究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~
第29話 決着と復活
右腕を突き上げ、昇竜拳のごとく添乗を突き破る。
やっとこさ1階に辿り着いたと思ったのだが、床をぶち破るのと同時に、何かヌメりとした物体を貫通した。
  ヒヤりとする。まさかゴリラかイデアに当たってしまったのか。だが、どうやら違ったようだ。しかし、安心は出来ない。
  眼下にはまさに今俺が突き破ったと思われるモンスターがいて、力なく床に倒れ伏している。
その魔獣の体液だろうか、透明なぬるぬるした液体が体に纏わりついていた。こりゃまるでろ、ローションじゃねぇか。
「ゲェエエエ、気持ち悪っ」
「お前! すぞらだな!」
倒れる魔物からなるべく離れた位置に着地すると、もはや懐かしくすら感じる声が聞こえた。イデアだった。何があったのか、鎧が砕け、シャツのとスパッツのみとなっている。俺にもかかっているぬるぬるまみれで、なんというかエロかった。
「フッ、私は信じていたぞ」
こんなときでもキャラぶれしないそのドヤ顔に安心しつつ、状況が飲み込めない。あれは大場が呼んだ魔獣?
「そうだ。奴が私を呼んだ本当の目的は、私にこの魔物の子供を孕ませることだったらしい」
「なんでわざわざイデアに?」
俺は少しだけ怒気を込めた口調で言った。体が疼くならエロ魔獣自分に使って慰めてろなどとは思いはしない。大場に言ったつもりだったのだが、イデアが答えた。
「紋章の力を持つ魔獣を造りたかったそうだぞ。紋章の力は王族じゃなければ使えないからな」
「なるほど、それを遺伝させようとねぇ」
まるでペニスの様な形をした、見ているだけで不快になる死体を《獄炎核》で発生させた炎で消し去り、俺は腰を抜かしたように座り込んでいる大場に近寄る。
「まさか……ミュートランスが負けたの?」
「目論みが外れたな。大分苦戦させられたけど、所詮コピーはコピーだ」
そうして、俺は倒れている大場に覆いかぶさるように床に手を突いた。壁ドンならぬ床ドンだ。小さな悲鳴を上げる大場。目には涙を浮かべつつも、俺を睨みつけるようにしながら悪態をつく。
「私を殺すなら殺しなさいよ。もうアンタ達を倒す手段は無くなったわ」
「殺さないって。人をなんだと思ってるんだよ」
 「……」
ジトっと睨まれた。おお、怖い怖い。けれど、怖くてもやることはやっておかないと。
「さて、質問タイムだ。ガルム王子の目的を教えて貰おうか」
ルミナスドラゴンは言った。ガルムは5000年も前から転生を繰り返していると。しかしその目的はルミナスドラゴンをもってしても謎。何故ヤツは強力な魔獣が多く封印されているこのヘルズゲートに研究施設を作ったのか。それが異世界召喚と何か関係があるのか。
「ふふ、私が言うと思う? 私はガルム様を愛しているの。例え拷問されたって、口は割らないわ」
「いや……俺は女性には酷いことはしたくないんだ。本当は酷い目に遭ったし、仕返ししたいんだけどね。けれど言わないなら仕方が無い」
大場は「よく言うわ」という顔をする。
「この怒りと憎しみはガルム王子を殺して晴らすことにするよ」
そう言って、俺は大場を解放する。自由となった大場は縋るように俺の脚に絡み付いてくる。
「そもそも、ガルムの真の目的とか、理想とか? 考えてみたらどうでもいいんだよね。知らなきゃいけないことじゃない。俺の目的がイデアの応援するミスラ様を王にすることなんだから。どの道、殺さなくちゃいけないわけだしね。エッシャーみたいに」
俺の脚を掴む手が震えている。大場も何かしらの方法で俺の魔力を確認したはずだ。流石にそんな化け物が愛する人を殺すと言っているのだ。内心穏やかであるハズが無い。
「お、お願い、それだけは……私だったら何でもするから、あの方の命だけは……」
「えぇ……大場さん、注文多くないですか?」
「で、でも、本当に知らないのよ、私もガルム様の本当の目的を……私だって、知りたかったわよ」
悔しそうに涙を流す大場。だがその様子を見ただけで、本当にガルム皇子を助けたいのだということが伝わってきた。
「見当もつかない?」
「よ、予想でいいのなら……」
しぶしぶといった様子で、そしてしばらく考えて、やがて覚悟が決まったように、話し始めた。俺の方は見ないまま、俯いて。
「新しい魔王の作成……そう、そうだわ。恐らく、ガルム様は新しい魔王を作ろうとしていたのよ」
「新しい魔王?」
それは……おかしいじゃないか。ガルムが俺たちをこの世界に召喚した理由は、魔物の殲滅だったはずじゃないか。そもそも、魔王が居なくなったから魔族や魔物達の統率が乱れて、今の混乱した世の中になったのだったか?
