Duty
chapter 4 第1の審判 -3
3 5月20日 鮮血
慌てて廊下を駆け抜けてきた陽太と桜、またその背後から追って来た金城とミキは、3年1組担任である静間と擦れ違った。
3年1組教室から必死に五十嵐を追い走ってきた彼らだったが、その姿を見失ってしまっていた。
「これから授業ですよ! 五十嵐君といい何なんですか?」
こんなときに静間のことなど構ってはいられなかったのだが、
「! 先生、五十嵐君のこと見たんですか」
桜が息を荒げながら聞いた。
「ああ。五十嵐君ならさっき走って行きました、なんというか必死な形相で。声を掛けても無視されて――」
「くそ!」
静間が言い終わるのを待たずに、陽太は再び走り出した。
金城とミキもそのあとに続き、桜は礼をして走り出した。
廊下を抜けて、曲がり角を曲がりとそこは階段だった。
校舎3階に位置する3学年階層は屋上に向かう階段と2階へ向かう階段がある。
「どこ行ったんだ、五十嵐のやつ!」
荒げた息を振り切るように陽太は声を発した。
「……」
その後ろの金城にミキ、桜も周りを見回した。
そして、ミキと桜がほぼ同時にそれを発見した。
「きゃああああああああ!」
廊下から見える階段の踊り場に、無残にも頭から血を流し倒れる五十嵐の姿を。
桜とミキの悲鳴が廊下中に響き渡った。
陽太と金城もそんな五十嵐の姿を怯えながら見ることしか出来なかった。
そんな悲鳴を聞いてか、陽太たちのことを放っておけずにいたのか、先ほど擦れ違った静間がやって来た。
「何なんですか。さっきから」
その場に居る生徒たちはただただ黙って踊り場に転がるその鮮血に染まった姿を捉えることしかできない。
静間も陽太たちの視線の先を追って、五十嵐の姿を発見した。
「うわああっ! い、五十嵐君! キミたちは、こ、ここに居なさい……っ!」
さすがの静間でさえも震えた足取りで倒れる五十嵐のもとへ向かった。
階段の格段角にも血が付着していた。
おそらくだが、降りる途中で転倒して、段の角に頭をぶつけ、その勢いによって肉を裂き、そのまま引きずられるように落下していったように見えた。
静間は静かに「五十嵐君?」と声を掛けるが返答は無く。
ゆっくりとおぼつかない手付きで、何かのドラマで見た真似をするように五十嵐の脈をはかった。
そして、
「し、死んでいる……」
小さな声で、恐怖に怯えた静寂な廊下では十分すぎる声で、そう告げた。
陽太たちはただそんなクラスメイトの姿を戦慄の表情で見ていることしかできなかった。
だが、そのときそんな陽太たちの背後の曲がり角で、その一部始終を見ていた『人物』がいることをこのときの陽太たちは知る由もなかった。
「神谷陽太君に胡桃沢桜さん、か」
その『人物』は静かに顎を抱え、「ふむふむ」というように頷き、そんな光景を眼鏡の奥の冷徹な眼で睨みつけていた。
また陽太の姿を評定しているようにも見えた。
そして、彼は嫌味な笑みを浮かべ誰よりも早くその場を後にした。
慌てて廊下を駆け抜けてきた陽太と桜、またその背後から追って来た金城とミキは、3年1組担任である静間と擦れ違った。
3年1組教室から必死に五十嵐を追い走ってきた彼らだったが、その姿を見失ってしまっていた。
「これから授業ですよ! 五十嵐君といい何なんですか?」
こんなときに静間のことなど構ってはいられなかったのだが、
「! 先生、五十嵐君のこと見たんですか」
桜が息を荒げながら聞いた。
「ああ。五十嵐君ならさっき走って行きました、なんというか必死な形相で。声を掛けても無視されて――」
「くそ!」
静間が言い終わるのを待たずに、陽太は再び走り出した。
金城とミキもそのあとに続き、桜は礼をして走り出した。
廊下を抜けて、曲がり角を曲がりとそこは階段だった。
校舎3階に位置する3学年階層は屋上に向かう階段と2階へ向かう階段がある。
「どこ行ったんだ、五十嵐のやつ!」
荒げた息を振り切るように陽太は声を発した。
「……」
その後ろの金城にミキ、桜も周りを見回した。
そして、ミキと桜がほぼ同時にそれを発見した。
「きゃああああああああ!」
廊下から見える階段の踊り場に、無残にも頭から血を流し倒れる五十嵐の姿を。
桜とミキの悲鳴が廊下中に響き渡った。
陽太と金城もそんな五十嵐の姿を怯えながら見ることしか出来なかった。
そんな悲鳴を聞いてか、陽太たちのことを放っておけずにいたのか、先ほど擦れ違った静間がやって来た。
「何なんですか。さっきから」
その場に居る生徒たちはただただ黙って踊り場に転がるその鮮血に染まった姿を捉えることしかできない。
静間も陽太たちの視線の先を追って、五十嵐の姿を発見した。
「うわああっ! い、五十嵐君! キミたちは、こ、ここに居なさい……っ!」
さすがの静間でさえも震えた足取りで倒れる五十嵐のもとへ向かった。
階段の格段角にも血が付着していた。
おそらくだが、降りる途中で転倒して、段の角に頭をぶつけ、その勢いによって肉を裂き、そのまま引きずられるように落下していったように見えた。
静間は静かに「五十嵐君?」と声を掛けるが返答は無く。
ゆっくりとおぼつかない手付きで、何かのドラマで見た真似をするように五十嵐の脈をはかった。
そして、
「し、死んでいる……」
小さな声で、恐怖に怯えた静寂な廊下では十分すぎる声で、そう告げた。
陽太たちはただそんなクラスメイトの姿を戦慄の表情で見ていることしかできなかった。
だが、そのときそんな陽太たちの背後の曲がり角で、その一部始終を見ていた『人物』がいることをこのときの陽太たちは知る由もなかった。
「神谷陽太君に胡桃沢桜さん、か」
その『人物』は静かに顎を抱え、「ふむふむ」というように頷き、そんな光景を眼鏡の奥の冷徹な眼で睨みつけていた。
また陽太の姿を評定しているようにも見えた。
そして、彼は嫌味な笑みを浮かべ誰よりも早くその場を後にした。
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