友だちといじめられっ子
5
「おい、お前ら、どういうことだ?炭谷、教室に来て無いじゃないか。」
そう言って担任は、ため息をついた。
「先生ー。一日二日じゃむりでーす。今何人かで、保健室に行って、加奈と話してるので、後少し待って下さーい」
「そ、そうか。よし分かった。ちゃんとやってるならそれでいい。二週間後の木曜日。それまでに連れて来いよ」
クラスメイトの言葉は嘘だ。行ったのは少女の友人一人だけ。だが、停学までの期間が伸ばされた事は、大学に行きたい少女の友人にとって、最良の結果だった。
⋯⋯あれから毎日のように、少女の友人は、保健室に通っていた。
「ねえ、加奈。また、教室に行かない?」
ある日、少女の友人が尋ねてみたが、すぐには返事が返ってこなかった。
「でも⋯⋯」
「大丈夫。今度は、私が付いてるから。行きづらいのは、私たちのせいだよね。分かってる。でも、私が付いてるから、どうか安心して。」
少女の友人は、笑顔で少女にそう言った。
次の日、少女の友人は、少し早めに学校に来た。
「おはよ」
そしてクラスメイトは、いつも通りおはよ、と返す。
「皆ちょっと聞いて。昨日加奈の説得、多分出来たから多分今日来ると思うよ」
「おーさすが凛花。んじゃ、あいつの悪口には気をつけるよー」
少女の友人は小さく、「ありがとー」と、答えて自分の席に着いた。
しばらくして、教室のドアがガラガラと開く音がした。
「おはよ、加奈」
真っ先に出した、少女の友人のその声で、クラスメイトも「おはよ」と少女に言った。
「おはよう」
少女は、笑顔で言った。
それから数ヶ月後。少女の友人は、熱帯夜の薄暗い夜道を1人で立っていた。来る友人を静かに待って。
「おーい、加奈!こっち!」
少女の友人は、少女が、何度も転びそうになっているところを見つけ、大きな声で呼びかけた。
少女は、少女の着ている浴衣を直しながら、友人のもとへ急いだ。
その日、少女の友人は少女と、神社で行われている夏祭りに来ていた。少女の友人は、保健室で話したあの日から、少女とよく一緒にいるようになった。
しかし、それをクラスメイトたちはよく思っていなかった。少女の友人は、その空気をなんとなく感じ取っており、この夏祭りを最後に少女との関係を終わらせようと考えていた。
少女は夏祭りに来るのは初めてだったらしく、二人でたくさんの出店を回った。
少女の友人は、この少女と友達になれてよかったと、心から思った。そして別れないといけないことを苦しく思った。
夏祭りも終盤を迎えた頃、少女の友人は少女の手を引き、走った。
お祭り会場である神社の奥。そこが少女の友人が、少女を連れて来たかった場所だった。
「なんでここに?」
少女は尋ねた。
「ここはね、この夏祭りの最後に上がる花火が凄く綺麗に見えるんだよ。誰にも教えてなかったんだけどね」
少女の友人は、笑って答えた。
「じゃ、私たち二人の秘密の場所、だね」
少女は笑顔で言った。
「そうだね」
少女の友人も、笑顔で答えた。少女の友人は、心から嬉しかった。
ほどなくして、一発目の花火が上がった。少女とその友人は、二人だけの静かな空間で綺麗に上がる花火を見た。少女の友人は、こんな時間がもっともっと長く続けばいいな、と思った。少女たちの中で、その年のたった数発の花火は、どんな大きな花火大会よりも、どんなに大きくて綺麗な花火よりも、綺麗だと思った。
小さな町の、小さな夏祭りの最後に上がるたった数発の花火。だけど、少女たちには、かけがえのない思い出になった。
花火も終わり、帰り道。 
「加奈」
少し前を歩いていた友人は振り返り、少女の名前を呼んだ。
「なぁに?」
少女は友人に尋ねた。少女の友人は、何度言っても足りない言葉を伝える。
「私、加奈と友達になれて良かったよ。なんで、あんなことしちゃったんだろ。ほんとごめん」
それを聞いて少女は、可笑しそうに笑った。
「いいんだよ、もう、そんなこと。私、あの日、保健室に凛花が来てくれて、謝ってくれて、ほんとうに嬉しかったんだ。あの時は、ありがとね」
ほっとしたように笑って、少女は前を向いた。
「これからも、ずっと友達でいようね」
夏祭りの最後に買った、ラムネ瓶の中のビー玉を落とすと、泡が吹き出た。少女たちは、真っ暗になった道を二人で、歩いていた。少女たちの手には、開けたばかりのラムネ瓶が握られていた。
少女とその友人は、来た時に待ち合わせた場所で「またね」と言い、別れた。
別れた後、少女の友人は考えていた。このまま少女との関係を続ければ、間違いなくクラスメイトからの、いじめの対象になってしまうから。
⋯⋯悩みながら歩いていた少女の友人は、いつの間にか車道に足を踏み入れていた。
