Duty

Kfumi

chapter 18 第5の審判 -1

1  9月16日 母と子⑥


 朝、重い瞼を擦り開け目を覚まし、窓の外を眺めた。
 空は黒かった。
 まるで世界全体が闇に覆われているかのように。
 テレビでは作り笑顔のキャスターが今日の天気を伝えていた。
 降水確率20パーセント。
 昼からは快晴となるらしい。
 嘘をつかれている気がした。
 洗面台に行き、水飛沫が跳ねるのを気にしながら顔を洗う。
 最近、自分自身のことを見つめなおす機会が増えた。
 それに伴う何かの劣化。
 それは初めからあった自らの『欠落』に気付き始めたことか?
 でも、そんなことはどうでもいい。

 まだだ。
 これは人類史に残る偉業となるのだから。

× × × × ×

 いつもより通学用の鞄が重く感じた。
 心痛な面持ちで神谷陽太は自室から階段を下りてきた。
 つい先日に霧島響哉からの連絡を受けて以来、ずっと心の中に大きな鉛を埋め込まれたかのような気分だった。
 この間、母である神谷波絵の顔さえも見ることができなかった。
 怖かったからだ。
 もう誰を信用していいかわからなかった。

「僕たちが止めなければならない」

 霧島からの電話で最後に言われた言葉だ。
 それは陽太が3年1組で最初に感じたことだ。
 それが起因となり、『審判』に立ち向かおうと考えたのだ。
 宵崎高校の全貌を過去から眺めた。それによって御影充というかつてのスクールカースト下位の正体が見えてきて、御影零という存在を掴めた。
 そして、御影浪子のことを知った。
 さらに、自分のdark sideに気付き始めた。

【自分の中には、自分以外の何かがいる】

 それが何なのかはまだわからない。
 でも、確かに言えること。
 それは、自分が『審判』を止めなければならないということ。
 必ず。

「陽太?」

 玄関のドアを開こうとしたとき、背後から声をかけられ陽太は思わず身体を硬直させてしまった。
 ドアノブを掴んだまま、ゆっくりと振り返った。
 息子を心配するような顔をして波絵がそこに立っていた。

「陽太、ご飯は?」

 陽太は渇いた喉から振り絞るように声を出した。

「いらない」

 波絵は小さく頷くと続けていった。

「顔色悪いじゃない。無理して学校に行く必要なんてないのよ」

 陽太は一瞬目を閉じて、ゆっくりと開いた。
 先よりも強めの口調でいった。

「いや行くよ。行かなきゃならない」
「……陽太?」
「母さん……俺は、貴方に聞きたいことがある」

 首を傾げる彼女を鋭く見つめながら、陽太は小さく深呼吸して口を開きいった。

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