Duty
chapter 20 心 -1
1 9月17日 ありがとう
陽太が、目を覚ますと病院だった。
ここは乙黒も入院している朝倉医院か。隣のベッドには桜が寝ていた。
ゆっくりと起き上がり陽太は桜のそばに寄った。
安心しきって寝ている。
それはかつて、そう子供の頃から見ていた純粋な桜の寝顔だった。
「胡桃沢さんの体調不良はもしかしてここ数年でひどくなっていたんじゃないのかい?」
陽太は驚いて前方を見ると、カーテンレールが開けられ霧島が顔を出した。
「霧島、お前! どうしてここに!」
「僕たち3年1組の生徒はみんなそれぞれの病院に入院しているようだよ。……ああ、別に怪我をしたり、病気にかかったりってわけじゃない。ただのメンタルケアってやつかな」
おう、と吐息を漏らすと陽太は先ほどの霧島の質問に答えた。
「桜は昔から身体が弱かったが、最近はとくに崩しやすかった。『審判』のストレスとかが原因だと思っていたんだが」
霧島はすやすやと眠る桜を見つめて呟いた。
「彼女こそ霊媒体質だったのか。それも『御影充』の……」
「なんだって……?」
「いや、なんでもないよ……。そういえば乙黒さんは僕たちと入れ替わるように退院できたらしい。結局原因は不明だったらしいけどね。いたって健康体だ」
「おう、そうか。良かった。俺も後で謝りにいかないと」
「ああ良かったよ。一応ね」
そういいながら嫌味たらしい霧島の笑みを見ると、思わず陽太は噴き出してしまった。
「! なんだい、人の顔を見るなり」
「いや、悪い。お前のその嫌な笑い方、最初は嫌いだったが。慣れてみればどういうわけか、頼もしくもあり、安心する」
「……凄く失礼で、かつ気持ち悪いな」
そういうと陽太は微笑んで桜の顔を見つめた。
「おっと……僕は邪魔なようだね。入院中なんだから隣の僕には迷惑をかけないようにしてくれよ」
霧島は嫌味たらしい笑みを浮かべカーテンレールを閉めた。
「馬鹿か! 何もしねえよ!」
陽太はカーテンレールを見つめていった。
「……ったく」
『だから言ったでしょ。キミなら大丈夫、って』
その声に陽太は目を見開き、声のした『胡桃沢桜』のほうを見た。
『胡桃沢桜』は呆然として陽太を見つめていた。
『ごめんね。これで最後だ。これ以上キミたちに迷惑は掛けないよ』
「……お前は……」
『あ……胡桃沢桜さんに謝っておいてくれないかな。身体を借りてごめん、って』
「……ああ」
『あと……お母さんを、御影浪子を止めてくれてありがとう』
「……御影零には会っていかなくていいのか?」
『……零はああ見えて凄く弱い所もあるんだ。だからこそ、僕のことをカセにして生きてほしくない』
「……」
『良かったら友達になってあげてくれないかな?』
「あいつ性格悪いからな……大変だ」
無表情の『胡桃沢桜』は笑ったような気がした。
そして、
『……ありがとう』
と呟くと、『胡桃沢桜』は目を閉じた。
陽太が、目を覚ますと病院だった。
ここは乙黒も入院している朝倉医院か。隣のベッドには桜が寝ていた。
ゆっくりと起き上がり陽太は桜のそばに寄った。
安心しきって寝ている。
それはかつて、そう子供の頃から見ていた純粋な桜の寝顔だった。
「胡桃沢さんの体調不良はもしかしてここ数年でひどくなっていたんじゃないのかい?」
陽太は驚いて前方を見ると、カーテンレールが開けられ霧島が顔を出した。
「霧島、お前! どうしてここに!」
「僕たち3年1組の生徒はみんなそれぞれの病院に入院しているようだよ。……ああ、別に怪我をしたり、病気にかかったりってわけじゃない。ただのメンタルケアってやつかな」
おう、と吐息を漏らすと陽太は先ほどの霧島の質問に答えた。
「桜は昔から身体が弱かったが、最近はとくに崩しやすかった。『審判』のストレスとかが原因だと思っていたんだが」
霧島はすやすやと眠る桜を見つめて呟いた。
「彼女こそ霊媒体質だったのか。それも『御影充』の……」
「なんだって……?」
「いや、なんでもないよ……。そういえば乙黒さんは僕たちと入れ替わるように退院できたらしい。結局原因は不明だったらしいけどね。いたって健康体だ」
「おう、そうか。良かった。俺も後で謝りにいかないと」
「ああ良かったよ。一応ね」
そういいながら嫌味たらしい霧島の笑みを見ると、思わず陽太は噴き出してしまった。
「! なんだい、人の顔を見るなり」
「いや、悪い。お前のその嫌な笑い方、最初は嫌いだったが。慣れてみればどういうわけか、頼もしくもあり、安心する」
「……凄く失礼で、かつ気持ち悪いな」
そういうと陽太は微笑んで桜の顔を見つめた。
「おっと……僕は邪魔なようだね。入院中なんだから隣の僕には迷惑をかけないようにしてくれよ」
霧島は嫌味たらしい笑みを浮かべカーテンレールを閉めた。
「馬鹿か! 何もしねえよ!」
陽太はカーテンレールを見つめていった。
「……ったく」
『だから言ったでしょ。キミなら大丈夫、って』
その声に陽太は目を見開き、声のした『胡桃沢桜』のほうを見た。
『胡桃沢桜』は呆然として陽太を見つめていた。
『ごめんね。これで最後だ。これ以上キミたちに迷惑は掛けないよ』
「……お前は……」
『あ……胡桃沢桜さんに謝っておいてくれないかな。身体を借りてごめん、って』
「……ああ」
『あと……お母さんを、御影浪子を止めてくれてありがとう』
「……御影零には会っていかなくていいのか?」
『……零はああ見えて凄く弱い所もあるんだ。だからこそ、僕のことをカセにして生きてほしくない』
「……」
『良かったら友達になってあげてくれないかな?』
「あいつ性格悪いからな……大変だ」
無表情の『胡桃沢桜』は笑ったような気がした。
そして、
『……ありがとう』
と呟くと、『胡桃沢桜』は目を閉じた。
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