だとしたら、自らの手でコントロールできる魔王を生み出し魔族の王とすることは、実は理に適っているのだろうか。
「ありがとう……ガルム王子の件は、出来る限り守るように努力……っ!?」
目を疑った。考え事に夢中になっていて、気が付かなかった。ふと視線を大場に戻したら、大場は死んでいた。口と鼻と目から血を流し、仰向けで倒れている。
「ガルム兄の呪術の力だろうな。この女も、召喚された時、すぞら達と同じ刻印を刻まれていたんだろう」
口封じだろうか。何かガルムにとって不利になる事を口走った瞬間、それは発動したのか。
 「ガハッ……かーぺっ」
後ろで汚い声がした。そうだ、コンボイ。コンボイを忘れていた。俺はすぐさま駆け寄り、自らの指を引きちぎり、そこから溢れ出る血をコンボイに飲ませた。
《竜の血》。凄まじい再生能力をもっていて、自分の傷はもちろん、この血を飲ませることで魔物に限り、回復効果を与える。その効力で、一瞬でコンボイの体は元に戻る。信じられないといった様子のコンボイ。そして、起き上がって俺の肩を嬉しそうに叩いた。
まだ乾いていない、ローションの様な魔物の体液が手について、微妙な顔になりながらも、こう言った。
「助かった。しかし随分と格好良くなったのう。また差をつけられてしまったわい」
「そんなことないさ。って、そうだ、コンボイの孫を助けようぜ」
コンボイの横に大切に置かれていた水槽を手に取る。丁寧に蓋となっている部分を取り外す。しかし、そこで気が付いたことがある。
これの水槽の中身も、案の定時の水だった。ルミナスドラゴンを取り込んだ今、時の水の効力から対象を解放することが出来るようになった。
脳を別の容器に移し、時の水の効力を解除。さらに俺は自分自身の腕を引きちぎり、溢れ出る血を脳にかける。
《竜血》の効果は俺自身にだけ及ぶ訳ではない。だが、流石に脳だけの状態の相手を再生することは出来なかったようだ。
効果が……無い。
「そうか……遅かったんじゃなぁ」
「すまんなコンボイ……私達では力になれなかった」
 クソ……なんとかしなくては。最後の手段があるにはあるが……。
「なぁ、コンボイ。確実ではないんだけど、一つだけ方法がある」
「な、なんじゃ? まさか!?」
「そう……融合だ。けれどその場合、元のお孫さんではなくなってしまう可能性もある。それでもやるか?」
「無論じゃ、可能性があるのなら、やってくれ!」
「で、何と合体させる?」
「う~ん。なるべく元のゴリラに近づけてあげたいから、何か猿系の……あ」
「うむ」
俺とイデアは同じ考えだったようだ。同じものを見ている。気が合うね俺たち。コンボイも察したようで、少し唸ってから、背に腹は変えられんと、オーケーしてくれた。
「じゃ、上手くいってくれよ――融合!」
コンボイの孫の脳と、大場の死体が光の粒子となって交わる。そして、その光の粒子はコンボイの腕の中に納まると、徐々に形作られていく。
そして、完全に姿を現したのは、7、8歳と思われるどう見ても人間の少女だった。その少女が、ゆっくりと目を覚ます。合体元である大場に似ず、くりっとした大きな目だ。きっと美人になるぞ。
さて、肝心の人格だが……。
「ジジ……? あれ、ジジだよね?」
「おお、ワシがわかるんじゃな! 孫娘よ!!」
「ちょ、ちょっと痛いってば……ジジ……」
  なんだろう、魔力とかでわかるのかな。それでも、どうやら人格はお孫さんだったようで何よりだ。赤ちゃんだったはずなのに既に喋れるのは、魔物の特性なのか、天才だったからなのか。大場の一部が受け継がれているからなのか。
「フッ、流石だすぞら。私はかんどーしているぞ」
涙声になりながら、イデアがサムアップする。ああ、我ながら良くやったと思う。俺は抱き合うゴリラと幼女を眺める。なんだか奇妙な光景ではあるけれど、とても幸せな光景だった。
柄にも無く頑張った甲斐はあったかなと、そう思った。
こうして、俺達の長い戦いは終わる。けれど、これはまだほんの序章に過ぎないのだ。姫川達の命は、未だ敵の手の中にある。
やっとこさ1階に辿り着いたと思ったのだが、床をぶち破るのと同時に、何かヌメりとした物体を貫通した。
  ヒヤりとする。まさかゴリラかイデアに当たってしまったのか。だが、どうやら違ったようだ。しかし、安心は出来ない。
  眼下にはまさに今俺が突き破ったと思われるモンスターがいて、力なく床に倒れ伏している。
その魔獣の体液だろうか、透明なぬるぬるした液体が体に纏わりついていた。こりゃまるでろ、ローションじゃねぇか。
「ゲェエエエ、気持ち悪っ」
「お前! すぞらだな!」
倒れる魔物からなるべく離れた位置に着地すると、もはや懐かしくすら感じる声が聞こえた。イデアだった。何があったのか、鎧が砕け、シャツのとスパッツのみとなっている。俺にもかかっているぬるぬるまみれで、なんというかエロかった。
「フッ、私は信じていたぞ」
こんなときでもキャラぶれしないそのドヤ顔に安心しつつ、状況が飲み込めない。あれは大場が呼んだ魔獣?
