究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~

神庭圭

第45話 金竜と炎の騎士

 ダンジョン最下層は神々しい神殿のような場所だった。白い見たことも無い材質の階段を上がっていく。そして最上階。
 そこには一匹の、金色の竜が居た。元々このダンジョンには光属性の魔物が多かったが、なるほど、ボスは光系のドラゴンか。


金龍クェーサー 魔力数値150000
 遥か昔、天界から地上に降りたとされる竜。強大な光の魔法を操る。


「魔力数値15万。ボスでもこんなもんか」
「いやいや素空。敵の強さは期待しないでよ。所詮地下に逃げた敗北者だ」
「そうだな。欲しいのは素材だ素材」
「その通り! こんなのでも、新しい武器作成には必須の素材でね」

 神殿の上部はクェーサーまで一本道と、周囲には折れた柱の数々。なんか、RPG感があって楽しい。

「よく来た地上の者達よ。我はクェーサー。このダンジョンの主でぐああああああああ!?」

 敵の口上を聞かずして、敵に複製エクスカリバーを投擲するランページ。クェーサーの右翼が消し飛んだ。容赦ねぇ。

「何ボスぶってんだよクェーサー。お前なんて天界にはゴロゴロいる雑魚だ。黙って死ね」
「ふん、蛮族め……目に物見せてやるぞ」

 こうして、なんだか締まらない感じでラストバトルが始まった。


***


数秒後。

「弱すぎ。コイツダンジョンの中で何年も何年も何してたんだよ」

 横たわったクェーサーの死体に複製エクスカリバーをぽんぽん突き立てながら、ランページは不満そうに呟いた。
 現在、クェーサーの体には10本くらいの複製エクスカリバーが突き立っており、剣山の様になっている。

「静かに暮らしていたんだろうよ。さて、もうここから先は無いし、レティスが追いついてくるのを待とう」
「ちぇー、コイツお宝も隠してないじゃないか。もしここを初めてクリアしたのが人間だったら、どうするのさ」
「ここまでの冒険が何よりの宝だ」
「浅い!?」
「でも、楽しかっただろ?」
「まぁ」

 なら良かった。

「あ、終わったみたいですね」

 すると、神殿の階段の下からレティスが上がってきた。三本の角と白い髪をバサバサと揺らしながら、お気楽な顔でこちらに向かって歩いてくる。
 随分とのんびりだな。結構魔力を消費するというテレポートを使わせすぎたせいで、多少疲れているのかもしれない。

「お疲れ様です竜帝様」
「レティスもお疲れ。悪かったね、テレポートを多用させて」
「いえいえ。これも憎き神樹を伐採する為。ランページちゃん。素晴らしい武器を期待してますよ」
「任せてよ。素空の為に全力を尽くすから!」

 胸を張るランページ。本当に期待してるぜ。

「さて、それじゃあパパッと解体しちゃいますかね」

 レティスは腰から包丁の様なナイフを二本取り出す。それを左右で握り、くるくると回転させる。格好良い。

「そういえば解体を見るのは初めてだな」
「マジですか? それじゃあ私の自慢の解体を竜帝様にお見せしますよ」

 そう笑いながらクェーサーに近づいたレティスの動きがぴたりと止まった。空気が一変する。

「竜帝様。申し訳ありませんが解体ショーは中止です」
「そうだね。ああ、なんてこった。こんなにも早くあいつ等がやってくるなんて」

 神殿の下。まっすぐと伸びた先には、上の階層へと繋がる転移門がある。そこから白い甲冑を纏った騎士と白い神官服を着た者達が転移してくるではないか。
 さらに、それに続いて姫川とジエルも。一体何があったというんだ。

 あの騎士達の見た目はどう見てもクラスメイトの物じゃない。ならば、増援に来たガルムの私兵か。だとしたら……あれが星の騎士団なのか。

「ん?」

 白鎧の騎士の内の三人が何かしているな。

「……素空、避けろっ」
「えっ……!?」

 俺の足元に魔法陣が出現するのと、ランページがそう叫ぶのは同時だった。俺は突き飛ばされる。起き上がってランページを見ると、何やら水色の光の様なモノに囚われていた。

「おい、それは一体なんだ?」
「これは封印系のスキルだ……この中に居る限り、動けないみたいだね。どうやら、《神聖》持ちにも有効らしい」
「出られないのか?」
「はは。出来れば苦労はないんだけどね。残念ながらあの術者三人を殺すまでは不可能だ」
「だが俺の永遠を超える竜の星なら……」
「うん。多分それなら破壊できるけど、この結界を破壊できる威力だと今度はボクまで消しとんじゃうよ」

 クソ……まさかあんなのが出てくるとはな。ガルムの私兵。出来ればここで皆殺しにしたいが……姫川が来ている以上、ここから攻撃することは出来ない。盾にされたら敵わない。
 一緒にいるジエルにも期待できない。奴は俺を倒したいと本気で考えている男だ。堕天したが、心までは堕ちてはいないのだ。だからこそ姫川を鍛えて欲しいと頼んだのだから。

 しかしこの状況であれば、間違いなくヤツは本気で俺を消しに来る。

「竜帝様? その仮面は?」

 俺はバッグから仮面を取り出した。白いシンプルな仮面だ。姫川の前で人間の状態を晒したくは無い。かといって、本気の実力を神樹侵攻前に晒す訳にも行かない。ならばここはレティスに……ん?

「あれは……まさか必殺技を!?」

 一瞬、気温が上昇したように感じた。白い鎧の騎士が輝く赤い刀身の剣を構えている。そこに、膨大な魔力が凝縮されていく。間違いない。攻撃系のEXスキルを使うつもりだ。

「レティス! 解体している時間は無い。クェーサーの死体と俺達をまとめてテレポートできるか?」
「それは出来ないです。封印状態のランページは連れて行けないし、テレポートにも一度に運べる限界があります」

 だよな。だからこそ今までの素材は解体してから運んでいたのだろうし。と、言っている間に敵がEXスキルを解放したようだ。炎の渦がまっすぐ、こちらに向かって来ている。

「だったらまずはクェーサーの死体を屋敷に運んでくれ。そしたら、今度は俺達を向かえに来てくれ」

 テレポートの再発動までの時間は確か10分。それまで足止めをしなくちゃな。

「わかりました。それじゃあ失礼」

 大急ぎでクェーサーのところまで走っていったレティス。そして、死体に突き刺さっていた複製エクスカリバーの一本を引き抜き、此方に投げてきた。

「ん?」
「竜帝様! 絶対勝ってくださいねー!」

 そうして、レティスとクェーサーは消えた。同時に迫ってくる激しい熱量。

「馬鹿馬鹿素空のバカ! なんで残ったのさ! ボクは死なないんだから、置いていってよかったのに!」
「だってお前、そんな可愛い見た目で封印されてるんだぜ? あいつ等に欲望のまま酷い事されないとも限らない。だから絶対に助けないと」
「うぅ……足手まといになっちゃって、ゴメンよ素空ぁ」
「泣くな泣くな。それに。助けてくれた親友を見捨てて行くほど、俺は冷たい人間じゃないんだ」

 まるで溶けてしまいそうなくらいの熱線がこちらに迫っている。敵の攻撃は炎属性か。直撃すれば大ダメージだろう。

「あれ、どうしてボクの後ろに隠れるの素空?」
「いや、死なないなら、いいかなーって」

 やっぱり人間の状態で直撃するのは怖い。

「素空ー!?」

 というランページの叫びは、敵の必殺技によりかき消されるのだった。

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