Duty
chapter 9 調査 -1
1 7月6日 呼び出し①
夏の日差しが強まる今日日、神谷陽太は霧島響哉からの連絡で目が覚めた。
今学期になってから立て続けに3年1組の生徒たちが亡くなっている。
それには「審判」という非現実的な出来事が関係していて、それがどうして起こっているのか、また故意的なものだとしたなら誰が起こしているのか、という考察を先月下旬クラスメイトの霧島から伝えられた。
陽太自身はというと、そんなことは考えたくも無いというのが本音であった。
しかし、事態の解決へと収束させたいというのも本心なわけで。
陽太は寝汗の滲む重い体をベッドから起こした。
「よく俺の電話番号知ってたな」
「こういうのは得意なもので」
何か裏があるような霧島の微笑が目の前に浮かんでくるようだ。
「何すんだよ。策、思いついたのかよ」
「まずは調査しなきゃ始まらないだろ」
「調査って……何を?」
* * * * *
陽太は駆け足で駅への道を急いでいた。
出掛けるとき、母である波絵に見つかり「どこに出掛けるのか」「予定はなにか」などしつこく聞かれたのだが、友達と勉強とだけ告げて逃げるように出てきた。
そのまま軽いランニングでもしているかのように走り続けていた。
そして駅に向かう途中で陽太は桜と出会った。
ワンピースの普段着をラフに纏い目の前に現れた。
桜のほうが陽太より先に霧島から電話が掛かってきたらしい。
桜から電話番号を聞き、陽太へと繋げたそうだ。
「なんで霧島、桜の番号知ってんだよ」
「なんか結構前に交換した……ような気がするんだよね~」
桜はのんびりとした口調でそう答えた。
「へー」
下唇を前に突き出し、何か気に喰わなそうな陽太を眺め、にんまりと桜は笑った。
駅に着き、切符を買い、霧島との約束の場所まで電車で向かう。
今日何をするのかは「会ったら説明する」らしい。
陽太は寝惚けていて約束の駅名しか覚えては居なかった。
休日の電車内はほとんど人がおらず空いていた。
窓から外の景色を眺める桜の横顔を眺めながら、
陽太は何か不安そうな表情を浮かべ、口を開いた。
「あのさ……桜」
「なに?」
「別に桜は、来なくてもいいんだぞ」
「なにそれ。どういう意味?」
「桜がクラスのことで責任感じて、無理する必要は無いだろ」
「別に無理はしてないよ」
「霧島は『審判』に関して何かを調べようとしている。つまりは、その……」
「大丈夫だよ」
桜の表情はそんな言葉の反面、硬かった。
「俺はお前の体調の心配をしてるんだ」
先ほどよりも強い口調で陽太は言った。
「大丈夫」
「もっと深く『審判』に関して追求する解決法だ、と思う。嫌な思いとかするかもしれない」
「陽太たちに仲間外れにされるほうがよっぽど嫌だ」
「……」
陽太は苦虫を噛み潰したような顔で桜を見つめた。
「私は大丈夫」
「辛くなったら絶対に言え」
「はいはい。陽太は人の心配してばっかり」
陽太は桜に隠れて溜息をついた。
そんな桜は「あっ」と何かを思い出したかのように、にやつきながら陽太の顔を窺い言った。
「そ・れ・に」
「? なんだよ」
「陽太こそ、波絵さんに心配させるようなことはしちゃ駄目だからね」
幼馴染である桜は陽太の母・波絵のことを知っているし、「小母(オバ)さん」や「陽太のお母さん」とではなく「波絵さん」と呼ぶのだった。
それは波絵が自身の歳に比べ、若く見えるせいかもしれない。
「おいおい、やめろって、親は関係ねえだろ。それにその言葉そっくりそのままお前に返すぜ」
「ありゃりゃ。返されちった……ってことで。心配しすぎるのも玉にきずなんだからね。わかった陽太?」
悪戯に頬を緩ませ桜は告げた。
そんな桜を窺うと、ふーっと胸のつっかえを取るように息を吐き、陽太は窓の外の遠い景色を見つめた。
