し伸べた。
 決心した、ここで言わなければいつ言う。

 美しい白い鳥は白鳥、でも鳥は鳥だ。
 突然渡された肉を処理・確認せずに生で食う馬鹿がどこにいる?
 銀の匙で変色が無いかチェックしたか?
 pH値は測ったか?

 出したかった一言、さぁ言えよ、俺。

 俺は優しそうに、傷つけないように一言被せた。


「君……誰?」


 俺の発した言葉が聞こえた瞬間、男たちは一斉に怒号をあげた!

「うぉぉぉぉぉぉぉ!! 貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 な、なんだよ一体!!
 海賊の時代でも始まんのか!
 俺の一言で男達を掻き立てたってか?!

 そんな春風が涼しくも、熱い熱視線が俺の心を温める。
 今日は晴れ舞台だ、今日から大学生活が始まる予定だったのに。

 なんなんだ、こいつは。

 つづく。

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