「そうだ。奴が私を呼んだ本当の目的は、私にこの魔物の子供を孕ませることだったらしい」
「なんでわざわざイデアに?」
俺は少しだけ怒気を込めた口調で言った。体が疼くならエロ魔獣自分に使って慰めてろなどとは思いはしない。大場に言ったつもりだったのだが、イデアが答えた。
「紋章の力を持つ魔獣を造りたかったそうだぞ。紋章の力は王族じゃなければ使えないからな」
「なるほど、それを遺伝させようとねぇ」
まるでペニスの様な形をした、見ているだけで不快になる死体を《獄炎核》で発生させた炎で消し去り、俺は腰を抜かしたように座り込んでいる大場に近寄る。
「まさか……ミュートランスが負けたの?」
「目論みが外れたな。大分苦戦させられたけど、所詮コピーはコピーだ」
そうして、俺は倒れている大場に覆いかぶさるように床に手を突いた。壁ドンならぬ床ドンだ。小さな悲鳴を上げる大場。目には涙を浮かべつつも、俺を睨みつけるようにしながら悪態をつく。
「私を殺すなら殺しなさいよ。もうアンタ達を倒す手段は無くなったわ」
「殺さないって。人をなんだと思ってるんだよ」
 「……」
ジトっと睨まれた。おお、怖い怖い。けれど、怖くてもやることはやっておかないと。
「さて、質問タイムだ。ガルム王子の目的を教えて貰おうか」
ルミナスドラゴンは言った。ガルムは5000年も前から転生を繰り返していると。しかしその目的はルミナスドラゴンをもってしても謎。何故ヤツは強力な魔獣が多く封印されているこのヘルズゲートに研究施設を作ったのか。それが異世界召喚と何か関係があるのか。
「ふふ、私が言うと思う? 私はガルム様を愛しているの。例え拷問されたって、口は割らないわ」
「いや……俺は女性には酷いことはしたくないんだ。本当は酷い目に遭ったし、仕返ししたいんだけどね。けれど言わないなら仕方が無い」
大場は「よく言うわ」という顔をする。
「この怒りと憎しみはガルム王子を殺して晴らすことにするよ」
そう言って、俺は大場を解放する。自由となった大場は縋るように俺の脚に絡み付いてくる。
「そもそも、ガルムの真の目的とか、理想とか? 考えてみたらどうでもいいんだよね。知らなきゃいけないことじゃない。俺の目的がイデアの応援するミスラ様を王にすることなんだから。どの道、殺さなくちゃいけないわけだしね。エッシャーみたいに」
俺の脚を掴む手が震えている。大場も何かしらの方法で俺の魔力を確認したはずだ。流石にそんな化け物が愛する人を殺すと言っているのだ。内心穏やかであるハズが無い。
「お、お願い、それだけは……私だったら何でもするから、あの方の命だけは……」
「えぇ……大場さん、注文多くないですか?」
「で、でも、本当に知らないのよ、私もガルム様の本当の目的を……私だって、知りたかったわよ」
悔しそうに涙を流す大場。だがその様子を見ただけで、本当にガルム皇子を助けたいのだということが伝わってきた。
「見当もつかない?」
「よ、予想でいいのなら……」
しぶしぶといった様子で、そしてしばらく考えて、やがて覚悟が決まったように、話し始めた。俺の方は見ないまま、俯いて。
「新しい魔王の作成……そう、そうだわ。恐らく、ガルム様は新しい魔王を作ろうとしていたのよ」
「新しい魔王?」
それは……おかしいじゃないか。ガルムが俺たちをこの世界に召喚した理由は、魔物の殲滅だったはずじゃないか。そもそも、魔王が居なくなったから魔族や魔物達の統率が乱れて、今の混乱した世の中になったのだったか?