夏の日差しが強まる今日日、神谷陽太は霧島響哉からの連絡で目が覚めた。
今学期になってから立て続けに3年1組の生徒たちが亡くなっている。
それには「審判」という非現実的な出来事が関係していて、それがどうして起こっているのか、また故意的なものだとしたなら誰が起こしているのか、という考察を先月下旬クラスメイトの霧島から伝えられた。
陽太自身はというと、そんなことは考えたくも無いというのが本音であった。
しかし、事態の解決へと収束させたいというのも本心なわけで。
陽太は寝汗の滲む重い体をベッドから起こした。
「よく俺の電話番号知ってたな」
「こういうのは得意なもので」
何か裏があるような霧島の微笑が目の前に浮かんでくるようだ。
「何すんだよ。策、思いついたのかよ」
「まずは調査しなきゃ始まらないだろ」
「調査って……何を?」
* * * * *
陽太は駆け足で駅への道を急いでいた。
出掛けるとき、母である波絵に見つかり「どこに出掛けるのか」「予定はなにか」などしつこく聞かれたのだが、友達と勉強とだけ告げて逃げるように出てきた。
そのまま軽いランニングでもしているかのように走り続けていた。
そして駅に向かう途中で陽太は桜と出会った。
ワンピースの普段着をラフに纏い目の前に現れた。
桜のほうが陽太より先に霧島から電話が掛かってきたらしい。
桜から電話番号を聞き、陽太へと繋げたそうだ。
「なんで霧島、桜の番号知ってんだよ」
「なんか結構前に交換した……ような気がするんだよね~」
桜はのんびりとした口調でそう答えた。
「へー」
下唇を前に突き出し、何か気に喰わなそうな陽太を眺め、にんまりと桜は笑った。
駅に着き、切符を買い、霧島との約束の場所まで電車で向かう。
今日何をするのかは「会ったら説明する」らしい。
陽太は寝惚けていて約束の駅名しか覚えては居なかった。
休日の電車内はほとんど人がおらず空いていた。
窓から外の景色を眺める桜の横顔を眺めながら、
陽太は何か不安そうな表情を浮かべ、口を開いた。
「あのさ……桜」
「なに?」
「別に桜は、来なくてもいいんだぞ」
「なにそれ。どういう意味?」
「桜がクラスのことで責任感じて、無理する必要は無いだろ」
「別に無理はしてないよ」
「霧島は『審判』に関して何かを調べようとしている。つまりは、その……」
「大丈夫だよ」
桜の表情はそんな言葉の反面、硬かった。
「俺はお前の体調の心配をしてるんだ」
先ほどよりも強い口調で陽太は言った。
「大丈夫」
「もっと深く『審判』に関して追求する解決法だ、と思う。嫌な思いとかするかもしれない」
「陽太たちに仲間外れにされるほうがよっぽど嫌だ」
「……」
陽太は苦虫を噛み潰したような顔で桜を見つめた。
「私は大丈夫」
「辛くなったら絶対に言え」
「はいはい。陽太は人の心配してばっかり」
陽太は桜に隠れて溜息をついた。
そんな桜は「あっ」と何かを思い出したかのように、にやつきながら陽太の顔を窺い言った。
「そ・れ・に」
「? なんだよ」
「陽太こそ、波絵さんに心配させるようなことはしちゃ駄目だからね」
幼馴染である桜は陽太の母・波絵のことを知っているし、「小母(オバ)さん」や「陽太のお母さん」とではなく「波絵さん」と呼ぶのだった。
それは波絵が自身の歳に比べ、若く見えるせいかもしれない。
「おいおい、やめろって、親は関係ねえだろ。それにその言葉そっくりそのままお前に返すぜ」
「ありゃりゃ。返されちった……ってことで。心配しすぎるのも玉にきずなんだからね。わかった陽太?」
悪戯に頬を緩ませ桜は告げた。
そんな桜を窺うと、ふーっと胸のつっかえを取るように息を吐き、陽太は窓の外の遠い景色を見つめた。
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