そう言って担任は、ため息をついた。
「先生ー。一日二日じゃむりでーす。今何人かで、保健室に行って、加奈と話してるので、後少し待って下さーい」
「そ、そうか。よし分かった。ちゃんとやってるならそれでいい。二週間後の木曜日。それまでに連れて来いよ」
クラスメイトの言葉は嘘だ。行ったのは少女の友人一人だけ。だが、停学までの期間が伸ばされた事は、大学に行きたい少女の友人にとって、最良の結果だった。
⋯⋯あれから毎日のように、少女の友人は、保健室に通っていた。
「ねえ、加奈。また、教室に行かない?」
ある日、少女の友人が尋ねてみたが、すぐには返事が返ってこなかった。
「でも⋯⋯」
「大丈夫。今度は、私が付いてるから。行きづらいのは、私たちのせいだよね。分かってる。でも、私が付いてるから、どうか安心して。」
少女の友人は、笑顔で少女にそう言った。
次の日、少女の友人は、少し早めに学校に来た。
「おはよ」
そしてクラスメイトは、いつも通りおはよ、と返す。
「皆ちょっと聞いて。昨日加奈の説得、多分出来たから多分今日来ると思うよ」
「おーさすが凛花。んじゃ、あいつの悪口には気をつけるよー」
少女の友人は小さく、「ありがとー」と、答えて自分の席に着いた。
しばらくして、教室のドアがガラガラと開く音がした。
「おはよ、加奈」
真っ先に出した、少女の友人のその声で、クラスメイトも「おはよ」と少女に言った。
「おはよう」
少女は、笑顔で言った。
それから数ヶ月後。少女の友人は、熱帯夜の薄暗い夜道を1人で立っていた。来る友人を静かに待って。
「おーい、加奈!こっち!」
少女の友人は、少女が、何度も転びそうになっているところを見つけ、大きな声で呼びかけた。
少女は、少女の着ている浴衣を直しながら、友人のもとへ急いだ。
その日、少女の友人は少女と、神社で行われている夏祭りに来ていた。少女の友人は、保健室で話したあの日から、少女とよく一緒にいるようになった。
しかし、それをクラスメイトたちはよく思っていなかった。少女の友人は、その空気をなんとなく感じ取っており、この夏祭りを最後に少女との関係を終わらせようと考えていた。
少女は夏祭りに来るのは初めてだったらしく、二人でたくさんの出店を回った。
少女の友人は、この少女と友達になれてよかったと、心から思った。そして別れないといけないことを苦しく思った。
夏祭りも終盤を迎えた頃、少女の友人は少女の手を引き、走った。
お祭り会場である神社の奥。そこが少女の友人が、少女を連れて来たかった場所だった。
「なんでここに?」
少女は尋ねた。
「ここはね、この夏祭りの最後に上がる花火が凄く綺麗に見えるんだよ。誰にも教えてなかったんだけどね」
少女の友人は、笑って答えた。
「じゃ、私たち二人の秘密の場所、だね」
少女は笑顔で言った。
「そうだね」
少女の友人も、笑顔で答えた。少女の友人は、心から嬉しかった。
ほどなくして、一発目の花火が上がった。少女とその友人は、二人だけの静かな空間で綺麗に上がる花火を見た。少女の友人は、こんな時間がもっともっと長く続けばいいな、と思った。少女たちの中で、その年のたった数発の花火は、どんな大きな花火大会よりも、どんなに大きくて綺麗な花火よりも、綺麗だと思った。
小さな町の、小さな夏祭りの最後に上がるたった数発の花火。だけど、少女たちには、かけがえのない思い出になった。
花火も終わり、帰り道。 
「加奈」
少し前を歩いていた友人は振り返り、少女の名前を呼んだ。
「なぁに?」
少女は友人に尋ねた。少女の友人は、何度言っても足りない言葉を伝える。
「私、加奈と友達になれて良かったよ。なんで、あんなことしちゃったんだろ。ほんとごめん」
それを聞いて少女は、可笑しそうに笑った。
「いいんだよ、もう、そんなこと。私、あの日、保健室に凛花が来てくれて、謝ってくれて、ほんとうに嬉しかったんだ。あの時は、ありがとね」
ほっとしたように笑って、少女は前を向いた。
「これからも、ずっと友達でいようね」
夏祭りの最後に買った、ラムネ瓶の中のビー玉を落とすと、泡が吹き出た。少女たちは、真っ暗になった道を二人で、歩いていた。少女たちの手には、開けたばかりのラムネ瓶が握られていた。
少女とその友人は、来た時に待ち合わせた場所で「またね」と言い、別れた。
別れた後、少女の友人は考えていた。このまま少女との関係を続ければ、間違いなくクラスメイトからの、いじめの対象になってしまうから。
⋯⋯悩みながら歩いていた少女の友人は、いつの間にか車道に足を踏み入れていた。
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