だとしたら、自らの手でコントロールできる魔王を生み出し魔族の王とすることは、実は理に適っているのだろうか。
「ありがとう……ガルム王子の件は、出来る限り守るように努力……っ!?」
目を疑った。考え事に夢中になっていて、気が付かなかった。ふと視線を大場に戻したら、大場は死んでいた。口と鼻と目から血を流し、仰向けで倒れている。
「ガルム兄の呪術の力だろうな。この女も、召喚された時、すぞら達と同じ刻印を刻まれていたんだろう」
口封じだろうか。何かガルムにとって不利になる事を口走った瞬間、それは発動したのか。
 「ガハッ……かーぺっ」
後ろで汚い声がした。そうだ、コンボイ。コンボイを忘れていた。俺はすぐさま駆け寄り、自らの指を引きちぎり、そこから溢れ出る血をコンボイに飲ませた。
《竜の血》。凄まじい再生能力をもっていて、自分の傷はもちろん、この血を飲ませることで魔物に限り、回復効果を与える。その効力で、一瞬でコンボイの体は元に戻る。信じられないといった様子のコンボイ。そして、起き上がって俺の肩を嬉しそうに叩いた。
まだ乾いていない、ローションの様な魔物の体液が手について、微妙な顔になりながらも、こう言った。
「助かった。しかし随分と格好良くなったのう。また差をつけられてしまったわい」
「そんなことないさ。って、そうだ、コンボイの孫を助けようぜ」
コンボイの横に大切に置かれていた水槽を手に取る。丁寧に蓋となっている部分を取り外す。しかし、そこで気が付いたことがある。
これの水槽の中身も、案の定時の水だった。ルミナスドラゴンを取り込んだ今、時の水の効力から対象を解放することが出来るようになった。
脳を別の容器に移し、時の水の効力を解除。さらに俺は自分自身の腕を引きちぎり、溢れ出る血を脳にかける。
《竜血》の効果は俺自身にだけ及ぶ訳ではない。だが、流石に脳だけの状態の相手を再生することは出来なかったようだ。
効果が……無い。
「そうか……遅かったんじゃなぁ」
「すまんなコンボイ……私達では力になれなかった」
 クソ……なんとかしなくては。最後の手段があるにはあるが……。
「なぁ、コンボイ。確実ではないんだけど、一つだけ方法がある」
「な、なんじゃ? まさか!?」
「そう……融合だ。けれどその場合、元のお孫さんではなくなってしまう可能性もある。それでもやるか?」
「無論じゃ、可能性があるのなら、やってくれ!」
「で、何と合体させる?」
「う~ん。なるべく元のゴリラに近づけてあげたいから、何か猿系の……あ」
「うむ」
俺とイデアは同じ考えだったようだ。同じものを見ている。気が合うね俺たち。コンボイも察したようで、少し唸ってから、背に腹は変えられんと、オーケーしてくれた。
「じゃ、上手くいってくれよ――融合!」
コンボイの孫の脳と、大場の死体が光の粒子となって交わる。そして、その光の粒子はコンボイの腕の中に納まると、徐々に形作られていく。
そして、完全に姿を現したのは、7、8歳と思われるどう見ても人間の少女だった。その少女が、ゆっくりと目を覚ます。合体元である大場に似ず、くりっとした大きな目だ。きっと美人になるぞ。
さて、肝心の人格だが……。
「ジジ……? あれ、ジジだよね?」
「おお、ワシがわかるんじゃな! 孫娘よ!!」
「ちょ、ちょっと痛いってば……ジジ……」
  なんだろう、魔力とかでわかるのかな。それでも、どうやら人格はお孫さんだったようで何よりだ。赤ちゃんだったはずなのに既に喋れるのは、魔物の特性なのか、天才だったからなのか。大場の一部が受け継がれているからなのか。
「フッ、流石だすぞら。私はかんどーしているぞ」
涙声になりながら、イデアがサムアップする。ああ、我ながら良くやったと思う。俺は抱き合うゴリラと幼女を眺める。なんだか奇妙な光景ではあるけれど、とても幸せな光景だった。
柄にも無く頑張った甲斐はあったかなと、そう思った。
こうして、俺達の長い戦いは終わる。けれど、これはまだほんの序章に過ぎないのだ。姫川達の命は、未だ敵の手の中にある。
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